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『神聖モコモコ王国 act8』 作者: 木質

神聖モコモコ王国 act8

作品集: 21 投稿日時: 2010/11/07 10:09:40 更新日時: 2010/11/07 19:09:40
≪登場人物≫

妹紅:モコモコ王国国王。輝夜をこの世から消滅させる方法を日々探している。そんなことばかり考えているせいか、頭のつくりがあまりよろしくない
   そのせいで来年の24時間テレビに出演させられるのではないかと、慧音から心配されている
   たまにメタ発言をして周囲を困惑させる

慧音:モコモコ王国の国民としてカウントされている。イカれた幻想郷の中で、数少ない良識人。
   妹紅の保護者。目を離すとすぐに死んでしまうため、常に妹紅を気に掛けている
   満月の晩になるとハクタクに変身する。変身すると重度のショタコンになり、性格も変わる。ハクタクになるとタチが悪い

幽香:ひまわり畑に住む幻想郷の上位ランカー。バイオレンスな性格だが、根はすごく良い人。子供好きで弱い者の味方
   最近、通信講座でフラワーアレジメントの資格を取得した

輝夜:永遠亭の姫。妹紅に常に命を狙われているが、彼女も刺客を送ったりしているので、どっこいどっこいだったりする








【 スピードスター 】

今日も今日とて、妹紅は輝夜抹殺を画策する

「輝夜抹殺を完遂するには、やはり妹紅自身が輝夜よりも格段に強くなることが必要条件モコ」
「まあそうだな」
やる気の無い声で慧音は答えるのはいつものことなので気にしない
「その点で欠かせないのがスピードモコよ。速ければ大概の相手に勝てるモコ。トラクローより、チーターレッグの方が大活躍モコ」
「トラだって頑張ってるんだぞ?」
「とにかく。妹紅スピードアップ計画を実行に移すモコ」




――――――――― 日産 MOKO ―――――――――


モコモコ王国国民は、人種、信条、性別、社会的身分、または門地により
圧倒的に速さが足りないので、早急になんとかする必要があります

という理念のもとカスタマイズされた妹紅
今後もマイナーチェンジしていくが、基本的にユーザーは燃費しか気にしていない


――――――――― 日産 MOKO ―――――――――




「モンペをパンタロンに履き替え機動性をアップ。踵にコロコロがついた靴にすることで驚異のドリフトを実現したモコ」
「あんまり変わらない気がするが。それよりも転ぶんじゃないぞ?」
「しかし、まだ改良の余地があるモコ。やはりココは幻想郷最速に頼るのが一番モコかね?」
「となるとあの新聞記者か」

慧音の脳裏に知り合いの鴉天狗の顔が浮かぶ

「天狗は速さにおいて幻想郷で一番ではなく、二番目モコ」
「一番は?」
「スカイフィッシュ」
「・・・・・・」
「妹紅はヤツを爬虫類だと睨んでいるモコが、真相は定かじゃないモコ。月ではそれなりに研究が進んでいるらしいモコが、残念なことにまだ捕獲例は無いモコよ」

捕まえたら解剖して早さの秘密を手に入れるのが妹紅の目的である

「解剖とは物騒だな。仮に捕獲できても体の構造上が違うから、参考にならないんじゃないか?」
「ふむ、それもそうモコね。やはり射命丸文を解剖するモコ」
「普通にレクチャーしてもらったほうがいいだろ? なぜ解剖なんだ?」
「努力値なんて糞喰らえモコ」
「お前の中では、素早い奴を倒すとその体内からインドメタシンが出てくるイメージでもあるのか?」


目的はどうあれ。射命丸文を探すことになった








湖まで二人はやってくる

「妖怪の山に行かないのか?」
「あのカラスが生粋のロリコンであることはチルノが自機のエンディングで確定してるモコ。つまり妖精の居るところのほうが出現率が高いモコ」
「自機とかエンディングとか、そういう生々しい話はするな。しかし、射命丸文か・・・確かに幼い子にイタズラしてたという噂を聞いたことはあるが」
慧音も文に関する話題で、黒い噂を何度か耳にしていた
「とにかく散策するモコ」

長閑な湖の周りを二人は歩く
しばらくして、二匹の妖精同士で弾幕ごっこに興じているのが目に付いた
放つ弾は緩やかで、どちらも笑顔でいたため、ただじゃれあっているようだった

「このあたりにいねーモコかね?」
「いくら真性のロリコンでも、そんな簡単に見つかるわけが・・・」
「あーーいいですね。そのアングル」
「 ? 」
どこからが声がした。あたりを見渡しても姿が見えない
「ふふふ。スカートの中のドロワを無防備にさらしながら飛ぶ姿がなんとも」
体の上に草を被せて地べたに寝転び、景色と完全に同化した文を見つけた

「おい、鴉天狗」
「・・・・・・」
「こんな昼間ッから妖精を盗撮か?」
以前から聞いていた噂がすべて真実だとわかったので、慧音の中で射命丸文は要注意人物にクラスアップした
「わ、私は文ではありません。文の双子の姉、射命丸丈(じょう)です。妹がお世話になってます」
「すんごい開き直り方しやがったモコ」
赤の他人を名乗るという慧音の斜め上をいく方法を文は繰り出してきた
「お前も新聞記者か、じゃあなんていう新聞を発行しているだ? 今度読みたいから教えてくれ」
「わ、私は戦場カメラマンです。新聞ではありません」
「戦場カメラマンがどうして妖精なんて撮っているんだ?」
「ただいま・・・・・・・妖精大戦争の・・・・・・光景を・・・・・撮影・・・・・・しています」
「こいつ戦場カメラマン名乗った途端に口調変えやがったモコ」
急に、穏やかな口ぶりになる文に微妙な腹立たしさを感じる二人
「じゃあ、妹と違ってロリコンじゃないんだな?」
「はい・・・・・そんなの・・・・・当然です・・・・・被写体には・・・・・ノータッチ・・・・・・それが・・・・・ジャーナリストの・・・・・・・ルールなんです」
「戦場カメラマンがみんなそんな喋り方だと思うなよ」
自称、射命丸丈はカメラのレンズに蓋をして、鞄の中に丁寧に詰め込む
「それでは・・・・・・・私は・・・・・・・これで・・・・・・・」
「こんな話を知ってるモコか?」
踵を返す文の背中に、妹紅が問いかけた
「ロリコンを見分ける方法があるモコ」
「へえ・・・・そうなん・・・・ですか」
「それはモコね」
少しだけもったいぶってから、妹紅は口を開いた

