超無縁塚 最終話

作品集: 23 投稿日時: 2011/01/23 22:25:40 更新日時: 2011/01/23 22:25:40
私を産んだお父さんとお母さんは、

多くのガラクタの上に置いてどこかへ去っていった。

捨てたのだ

今はどうしているだろうか。

その後私は、

まだ立てぬこの体でお父さんとお母さんの後を追った。

だが、探して見つかった物は、

一つの大きな穴だった











捨てられた幻想郷は、ほとんど無残な物に変わっていた

穴を開けられた後は、他には何も残っていなかった

ただ、石がそこらじゅうに、いや石だけの世界になっていた。

皆が落ちてきて、変わった事があった。

そらに大きな穴が空き、大きな光が差し込んだ事だ。

それ以外は、何も無かった

『あの熊の人形、次に何をしでかすつもりかしら』

紫が、先ほどとは違い真剣な顔であの熊に指を指した。

全員が、能力や妖術を使えないのでどうしても上空に漂っているあの熊の人形に攻撃する事ができなかった

『ちくしょぉ〜〜!空さえ飛ぶ事ができたら……!!』

魔理沙が、怨むような目で熊の人形に睨みついている

ザハンズは、申し訳なさそうに、顔を伏せて落ち込んでいる。

他の人は、この状況を理解できずパニックに陥っていた

空に居た熊の人形は、恐ろしく遠くに居るにも関わらず、僕たちに聞こえる声で喋ってきた。

『ゴミの気分はどう?』

それは、薄ら笑っているような声だった。

そして、言い終えた瞬間また縫い目から黒い煙が溢れ出ていた。

『野郎……』

アリスは、足を抑えながら苦しい声でかろうじて声を出すように言った。

今、アリスの脚は使えなくなっている。

だから、手を動かして移動するしかなかった為、早くも手が傷だらけになっていた

『僕はね、君達に捨てられたから、お前らが今居る世界にずっと住んでたんだよ?お前らのせいで。お前らのせいで』

熊の人形は、縫い目からさらにどす黒い煙を出して僕たちを見下していた

ザハンズは、悲しい顔で王様を見上げていた

『お前らなんて永遠にその中に居ればいいんだ。』

表情の無いその顔から、憎悪という感情が読みとれた

そこで、自分の無力を感じた

この世界には、石しか存在しないのだ

空も飛べない、能力も使えないのではどうしようもない

紫もこのざまだ。

顔を地に向けた瞬間、空へ向かう光が見えた

見上げた瞬間、火柱が立っていたのだ

『なんだ!?』

近くで、魔理沙が八卦炉を上に向けて放していた

だが、あえなく熊の人形は避けてしまった。

『火柱………!?』

熊の人形は、予想外な顔をしていた。

だが、魔理沙は突破口を見つけたように笑顔になった

『香霖!!このガスは魔道具には効かねえみてぇだ!反撃すっぞ!!』

霊夢は、その言葉を聞いた後、服の中から札を取り出し戦闘態勢に立った。

早苗さんも、色つきの札や魔道具を持って構えている。

だが、それをあの熊の人形が許すはずがなく、

『くたばれ』

熊の人形は、真っ黒な弾幕を下に落として来た。

その弾幕は、落ちていくごとに巨大になり、鉄球のように大きな音を立てて地に落ちた。

『こんなの当たったら…………マジで死ぬぞ』

だが、それでも容赦なく弾幕を落としていき、多くの住民が潰されて行く。

幻想郷の住民が叫び声を上げて、辺りに血や内臓をまき散らしていた。

『うおおおおおおおおおおおおおおお!!!』

魔理沙が毛布をしっかり掴み、必死に避けていた。

霊夢も早苗も、もはや戦闘どころではなかった

弾幕、いやこの鉄球を避けるのに精いっぱいだった。

そこで、アリスの上に鉄球が落ちようとしていた。

避けようとはしていたが、走った途端に足を崩してしまい、そこでこけてしまった。

確実に間にあわない。そう思った矢先、僕は剣を抜いていた。

あきらかに距離があるのにもかかわらず、その剣を振った。

瞬間、その鉄球は綺麗に斬れてしまった。

この剣も、この黒い霧の効果を受けていないようだ。

ちょうど二つに割れ、アリスを避けて飛んで行った

『大丈夫か?』

僕はアリスの心配をした。

だが、アリスは顔を赤くしながら僕の目を見ずにぼそりと答えた

『……………ありがと』

瞬間、また近くに鉄球が落ちた。

このままでは、全滅するのも時間の問題だった。

いちかばちかだ

僕は、剣を熊の人形に向かって一閃した

鉄球は、振った上の方向に存在していた物は全て斬れ、熊の人形も避けたのだが、腕の一部が千切れた

『ああああああああああああああああああああ!!!』

綺麗に斬れたその傷口から、血が吹き出るかのように黒い煙が噴き出た

さらに、熊の人形は憎悪を現したようだ。

さらに弾幕を落として来た

『くそ!!』

剣をまた空に向けて構えたが、霊夢はそれを許さない様に叫んだ

『霖之助さん!しゃがんで!!』

言われたとおりに膝を曲げてかがむと、霊夢は札を上に向けて巨大な結界を作りだした。

術を使わないので、札を4枚使う上に普通よりも強度が低いが、無いよりはマシだった。

『霊夢、その後どうするつもりだ?』

『今、ここに落ちてくるよりはマシでしょ!!』

結界が弾幕を抑えている間、余裕ができているため、ほとんどの者は穴の光の差し込まない場所へ逃げて行った

ちょうど、屋根が出来ている所だった。そこは本当に真っ暗の場所だ

弾幕が落ちる所に居るのは、紫と僕と霊夢と早苗と魔理沙とザハンズの6人だった

