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『妖怪狩り2』 作者: イル・プリンチベ

妖怪狩り2

作品集: 23 投稿日時: 2011/01/28 08:13:10 更新日時: 2011/01/28 17:13:10
―1― 鬼巫女による詐欺兎の退治と妖怪牧場計画


 今日もこれといった異変もなく、人間も妖怪も堕落しきった生活をしている幻想郷のとある一日である。文々。新聞の記者の射命丸文が、幻想郷のどこかにいる少女たちを取材していないこと以外は、何も変わりなく白黒の魔法使いは紅魔館のヴアル魔法図書館に侵入して魔道書を白昼堂々と盗んだり、守矢神社の現人神は人里へ守矢の教えを説くも人里の人間達にキチガイ扱いされて生ゴミをかけられたり、紅魔館のメイド長と白玉楼の庭師と妖怪の賢者の式神は主から理不尽なぐらい過酷な労働をけしかけられているのだ。


 博麗神社第13代目の巫女である博麗霊夢は、博麗神社の居住区の居間で今日もお茶を飲んで昼寝をしている…、といった生活パターンをしているわけではなく、今日の夕飯を何にするか真剣に悩んでいた。


 「昨日は鴉天狗を食べたから、今日は何を食べようかな…。幻想郷は食材の宝庫なんだから、人間様が妖怪を退治して捕食したって問題ないじゃないの!でも、妖怪達は私の姿を見ると一目散に逃げ出すから、なかなか捕獲するまでにはうまくいかないのよね…」


 霊夢の食料候補となる妖怪はいっぱいいるが、出来るだけ負担をかけないで退治しておきたいので、そう考えると選択肢は限られてしまうのだ。どういうわけか、ここ最近神社近辺に妖怪は出没しなくなり、人外の生き物で姿を現すのは悪戯好きな妖精ぐらいである。


 「そういえばこの間紅魔館に行ったら、最近花畑と農場を経営しているみたいだし、アイツらのビジネスを参考にして私も神社の敷地内で、私の食料となる家畜を飼うっていうのも悪くはないわね!」


 とりあえず家畜候補となりそうな妖怪を考えてみるが、どれもそれなりのリスクを支払わないと捕獲できないので、手っ取り早く退治出来てなおかつ食材に適した妖怪は、ごく僅かな存在だが、最低でも今日の分の食事を確保しておきたいのが現状である。


 「神社の敷地を使って家畜を飼うのも面白そうなんだけど、今私が出来ることは今日の食料を確保することなんだよね。出来れば退治するのに楽で、そこそこ美味しく食べれる奴がベストだし、楽をしたいと考えると選択肢は限られて来るわね。今日の晩御飯は妖怪の癖にあんまり強くないアイツにしようかな?」


 霊夢は今日のターゲットを誰にするのかを決定すると、目を細めて舌なめずりする癖をもっており、歯茎を見せながらニヤリと笑ってしまうのだ。こうなってしまうと霊夢の頭の中は、妖怪を退治して捕食することでいっぱいになってしまい、他の事に頭が回らなくなる。


 「近い未来の夢なんだけど、いつか博麗牧場を運営させて、私が食料に困らなくなる規模でいいから成功させてみたいわね。ふふふっ、すごく楽しみだわ!」


 そういうと霊夢は食料を捕獲するために神社を飛び出し、人里方面に向かっていったのだった。お目当ての食材は妖怪の山にあるのだが、同中でそこらへんに生息している妖怪を退治して、食料を確保するのも悪くはないと思った。


 「ああ、そうだ!ギルトに行って困った妖怪を退治してしまえば、報酬が得られる上にハンターランクをアップさせれるんだから、私にとっても一石二鳥じゃないの!それで私の働きを人里の人間にアピールできるんだから、何で積極的に通わなかったのかしらね!兎にも角にも人里のギルトに寄って、妖怪退治の依頼の掲示板を確認しなきゃいけないわね!」


 霊夢は人里に行ったら真っ先にギルトに行って掲示板を見て、それから今日の夕飯となる妖怪を退治して報酬をゲットして、そいつを夕食のメインディッシュの食材にしようと思った。


