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『幻想郷のブラック企業』 作者: イル・プリンチベ

幻想郷のブラック企業

作品集: 22 投稿日時: 2010/11/24 08:25:03 更新日時: 2010/11/24 17:26:07
幻想郷のブラック企業

 私は外界から幻想郷にやって来たのだが、仕事をしないと生活が成り立たないので幻想郷のハローワーク人里支部に通うことになった。外界にいた時は超がつくほどのブラック企業(某大手人材派遣会社)に勤務していたので、せめて人間らしい待遇を望めることを心の底から願っていた。それでも外界にいた時より酷い内容の求人広告が堂々と張り出されていた。
友人から聞いた話によると特に問題があるのは、この4件で常に求人を応募しており勤務条件と労働環境とはありとあらゆる人妖に対し常軌を逸脱した待遇なので、労働者を奴隷扱いする働き方をやらせるようなことはあってはならないと思うのだ。

 これはアルバイト求人で掲載されている夜雀の屋台か死なない女の子の焼鳥屋で仕事をする方が遙かにマシであり、それらと比較すると寺小屋の教員と霧雨道具店の店員は非常にいい待遇だと思った。(自給700円がいい条件だと思いたくないが、これらよりははるかに人道的である。ちなみに寺小屋の教員と霧雨道具店の販売員は高度なスキルを求められるも極めて待遇が良いので応募者が多く難易度が高い。)

 冒頭でも述べたようにブラック企業の中でも特に問題がある待遇である紅魔館の住み込みメイドと、白玉楼の庭師と、永遠亭にある八意診療所の総合職(主に新薬の実験台になるのがメインである。)とボーダー商事でスキマ妖怪の式神は面接を受ければほぼ入社が見込めるが、生きるための最終手段と認識しておいた方がいい。これらの職場で働くのであれば、常識の通用しない幻想郷の中で最も劣悪であるブラック企業だということをあらかじめ考慮に入れておきたい。なぜなら、生まれた姿で戻れる保証がないのだから。

 最初に、紅魔館の求人内容の紹介とそこで働く私を想像してみた。

事業所名 紅魔館
所在地 紅魔館
就業場所 紅魔館
職種 メイド、門番
採用人数 100名
雇用形態 正社員
入居加入住宅 あり(紅魔館メイド寮の住み込み)
仕事の内容 館内の清掃、調理、その他雑用
就業時間 0:00〜24:00(変形労働時間制)
時間外 月平均200時間以上
賃金 0円
休憩時間 なし
休日 なし
昇給 なし
選考方法 面接
日時 随時
事業者 レミリア・スカーレット
担当者メイド長 十六夜咲夜

 紅魔館の待遇で問題があるのは、賃金の支払いと休日が全くもってないということである。採用人数が多いということは人員の入れ替わり立ち替わりが激しいということを考慮に入れてもいい。一日3回の食事と屋敷で住み込みの働きが報酬というならば、失業すれば生活が破綻するといっても過言ではない。しかも、長時間労働と時間帯変則勤務のダブルパンチときたものだ。(最悪の場合、一方的にお嬢様に振り回されて過労死しかねない。)ここで働こうと思うのは、よほど事業者のレミリア・スカーレットに忠誠を誓っているのか、重度のマゾヒストのいずれかに違いない。メイド長は前者であり、門番はおそらく後者だと思う。


私は自分が紅魔館で働く様子を想像してみた。

 
「咲夜〜!今日の夜7時にパーティをするから、ご馳走を用意して頂戴。」
「ですが、お嬢様。パーティを始めるにはあと3時間しかありません。」
「そこは咲夜がなんとかすればいいだけでしょ。あと、いつもの面々の招待状を届けるように。」
(む、無理だ…、私が時を止めても、妖精メイドを総動員しても、絶対に間に合わない…でも、出来なかったらお嬢様に何を言われるかわからないし…)
「わかりました。それでは急いで準備に取り掛かります。」
(相変わらず無理難題をけしかけるお嬢様だ。でも、いつものことだから仕方ないな。)
「咲夜、頼んだわよ。」