『何やってんのよ!!とっとと貴方達も影に行きなさいよ!!』

霊夢は怒鳴っていたが、僕たちは言う事を聞かなかった

そんな事をすれば今度は何をしてくるか分からない。

だから、相手が必要なのだ。最低でも僕たちくらいの

結界が、どんどん縮んで行くのが分かる。

霊夢はふんばっているが、札がそろそろ限界なのが目に見えた

アリスは、その光景を見て焦って力を入れているように見えた

『………上海』

アリスが、相棒の人形に向かって話していた。

『……………。しばらく、死んでほしいの。良い?』

そう言い終えた瞬間、間を空けず人形は相槌を打ち、そして地に落ちた。

アリスがそれを拾うと、それを抱きかかえ、大事そうに持った。

『霖之助さぁぁぁぁぁん!!!』

霊夢が、辛そうな顔で未だに踏ん張っていた。

結界にもひびが入っていた。

あと、10秒もしない内に滅んでしまう。

剣を構えた瞬間、どこか聞き覚えのある音が聞こえた。

だが、その音はガリガリガリ!!と石を削る音と共に聞こえた。

落ちついて、横を見てみた。

そこには、ザハンズの住む世界にあった蒸気機関車が動いていた。

そして、こちらに向かってきている

『店主さん!!これに乗って上まで行って!!』

アリスは、上海を操っていた糸を使って蒸気機関車を動かしていた

『アリス!!お前人形以外も操れたんだな!』

『操るのはこれが初めてだけどね!!!!』

僕と早苗と魔理沙は、蒸気機関車の入口に入っていった。

霊夢も、結界を解除して機関車の中に入ろうとした。

だが、解除した瞬間、鉄球はものすごいスピードで落ちてきた

霊夢が蒸気機関車に辿り着く前に、鉄球は地につき、霊夢に襲いかかってきた。

『うぉぉぉおおお!!』

霊夢がよけながら、全身全霊を込めながら避けてこちらに向かってきた

『霊夢!!』

僕が手を伸ばしたら、鉄球が蒸気機関車の上に落ちて来たらしく、大きな音を出して屋根がへこんだ

『きゃっ!!』

早苗さんは、その場で倒れこんでしまった。

僕も一瞬手を引っ込めようとしてしまったが、すぐにまた手を伸ばした。

蒸気機関車が宙に浮こうとしている。

『おい霊夢!!早く掴まれ!!』

魔理沙がせかすように霊夢に言葉をぶつけた。

それが甲斐あったのか、僕の手は霊夢に触れた。

だが、つかめたのは互いの中指同士だった。

『うおおおおおおおおおおおおおお!!!』

そのまま宙に浮いてしまい、中指だけとは言え、掴んでいるため霊夢も宙に浮いてしまっている

落ちたら、確実に怪我では済まない所まで来ていた

『ちょっとぉぉぉ!!引っ張って――――!!』

霊夢が叫んだ。

そして、ついに熊の人形は弾幕を横に飛ばして来た

霊夢に狙って弾幕を飛ばしている。

『くっっそ!!』

僕は引き上げようと、中指だけで霊夢を持ち上げた。

だが、もう少しの所で指同士が離れてしまった。

『きゃあああああああああああああああああ!!』

だが、早苗さんがすぐに手を出し、霊夢の腕を掴んだ。

安堵の息を付いた後、霊夢を引き上げて次の行動を取った

蒸気機関車の屋根に上るのだ。

『店主さん!!危ないですよ!』

そんな事言っていられないだろう。

僕は剣を引き抜き、へこんだ蒸気機関車の上に立った。

目の前に、黒い煙を出している熊の人形が居た。

熊の人形は、僕に警戒をしているが、僕は剣をサヤに戻した。

『どういうつもりだ』

熊の人形は、疑問の声を上げて語りかけてきた

僕は、質問を質問で返した

『それはこっちのセリフだ。』

僕はそう言って、熊の人形に近づいていく蒸気機関車に任せて、移動をした

そして僕は屋根から屋根へ移動して、熊の人形の目の前を目指して走った

『店主さん!!』

早苗さんや霊夢や魔理沙やザハンズも、蒸気機関車の上に登ってきたようだ。紫はまだ蒸気機関車の中か

だが、僕ももう熊の人形の近くに居た。

僕は、熊の人形の顔を掴み、機関車の屋根に押し倒した

『君は何故幻想郷を憎むんだ?』

熊の人形は、率直に答えた

『僕を捨てたからだ』

『なら関係の無い奴も恨むと言うのか』

僕は、熊の人形の黒い霧の部分を触っていた。

触ると、だんだん力が抜けてきた。だが、負けじと僕も力を出した

『離した方が良いんじゃない?』

熊の人形は、真剣な声でそう言ってきたが、僕はそんな事など聞かなかった。

その人形の縫い目の毛糸の端を掴み、さらに引き抜こうとした

だが、奇妙な事に熊の人形はその行為について抵抗しなかった

糸を引っ張れば、すぐに縫い目は裂け、大きな穴が空いた。

そこから、噴火したかのように黒い煙が吹き出てきた。

『霖之助さん!!』

霊夢は僕を心配して安否を確認するように叫んだ

ほとんど力が抜けてきてしまったが、押さえつけるほどの力はまだ残っていた。

必死に抑えつこうとしていると、人形の縫い目だった皮が風でどこかへ飛んで行った。

そして、中身の綿も風に乗って散って行き、布もどこかへ飛んで行った。

僕が今掴んでいる者は、この黒い煙の中に居るのは、

煙が無くなった時、その姿が確認できた

どう見ても人間の女の子だった。

髪は赤色で、目は少し大きく、眉毛は太く、肌は白色で顔の整えは結構良い方。

どう見てもザハンズの姿だった

ただ、服が本人よりも良い物を来ている以外は、ほとんどザハンズだった。

ザハンズは、王様の本当の姿を見て絶句していた