 ―少女(鬼巫女)移動中―


 霊夢が人里に向かっている途中に、永遠亭に住んでいる因幡てゐがいつものように人から金銭の類をだまし取っていたのを目撃した。人間や妖怪を問わずとにかく理由をつけて持ち金をお賽銭箱に入れさせていたのだが、なんだかんだいいながら収穫は上々のようで、小さい賽銭箱にパンパンに入るぐらいのお金を巻き上げており、喜びながら永遠亭に向かって帰路につくところだった。


 霊夢はてゐがお賽銭詐欺をしていたのを一部始終目撃したことから、博麗神社にお賽銭が入らない苛立ちを隠しきれず、妖怪退治の対象を因幡の白兎にすることを決めた。あわよくば今日の晩御飯のオカズを兎鍋にして、メイン食材の妖怪兎を確保できると思い、てゐが隙を見つけ次第奇襲することに決めた。


 「ウサウサウサウサ。なんであいつらときたら学習効果がないというかなんというか、馬鹿相手にお金を巻き上げるぐらいちょろいもんだねぇ。今日もいつも以上に収穫があったから笑いが止まらないよ!ウ〜サウサウサウサッ!ウッサッサッサ!」


 「これでお小遣いも確保できたし、おまけに永遠亭の財政問題を解決できるのだから、私は有能だわさ。」


 てゐが小さいお賽銭箱を持って帰ろうとしたその時、てゐの後頭部をめがけて何者かが蹴りつけた!


 ドガッ!!!!!


 「ぎゃひっ!だっ、誰だ!誰ウサ!私に攻撃してきたのは誰ウサっ!」


 てゐは5メートルほど飛ばされて起き上がった後に、自分の後ろを見るが誰もいないので戸惑いを隠せなかった。顔面を地面に叩きつけられてせいで、鼻血を垂れ流しているので、可愛らしい顔が台無しとなってしまった。


 「人を騙し続ける詐欺兎は、私の手で排除してやる!あんたは兎鍋となって私の胃袋に収まるのが運命なのよっ!」

 
 「そ、その声は…、神社の巫女ね!なんで私を攻撃するウサ!?私は人間に害を与えていないウサよ!」

 
 てゐは霊夢に自分が人間に対し無害であることを主張するも、鬼巫女と化してしまった霊夢にはその理論は全く通じない。霊夢にとってお賽銭は神社に来た参拝客が入れるものであり、移動式のお賽銭箱はあり得ないと考えている上に、何よりも神社にはいると見込めるお金があろうことに妖怪に略奪されている現実が許せないのだ。


 「あんたがお賽銭を巻き上げていること自体が罪なのよっ!死ねっ、この詐欺兎!!」


 霊夢は退魔針と妖怪バスターの嵐をてゐに喰らせるのだが、通常の霊夢と違うのは鬼巫女モードで覚醒状態の霊夢相手なので、妖怪水準でも戦闘能力の低いてゐにとって霊夢の放った攻撃は熾烈極まりなく、弾幕の嵐を回避することは敵わずあえなく被弾してしまい、両足の膝から下を失うといった致命的なダメージを受けてしまったのだ。


 「ぎゃあああああっ!!!!!」


 「あ〜あ、妖怪兎の両足の膝から下を粉みじんにしちゃったから、食べれる部分が少なくなっちゃったわ。なんかどうしようもなく腹立ってくるわねぇ。」


 「ま、それでも兎鍋を食べれるんだから、十分すぎる収穫だわ。ただ殺すものなんだから、腹パンして苦しむだけ苦しませて死なないように殺してあげるわよ!」


 霊夢はロープをどこからか取り出すと、てゐの身体を大木にくくりつけしっかり固定させてから、腹ただしい詐欺兎の腹部にめがけて利き腕の左の全力で放ったストレートをぶち込んだ!


 BOKAAAAAAAAN!!!!!


 「うげぇ!!!!!」
 

 霊夢のストレートがてゐの腹にのめりこむと、あまりの威力にてゐは涙を流し呼吸できない苦しみを味わうしかなかった。霊夢はボクシングを習った事がないが、天性のセンスが故にストレートのやり方を体が解っているようで、余計な所に力が無駄に入っていないのとともにそれでいて力を入れるべきところは入れているため、妖怪相手でも強力なダメージを与えることが出来るのだ。


 「この詐欺兎がぁ!私があんたをイレギュラーとみなし、ここで抹消してあげるわ!」


 BAKOOOOOOOOOOOOOOON!!!!!