「お嬢様の命令よ。今日の夜7時にパーティをするから急いで準備に取り掛かりなさい。」
「え?今から準備するのですか?」
(マジかよ。メイド長は気でも触れたのか?普通に考えて出来るわけがないって。)
「そうよ。これからお客様がやってくるのだからA班は管内すべてをもう一度掃除をし直しなさい。B班はパーティに出す料理を作りなさい。C班は会場のセッティングを、D班は招待状を急いで送りなさい。終わり次第その後は管内の警備につきなさい。」
(絶対無理だー!!!メイド長が時を止めたって間に合わないって!!!)
「の、残り3時間で全部をこなさなければならないなんていくらなんでも無理です。」
(出来なかったらお嬢様に何を言われるかわからないし、もうこんな過酷な環境で仕事をしたくないから明日にでもメイド長に辞表を出そう…)
「無駄口言う暇があるなら、今すぐ急いで準備なさい!」
(相変わらずお嬢様も無理難題けしかけるわね。これじゃ妖精メイドが定着するわけないじゃないの。ああ、わたしもいい加減ここのメイド長をやめたくなったわ…間違いなく死ねる…つーか、死にたい。もっと働きやすい職場に就きたいから転職しよう…)
「わ、わかりました〜」

 誇り一つでも残ってしまうとメイド長に何を言われるかわからない〜でも綺麗にしないナイフでお仕置きをされる〜あと、お嬢様に殺されるかもしれないわ。」
 絵画の縁に傷をつけてしまった。あと、シャンデリアを落としてしまった。あぁ、私はもうお嬢様に殺される。」
能力が高いとはいえないメイドは必死で仕事をしているにもかかわらずミスをしてしまうものだ。
 あ〜もう、お嬢様の嫌いな炒った豆と大蒜をメインディッシュのソースに入れてしまった。どうしよう。煽られながら仕事をしているから、わかっていても配分を間違ってしまう。これでどうしろというつもりだ。」
「砂糖と塩を間違って入れてしまった…どうしよう、メイド長に怒られる。」
 来賓に出す食事の調味料の容量を間違えるとえらいことになる。
「エントラスホールを掃除しないといけないし、来賓用のテーブルと椅子を物置から出さなくてはならない。会場全体の飾りつけも急がないと…ああ、お嬢様がカラオケをやりたいと言い出すかもしれないから、カラオケセットも倉庫から出さないとね…。テーブルクロスも歪みがないようにと、あぁ…やることが多すぎてどれからやっていけばいいのか分からない。」
「あ〜、花瓶を落としちゃった。」
  会場のセッティングはいつもこんな感じだ。

「招待客は博麗霊夢さんと霧雨魔理沙さんと東風谷早苗さんにアリス・マーガトロイドさんに…つーか、幻想郷の力のある人たちばかりだ。住んでいるところが解っている顔触れならなんとかなるけど、八雲紫さんはどうすればいいんだ…。あの人の住んであるところなんてわからないじゃないか。」

 連絡がつかない相手の対応は非常に困難である。特に胡散臭いスキマ妖怪は呼び出したい時に呼び出せず、いてもらうと困る時に必ず来るものだ。
 各班のメイドたちはお嬢様の級は鶴の一声で色を失っている状態だった。何せ、わずか3時間でパーティの準備を終わらせなくてはならないからだ。夜通し派手に騒ぎまくり朝方にやってやっと宴が終わるのだが、その後の祭りの処理もすべてを片づけなくてはならないからだ。こうなるとメイドたちは休んでいる暇がない。住み込みで働いているといっても、一部屋に4人以上いることが当たり前なのでプライベートはない。メイド長になれば個室を与えられるが、あそこまで昇進するには気が遠くなるぐらいの功績を上げなくてはならない。お嬢様の我儘に振り回され疲弊していきノイローゼになる自分を思い浮かべるのは極めて簡単なことだと思った。この求人に応募するのを止めるのに1秒もかからなかった。