ただ、同じ顔の自分を見て固まっていたのだ。

『………………どういう事だ』

いつの間にか黒い煙は消え、蒸気機関車は停車していた

王様は、仰向けの状態でそのまま話して来た

『あの人形は飾りよ』

その後、ザハンズはようやく口を開き、王様に疑問をぶつけた

『………どうして……?』

その顔は、混乱しか無い悲しい顔だった。

『言ったでしょ?僕の能力では生物を作る事が出来るんだ。全部下等だけど』

その後、抑えつけていた僕の手を握り、そのまま語りだした

『あの人形たちも、全部私が作ったの。そして、街を作らせたのよ。』

そのまま、僕の手をどけて立ち上がった。

『すごいでしょ?幻想郷で捨てられた僕が、いつの間にか一つの世界の帝王になってるのよ?』

早苗さんが、悲しい声で王様に向かって話しかけた

『………捨てられた?』

『そうよ。捨てられたの、無縁塚でね。面白いでしょ?私の親、私を妖怪に食べさせようとしたんだよ?』

王さまは、笑顔ながらも、悲しい顔で語り続けた

『馬鹿男と馬鹿女の勝手のせいで、僕は産まれたのよ。邪魔だから捨てられたの。』

そして、憎悪が増した顔で僕たちに睨み語った

『だから貴方達なんか大嫌い!!なんでも捨てようとする!!あんた達なんか!!!!』

瞬間、僕は吹っ飛ばされ屋根の外に出てしまおうとしていた。

『おっと』

だが、紫がそれを許さない様に、屋根の外側に立ち、僕の手を握った

紫が屋根の内側に歩いて行く時、僕はようやく屋根に足を乗せる事ができた。

『どこだ!!僕を捨てた馬鹿野郎共は!!!出てこい!!おい!!!』

目に涙を流しながら、怒りを露わにして地の底に叫んでいた

だが、誰も名乗り出る者はおろか、穴の光に指す所に行こうとする奴すら居なかった

『…………………………』

王様は、黙り込んだ

そのまま、静かに泣いていた。

『なんで………なんで僕を捨てたの………?』

小さな声が、震えていた

『王様…………』

ザハンズが、まだ疑問の声を残したまま話しかけてきた。

『近づくな』

王さまは、ザハンズに見向きもしなかった。

だが、早苗さんは反論するように話しかけた

『この子だって貴方の仲間なんだよ?同じ顔の人間なんでしょ?だから心配してるんだよ……?』

『同じ顔なんて当り前だろ。そいつだって僕が作ったんだ』

早苗さんが、驚いた顔で一歩後退した。

僕も、それは初耳で驚くべき情報だった

『時間が経てば恨みなんか消えていく。そんなのが絶対に許せないから、”善”の感情を捨てたんだ。』

ザハンズは、その場で座りこんでしまった

『僕のゴミに生命を宿した結果、人間に近い奴ができたんだ。それがそいつなんだ』

”善”という感情をゴミにして、一つの生命にしたと言う事か

本当にとんでもない能力を持った者だ。

『だからまだあいつらに恨みを持てる、幻想郷にも恨みを持てる、皆、皆大嫌いになれるんだ』

そして、また王さまは泣き叫ぶように大声を上げた

『だから捨てる!!そいつらを全員、僕が捨ててやるんだ!!許さないから!!絶対に許さない!!』

瞬間、王様は紫の所に駆け付けて、襟首をつかんだ

『おいババア!!僕の親はどこだ!!誰だ!!知ってるんだろ!?教えろ!!教えろよ!!!』

王様の顔は、恨み、というよりは悲しみの顔の方が正しかった。

紫は、王様を哀れむような目で見て、しばらくして口を開いた

『もう居ないわ』

王様の動きが止まった

その後、紫の襟首をつかむ力も弱くなっていった。

だが、紫は反撃も何もしなかった

『貴方の親は人間、貴方を産んでから、もう80年は経つ。もう死んでるわ』

王様は震えていた。

それは、恐怖というよりも絶望に近かった

『……………は?』

『親が貴方を捨てたのは、貴方が異人種として産まれてきたからよ。』

『死因は自殺。貴方を産んでから7年後ぐらいね。異人種を産んだ事がバレて村から虐めを受けて、彼女の方は永遠に子供が産めない体になってしまった。だから貴方以外、子供が居なかった上に、捨ててしまって。もう子供が産めないと分かった瞬間、絶望して二人仲良く首を吊ったわ。』

王様は、目を見開いたまま紫の目を見ていた。

『だけど、貴方を捨てたのは親の幸せの為じゃ無くて貴方の幸せの為だったのよ。』

王様は、意味の分からない顔をしていた

『貴方がこのまま生きて居れば、普通の人生を歩めなくなる、普通の幸せすら掴めなくなるの。そんな人生を歩んでほしくないからこそ、貴方を捨てたんだって、そういう気持ちがあったらしいわ。』

王様は、しばらく放心状態にあった。

その後は、涙を流し、そして頭を掻き毟った

『ふざけんな………ふざけんなよ……………!!』

その後、地にあった石が次第に浮き始め、彼女の周りに集まり始めた

王様の顔は、完全に殺意のある顔にしかなくなっていた

『ちょっと!?』

霊夢が、意外そうな顔になった

早苗さんは、説得するように語った。

『お父さんやお母さんは!捨てたくて貴方を捨てたんじゃないんだよ!貴方の為に思って捨てたんだよ!?』

『最低だよ!!!!』

王様は、大声を上げた

『私は!!そんな人生を送ってもよかった!!どんなに不幸な生活でも良かった!!それでも良かったから!!お父さんとお母さんと生活したかった!!励まして、励まされて生きたかった!!お父さんやお母さんの愛を感じたかった!!なのに!!なのに!!!!』