 もう一発左ストレートをてゐのボディに放つ霊夢。この一撃がてゐの臓器を破壊するほどのダメージを与えたようで、てゐはたまらずその場でゲロを吐いてしまった。
 

 「ガハッ!!!!!ウッ、ゲエエエエエエエッ!ゲホゲホッ、オゲエエエエエ!ガハッ!オエエエエエエッ!ウゲエエエエエエッ!」


 ボトボトッ、ボトボトボトボトッ!ベチャベチャベチャッ!


 てゐの吐いたゲロが紅白の巫女服にかかってしまうのを目の当たりにすると、霊夢はたった2発のストレートを喰らっただけであっけなくゲロを吐いて弱りきってしまったてゐを見下すと、その戦闘能力の弱さと巫女服を汚したことを嘆きこういった。


 「妖怪兎って弱いのね。いくら退治しても、あっさり勝っちゃうから歯ごたえがなくて笑っちゃうわ。」


 「私はこう見えても鴉天狗を殺したから、もう並大抵の妖怪じゃ相手にならないのよね。それにあんたねぇ、私の巫女服にゲロを引っかけてくれるなんて何考えてんのよ!ふざけるのも大概にしてほしいわね!」


 「ゲホッ、ゲホッ、ガハッ!ハッ、ハッ、ハッ、ハッ…」


 てゐはゲロを吐いた後に激しく咳きこんで血を吐いてしまったが、霊夢に対し何か言いたそうにしているのだが、声にならないので霊夢はてゐがただ苦しんでいるだけだと思わせている。


 「私はあんたを半殺しにしたんだけど、どうせならひと思いで殺してあげるわ!喰らいなさい博麗夢想拳!」


 霊夢はてゐに向かって博麗夢想拳を放つのだが、博麗夢想拳は1秒間に108発のパンチを相手に喰らわせるので、並大抵の相手は避け切れない上に全身を拘束されているてゐにとってそれは極刑を意味するものであり、霊夢の霊力が高まるにつれそれは光速に近くなってしまう必殺技である!しかも鬼巫女状態にトランスしている状態だから、霊夢のパンチは光速のそれと等しいものとなっている。


 「じゃああんたにとどめの一撃をくらわせてあげるんだけど、これが一番ふさわしいわね!イクわよっ!博麗天性拳!!!」


 BAGOOOOOOOOOOOOOOOON!


 てゐは博麗夢想拳をノーガードでくらってしまったので、致死量を上回るであろうダメージを受けてしまったことによりその姿は痛々しいものであるが、霊夢は容赦をすることなく博麗天性拳を放つが、恐ろしい事に博麗天性拳は一撃必殺のスーパーブローであり、博麗夢想拳を凝縮させた一発を浴びせるのだ。


 「ぐあああああっ!!!!!兎は…目が赤い…む、無念!!!!!」


 意識を失っている状態で博麗天性拳を直撃で受けてしまったてゐは、一度意識を取り戻すと共に激しく喀血してその長い生涯を閉じることになった。


 「ふふっ、博麗天性拳を喰らった時点でこの詐欺兎は死んでしまったみたいだけど、天覇風神脚を出すまでもなかったわね。」


 「あ〜あ、もっと歯ごたえのある妖怪はいないのかしら、両足をダメにしてしまったけど貴重な兎肉をゲットできたから、今晩の献立に使えるでしょう。この妖怪兎は、体が小さいからもう一品適当な食材をゲットしなきゃいけないわ。」


 「ギルトに行く前にこの妖怪兎を解体して、夕食を作る時に余計な時間をかけないようにしないといけないわね。ご飯はお米を研いで水に浸したから、あとは炊くだけなのよね。」


 霊夢はてゐの遺体を回収すると、一度神社に戻り妖怪兎の解体作業と10升のお米を研いで帰宅してすぐにご飯を炊けるように準備を済ませてから、汚物と血で汚れた巫女服を着替えてもう一度人里にあるギルトへと向かっていった。