 次に、白玉楼の求人内容の紹介をしよう。

事業所名 白玉楼
所在地 白玉楼
就業場所 白玉楼
職種 庭師 
採用人数 5名
雇用形態 正社員
入居加入住宅 あり(白玉楼の住み込み)
仕事の内容 庭の手入れ、屋敷の清掃、調理、武術、文学の指南、その他雑用
就業時間 4:30〜24:00
時間外 月平均200時間以上
賃金 0円
休憩時間 なし
休日 なし
昇給 なし
選考方法 面接
日時 随時
事業者 西行寺幽々子
担当者 庭師 魂魄妖夢

 白玉楼も紅魔館に勝るとも劣らずといってもよい。長時間労働はもはや基本である上に、賃金も休日もないというあり得ない労働形態である。特に目を引いたのは白玉楼の主より先に起きて後で休むといった滅茶苦茶な労働を強制させているということである。屋敷は広いので、時間内に業務が完遂されないのが基本なのだろう。しかも、ハイスペックな能力を求めているときたものだ。私は事業者が何を考えているのかが想像できないし、理解したくない。ここの事業者である西行寺幽々子に反抗すると容赦なく殺されてしまうので、対応を誤りたくない。ここで長年庭師をやっている半人半霊の女の子は健気な上、相当の根性があると思う。おそらくこの求人を出したのは白玉楼の庭師は一人ではこなせない仕事量だからだろう。でも白玉楼は冥界にあるのでどうやって行けばいいのだろうか?


 私が白玉楼で働くことを想像してみたいと思う。

 「あ、もう朝だ。幽々子様の朝御飯の支度をしないと…寝たいけど、二度寝したら幽々子様に何を言われるかわからない。」

 日が昇って間もなく気性する庭師の妖夢。急いで身支度を行い、主の朝食と昼食の準備をする。何と言っても彼女の主はとんでもないぐらいの大食漢なので仕込みの量が半端な量ではない。朝食だけで米5升、みそ汁も1升、焼き魚は鮭2匹分を軽く平らげるが、これでも足りない時がある上にこれ全てを妖夢が拵えなければならないのだ。しかも、幽々子は大食漢でありながら美食家であるからご飯の水加減、味噌汁の塩加減、魚の焼き加減にうるさい。だから妖夢は朝食の準備を正確かつ手早く行わなければならないのだ。ご飯は昨日のうちに仕込めるかもしれないが、夜は夜の仕事があるのですべて朝に行わなくてはならない。また、主は潔癖症でもあるため屋敷の掃除を念入りにしなくてはならない。
特に厠と居間と風呂は匂いなく塵1つつかないぐらいに徹底的にきれいにする必要がある。
 
 朝の7時に主を起こして朝食を食べさせることになるのだが、食事の出来が良くないと主か癇癪を起こすことになる。最悪死を意識しなくてはならないからたまったものではない。そして、主の気分次第では玩具のごとくいじられるのだ。ちなみに朝食はいつもこんな様子である。

 「妖夢〜、ご飯のおかわり持ってきて〜。」
 「妖夢〜、御味噌汁のおかわり欲しいんだけど。」
 「お漬物欲しいの〜、早く持ってきて〜。」
 これが何回も繰り返し要求されるのは最早いうまでもない。

 主の朝食を終えると本業の庭の手入れを行う。主の盆栽の手入れを始め、白玉楼全体の庭園をすべて丁寧かつ徹底した管理を行わなくてはならない。これで午前中の大半をこれに費やしてしまう。

 昼の12時に主に昼食を食べさせるのだが、ご飯は朝に仕込んだものを炊いておけばいい。しかし、おかずは朝と同じものを出せないので急いで拵えなければならない。主は忘れっぽいところがあるが、もちろん夕食の献立のことも考えておく必要があるので手は抜けない。

 午後の仕事は、午前中に出来なかった屋敷の掃除や3時のおやつと夕食の仕込みであるが、もちろん主は大食漢であるため大量に作らなければならない。団子、羊羹、餡蜜などの茶菓子50人分を3時になるまで拵えなければならない。その間、主の幽々子はのんびり昼寝をするのだが、3時手前に起こさなくてはならないがもし起こし損ねてしまうと、殺されるかもしれないので細心の注意を払いながら仕事をしなくてはならない。