「ロリコンは湖の霧を吸うとフタナリになるモコ」

「う、嘘だろ妹紅?」
「ああ嘘モコ、だがマヌケは見つかったモコ」

スカートをたくし上げ、下着の中に手を入れる文がいた。二人の視線に気付き、手を戻す

「シブイねぇ・・・・・まったくおたくシブイですよ。これで可愛い子をガチファック出来ると喜んでしまったじゃないですか・・・・・・それではっ!」
身を翻す文は猛スピードで森の中へ消えて行った。まさに一瞬だった
「しまった。逃げたっ!」
「待ちやがれモコ!!」

妹紅がそれを追いかける











木立を抜け、岩を踏み越え、倒木を跨ぐ

「こら止まれモコ! さっさとその体を分解させて速さの秘密を探らせろモコ!」

小川を跳び越え、枝葉を潜り抜ける

「てか、今回標準装備の踵のコロコロ、意味無ぇ!!」

懸命に鴉天狗を追う妹紅。やがて森が開けた場所までたどりつくと、文の足が止まった

「ようやく観念したモコか」
「・・・・・・ハァ、ハァ」

文は妹紅に背を向けながら、肩を大きく揺らして息をしていた

「さっさと妹紅に解体されてすばやさを授けろモコ」
肩を叩こうとしたその時
「残像です」
「モコォ!?」
目の前から文の姿が消え伸ばした手が空を切る
そのまま羽交い絞めにされる妹紅。その耳元で文が囁く
「妹紅さんがいけないんですよ? 私の性癖を知っていながら近づいてくるんですから。あなたの容姿なら、十分私の守備範囲内です」
だから逃げる速さを調節して、妹紅がここまで追ってくるように仕向けた。その気になれば妹紅など簡単に引き離し、山まで逃げおおせることが出来た
「・・・ハァ、ハァ。スーー」
文の荒い呼吸の正体は鼻息だった。鼻腔一杯に妹紅の香りを取り込む
「ああもう。辛抱たまりません!!」
地面に組み伏せ、強引に妹紅から服を剥ぎ取ろうとする
「モコォォォォォォォォ!! いけねえ! それ以上はいけねえモコ!」
手足をバタつかせる抵抗する
「うるせえ!! 抵抗しなでさっさとズボン脱げや!! 石を膣に詰めんぞ!!」
発情した文の前に抵抗などむなしく、妹紅をモンペの代わりに着用していたパンタロンを奪われた
「たっぷりとイかせてあげますからね」
妹紅は両足首を掴まれ、強制的に股を開かされた。そこに足が置かれる

「幻想郷最速の足から繰り出される電気アンマの威力は凄まじいですよ。妖精さんはみんな、10秒も持たずに失禁してしまいますからね。藤原さんは何秒で堕ちるでしょうかねえ?」
「うぉぉ! なぜにネチョ展開に!? いつのまにか夜伽話っ!?」
「良いですねその戸惑いの顔。もっと怯えてください! 私に依存しなければ生きていけないくらいの快楽を恐怖を刻んであげま・・・・」
「怯えるのはお前だ」

文の背後には慧音がいた。相当無理をして追って来たのか、衣服の損傷が激しい。手足にも生傷がいくつもあった
頭の帽子を外して、文の両耳を背後から掴んで固定する

「頭蓋骨で一番脆いのは後頭部だ」

上白沢慧音は教師である

「今からそこを本気で頭突く」

故にロリコンという存在を許容・認知することが出来ない

「そしたら確実に頭蓋骨が陥没する。陥没したことで脳みそが抉られて、後遺症が残るかもしれない」

残像を残すほどの速度を持っていようと、捕まってしまえばそれまでである。今の文には振り向くことさえ許されない

「記憶障害、手足の麻痺、五感の喪失、言語能力の欠落。新聞記者なんてもう出来ないかもな」
「あ、あああ。うああああ」

最悪の未来を想像させられて、文は自身の下着が恐怖で濡れるのを感じた

「お前もらしたのか?」
「残尿です」
「うるさい」

鐘を突いたような音が森に響き、木々に止まった鳥達が一斉に羽ばたいた






家への帰り道。オレンジ色の夕日を見ながら二人は歩く

「素早さはもういらねーモコ。よくよく考えたら足が速いキャラはゲーム後半になると、マップの隅にあるアイテムを回収するだけの役割になって碌に戦えないモコ」
「お前は脳みそをもう少しスピードアップした方がいいんじゃないか? まあ強姦されかけたのに、数時間で完全にリセットされるから今のままでいいかもしれないが」

文が菓子折りを持って謝りに来たのは、それから一週間後のことだった







【 ダークナイト 】




この日の月は満月だった





深夜にもかかわらず寺子屋には明かりが点いていた

「良い子のみんなーーこっんっにっちわーー!」

ワーハクタクに変身した慧音は教壇の上に立ち、元気良くそう叫んだ
彼女の目線の先には里の少年たちがいた。全員、手足を縄で縛られ、轡をかまされている

「ハックタクお姉さんだよ〜〜♪」

彼等に向かい、両手を広げる
教室の机はすべて片付けられており、部屋の中央に少年たちは集められていた

「さて、今夜もやってまいりました。NHK(ネクスト ヒストリー ケーネ)が提供する青少年性教育プログラム『一人で出来るだろう?』のコーナーです。はい、みんな拍手〜♪」

薄暗い教室の中、一人分の乾いた拍手だけが虚しく響いた



―――――――― 『一人で出来るだろう?』 オープニングテーマ ――――――――

【 肝インエイジア 】


ハクタク先生 ハクタク先生
男の子が大好き ハクタク先生
生徒のためならば プライベートだって惜しまない

男の子)先生、僕ねお兄ちゃんのこと考えると胸がドキドキするの。これって病気なの?
ハクタク)そうか、じゃあお兄さん連れて今度の日曜日に先生の家に来なさい

メンタルケアもばっちりなハクタク先生


ハクタク先生 ハクタク先生
男の子が大好き ハクタク先生
楽しい授業のためならば どんな教材だって揃えちゃう

店員)いらっしゃいませ
ハクタク)すみません。6歳くらいの男の子が入る大きさの鞄って売ってませんか?
店員)え?