王様は叫んだ。叫んでさらに多くの石を自分の周りにまで集中的に集めた

王様の周りの石は、王様の場所に集中的に集まり、一つの固まりとなっていった。

その塊は、手と頭と胴体しかない者となり、一つの大きな生き物になった。

その生き物は、腕を回せば幻想郷を一瞬で更地に出来そうなほど巨大だった。

その生物は、腕を振りかざし、こちらに拳を向けて振りかざした。

その巨大な拳は、蒸気機関車に当たり、見事に地に落ちようとしていた

『ぬぅわああああ!!おいアリス――――!!』

魔理沙が叫んだが、アリスにもどうにもならない事態のようだ。

アリスは、落ちてくる蒸気機関車から逃れるため、日陰の方へ移動していた

『うぉあああああああああ!!』

全員の悲鳴を共に、蒸気機関車は地に叩きつけられた。

直に受けたのは機関車の方だったので、僕たちは軽く吹っ飛ばされ、地に叩きつけられるだけで済んだ。

だが,機関車の方は大きくダメージを負った。側面が大きく変形していた

『全員大丈夫か?』

僕以外の全員は、もうすでに立っていた。

そして、見上げていた。前に見たゴミで出来た巨人に似た、

石が集まってできた巨人を

『…………………』

ザハンズが、不安な顔で巨人を見つめていた。

その巨人は、結界にも手を触れていた。

結界を、壊そうとしているのだ。

本当に、幻想郷を幻想郷で無くそうとするために、

『止めて!!』

一番最初に叫んだはザハンズだった。

その声は大きく、この空間全てに響き渡ったのではないかと思う位だった。

だが、巨人はそれを聞こえて居ないかのように結界を壊すのを一瞬たりとも止めなかった。

紫が黙って居るわけがないと思うのはずなのだが、さっきの衝撃で気絶してしまっているようだった。

ぴくりとも、動いていない。

『霖之助さん………どうするの?』

もう果たして時間が無い。

こうしている間にも、巨人は結界を壊そうとしている。

『香霖………』

答えは、もうこれしか無かった

『登るぞ』

全員の顔が僕の方に集中した。

僕は、巨人に向かって駆け出し、凸の部分の石に踏み入れた。

踏んだ石は崩れ、地に落ちていった。

バランスを崩す前に足を上に上げ、さらに僕は登って行った。

上を見上げた時、上から石が降ってきた

その石を避けようと、右や左にずれて移動した。

だが、ずれて踏み場を変えた瞬間、

踏み場の石が崩れ、バランスを崩してしまった

僕の体は宙を浮き、重力に従い地に叩きつけられようとしていた。

だが、それを許さない奴が僕の背中を支え、そいつのおかげで再び踏み場に足を乗せられた。

『店主さん!しっかりしてください!!』

後ろから、早苗さんの声が聞こえた。

それに霊夢、ザハンズもついて来ていた

『今回は飛行ができないんだから、落ちたらもう後が無いわよ』

霊夢がそう告げた後、一生懸命登ろうとしていた。

いつも飛行しているため、飛躍力が無く、飛び越せない為手をつかってよじ登っていた。

早苗さんも、霊夢ほど体力が無いわけではないが、必死によじ登っていた。

『ふん!』

ザハンズは、裸足の上に飛躍力があり、野性児のように飛び登っていた。

僕も、ザハンズ程ではないのだが、飛び登って行った。

だが、巨人は暴れている。ので、振り落されそうになる

振り落されずに、必死にしがみつく。が

『うわぁ!』

ザハンズは、悲鳴を上げながら僕たちの所へ落ちてきた

『危ない!』

だが、ザハンズは僕たちの所に来る前に、手を伸ばして石にしがみついた。

そしてすぐに体勢を立て直し、再び石に足を乗せ、上へ登って行った。

霊夢達は、もうすでに息が切れかかっていた。

普段から余り運動をして居なかった報いだろうか。

こんな所でそんな物があったら最悪だが、

『おーい!!香霖!!しっかりしがみついてろよぉー!!!』

地の方から魔理沙の声が聞こえた。

地の方に目を向けると、そこにはボロボロになった蒸気機関車が少しだけ宙に浮いていた

その後ろに、魔理沙が八卦炉を持って構えていた

隣には、アリスが蒸気機関車に糸を張っていた。

『あんたと手を組むのはこれが最初で最後よ』

アリスがそう言った瞬間、その言葉が合図かのように魔理沙は八卦炉をぶっ放し、蒸気機関車をこちらにブッ飛ばした。

蒸気機関車は、ものすごい勢いでこちらに向かい、巨人の頭部にぶつかった。

蒸気機関車は、一気にバラバラになった。

だが、その報いとして頭の頭部に大きな穴が空いた

そこから、かなりの量のどす黒い煙が流れ出ていた

『あそこまで登るぞ』

そう言って、僕は煙の出ている場所まで登って行った。

その穴は、地から吸収した石で徐々に回復をしていた。

完全に回復されてしまっては、もう好機は永遠に訪れないだろう。

『うおおおおおおおおおおおおおおお!!!』

ザハンズは掛け声を上げて登って行った。

僕は掛け声をあげる余裕は無かったが、全速力を出して登って行った

4歩駆けあがった時、その煙の出る穴に踏み入れる事が出来た

『王様………』

そこでは、王様が石から丸い球体に守られているように、王様はバリアを張っていた

だが、その球体の中は煙で充満していて、その中だけ黒い煙の密度がすごかった。

こうしている間にも、傷口が回復しつつあった。

このままいけば、僕たちは巨人の回復によって潰されるだろう。

『………………。』

僕は剣を構え、その球体に向かって一閃をした。

『霖之助!!?』

ザハンズは驚いていたが、僕は何も迷いは無かった。

思った通り、彼女にはどころか、バリアにも傷が一つもついて居ない。

周りの石が、斬った方向に綺麗に斬れただけだった。

瞬間、球体で守られている彼女の目が見開いた

『!?』

その時、大きな振動が辺りに響き渡った。

同時に、傷の回復が早くなっていった

本気で殺す気だ。

『…っ!』

ザハンズは、自分に似たそいつの元に駆け寄った。

球体に触れようとした瞬間、石が集まり、ザハンズの腕を潰した

『ぅああああああああああああ!!!』

ザハンズは、苦痛の顔をしていた。

僕は、ザハンズの腕を抜こうと石に手を掛けようとしたが、

まるでその石は生命を持っているかのように僕にも襲いかかって来る。

この間にも、骨が折れる音と肉が潰される音が聞こえた。

さらに、巨人の傷口も、大分狭くなっている。

このままでは確実に潰されて、死んでしまう

『くそっ!』

僕は剣を引き抜こうとうした

『霖之助……止めて……!!』

ザハンズが、それを認めなかった。

このままでは君は死んでしまうぞ。

石は、そんなザハンズでも容赦なく、僕たちを包んで潰そうとしている

終わり。そう思っていた矢先

急に、ザハンズの腕の周りの石が下に落ちていった。

ザハンズの腕が石から解放された。だが、その腕はぐちゃぐちゃになり、だらんとゴムのように垂れていた

目の前の石も、崩れていた。