 一番厄介なのは夕食の仕込みだろう。何と言っても、取り扱う食材の量が尋常ではないのは容易に想像がつく。夕食に炊く米の量は50升、メインディッシュとなるおかずは最低でも大皿50枚分必要である。弁当屋のメニューにあるオードブル15皿を一人で食べきってしまう上に、前菜と食後のデザートも60リットル入るのバケツ5杯分平気で平らげる。幽々子が夕飯を食べる時は使用人にとって修羅場といってもいい。彼女があれこれ言わないのは、仕事の量が膨大な上に常時テンパっているからだ。

 夕食が終わると皿洗いと風呂焚きと主の布団を敷くのだが、布団敷きはさほど労することはないのだが、風呂焚きは極めて難しい作業で常に三十八度を維持しなくてはならないのだ。少しでも温度にムラがあると主が怒りその能力で死に到るので全神経を風呂場の温度計を確認し風呂釜に薪を入れなくてはならない。
 皿洗いはとにかく量が多いので、やった枚数を数えると気が遠くなってしまう為数えてはいけない。この作業は短時間で質より量をこなしていく必要があるのだ。
 問題は主が就寝するのを確認してやっと一日の仕事が終わり自分も寝ることが出来るのだが、最悪の場合主が深夜放送のアニメを見出すと庭師は寝れないので翌日はなお酷いコンディションで仕事をこなさなくてはならないので地獄を見ることになる。主の気分次第だが3日以上連続で働く必要があるのだ。

 次に八意診療所の求人を紹介しよう。

事業所名 八意診療所
所在地 永遠亭
就業場所 永遠亭
職種 総合職
採用人数 5名
雇用形態 正社員
入居加入住宅 あり(永遠亭の住み込み)
仕事の内容 新薬の実験体、事務、その他雑用
就業時間 0:00〜23:59(変形労働時間制)
時間外 200時間
賃金 なし
休憩時間 なし
休日 なし
昇給 なし
選考方法 面接
日時 随時
事業者 蓬莱山輝夜
担当者 八意永琳

 八意診療所で働く自分を想像してみた。

 「ウドンゲ、例の新薬が出来たから今すぐ飲んで!」
 「何のお薬ですか?」
 「そんなこと気にしなくていいから飲みなさい!師匠の言うことが聞けないっていうの?」
 「わ、わかりました…」
 「師匠、飲みましたよ?って、体が熱い!あっ、ああっ!あああああーーーー!!!」
 「どうやら成功したようね…ウドンゲ、パンツを脱ぎなさい!」
 「し、師匠!何をしているんですか?」
 「何って?これは女性に男性器を生やす薬なのよ!なおかつ女性器も残せるんだから。」
 「な、何これ…気持ち悪い、うっ、うわあああああ!!!い、嫌ああああ!!!」
 「これでふたなりウドンゲの出来上がり!」

 または、

 「ウドンゲ!新薬の実験をするから今すぐこれを飲みなさい。」
 「わ、わかりました…」
 「どう?気分が良くなってくると思わない?」
 「はっ、はひぃ〜〜〜〜!お、お師匠しゃま〜〜〜〜!きょ、きょへぇ、にゃ、にゃんにょおきゅひゅりぃれすきゃ〜?」
 「すごくエッチになって、イキまくれるお薬よ!」
 「にゃににょしにゃいにょに、きほちいいお〜〜〜!ら、らめえ〜〜〜!!!」
 「実験は成功ね!やっぱり私は天才だ!!(キリッ)」

 と、このように新薬の実験台をこなさなくてはならないと思うと正気を失いかねないと思った。

 この働き方は医療業界のモラルを無視しているというものだろう。新薬の実験を求めるだけでなく解剖の対象も含まれている。この内容で無償報酬かつ休日がないというのはどういうことだろうか。八意永琳氏の下で医療業界での実績を積めるのは理解できるのだが、それでも労働条件は劣悪だろう。業務上において、薬品の過剰摂取による副作用が何よりも恐ろしい。八意永琳の弟子は弱みを握られていなければ、この職場からとうの昔に逃げ出しているだろう。ただし、本人が重度のマゾヒストでなくまともな感覚を持っていればの話だが。