えげつないことだって平気で出来るハクタク先生



―――――――― 『一人で出来るだろう?』 オープニングテーマ ――――――――






『妖怪に告ぐ!! おとなしく里の子供を解放しろ!!』
『お願いだ。息子に手を出さないでくれ!」
『早く慧音先生に知らせるんだ!』

子供がいなくなったことに気付いた里の人間たちは団結し、寺子屋の周囲を囲んでいた。男は全員武装していた

『慧音先生はこの一大事に何処へ!』
『それが見当たらないんです』
「おいおい、お前ら。お探しの慧音先生ならここにいるだろうが」
里の人間の会話が聞こえてきたので、窓を開けて自分を指差す
『お前ッ! 慧音先生まで誘拐しやがったのか!?』
「貴様等の目は節穴か!? 先生なら貴様らの目の前にいるだろうが!」
『わけわからんこと言うな! 先生は無事なんだろうな!?』


「こっちです妹紅さん! 急いで!」
「眠ぃモコォ、こんな夜中にいきなり叩き起こすんじぇねモコ」
阿求に手を引かれ、寝巻き姿にサンダルの妹紅が現場に到着する

「里の皆さんは気付いてませんが、あの妖怪って慧音さんですよね?」
「んん、ああそうモコよ? そういえば今夜は帰ってこないようなことを言ってたモコね」
「やはり慧音さんで間違いないんですね?」
「そういうことだから、妹紅はもう帰・・・ぐぇ」
踵を返す妹紅の襟を阿求は掴んだ
「慧音さんを・・・もといハクタクさんを説得してください」
「簡単に言ってんじゃねーモコ!! あんなのFBIのベテラン黒人ネゴシエーターでも不可能モコよ!!」
「あなた自警団でしょう!? 霊夢さんが来るまでの時間を稼ぐだけでいいんです。断ったら自警団の予算減らしますよ」
「モコちくしょうめ」

渋々教室の窓に近づいていく

「けーね。ちょっといいモコか?」
「ん? なんだ妹紅か」
妹紅は窓辺に手をかけて教室の慧音を見上げる
「里の連中が餓鬼どもを解放してくれって言ってるモコ」
「それはできない相談だ。子供が間違った性知識を得て、悲しい思いをするの前に、教育者の私が正しい性の手ほどきをしてやらなければならない」
「アナルビーズを持った手で言われても何一つ共感できねーモコ」

二人が問答をしている間も、里の人間たちのざわつきは治まらない

『博麗の巫女はまだ来ないのか!』
『今呼びに行っている最中です!!』
『もうこれ以上待てない。こうなったら男衆だけで子供達を』
『馬鹿言うな、危険すぎる!!」

焦り怒声が飛び交う人だかりの中を

「あらあら。こんな時間まで賑やかだから、てっきりお祭りでもやってるのかと思えば」

偶然なのか、必然なのか、一人の女性が寺子屋に訪れた









人ごみを優雅な足取りで抜け出て、彼女は慧音と妹紅の前にやってくる

「こんばんは。随分と面白そうなことをやってるわね」
「おお、誰かと思えば幽香じゃないか」

現れたのは、しばしば寺子屋に遊びに来る女性、風見幽香だった

(やべえモコ。この二人のガチバトルに巻き込まれたら命がいくつあっても足りねーモコ)
慧音は気付いていないが、彼女から垂れ流れる殺気の量は半端ではなかった
妹紅は戦慄した。故になんとしてもこの場から避難しようと足りない知恵をしぼる

「どうだ一緒に? 今ならよりどり緑だ。好みの子はいるか?」
「私がこんな外道な行為に参加すると思って?」
「あん?」
その言葉に慧音の眉がピクリと動いた。両者、子供好きという共通点を持ってはいるが、その根本が大きく違っていた
「外道? この神聖なる学びを外道な行為だと? 残念だよ風見幽香。お前は同好の士だと思っていたのに」
「ハッ、笑わせないで頂戴。野に咲く花は遠くから眺めて愛でるものよ。それに触れようだなんて無粋の極み」
中指を立てる幽香
「失礼するモコ」
その指の先にそっとトンガリコーンを被せる妹紅
「今回の件は妹紅は一切関係ないので、それで見逃して欲しいモ・・・コ゛、ぁあ゛!」
幽香のボディブローを受け、阿求たちの居る方向まで飛ばされた
「痛えモコ。賄賂渡したのに殴られるとかマジ理不尽モコ」
「あなた馬鹿でしょ! そっと離れれば良かったじゃないですか!」
阿求は妹紅を抱えると、その場から後退した