振り向くと、息を切らした霊夢と早苗さんが居た。

二人は、僕たちの周りに結界を作り、結界の中の石を無生命の物にしたのだ。

目の前には、もう石は無くあのザハンズに似た少女を包んだ球体だけがあった

『早く行け!!!』

結界には、普通よりも多くの札が使われていた。

だが、その結界は時間が経つごとにどんどん縮んでいた。

察したザハンズは、すぐに球体の元へと駆け寄った。

『うわぁ!!』

しかし、球体に触れた瞬間、ザハンズは大きな衝撃と共に霊夢と早苗の元へと吹っ飛ばされた。

だが、ザハンズは諦めず、前を向いて立ち上がって、あの球体にまた駆け寄った。

また、大きな衝撃がザハンズを襲った。

ザハンズは、踏ん張ったが、負けたかのようにまた吹っ飛ばされた

『ちょっと!!どうなってんのよ!!』

霊夢が球体に向かって叫んだ。

もう、ほとんど時間が無い。

結界の部屋が、だんだん狭くなっていく

『近寄るなぁ!!』

ザハンズに似た少女が、叫んだ

その少女は、涙を流していた

『勝手だ…!!やっぱりお前ら人間は勝手だ!!』

僕たちに向かって、叫んでいた

ザハンズは、折れた腕も気にもせず、前を向いていた。

『皆……僕の事を考えない………親でさえ変な理由で、僕の幸せの為とかほざいて私を捨てた……』

球体の中の煙の濃度が、さらに濃くなっていった

『僕の気持ちも考えないで!!勝手に自分のやり方だけで進まないでよ!!』

『人間が妖怪が他人の幸せにする方法なんて知っているわけがない!!』

早苗さんの声の弾幕が、その球体に襲いかかった

『貴方の幸せを望んでくれただけで………それだけで幸せなんじゃないですか…………?』

早苗さんは、俯きながら、何かを思い出すように語った。

球体は、しばらく黙った後、また叫んだ

『捨てられていないお前が!!何を言ってるんだ!!!!』

瞬間、ザハンズがまた球体に駆け寄った。

また、衝撃がザハンズに襲いかかった

『来るな!!お前は来るなぁぁ!!!』

だが、今度はさらに踏ん張っていた。吹っ飛ばされまいと必死に

だが、さらに衝撃が強くなっていった。ザハンズが後退していっている

『ぅぅ……』

ザハンズが、もう限界を感じているのが分かった。

僕は、ザハンズの後ろに立ち、背中を押した。

全力で、押し返されない様に。

『霖……』

だが、思った以上の衝撃だった。

こんな物に耐えていたのか

『出て行け!!お前は捨てたんだよ!!僕が捨てたの!!』

『捨ててない!!!』

同じ顔のそいつは、声もほとんど同じ声で叫びあっていた

『うるさい!!出て行け!!出て行け!!』

さらに衝撃が強くなった。

僕も、そろそろ限界が来そうだった。

『僕は………元々貴方の物だったんでしょ?』

ザハンズは、僕だけが聞きとれそうな声で、そう言った

『そうだ……!!要らないから捨てたんだ』

『じゃぁ、捨てなかったら僕は産まれてこなかったんだね……』

ザハンズは、笑顔でそいつに返した

『僕は……産まれてきてとても嬉しかった。捨てて、あの世界に住まわせてくれたのも嬉しかった。他の住民を作ってくれて嬉しかった。他にも、他にも言いたい事はいっぱいあるんだよ……。』

球体の中のザハンズは、混乱していた

そいつが何を言っているのか理解ができなかったんだろう。

癇癪を起こし、大声で叫んだ

『うるさい邪魔!!お前は邪魔なんだ!!』

さらに衝撃が強くなった

『捨てられた私の復讐の為の!!ただの経過点に出きた物体にしか過ぎないんだよ!』

『お前は、ただ不幸を語っているだけじゃないか』

僕は、とっさにそう言った。

『お前は、過去の不幸に囚われ過ぎて今の幸せに全く気がついてないだけだ。いや、背けているだけだ。』

僕は、さらにザハンズの背中を押し。踏ん張った

『捨てられたお前よりも、今のお前の方が一番可哀想だ』

『うるせぇぇぇぇええええええええええ!!!』

さらに衝撃が強くなっていった。

これは、防ぎきれない。

限界、そう思っていたが、

掛け足と共に、僕の後ろから、さらに背中を支える人が居た。

『しっかりしてください!!店主さん!!』

『霖之助さん!!もう後が無い事を知ってるでしょ!!』

霊夢と早苗さんが、結界をほったらかして来てしまったのだ。

結界の部屋が縮むスピードが、さらに早くなっていった。

『おらあああああああああああああ!!』

『あああああああああああああああああああ!!』

『ああああああああああああああああああああああああああ!!』

『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!』

もうすでに結界の壁がこっちにまで来ていた。

結界が壊れれば、僕たちは石に潰される

僕たちは、衝撃に負けない様に踏ん張った。

そして、ザハンズは発狂した

『うああああああああああああああああああああ!!』

涙を流し、必死に球体の中に居るもう一人の自分にしがみつこうとしながら、叫んでいた

そして、急にあきらめたのか、大人しくなった。

『私の事嫌いでも良いよ………。でも……私は貴方が大好きだから……。』

涙声で、力を失ったかのような声でそう言った。

『………ハンザ…』

ザハンズが、王様に向かってその名前を言った。

瞬間、王様は動きを止めた。

両の手をだらんと下げて、目だけが見開いていた。

その姿は、何か知らなかった何かを知った姿のようにも見えた。

瞬間、球体にひびが入った

『!!』

そのひびは、次第に大きくなり、そして細かくなった。

そして、ついに割れてしまった。

ザハンズは、割れた球体の中のもう一人の自分に触れ、

そいつの手を握った。

そいつは、握られた瞬間放心状態になり、

結界は、ついに破壊された。

僕たちの周りの石は、僕たちを襲う事は無かった

『なんだ?』

そして、石は重力に従い、僕たちと共に地に向かおうとしていた

『ぬわぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!!』

僕たちは、地に叩きつけられようとしていた。










もう一人の僕が僕の手を握った瞬間、何か、大切な物に触れた気がした

気がつくと、目の前はゴミだらけじゃなくて、僕の望んでいた世界に変わっていた

本で見た、芝といろんな花が咲く平原が、そこらじゅうにあった。

とても、とても良い臭いだった

『ハンザス』

誰かが、僕の名前を呼んでいた。

呼ばれた方向に振り向くと、そこには見覚えの顔があった

『大きくなったな。………』

二人いた。女と、男

見覚えが合った。僕が、一番恨んでいた人間だ

『………………』

僕は、言葉が出せなかった。

言いたい事なんて一杯あるのに、

いつも、いつも復讐して、殺したいはずだったのに

『あ………………』

なんで捨てたの?