―2― ゲイのハッテン場と化した人里のギルトでの仕事探しと美人の受付嬢


 「うぇ〜、やっぱりここは変わらないわね…。男臭すぎて眩暈がするだけじゃなく、吐き気を催すわね!」


 霊夢は人里に来るなり真っ先にギルトに顔を出すのだが、妖怪退治を生業としている同業者であるガタイのいい男たちが大勢いるので、おかしくなりそうなのをこらえて掲示板をチェックするのがギルトでの習慣である。


 「妖怪退治は男も女も関係なくやるんだけど、ここの男女比率は男が9割5分3厘で女が4分7厘だから、圧倒的に男が多くて汗臭さが漂ってくるじゃないの!勘違いした奴が男相手にナンパをしているみたいだし、実際ここはゲイのハッテン場になっているから、あの変態店主を連れて来たら涙を流して喜びそうだわ。」

 
 霊夢が掲示板に行こうとしたその時、逞しい体をした青いボディスーツを着た妖怪退治をしているいい男が、仕事の依頼をしていた寺小屋の見習教師をしている男にいきり立った股間とワケアリそうな視線を送りつけていた。


 仕事の依頼をしていた見習教師は青いボディスーツを着たいい男に惚れてしまい、ギルトの男子トイレに連れていかれてしまったのを目撃したので、男色者の性癖を持っているあの変態店主か、去年の春に生涯の伴侶を亡くしてしまった事で同性愛者の性癖に目覚めた半人半霊の未熟な剣士の祖父を連れてこようと思ったのだ。


 「変態店主とジジィのことはさておき、掲示板に書かれている仕事をチェックしなきゃいけないわね。ん〜と、めぼしい仕事は…………、あったあった!これにしよう!これなら報酬も多くて楽そうだし、食材もゲットできる素晴らしい条件じゃないの!」


 霊夢は仕事の用紙をコピーして、格好の仕事を見つけると仕事を取られてなるものかと思い、急いで受け付けを担当しているお姉さんのいる2番カウンターに向かい、自分の番が来るのを待ったのだ。


 「あら霊夢さん、ギルトへいらっしゃい。今日はどのお仕事を担当されるのですか?」


 仕事の依頼を担当している受け付けのお姉さんは、長髪で色白で二重瞼が魅力的な美人でスタイルも良いので、ギルトにやってくる男たちは受け付けのお姉さんを目当てにやってくる輩も多い。今霊夢の仕事の受付を担当しているお姉さんの年齢は20代前半で、縁談の話も多く来ていると思われる。


 「ねぇ、お姉さん。このお仕事はまだ誰も依頼してなくて、まだ成功報酬を支払われたものじゃないでしょう?」


 霊夢は自分の番がくると、受け付けのお姉さんに自分がやりたい仕事が書かれている書類とIDカードを真っ先に提出した。


 「今確認を取りますので、少々お待ちください。」


 受け付けのお姉さんはバーコードリーダーを取り出し、霊夢から受け取った書類に記載されているバーコードのデータと霊夢が提出したIDカードのデータを読み取るとこういった。


 「大丈夫よ霊夢さん。この仕事はまだ誰も受け付けていないし、成功報酬を支払われていないから安心してくださいね。」


 「最後にもう一度霊夢さんに確認しますが、この仕事を担当されますがよろしいでしょうか?」


  お姉さんは霊夢に仕事を請け負う最終確認を取る。これもギルトのルールで受け持った仕事は完遂しなくてはならないのだが、万が一のこともあって自分のレギュラーハンターランク以上の仕事を安請負させないためでもある。


 ちなみに霊夢のランクはAランクなので、ほとんどの仕事を受け持つことが出来るのだ。蛇足であると思うが友人の魔理沙はCランクで、最近登録し始めた早苗はEランクである。


 「もちろんいいわよ。この仕事をやりに来たんだから、お姉さんはさっさと処理をして頂戴!」


 霊夢はいつものノリでお姉さんに仕事の受け付ける処理をさせると、IDカードと仕事を受け付けたことを証明した書類をさっさと受け取ろうとする。今日の晩御飯がかかっているので、気が気でないのが解るだろう。