「妹紅にまで手を挙げるとは良い度胸だ。久々にキレちまったよ。校舎裏に行こうか」

慧音が窓から飛び降りる
「無用心ね、もう喧嘩は始まっているのよ?」
着地する瞬間を狙い。幽香の前蹴りが慧音の鳩尾にめり込む。鉛が土を穿つような生理的に嫌悪感を感じる音が全員の鼓膜を振るわせた
「あらごめんなさい。あなたの動きが牛みたいにトロいから、つい足が当たっちゃったわ」
「そうか。ならお行儀の悪いこの足には、教育が必要だな」
慧音が鳩尾にめり込む幽香の足に手を伸ばす
「あんたから教わることは何一つ無いわ」
足を掴まれるより先に、慧音の二本の角を握った
「 ? 」
そのまま角を捻った。角を起点にして合掌捻りだった
「うおっとっと」
慧音は地面に倒された。幽香が上、慧音が下になる
「マウントポジショ〜ン♪」
角から手を離し、すかさず握り拳を作り慧音の顔に落とす
「甘い!」
幽香の鉄槌を慧音は寸でのところで受け止める。そのまま両手で幽香の拳を握って動きを封じた
「片手だけ防いでも意味無いわよ?」
掴まれていないほうの手で慧音の顔を滅多打ちにする
しかし慧音は殴られつつも余裕の表情を崩さない
「ククク」
「殴られて笑うなんてあんたマゾ?」
「マウントに持ち込んだのは失敗だったな。この私が宇宙最強の寝技使いだと、幻想縁起に載っているのを知らないのか?」
「私そんなこと書いた覚えないですけど!」
ギャラリーの中にいた阿求が顔の前で手を振った
「グラウンドのチャンピオンでも、果たしてこの状況を抜け出せるのかしら?」
「ああ。今すぐにでも、なあ!!」
慧音が腹筋に力を入れて、幽香の片手を掴んだまま体を回す
「くっ」
まるでスクリューにでも巻き込まれたかのように幽香の体も一緒に回転する
回りながら、慧音は足を素早く組み替えた
「あれは寝技の必勝形『腕ひしぎ』モコ!?」
幽香は腕を極められるのを回避するために腰を引いた。そうすることで慧音の足から逃れる
「上手い、絶妙なタイミングで外したモコ」
「違う、罠です!」
阿求が叫んだ次の瞬間、慧音の足の動きが急激に変化した
「腕ひしぎは囮です!」
「モコ?」
「そうともさ」
慧音の両足が幽香の首を三角絞めでロックしていた。腕ひしぎは三角絞めの体勢にもっていくためのフェイントだった
「まさかこんな古典的な手に引っかかってくれるとはな。ん?」
幽香は慧音に掴まれていない方の腕を首に重ねることで、頚動脈が圧迫されるのを辛うじて逃れていた
「こいつは驚きだ。咄嗟にやったのか? 寝技の知識も無いのに大したもんだ。しかしまあブラックアウトする時間が僅かに延びただけだが」
「・・・・・」

時間と共に慧音の太ももが幽香の首に沈んでいく
酸素の供給を完全に絶たれても慧音の圧迫は止まらず、首の骨を折る勢いでさらに絞めつけを強めていく




「そろそろ3分、いや5分ほど経つな。どうだ降参するか? この状態じゃ手も足も出ないだろ?」
「どうかし、ら」
その言葉の後、慧音は浮遊感を感じた
「これは?」
「んぎぎぎぎぎぎぎぎぎ」
慧音の体が地上から10cmの高さで浮かんでいた。幽香に腕一本で持ち上げられていた
「はぁぁぁぁぁ、ふーーーー」
足のロックが緩み、大きく息を吸い阿求たちの方を見る
「子供たちの救出は終わった?」
「はい、幽香さんが時間を稼いでくれたお陰で」
寺子屋に拉致された子供達は、幽香が慧音の相手をしている間に全員救出されていた
「ありがとうございます」
「勘違いしないで」
片手で慧音を持ち上げたまま立ち上がる
「本気を出すのに寺子屋の中の子供が邪魔だっただけよ」
腕に慧音が纏わり付いたまま体を半回転。腕を大きく振りかぶった
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
咆哮と共に、思いっきり校舎に向かい慧音の体をぶん投げた。投げられた慧音の体は校舎の壁と窓を破壊し教室の中へと突っ込んでいった

その場にいる全員が大地の揺れを感じた

瓦礫が舞い白煙が立ちこめる
「これは流石に死んだモコかね?」
教室の煙の向こう。見慣れたシルエットが浮かんでいた

「で?」

壊れた机の上、足を交差させて指を組みふんぞり返って座るハクタクの姿があった
「私の三角絞めを脱出したのは褒めてやる。だが、ちょっとばかし無理をしたようだな」
幽香の腕を見て嘲う
彼女の腕が右向きにツイストしていた。投げられる際に慧音が彼女の肘の関節を外したためだ
「まあ、私相手に腕一本の犠牲ですんで良か・・・」
言葉の途中。幽香の指も関節もすべてが元に戻リ始めた

「で?」

一瞬で治った腕を見せて今度は幽香が嘲う
「なるほど。どうやらこちらも本気を出す必要があるようだ」
慧音は立ち上がり、首の骨を鳴らす
「ふー」
息を吐いて精神統一。その後、周囲の空気が一変した
最初に異変に気付いたのは阿求だった
「あ、あれ? ハクタクさんの角が」
慧音の角が徐々に伸び、大きさを増していく。やがて二本の角は天井を突くほどの長さに達する
「角が成長して、パワーアップしやがったモコ」
角から発せられる冷たい妖力が、波紋のように広がり周囲の空気を震わせていた

「This Way(こっちだ)」

慧音が教室の奥へと歩いていく。教室を通ったほうが校舎裏に近いためである
幽香も教室に足を踏み入れる。彼女も傘を担ぎ完全に戦闘態勢に入っていた
「嬉しいわハクタク。思いっきり暴れられる相手を探していたのよ。その太くて逞しい立派な角でどんな技を・・・」
「これ邪魔」
慧音は自分で自分の角を折った
「「「「えええええっーー!!」」」」
ギャラリーが一斉に叫んだ
「ちょっとアンタ!? なんで自分で折ってんの!?」
「いや・・・・こんなでかいと頭重くなるし、廊下歩くと絶対に引っかかるし・・・・・・・結局いらんし。てか何でこんなに長くなってるの? 怖いんですけど」
「自分で伸ばしたんでしょうがっ!! てか折って大丈夫なのそれ!?」
「知るか!」
「あんた何なのよ一体!!」













翌朝

「先生、大丈夫ですか先生!」
里の男に肩を揺すられて慧音は目を覚ました
「良かった。おーい、みんなー。慧音先生が気づかれたぞー!」
「ここは?」

半壊した教室の中。茣蓙(ござ)が敷かれた床の上に寝かされていた

「昨晩、角を生やした妖怪が里の子供を攫い、ここに立て篭もったんです。先生もそいつに攫われて気を失っていたんです」
「・・・・・・」
記憶は残っていないが、自分がとんでもないことをやらかしたというのは十二分にわかった
「風見幽香という妖怪が途中で乱入してきまして。その妖怪と乱戦になったんです、戦いは朝方まで続きました」
「・・・・・・」
「日が昇る頃、その妖怪は逃げ出したようで、気付いたら居なくなってました。しかし皆が無事でよかった。瓦礫の中で気を失ってる慧音先生を見つけた時は肝を潰しましたよ」
その言葉に眩暈と頭痛を覚え、慧音は両手で顔を覆う
「先生、ご無理しないで下さい。今、温かいお茶を持ってきますね」