 最後はこの中で最も劣悪なボーダー商事を紹介しよう。

事業所名 ボーダー商事
所在地 マヨイガ
就業場所 マヨイガ
職種 式神
採用人数 5名
雇用形態 正社員
入居加入住宅 あり(マヨイガの住み込み)
仕事の内容 結界の確認、屋敷の清掃、主の身の回りの世話、その他雑用
就業時間 0:00〜24:00(連続労働)
時間外 なし
賃金 0円
休憩時間 なし
休日 なし
昇給 なし
選考方法 面接
日時 随時
事業者 八雲紫
担当者 八雲紫

 ボーダー商事で働く自分を思い浮かべてみた。

 「藍、これから霊夢のところに遊びに行くから代わりに結界の状態を確認なさい。」
 「わかりました。」
 幻想郷を飛び回り結界の状態を確認し終わるのに3時間かかってマヨイガに戻ると、
 「紫様、結界の確認が終わりました。すべて問題ありませんでした。」
 「そう…わかったわ。そろそろ例の計画を実行する時が来たから、今すぐ幻想郷にいるすべての妖怪達を月に行かせるよう交渉しなさい。」
 「わかりました。」
 藍は紅魔館に行って月面戦争に参加するよう紫の代行としてレミリアに協力を促す。何とか交渉をまとめ急いでマヨイガに戻り紫に事の事態を報告する。他の妖怪のところに足を運ぶのですべての妖怪たちに会って話をまとめるのにまる3日かかってしまった。この間藍は不眠不休だが仕事を終えると紫に報告するためにマヨイガに戻った。
 「紫様、鬼は話の趣旨を理解できていませんでしたし、冥界組は関心を持っていなかったようですが、吸血鬼は月面戦争に協力してくれるようです。」
 「わかったわ。お腹が空いたから今すぐ私の食事を作りなさい。」
 「かしこまりました。」
 急いで紫に出す食事を拵えて紫と一緒に食事をとる藍。食事をとっている時が貴重な休憩時間でもあり、蘭は紫の雑談の相手をする。いつも紫の言動に驚かされているのだが、
 「藍、月に行くのは来年の春だし、明日から私は冬眠するからその間幻想郷を私に代わって管理しなさい!」
 「承知しました紫様。」
 ああ、また始まったと藍はいつも思うのだが自分と紫の間には如何ともしがたい力の差がある。下剋上を起こすなんてとんでもない事であり、どうあがいたって自分に勝ち目はない。紫の式神は絶対的なイエスマンじゃないと務まらないし、自分の先輩の式神はバグが発動し紫を殺そうとイレギュラー行動を取り、紫に襲いかかるも返り討ちにあいその命を失ったのを見てきたからだ。
 藍は紫が冬眠中に何度か暗殺を試みようかと思ったこともあるし、実際に3回は寝首を獲ろうとしたのだ。
 紫の元で働いているが、何で自分はこんな妖怪の式神なんだろうかと疑問に感じ誰にも自分の心境を言えず一人で悩んで苦しんでいるのだ。
そんなことを考えているうちに忌々しい記憶を思い出してしまった。
 「藍!何で私の命令を聞かないで巫女と魔女とメイドに戦闘を仕掛けたのよ!」
 紫が愛用する日傘で容赦することなく自分を叩きつける。
 「す、すみませんでした紫様!もう二度と不用意に戦闘は仕掛けません!」
 あまりの痛みに耐えられず私は紫様に謝罪した。
 「反省だけならサルでもできるでしょう!?」
 それでも紫様は私を許すことなくなお日傘で叩き続けた。
 「ぎゃああああ〜〜〜〜〜!!!!!」
 よくよく考えてみると紫様が惰眠を貪ったことによって、私が先頭を仕掛けなくてはならなくなったからだと思う。紫様が言うにはこれもあなたを愛しているからだと言うがただの虐待でしかないと考えるようになった。
 私は式神だとしても一つの存在として意志と感情を持っているのだ!このあいだ橙が紫様に粗相をしたということで教育をしたと言っていたがあれは誰から見ても虐待だ。弱い者に対し暴力で抑えつけることは許されてはいけないと思うと、惰眠を貪るスキマ妖怪にものすごい殺意を覚えたがどうやっても勝てる相手ではなく、話し合いを試みてもまともに人の主張を聞く筈もないということは長年の付き合いからすぐ計算でき、ましてや強引にストライキを決行しても返り討ちにあうのが関の山。
 私は導師服を脱いで全裸になり辞表を憎たらしいババァの枕元において非常事態用に備えている護身用または自殺用として隠し持っている退魔の力が宿った短刀で三文字の切腹をした後に喉元を切りつけ自刃した。式神として生を受けた私だったとしてもまともな人権を主張してもいいはずだが、叶わぬ事だろうと思い最悪かつ最も効果的で私が唯一出来る抵抗手段を選択した。ああ、それにしても冬眠から目覚めたババァの驚いた顔が見れないと思うが唯一の心残りである。