 「ただいまホストコンピュータから任務の承認を得ました。この任務は霊夢さんに担当していただきます。河童の首長からの依頼ですが、増長したマッドエンジニアの排除を霊夢さんに担当していただくことになりました。この任務証明書を河童の首長に提出してから、イレギュラー化した妖怪を退治してくださいね。それでは任務の遂行をお願いします。」

 
 受け付けのお姉さんが霊夢に任命書とIDカードを手渡すと、霊夢はすぐさま妖怪の山に向かって疾風の如く勢いで飛んでいった。今回退治するべき妖怪は妖怪の山に住んでいる幻想郷の秩序を乱す、世界征服の野望をたくらむ河童のマッドエンジニアである。


 「それにしても普段はおとなしいあいつが、まさか世界征服なんていうとんでもない野望を持っているなんて、よくよく考えてみると夢にも思っちゃいなかったわ。あいつのことだから、今頃ヘンテコな武器を使ってくるかもしれないし、油断はしちゃいけないわね。」


―3― マッドエンジニアの暴走と妖怪の山の崩壊


 「ハッハッハッハッハ!アア〜ハッハッハッハッハッ!!!!!私は天才だ!スキマ妖怪の賢者も、月の頭脳も、動かない大図書館も、私の科学の力には手も足も出まい!世界征服をするのはこの私以外いないのだ!アア〜ハッハッハ!」


 ここは妖怪の山にある河童の集落の外れにある、河童の中で最も危険度の高いマッドエンジニアである河城にとりの研究所であるが、研究所の主は何やらトンデモナイ物を開発したようである。


 「この私が生まれて1000年ぐらいたったろうか…、私が長年身につけてきた科学力を生かして、それを具現させるための技術を身につけるのに、どれだけの時間と労力を費やしたことだろうか…。」


 マッドエンジニアである河城にとりは、長年の苦労を思い出してそれの完成した姿を見て、ただ感無量となり涙を流している。


 「長かった…。実に長かった…。にとりロボZを誰にも秘密が漏れないように開発・製造したのは、私の唯一の夢である世界征服を実現させるためなのだっ!」


 「これさえあれば…、これさえあれば…、今まで私の事をキチガイ呼ばわりしてきた奴を、ケチョンケチョンにしてやれるんだっ!」


 「私が河童だったから、今まで鬼と天狗に土下座された屈辱を味わい続けたが、そんな苦痛の日々もこれで終わりだっ!」


 「ああっ、鬼と天狗を子供扱いしてやるぞっ!ア〜ハッハッハ!アア〜〜ハッハッハ!!!!!」


 にとりが開発した世界征服兵器とは何と巨大ロボットであり、全長30メートルぐらいはありそうな代物であるが、外見は全体的に丸みを帯びているためリアルロボットよりスーパーロボットよりであることは間違いない。


 顔はマヌケ面した河童で見た目は可愛らしさがあるが、こんな巨大ロボットが暴れ出したら幻想郷が破滅しかねないだろう。にとり以外の河童は、世界征服を果たすという考えは一切持っていないし、幻想郷も住人の生活レベルをより便利にする物を開発するからだ。


 なぜにとりが河童の集落の外れに住んでいるのかというと、実力は歴代の河童の中で最高と呼ばれる腕を持つのだが、危険極まりない思想を持つが故に他の河童たちの平穏な生活を脅かさないために、しかたなく首長がにとりを離れの方へ追いやる以外の選択肢を取らざるを得ないからである。にとり自身も他の河童の事を軽蔑しており、ひとりでいた方が何かと気楽であることと、自分の理想を具現化するための発明をするためには誰にも知られたくないからである。


 それでも他の河童たちにとってにとりが危険人物である事は変わりなく、どうやってこの厄介者を排除するためにやむなく人里のギルトに、存在自体が脅威であるにとりを退治する人間を派遣するように依頼したのである。


 「にとりロボZが小娘どもにダサいと言われようが、その圧倒的な戦闘能力はあの博麗の巫女はおろか月の使者もかなわない筈であるっ!私は天才っ!私の頭脳は世界中の誰より優れて、私のやることは絶対正しく、私の存在は偉大で、私は神そのものであるのだっ!!!!!」