そんな事も、聞けなかった。

恨みが、全て無くなっていた。

僕は、それを否定した。

恨んでいたはずだ、地獄に叩き落としたかったはずだ

なのに、目の前に居ると、なぜかそんな気で無くなった。

男が、僕の元に近寄り、僕の頭を撫でた

なんだか気恥ずかしくなり、顔が赤くなっていった。

『ごめんな。僕たちも、捨てるつもりじゃなかった。』

男は、さらに言葉を連ねた

『お前を捨てなければ、僕たちも共に殺されたんだ。それでも良いって言ったら、許されなくて』

男は、言葉を連ねた。

『あの後、君は心臓を貫かれたんだ。』

僕は、その言葉を聞いて息を吸い込んだ

『最初は死んだと思っていた。冷たくなった君を、僕たちは捨てたんだ。本当は、埋葬をしたかったけど……それも許されなかった』

女は、悲しそうな顔で私に声を聞かせた

『でも貴方は、生きていてくれた。とても、とても暗い所だったけど、ずっと、生きていてくれたのね。』

女は、私の元に歩み寄り、腕で私を包んでくれた

それはとても、とても温かかった

初めて感じる、温かさだった。

『どうするんだい?』

男は、私に話しかけてきた。

女は、僕から離れて距離を置いた。

『君は帰るべきだと、僕たちは思うよ』

男は選択肢の片方の方を勧めた

『君を待ってる生物は現世に居るよ。それに、僕たちは君にもっと、もっと生きて居て欲しい。』

『私達は、貴方を守りきれなかった人間。だから、私達の事は大丈夫。』

優しい笑顔で、お父さんとお母さんは私を見てくれた。

僕は、その優しい笑顔をずっと見ていた。

もう、僕の中では答えは決まっていた。

『行かないよ。どこにも』

お父さんとお母さんに、そう言った。

『僕は、自分で勝手に生物を作って、生物を従わせたの。これからは、自由に暮らしてほしいの。』

『君が居ても自由に出来るだろう。』

『僕が居なくても、皆はやっていけるよ。それにね。』

私は、もう一人の自分のザハンズの事を思った。

『双子の妹が、皆を引っ張ってくれるよ。それにあいつの方が、友達が多いし。』

お父さんとお母さんに、笑顔でそう答えた

もう私は、お父さんとお母さんに恨みなんて微塵も無くなった

本当は、双子の妹なんかじゃ無いけど、

二人は、何も言わずに笑顔で反応した

『そうか。なら安心だ』

そう言って、お父さんは僕の右手を握ってくれた。

その手は、とても温かかった。

『やっと、僕はお父さんになれたかな。』

『私も、やっとお母さんになれた。』

二人の笑顔を眺めながら、僕は我がままを言った

『もう、置いてかないでね』

ふくれっ面でそう言った後、二人はくすりと笑った。

僕も、つられて笑ってしまった。

僕は、今、とっても、とっても幸せだった。
















僕たちは、地に着く前に大きな光を見た

その光は、地も幻想郷も、全てを包んだ。

その光に包まれた時、何か温かいものを感じた

『ハンザス……』

ザハンズの声が聞こえた。

だが、すぐに聞こえなくなった。

光が、急に薄くなっていった。

気がつくと、そこはザハンズの住む世界に変わっていた。

多くのゴミが敷き詰められた、ゴミだらけの世界

鼻を指すようなあの臭いが、また襲いかかってきた。

『………………』

横を見ると、そこには霊夢が眠っていた。

早苗さんも、アリスも、魔理沙も、ザハンズも、すやすやと眠っていた。

目の前に、あの王様が立っていた。

その王様は、幻覚か、透けていて向こう側が見えていた。

王様は、僕の元に近づき、顔を近づけて、僕に息を吹きかけるように声を出した

『よろしく、お願いします』

そう言って、王様は消えていった。

透けて、透けていって消えていった。

今、幻覚を見たと思っている。

そして、視界が暗くなり、僕はまぶたを閉じた。

真っ暗な世界になり、僕の意識は失ってしまった。














『香霖……おい香霖!!』

魔理沙の声で、僕は目を覚ました。

目を覚まし、辺りを見渡した。

その世界は、やはりゴミだらけの世界だった。

その場には、霊夢と魔理沙と早苗さんとアリスと僕とザハンズとで、6人しか居なかった。

だが、他に人形たちが結構な数で居た。

『他の皆は?』

『全員、幻想郷に帰って行ったよ。もう空も飛べるしな。』

魔理沙の服が、元に戻っていた。

どこからか、探しに行ったのだろう。

『王様は?』

僕はそう聞くと、全員が黙り込んでしまった。

何か、嫌な予感がした為、それ以上は聞かなかった

『きっと、どこかに居ますよ。』

早苗さんが、根拠のない言葉を発した。

だが、僕もそう思いたかった。

ザハンズの顔が、少しだけ明るくなった

『ありがとう。皆、またね。』

ザハンズが、別れの挨拶をした。

悲しそうな顔で、でも笑顔で別れの挨拶をした。

だが、これは当たり前の事だった

僕たちは、元々熊の人形を拾いに来るために此処に来たのだ。もう此処に用は無いはずだった。

だが、何かが踏ん切りがつかなかった。

僕は、ザハンズに一つ質問をした。

『ザハンズ。』

『ん?どうしたの霖之助』

『お前も、幻想郷で暮らさないか?』

そう言った瞬間、ザハンズの顔は少し驚いた顔になっていた

『え?』

『幻想郷の世界なら、此処よりも不自由する事は無いし、衛生面の良い食事だってできる。それに、此処よりも明るい所だぞ。』

早苗さんも、僕の誘いを勧めるように語った

『そうだよ。困った時は助け合う事もすぐにできるし、いろんな不思議な物とかいっぱいあるよ。一緒に行こう。ね。』

早苗さんは、ダッフィー君を抱きながら、ザハンズと面向きあって話をした。

ザハンズの答えは、意外と早かった。

『ごめん』

笑顔で、何の迷いも無い表情で答えた

『幻想郷が、とてもいい所だって事は知ってるよ。だって霖之助達が居る世界だもん。でも、僕はこの世界が大好きだから。ハンザスが作ってくれたこの世界が本当に大好きだから、僕はずっと此処に住むよ。』