男は炊き出しをしている場所に向かい走り出した

「隣、失礼しますね」
男と入れ違いになるように阿求がやってきて、慧音の横に座る
「午後にはお大工様がやってきて、寺子屋の修理をしてくださるように手配しました。当分は青空授業ですね」
「そうだな」
「幽香さんはハクタクさんの正体には気付かなかったようで。朝になりハクタクさんの気配が完全に消えたことを確認するとその場からひっそりと姿を消しました」
その言葉で、阿求がどこまで知っているのかを理解する
阿求にも幽香にも今後、なんらかの形で罪滅ぼしをしなければならないと思った
「迷惑をかけた」
今は謝ることしか出来ない
「いえいえ。私はただ妹紅さんを呼んできて、あとはずっと見ていただけですから」
「その妹紅は?」
「彼女ならあちらに」
校庭の焚き火の近くに妹紅がいた
「この角すっげえ固えモコ!! 悪魔将軍の鎧並の超人強度モコ!!」
角を火にくべて、金槌で叩いていた
「これを加工して武器作ったら輝夜でも確実にモッ殺せるモコよ・・・・・うおっ、金槌が先に曲がった!?」

「私が暴走している間に、妹紅は活躍したか?」
「微妙でした」


ちなみに折れたハクタクの角は、売りに出したら結構な値打ちがつき、その資金は寺子屋再建に充てられた














番外編 【 新説 東方永夜抄 −エクストラステージ− 】


「妹紅は何処にいるんだ!」

慧音は竹林の中を全速力で走っていた
「急がなければ」
永遠亭が起こした永夜異変が解決してから数日がたったある日
蓬莱山輝夜が肝試しと称し、幻想郷の実力者を刺客として妹紅に送り込んだという話を耳にした慧音は、妹紅のもとへ急いでいた

「無事でいてくれよ・・・・・・、む」

途中、立ちくらみに近い感覚を覚えた。足元がおぼつか無くなり、生えていた一本の竹によりかかる
「なんだ。いきなり眩暈が・・・・・ああ、そうか」
夜空を見上げて納得した
「今夜は満月か」
そう意識しだした途端、体が徐々にハクタクへと変身を始めた
軽い頭痛と共に角が伸び、尾が現れる

「くそっ。こんな時に。ああ畜生! このダボがっ!」

慧音は口汚く自分の体を罵った
変身の最中である今の慧音は、思考が人間時とハクタク時のものが混ざり合い、非常に不安定な状態だった


「紫、なにかおかしなのが居るわね」

そこへ偶然、博麗霊夢と八雲紫が通りかかった

(あの様子だと、まだ妹紅には会っていないようだな)

混濁する意識の中で必死に理性を働かせる

(この状況、逆に好都合だ。なんとかハクタクの力を引き出して、コイツらを撃退できれば)

友を守るため、幻想郷でも屈指の二人に挑むことを決意する








『待っていたぞ。満月の夜にやってくるとはいい度胸だ』

『これが肝試しの肝?』

『あの人間には指一本触れさせない!』
























結果を先に述べれば。慧音は霊夢と紫を止めることが出来なかった
勝負は一瞬だった
霊夢の放った札の濁流が。紫の展開した弾幕結界が慧音の体を打ち据え、あっという間に彼女の体は地に伏した
体の許容量を超えたダメージに慧音は昏睡に近い状態に陥る

(ここまでか。すまない妹紅、今の私ではコイツらには敵わない。どうか遠くに・・・)

―――――――――力が欲しいか?

混濁する意識の中。一つの声が聞こえた

―――――――――妹紅のピンチを救いたくはないか?

慧音の目の前
頭から角を生やした自分が立っていた。腕を組んで仁王立ちする自分が真剣な表情で問いかけてくる

―――――――――力が欲しいか?

(欲しいが、お前の力だけは御免被る)

―――――――――そんなこと言うなって

(いや、本当にいらないんだって)

―――――――――マジで?

(ああマジだ)

―――――――――何故? 理由をお聞かせ願いたい

(お前は毎回、子供に性的なことをすることしか考えて無いだろ)

―――――――――文句あんのか!!

(大ありだ!!)

―――――――――えーー?

(えーーじゃない)

―――――――――いいだろう。力が欲しいのなら

(今の一連のやりとりを、さも無かった事の様に振舞うな)

―――――――――くれてやるっ!

(お前、絶対にそのセリフが言いたかっただけだろ)





















しばらくして慧音は目を覚ました。空を見上げると月はまだ高い
体を跳ね上げて起き上がる。その動きに疲労の色は無かった
「まったくあの堅物女は。どの道、満月になったら私に体を譲渡するのが決まりだろ」
今の慧音は完全なるハクタクであった
「まあいい。妹紅を助けた後、どっかで男の子を引っ掛けて、一発ヤるか」
しばらく歩いていると、奇怪な声を拾った
「 ? 」
音がした方に足を進める

「モッッッゴォォ、ウグ、エグッ、モゴォォゥ」
慧音が知っている中で、哺乳類でこのような声で泣く生物は一人しかいない
「どったのもこたん? そんなとこで泣いて。輝夜にでもいじめられたのかにゃー?」
草むらを書き分けて妹紅を探す
「け、けーね゛、けーねモ゛ゴか?」
「おお。こいつはまた派手にやられたな」
うつ伏せで倒れる妹紅には両手が無かった。足も膝から下が消し飛ばされていた
「なん゛にも゛、見えねェモコ゛ォォ」
両目には深々と退魔針が突き刺さっていた。針の長さからして脳まで達しているのは明らかだった
「き゛もち゛、わりィモゴ・・・」
自ら流す血の水溜りの中で妹紅はのた打ち回る

「取り合えず一回死んでリセットするか?」
「頼む゛モゴ」

踵で妹紅の頚椎を踏み砕いて介錯する

瞬く間に五体満足の妹紅がその場に出現した

「いやー助かったモコ。自殺しようにも顎の筋肉を抉られてたから、舌も噛めなかったモコよ」
「誰にやられたんだ?」
「巫女の恰好した奴と、ドアノブカバーみたいな帽子被ったババアモコ。さっそく仕返しに追いかけて・・・お、お、お?」
妹紅はよろめいて、地面に倒れこんだ
「うおっ。体が動かんモコ?」
「あの重症から再生したばかりだし、体が完治しても精神的な負担はまだ残ってるんだろうな」
「これじゃあ輝夜の手下どもに復讐できねぇモコ!!」
「へいどーどー。落ち着けもこたん」
駄々っ子のように手足をバタつかせる妹紅を抱えて頭を撫でて宥める