 ボーダー商事に勤務することを想像してみたところ、私は心身ともに蝕み自殺するであろうかと思うと気が気でならなかったが、気になることはマヨイガがどこにあるのかわからないので行き方を教えて欲しいということだ。胡散臭いから自分から進んで積極的に行きたくはないのだけど。

 これらの求人は私だけでなく、幻想郷に住む多くの人妖が避けて通る代物であることがわかった。文々。新聞の求人広告にいつも乗っている上に、いつも求人広告を職安に提示しているにも関わらず応募がないのだろう。これらのブラック企業は一刻も早く勤務している従業員の待遇を見直なくてはならないだろう。そして、事業者には厳しい処分を下せるようにしたいと心から願う。人間が人間らしく、妖怪は妖怪らしく生きていけるという希望を持ちたいものだ。企業に勤めているといえど、従業員は事業者に一方的に使われるという玩具ではなく意思をもった生き物だからだ。
イル・プリンチベです。
 排水口産廃創想話第2回投稿作品は幻想郷の社会問題をテーマにしたもので、我々外界の人間が幻想郷にやってきていざ仕事をすることになると物凄く大変なことになると思うのは私だけでしょうか?われわれが住んでいる外界でもとんでもない労働環境や待遇をけしかける企業さんがあると思いますが幻想郷だともっとアレな労働環境と待遇で働かせるところがあると考え、紅魔館と白玉楼と永遠亭とマヨイガを超ブラック企業に仕立て上げたつもりです。まぁ、お給料がもらえるだけ全然マシだと思えるから不思議ですね。
 実際咲夜さんと妖夢ちゃんとウドンゲさんと藍様は、無休と無給を主からけしかけられていますが、彼女たちの忠誠心は半端なものではないですしあそこまでくると重度のマゾヒストじゃないかと思えますね。
イル・プリンチベ
作品情報
作品集:
22
投稿日時:
2010/11/24 08:25:03
更新日時:
2010/11/24 17:26:07
分類
紅魔館
白玉楼
永遠亭
ボーダー商事
ブラック企業
ハローワーク
1. バーロー ■2010/11/24 17:45:57
ねーねー、蘭ねーちゃん。どうしてババアと雑談するのは蘭ねーちゃんの仕事なの?
2. 名無し ■2010/11/24 19:10:13
……。ああ、俺は存外幸せなんだなあっと本気で思った
あと従者ーズに尊敬の念が絶えない
うん、本当に真面目に考えてみるととんでもなくきついよな、幻想郷の大勢力の下働きは
永琳はまだ二次的なネタだけど他の面子は確かに全部まかっせぱなし感がひどいw
3. 名無し ■2010/11/24 21:24:47
咲夜は心底忠誠を誓っている(紅魔郷の頃は単なる衣食住の為だったらしいけど)
妖夢は家系の都合で仕えている(完全に半人前扱いで、評価はされてない模様)
鈴仙は他に行き場がない上、過去に負い目がある(まあ月の民としての選民意識もありそう)
藍はそもそも式神は主に逆らえない(多分一番酷い)

…外界ってまだ優しいんだな。
4. 名無し ■2010/11/25 00:10:13
ところどころじゃなく日本語がおかしいが、
ブラック企業勤務で病んでしまった精神を表してると考えれば何の問題もないな
5. 名無し ■2010/11/27 00:07:51
この藍には京都市伏見区にある伏見稲荷大社に転職してもらいたい・・・
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