『本当にそれでいいのか?ここは僕たちが捨てたもので出来た世界だぞ』

『でも、此処は霖之助達の住む世界の下僕の世界なんかじゃないよ。霖之助の棲む世界にだってこの世界は必要でしょ?私はそれで十分だよ。それにね……』

ザハンズは、さらに笑顔になり、両手を広げた

『これから、この世界はもっともっと良くなっていくんだよ。とっても、とっても面白い世界に。世界は進化していく。僕は、それを見ていきたいんだ。』

ザハンズは、両の手を下ろした

『だから、僕をずっと此処に残して。ね』

ずっと此処で産まれ、僕たちの幸せの意味を履き違えた彼女は、こちらの方が幸せなのだろう。

早苗さんは、俯き、少し寂しい顔をしていた。

しばらく黙った後、急に軽く笑顔になった

『はい』

早苗さんは、ダッフィー君をザハンズに渡した

ザハンズは、少しだけ驚いていた。

『私の宝物だよ。ずっと、大事にしてね』

早苗さんは、人形とザハンズに向けてバイバイと手を振った

ザハンズは、人形を抱きかかえ、少しだけ寂しい顔になった。

だけど、また笑顔になって僕たちの方を見た。

『極度に気が向いたら、また来るわ』

アリスが、笑顔でザハンズに向けてそう言った。

そう言えば、彼女が笑う所をあまり見た事が無かった。

『バイバイ、霖之助』

ザハンズが、そう言った後、僕は彼女の元に歩み寄った。

その後、僕は彼女の頭に手を乗せ、撫でた

彼女の顔は、最初は焦った顔になり、次第に顔が赤くなっていった。

『バイバイ。』

そして手を離し、霊夢達の元に歩み寄った

『ようやく、幻想郷に帰れるわね。』

霊夢は、少しだけ寂しそうながらも、ものすごく帰りたそうだった。

『じゃぁ、行くわよ』

霊夢は僕の手を握り、上へ上へと宙に浮いて行った。

浮く速さは、次第に速くなり、ついに穴の中へと入って行った。

穴の中を通る速さは、落ちた時よりも速くなり、壁に埋まっているゴミさえも確認できなくなっていた。

『光だ』

上を見上げると、光が見えてきた。

そして。その光は僕たちを包んだ











光が僕たちを包み終わると、目の前の視界には無縁塚があった。

墓と、珍しい物が落ちている情景は、落ちる前とは全く変わっていなかった。

空も、本当に太陽が昇っている。明るすぎて眩しいくらいだ。

皆は、ここは本当に現実か、ただ呆けていた

『空気が……美味えな』

魔理沙が、ただぼそりと答えた。

確かに、こんなに空気が美味いと感じた事は、無かった。

『おかえりなさい。』

後ろで紫の声が聞こえた。

『うわぁ!!』

僕以外の全員が、驚いてのけ反ってしまった。

『お前……また私達を穴に落とす気!?』

『いいえ。そんなことしないわ。むしろその逆よ』

逆?