「ここは私に任せておけ」
「行ってくれるモコか?」
「当然だ」

妹紅を地面に戻し、指の骨を鳴らす

「じゃあ早速、児童ポルノ禁止法を先頭に立って扇動している奴を殺しに行ってくる」
「関係ねぇモコ!! 話聞いてたモコか!?」

















竹林の道中
「ねぇ紫」
「ん?」
「あそこまでやる必要があったのかしら?」
霊夢の中に、僅かだが後悔の念があった
「あれくらいしないと蓬莱人は安心できないわ。すぐに生き返って反撃してくるんですもの」
だからあえて、長い時間苦しんでから死ぬように施してきた
「でも手足をもいで、顎を削って、目に針を刺して・・・」
「現にウチの藍が当分使い物にならないくらいに疲弊させられたのよ。それくらいしないでどうするの」
紫の視線が突き刺さる。霊夢を『博麗の巫女にあるまじき発言』とその目が糾弾する
「・・・・・そうね。紫の言うとおりだわ」
「わかればいいのよ。そういう偶にあなたが見せる素直なところ好きよ」
にんまりと笑い、視線を霊夢から正面に戻す
その時
「?」
紫の頭に何か柔らかいものが当たった
見上げると先ほど倒した妖怪が箱を抱えて浮かんでいた
「エクストラステージのボス、忍者フジワア攻略おめでとう。ここからはボーナスステージです」
そう言い、箱から大量のちくわを取り出してばら撒きはじめる
「あんた何を言って・・・・・・危なッ!!」
ちくわに混じって鉄アレイが落ちてきて、それを咄嗟に避ける霊夢
「危ないじゃない!! なんなのよ一体!!?」
「ボーナスステージと言ったらちくわと鉄アレイだろうが!! それとも車を壊すイベントのほうが良かったか?」
「意味わかんないわよ!!」
「ったく、これだからゆとりは」
箱の中身を放出し終えて、二人の前に降り立つ
「何かコイツ、さっきと雰囲気が違・・・」
「霊夢っ!!」
「え?」
隙間を開き、そこに霊夢をむりやり押し込んだ
「ちょっと紫!?」
「先に帰ってなさい。こいつは私がなんとかするわ」
紫の本能が目の前の存在を危険だと判断した

霊夢を安全な場所に飛ばし、一対一となって対峙する

「さっきの仕返しかしら?」
「有り体にいえばそうだ。しかしある条件を呑んでくれるならやめてやっても良い」
「条件?」
「私にはどうしても潰さなければならない相手(児ポ禁法の扇動者)がいる。そいつは幻想郷の外にいるんだ。だから私を外に運んで欲しい」
「幻想郷の管理者として、そんなの許せるはず無いでしょう」
当然のごとく断られた
「じゃあこれならどうだ?」
二つ目の条件を提示する
「お前のスペルに、列車を使った派手な技があるだろ?」
「ええまあ」
「知ってるか? 外の世界には女性専用車両というものがあるそうだ。なんでも女性が男性から性的被害に合わないように彼女らを保護するためらしい。まったくもって嘆かわしい
 電車で最も痴漢の被害に合っているのは女子高生でもOLでもなく、小学生の男の子だ。少年趣味のオヤジにとって、同性だから、身長の差が都合がいいから、そんな理由でベタベタと触っている
 だから私は提案する。『男の子専用車両を作れ』と。そしたらな、ふふふ。私が間違えて乗ってしまうんだ。男の子だらけの空間に私だけが・・・・・・フフフ」
「そ、それで一体何が言いたいの?」
「だから頼む。幻想郷に地下鉄を引いて『男の子専用車両』を作ってくれ。毎日乗るから」
「ごめん、真面目に意味がわからないんだけど」
「交渉決裂か。ならば仕方ない」

一瞬で間合いを詰め、紫の顔面に拳を叩き込もうとする

「せいャッ!」
「速いけど、動きが直線すぎるわね」

紫は一歩後ろにさがり、あらかじめ背後に用意していた隙間の中へ飛び込んだ
隙間の中の空間を優雅に漂い、慧音に一瞥をくれると手を振った

「私も霊夢と、さっきの蓬莱人との弾幕ごっこで疲れているの。戦うのはまた今度にしましょう」

目を細めて笑い、慧音の目の前で隙間をゆっくりと閉じていく

「おいおい、夜はまだ始まったばかりじゃないか?」

あとわずかで完全に閉じようとする隙間に慧音は手を差し入れた

「ぐぬぬぬぬ!」
こじ開けようと両手に力を込める
「馬鹿ね。そんなことして手を切断されても知らないわよ・・・・・・・・なっ!!」
閉じようとしてるはずの隙間が、その動きを止めた
「チュ・・・・・・チュミミ・・・チュミミ〜〜ン」
(なんか変な声だしてる!?)
僅かに徐々に広がっていった
「まさか本当にこじ開けようとしてる? この隙間を!? 馬鹿な!?」
隙間が慧音一人が通れる大きさまで拡大した。肩を差込み中へと入ってくる
「有り得ない、この隙間に私以外が干渉するなんてこと・・・」
「私のほとばしる熱いパトスの前には、こんなもの無意味だ」
再び。一直線に紫に突っ込んでくる
(まずい、早く隙間の外に逃げないと)
脱出のために新たな隙間を作る
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
その紫に向け、慧音はラッシュを繰り出した















霊夢は紫の隙間により竹林の外に飛ばされていた
「いたたた」
落下の際、したたかに打った頭を押さえる
「まったく。紫のやつ突然どうしたのよ」

ぼんやりと待っていると、目の前に隙間が生まれた

「もう紫、いきなり隙間に押し込むなんてひど、い、じゃ?」
隙間から顔を覗かせるのは紫ではなかった
「今晩は。アジアの反逆児、ケーネ=ハクタクェイサーです」
ハクタクが霊夢の胸倉を右手で掴む。左手は紫の顔をアイアンクローで鷲づかみにしていた
「これから精通直後の男の子の素晴らしさをたっぷりと語ってやるから、こっち来いや」