 にとりはにとりロボZのコックピットに乗り込むと、起動スイッチを入れてOSを立ち上げてからしばらく待つと、パスワードの入力画面に変わり“******”を入力すれば、にとりロボZの目が赤く光り起き上がる。ちなみににとりロボットZのスペックは以下のものとなる。


 名称 にとりロボZ
 身長 32.5メートル
 重量 55.5トン
 出力 12500kw
 使用材質 ニトリウム合金
 搭載武装 のびるアーム×2、ロケットパンチ×2、ハイペタ河童砲×1、メタボ型腹部胡瓜クラスターミサイル×2(最大装弾数20000発)、ハナアナマシンガン×2(最大装弾数100000発)、アイレーザー砲×2、ケツアナバーニア×1、AMBフィールド(Anti Mental Barrage フィールド)


 にとりロボZはにとりの開発したニトリウム合金を使用しており、鬼のパワーをもってしても傷やへこみを受けない代物であるため、並大抵の物理攻撃ではダメージを与えられないのだ。にとりロボZにダメージを与えられるとしたら、ニトリウム合金を使った武器で攻撃するかそれ以上の高度をもった金属でしかありえないと思われる。


 にとりロボの武装はどれも強力無比な代物で、主力兵器ののびるアームは射程距離の100メートル以内であれば、曲線的に曲がったり直角に曲がったりするので攻撃対象を追尾できる機能を持っている。


 ロケットパンチは、伸びるアームの射程を3倍にしたもので攻撃対象を追尾できる優れ物だが、ロケットパンチが本体に戻ってくるまでは伸びるアームが使えなくなってしまうのと、AMBフィールドを張れなくなってしまう欠点をもっているので多用はできないが、ここぞという時に絶大の効果を叩きだす事が出来るのだ。


 にとりロボZの最大火力を誇るハイペタ河童砲は、最大出力で発射できるまで5分リロードしなくてはならないのだが、一度放てばにとりロボZの前方を火の海に変えてしまう威力を誇る強力な兵器で、霧雨魔理沙のスペルカードの(本家本元は風見幽香だが)ファイナルスパークを参考にしたのだが、全くもって威力はけた違いである。


 アイレーザー砲はその名の通り目からビームを出すのだが、このビームの恐ろしいのは攻撃対象をロックオンするといきなり直角に曲がる特徴を持つのだ。


 ケツアナバーニアは、にとりロボZが誇る高機動力をもつメインブースターでもあると共に、無差別殺人兵器の毒ガスを放出する銃口の役割を持っているが、毒ガスを出す時はブースターとしての機能を失ってしまうので、使用できる局面が非常に限られてしまう難点を持つ。しかも毒ガスを放つとにとりロボが再び起動するまで10分待たねばならず、その間は最大の防御癖であるAMBフィールドが放てない欠点がある。


 ハナアナマシンガンは、単発の威力は低く妖怪はおろか人間を一撃で殺せず、射程は100メートルと短いためあまり使えない武器だと思われるが、接近戦時において相手をけん制したり相手の防御を崩したりとさまざまな状況で優位は状況を作り出せる武器の一つである。


 メタボ型腹部胡瓜クラスターミサイルはコンテナ状になっており、にとりロボZの本体と切り離してから大型ミサイルを放った後に一定距離まで飛ぶと、小型ミサイルを周囲に展開し広範囲を爆破してしまう強力な兵器である。


 にとりロボZの最大の脅威たる武装は、最大の防御壁と言っても過言ではないAMBフィールドにあり、幻想郷に住んでいる少女たちの弾幕から放たれる精神攻撃は一切効力をなくすもので、霊夢の妖怪バスターなどの精神攻撃をシャットアウトできるのだ。一度AMBフィールドを展開すると、10分間は完全に弾幕攻撃を完全に無効化出来るのだが、期待の冷却をおこなう為に再展開するまで15分間のリロードを要するので、その間の防御を考慮に入れて戦闘を行わなくてはならない欠点がある。 


 欠点はそれなりにあっても、現在の幻想郷においてにとりロボZを完全に破壊できる存在はいないに等しく、誰にも邪魔をされることがなければにとりの幻想郷征服は現実のものとなってしまうだろう。