紫は、手から奇妙な光を作った後、その穴の周りをその光で包んだ。

『管は、いつも通りに使わせてもらうわ。』

瞬間、穴が消えた

そこは、ただ土の地面が出来ているだけだった

『ちょっと…!!何しているのよ!』

『結界を張っただけよ。ちゃんと穴はあるわ。ただ、もう二度とあの世界にはいけないだけで』

何を言っているんだ

『紫、元に戻してくれないか?』

『戻す必要なんてないわ。』

『なんでこんな事をするんだ』

紫は、少しだけ寂しそうな顔をした

『もう二度と、あの子のような子供を出したくないからよ』

それは、あまり意味が分からなかった。

『この穴の存在を皆が知ったら、間違いなくさらに子供を捨てる親が出てくる。もう、あんな悲しい子を作るなんて嫌でしょう?』

それは、僕が考えて居なかった事だ。

昔、赤ん坊を妖怪に食わせて捨てた親が居た。

最近になって、妖怪が人を食わなくなった為、そんなものは無くなってきたが、

この穴の存在を知れば…………。

『出させませんよ。』

早苗さんは、自信たっぷりで答えた

『子供を捨てる事なんて、そんな事、私達が絶対にさせません!』

『でも穴は結界で張るわ。』

紫は冷たい口調でそう言った。

『これは伝えてはいけない事実だから……。知られたら他にも悪用する奴が出てくるわ。この穴はただ、私達がゴミを捨てる事に使うだけで幸せなのよ。』

だが、紫は少し妥協したように答えた。

『………届けたい物があるなら、私が送っといてあげるわ。』

紫はそう言って、僕たちの方を向かなくなった。

『帰りなさい』

後ろ向きでそう言った紫は、そのままどこかへ消えていった。

僕は、紫が完全に見えなくなった時に、見えない穴に背を向けて歩き出した。

『商品拾いは、また今度にしよう。』

そして、皆を連れて無縁塚の入口まで向かった。

帰りの途中、僕は服の洗濯と

どうやって結界をくぐってもう一度あの世界に行こうか、考えていた。











暗闇の夜から、赤い光が差し込んで来るのを感じ、朝だと感じた。

僕は起き上がると、そばに置いた早苗の持ってた人形に朝の挨拶をした。

『おはよう。ダッフィー』

霖之助が、この人形の名前を教えてくれた。

僕の大切な、大切な宝物だ。

宝物だから、僕の胸に付けてたバッチをダッフィーにあげた。

そして、僕の仲間が書かれたポスターをめくって、家族が僕を誘った

『おーい、資材集めに行こうぜー』

見た目は僕と違うけど、作った人は同じだから家族だ。

僕は、もう一人ぼっちじゃ無い。

いや、元々一人ぼっちじゃ無かったんだ。

『うん!!』

僕は、家族に返事をして袋を持って外へ駆けだした。

皆は、資材を持って街を作っていた。

もっと、もっと大きな街を作ろうと皆はがんばっていた。

王様の支持もない。王様も居ないのに、皆は力を合わしていた。

観覧車の下の穴の周りには、誰も落ちないよう柵が作られていた。

ガストや家が、どんどん増えていく。僕の宝物が、いっぱい増えていく。

私は、この世界が大好きだ。

皆と仲良くなって、そして、どんどん世界を作っていって、進化していくこの世界。



街の外に出ると、新しい日が始まったばかりの為、まだいっぱい食べ物や資材が残っていた。

『やったぁ!今日も大量!!』

私は、まず大好きな茶色の食べ物を袋に詰め、さらに美味しそうな食べ物らしき物があったらそれも袋にいれた。

『おい、俺達の分も残せよ。』

家族は、口を上下にパクパクさせながら文句を言った

『うん!分かってるよ。独り占めなんかしないよ』

家族は皆笑った。

そして、私の頭を軽く叩いてくれた。

私は、さらに資材集めを続けた。

その中に、何か綺麗な箱が見つかった。

表面には、霖之助の写真が貼られていた。

『?』

不思議に思い、私は箱を開けた。

その中には、服が入っていた。

いろんな布が付けられていて、ひらひらしていて、とても綺麗で、とても可愛かった

そして、その服には霖之助の臭いが染み付いていた。

とても、とても優しくて良い臭いだった

『おおザハンズ!美味そうな物を見つけたな!』

家族がそう言った為、僕は訂正するように言った

『違うよ。これは食べ物じゃ無い。』

家族は、ふぅんと興味なさそうにどこか去っていった。

僕は服を脱ぎ、霖之助が作ってくれたであろう服を着た。

来てみると、それは私が私で無いような気がした。

でも、とても嬉しかった。

本当は食べ物であるのだが、

これを着ると、食べる物では無いと思った。

とてもあったかくて、もっと優しい気持ちになった

私は霖之助に見せるように、上の穴を見上げて、その穴に向かって手を広げた。






霖之助、見てる?私、今とっても幸せだよ。

この世界も、私だけじゃなく、皆が望む幸せな世界になっていっているよ。


ハンザスも、きっと笑ってくれているよ。





またきっと、きっと会えるよね。



また会った時は、その時は









私を褒めて、また頭を撫でてね。








『大好きだよ。』
























≪完≫
やっと終わりました。前回の【光の都市】と比べて、今回の話は結構しんどかったです。(裏の話ですので気にせずに)

余談ですが、僕は、連載物を書くときは大体気に入った曲などを聞いて、そのイメージに沿って作ります。僕は全然歌詞を気にしない派なので、あくまで曲調のイメージです。歌詞は全然関係はありません。

【女神と羽の降る街】では、KOKIAの【天使】

【光の都市】では、平沢進の【夢みる機械】

【超無縁塚】では、Three Days Graceの【Animal I Have Become】

という素晴らしい曲を聴きながらイメージして書いてました。
最近連載物しか書いてないので、次からは短編作品を作ろうと思います。よろしくお願いします。
それではあとがきも長くなりましたので、しばらく会えませんが、いやもしかしたら意外と早く帰ってくるかもしれませんが、

さようなら、またね。
ND
作品情報
作品集:
23
投稿日時:
2011/01/23 22:25:40
更新日時:
2011/01/23 22:25:40
分類
霖之助
霊夢
魔理沙
アリス
早苗
大長編
オリキャラ
無縁塚
1. NutsIn先任曹長 ■2011/01/23 23:30:52
素晴らしき物語の『作り手』にして『語り手』のNDさん、お疲れ様でした。

ゴミの世界の王が『Hands Us』とは…。
王が望んでいたことは捨てる事ではなく、もらう事だったか。
何を?愛とか温もりとか、まあ、そういう陳腐なやつ。

超無縁塚にあった大量の石。
あれは、人々が放棄した『意思』だったのか?
王の『意思』で『石』は巨大な体となったが、
最後にザハンズの、霖之助達の『意思』が勝ち、『石』に戻したか。

最後、王は自分を捨てた両親から『もらう』ことが出来たのか。
ザハンズは、早苗さんから大切なものを『手渡し』で『もらった』し…。

幻想郷の人達が能力を失ったのは、それはギフト(天からのもらい物)だから王に捨てられてしまったからで、
人の『手』によって生み出されたものは、その効力は失わない、と。

結局、『超無縁塚』は前からゴミ処理に使われていて、これからも使われ続けるのか…。
意味ありげな管は排水口のパイプか。
ゆかりんによって、臭いものに蓋がされました…、て、
なんだ!?今回の件は、ゆかりんが早くからそうしてれば起こらなかったのか!?それでも幻想郷の管理人か!!



排水口の奥底、そこでは皆に愛される『作り手』が、今日も素晴らしき物語を紡ぐ…。

それでは、NDさん、お土産を楽しみにしております。

読者の皆様!!素晴らしき物語の『作り手』にして『語り手』のNDさんに、割れんばかりの『拍手』を!!
2. ND ■2011/01/23 23:52:33
紫が前から結解をしなかったのは、ゴミ捨て場なんかに興味が無かったからという設定ですが、分かりにくかったですかね。すみません
3. 名無し ■2011/01/24 23:46:54
何て言うのかな... 切ないな...
まさに心に残るってやつです。
本当、『ゴミ』というものはどこまでが『ゴミ』ではなくて、どこまでが『ゴミ』なんでしょうね...

現代社会の真の闇を描いた『作り手』or『語り手』のND氏、これからも素晴らしい作品を待ってます!
4. 名無し ■2011/01/25 09:10:22
まとめて一個にしろよ
毎回邪魔なんだよ
5. 名無し ■2011/01/26 14:16:59
面白かったよー
6. 名無し ■2011/01/27 20:23:44
>4

ここまできて暴言吐いてもらってもww
7. 名無し ■2011/02/16 20:52:21
本来なら1,3みたいな感想が出るんだろうけど
金髪コロネに7ページ半無駄無駄ラッシュをくらわされてゴミ収集車に叩き込まれる王様の姿しか浮かばない自分は心が汚れているのかも・・・
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