霊夢が隙間に引きずり込まれると、そこには何もなくなった















永遠亭

輝夜は私室に永琳を招き、今晩の肝試しについての結末についてあれこれと話していた
「肝試しに寄こした連中、妹紅を始末してくれたかしら?」
「どうでしょうね、なにせ彼女も不死身ですから」

そんなとき、誰かが慌しく廊下を走る音が近づいてきた

「大変です姫! 師匠!」
「すぐに逃げないとまずいよ!」
やってきたのは鈴仙とてゐだった
「どうしたのそんなに焦って?」
「廊下はもっと静かに走りなさい」
「そんなこと言ってる場合じゃありません!!」
「侵入者、あいつが・・・」

「はいどーーーん!!」

鈴仙とてゐを突き飛ばし、襖を蹴り壊して慧音は輝夜の部屋に入ってくる

「永遠亭に ケーネ先生 が ログインしました」

「ハクタクッ!!?」
「あなたの存在も考慮して妹紅退治に、博麗の巫女と妖怪の賢者を刺し向けたというのに、無駄だったようね」
「あの二人なら、お尻で妊娠する方法を見つけるためにモロッコへ旅立たせた。心配ない、ちゃんと非常食のメロンパンは持たせてある」
「それで、妹紅の仕返しに来たのかしら?」
「ある条件を呑んでくれたらスルーしてやっても良い」
「どんな?」
「ここにいる人型ウサギの男の子とヤらせてくれれば」
慧音はこの姿になってもまだ男の子を抱いていないため欲求不満になっていた
「そういうのはウチにいないから。そもそも人型自体てゐと優曇華くらいだし」
「良く探せ!! それとも全員廊下に一列に並べてスカートの中をチェックして回ってやろうか? あれ? そのシチュエーションめちゃくちゃ興奮しね?」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 以下、妄想タイム 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


廊下に兎の耳を持った少女たちが並ぶ
「ちっ。こいつもメスか。おい、次。お前だ」
「・・・・・」
小刻みに震えて、首を左右に振る
「震えてないで、さっさとスカートを上げろ」
「・・・・・」
またしても同じ反応
「お前なあ。いくら他の子より可愛いからって。そこまで出し惜しみするなよ。こっちは女になんざ興味は無いんだ」
「・・・・・グスッ」
観念したのか、スカートを捲くり出した
「おやおや〜〜」
慧音の頬が吊りあがる。“当たり”を見つけたのだ
「どーちてココがこんなに膨らんでるんでちゅかー?」
テンションが上がり過ぎて何故か赤ちゃん口調になる
「おっきいクリトリスでちゅねー?」
下着に手をかける
「脱ぎ脱ぎし・・・・・・あう、Chiッ!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 以上、妄想タイム 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

慧音が妄想している途中、てゐが自然な動作で柱に触れて体重を掛けた
すると突然、慧音の頭に金タライが落下した
「あう、Chiッ!」
角に良い角度で入ったのか、慧音は怯んだ

それにより妄想が強制終了させられた

「よし。私がいつか使おうと、姫様用に仕掛けた罠でアイツがピヨってるうちに!」
「イナバ。波長を操ってちっこいイナバを男の娘に見えるようにしなさい」
「御意」
「いいから逃げるわよ!」
四人は廊下へ脱出し走り出す
「てめえらゴルアァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
慧音は吼えて、四人を追う
「私の楽しい楽しい妄想タイムを邪魔した罪。死をもって償え!! あの後はスク水きた女装ウサ耳娘と、女装ブルマウサ耳娘と3Pする妄想して楽しもうと思ったのに!!」
「謎の理由で滅茶苦茶怒ってる!」
「あんたが中途半端な罠をかましたからでしょう、責任取りなさい!」
走りながらてゐを責める輝夜
「優曇華。波長を弄くって廊下の長さを変えなさい」
「はい」
動揺するてゐと輝夜を他所に、永琳は冷静に鈴仙に指示を出す

「私の目を見て狂え!!」
鈴仙が走りながら振り向き、狂気の目を発動する

「ん? なんだ?」

慧音の目には、真っ直ぐなはずの廊下が酷く歪んで見えた
それにより永遠亭の四人と慧音との距離は段々と離れていく

「よし、さらに駄目押しの一発!!」
てゐが壁のスイッチを叩いた
「奈落の底に落ちろ!」
そう言うと、慧音の進路の床の一部が抜けて落とし穴が出現した
「危ねぇっ!」
ジャンプし、落下を回避する

だが

「ぬぁ! 角が壁に刺さった!」
ジャンプが高すぎて天井に深々と角が刺さる
「抜けんっ! なにこの状況? ディアブロス? 剥ぎ取られちゃう系?」
自分の角を抜こうと足をバタつかせる

「け、計算通り!」
「絶対ウソでしょそれ! けどナイスよイナバ!」
「お手柄よてゐ。あとはこのまま竹林の外まで逃げればこちらのもの」
「師匠、アレ!!」
鈴仙は天井にぶら下がる慧音を指差した
「抜けないのなら、この天井そのものをぶっ壊す!」
天井の出っ張りを掴み、力をかける
直後、頭上の天井が徐々に下にさがり始めた
「嘘っ、まさかあいつ天井をまるまる落とす気?」
そして亀裂が天井に十分に行き渡ったとき、崩壊が始まった

「逃げなさい輝夜!! あなただけでも!」
「きゃっ!?」
永琳が輝夜を突き飛ばす。輝夜だけが廊下の突き当たりの丁字路に間に合った
「みんな!!」
輝夜が振り向くと、廊下は落下した天井と屋根の瓦で埋まっていた

「今助けるから!」
掘り起こそうと、駆け寄る
その時
「輝夜ぁぁぁ!!!」
「げっ、妹紅!?」

丁字路の先に妹紅が立っていた
「なんてこと。これから生き埋めになったみんなを助けないといけないのに」
「うるせえモコ!!」
「ぎゃん!」
妹紅の瞳はかつて無いほどの怒りに染まっていた
「てめぇ! 巫女とババアで飽き足らず。魔女の二人組、餓鬼とメイド、幽霊とサムライ女。刺客どんだけ雇ってるモコか!!」

慧音がいなくなった後、妹紅は魔理沙とアリス、レミリアと咲夜、幽々子と妖夢。それぞれのペアから襲撃を受けた

「絶っ対ェ、許さなねぇモコ!! 恨み晴らさせてもらうモコ!!」

妹紅は拳を振り上げる

「まずこれは慧音の分!」
「くっ」
顔面に迫る燃える拳を蓬莱の玉の枝で払う
「そして今夜やられた妹紅の分!」
「っ!」
体重の乗った蹴りを仏の御石の鉢で受け止める
しかし妹紅の猛攻は止まらない
「これはクリリンの分!」
「はい!?」
放たれた炎弾を火鼠の皮衣で防ぐ
「こいつはグロリアの分だあああああ!!」
「ちょ、待って!」
打ち込まれた御札に燕の子安貝をぶつけて相殺させる
「これもこれもこれもグロリアの分モコ、グロリアがてめえの難題をぶっ壊したと思えモコ!」
「いやいやいやいやいや。誰?」
「あとついでに、てめぇに喰われた干し柿の分!」
「それには身に覚えがある」
弾幕の雨を龍の顎の玉で防ぐ
輝夜の持つ難題がすべて尽きた
「これでもう、てめえに防御スキルは無えモコ。永きに渡る因縁、ここで終わらせてやるモコ」
壁を背に追い詰められた輝夜は顔をしかめる
「思い知れッ!」
妹紅はスペルカードを取り出す
「喰らえ! こいつは富士山で死んだ岩笠の分モコォォォ!!」
「私関係無いでしょ!! てか不比等は!?」









以下、エンディング

↓↓↓↓↓




妹紅と慧音の襲撃により
精魂尽き果てた永遠亭勢は永遠亭の門の前で正座させられていた


妹紅と慧音が四人を見下ろす
「勝ったから永遠亭の看板はもらっていく・・・・・でも良く考えたら。私の家1ルームだから、こんな板置いたら一気に狭くなるので、落書きして帰ります」


永遠亭→おちんちん亭

「あ、やべっ。私の歴史を創る程度の能力の影響で、永遠亭はおちんちん亭に正式改名した歴史を創ってしまった」
「嫌よそんなの! 戻しなさい!」
「敗者が勝者のすることに口を出んじゃねーモコ!」

ペナリティ発動

永遠亭→おちんちん亭→ビッグペニス亭

「余計悪化した!」
「駄目か?」
「駄目に決まってるでしょうが!!」
なおも輝夜は食い下がる
「じゃあこれで文句ないだろ!!」

永遠亭→おちんちん亭→ビッグペニス亭→アームストロング魔羅亭

「こうして永遠亭は次の満月まですべての者からアームストロング魔羅亭の名で親しまれるだろう」
「そんな卑猥な名前で一ヶ月も呼ばれたくないわよ!!」
今回、慧音先生の方が目立ってる・・・・・・
act9は妹紅を前面に
木質
http://mokusitsu.blog118.fc2.com/
作品情報
作品集:
21
投稿日時:
2010/11/07 10:09:40
更新日時:
2010/11/07 19:09:40
分類
妹紅
慧音
幽香
阿求
永遠亭
1. 名無し ■2010/11/07 20:00:56
新作きた!これで勝つる!
完全な黄金の回転エネルギーを使えるなんてこの先生マジチート
2. tori ■2010/11/07 20:08:48
お馬鹿な妹紅も大好きです。慧音も大好きです。幽香もかなり好きです。
そんな私にとって神聖モコモコ王国は大好物です。
3. 名無し ■2010/11/07 20:45:18
パロディがあまりに多すぎて何処から突っ込んでいいのかww

ここのモコたんは勇敢モコたんHA振りS逆Vって感じだなww
ディアブロ苦手ですww
車破壊は百烈張り手が一番ですww

懐かしいとこと新しいとこと面白いネタをかなり入れてるなあwww楽しいです、マジ最高www
4. NutsIn先任曹長 ■2010/11/07 21:24:36
いや〜、久々のモコモコ王国の新作、楽しませてもらいました。
変質者ばかりの幻想郷…。素敵(ぽっ)。

幻想郷崩壊ネタに付き物の霊夢と紫の制圧を、こ〜んな下らん理由でやってのけるとは。
けーね先生、3面ボスからEx中ボスになると、ここまで凶悪になってしまうなんて…。
5. 名無し ■2010/11/07 22:05:34
相変わらずなモコたんと、今まで以上にぶっ飛んでいるExけーねのノリに、終始笑いっぱなしでしたw
6. 名無し ■2010/11/07 23:17:09
新作お疲れ様です。
文かわいい

渡部口調は………昨日今日TVで聞いたので…………脳内再生……余裕でした…………
7. 名無し ■2010/11/08 04:41:59
前もやられたが今回もまた

「はいどーん!」

がツボった畜生
腹筋返せ
8. 名無し ■2010/11/08 12:14:56
「一番は?」
「スカイフィッシュ」

ああ、だから探してたのね
9. 名無し ■2010/11/08 16:01:45
>アームストロング魔羅

おいおい再現度たけーな
10. 名無し ■2010/11/08 20:38:04
やばい、久しぶりなのにこの威力か!
吹いた、はらいてええ
あいもかわらずなハクタク先生もだがあやや、おめえもひでえな、おいw
妄想とかふたなりひっかけとかストロングもだが今回は何より自分で折ったーがいっちゃんツボったw
11. 天狗舞 ■2010/11/09 00:48:23
もう、慧音先生大好きッ!!
12. 名無し ■2010/11/09 02:15:09
どんなセンスだw
13. 名無し ■2010/11/09 11:01:32
いかんことごとくツボったw
14. 名無し ■2010/11/09 15:28:32
モロッコで吹いたw
15. 名無し ■2010/11/10 00:51:00
神聖モコモコ王国大好きです!
ていうか木質さんの作品シリーズ全部大好きです!
ていうか木質さんが大好きです!
あなたには才能あります!絶対あります!
楽しいです!頑張ってください!
16. 名無し ■2010/11/10 02:28:15
今まで読んでなかったけどこれはもう全部読むしかないな
17. 名無し ■2010/11/11 08:44:10
最新刊ネタまで
流石だなwww
18. 名無し ■2010/11/11 22:15:21
ちょww
もこたん、さり気なく自分の過去の罪を輝夜にきせたよw

いや、今回もすばらしい出来でしたねぇ〜
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