 「ふっふっふ!いよいよにとりロボZが起動したっ!ハッハッハッハ!これから私の長年の夢である、世界征服を実現させるときが、いよいよやってきたのだっ!」


 にとりロボが立ち上がると同時に、一人の人間が研究所の扉が破壊した。


 「そこまでよ、このキチガイ河童!あんたの野望はここまでよ!大人しく私に退治されて、私の胃袋の中に素直に収まりなさい!」


 にとりの研究所に侵入してきたのは、狂気の鬼巫女モードに変わり果てた博麗霊夢であり、昨日の夕飯以降は食事を抜いているため非常に腹を空かせており、眼球が真っ赤にあやしく光り輝いている。


 「誰だ!私の研究所に許可なく入ってきた奴は、このにとりロボZで葬ってやる!」


 全長30メートルオーバーの巨大ロボットが、霊夢の方に向かってくる姿はまさに圧巻であり、その迫力を目の当たりにしたら普通の人であれば思わず足が立ちすくんでしまうだろう。


 「あはははっ!何その不細工な鉄の塊は。これが河童たちの言ってた最強最悪な兵器って奴?う〜ん、なんか弱そうに見えるのは気のせいかしらね。」


 霊夢がにとりロボZを見た第一印象は、ただ無駄に大きいだけの木偶の坊といった感じであり、見た目が可愛らしくどこかマヌケに見えてしまい、思わず笑ってしまった事がにとりは腹を立てて頭に血が昇っていた。


 「にとりロボZを馬鹿にしてっ!許さんぞ!この野郎!これでもくらえ!」


 にとりは自分の研究所の中で、にとりロボZを戦闘モードにしたことで研究所を破壊してしまったのだが、霊夢は鬼巫女モードであるにも拘らず戦闘方法はいつもと変わらないので、にとりロボZが放ってくるミサイルやレーザーの類の攻撃をなんだかんだいいながら見事に回避している。


 「何なのよ!確かにこんなデカブツが暴れまわると、幻想郷がエライことになっちゃうわね!じゃあ、これでとどめを刺してあげるわね!」


 霊夢はにとりロボZを舐め切っていたので、妖怪バスターと退魔針の弾幕という名のプレゼントをにとりロボZにくらわせてとどめを刺すつもりでいたが、どうやらにとりロボZに全くもって効力がないのは、にとりロボからAMBフィールドが放たれているので、霊夢が放った精神攻撃は無駄なものとなってしまった。


 「えっ?な、何なのよっ!私の弾幕が効かないなんてどうかしてるわ!ああ、もう!こいつ相手じゃ夢想天性だって効かないだろうし、物理攻撃だって歯が立たないじゃないの!魔理沙のマスタースパークだって、こいつ相手に聞く保証がないわね…。」


 「はっはっはっはっ!にとりロボZは、貴様らの弾幕如きじゃビクともしないんだよっ!にとりロボZは、無敵無敵無敵無敵っ!!!!!私の生涯をかけて開発した、絶対無敵の究極のロボットなんだ!だからさっさと死ね!この守銭奴め!」


 ビューン!ビューン!ビューン!ビューン!
 ビューン!ビューン!ビューン!ビューン!
 ビューン!ビューン!ビューン!ビューン!
 ビューン!ビューン!ビューン!ビューン!
 ビューン!ビューン!ビューン!ビューン!
 ビューン!ビューン!ビューン!ビューン!
 ビューン!ビューン!ビューン!ビューン!
 ビューン!ビューン!ビューン!ビューン!
 ビューン!ビューン!ビューン!ビューン!
 ビューン!ビューン!ビューン!ビューン!
 ビューン!ビューン!ビューン!ビューン!
 ビューン!ビューン!ビューン!ビューン!
 ビューン!ビューン!ビューン!ビューン!
 ビューン!ビューン!ビューン!ビューン!
 ビューン!ビューン!ビューン!ビューン!


 直角に曲がるレーザーの雨が霊夢に襲いかかる!霊夢はレーザーに直撃を貰う事はないが、折角変態店主に新調してもらった巫女服の一部分にレーザーがかすってしまった。


 ババババババババババババババババババババッ!
 ババババババババババババババババババババッ!
 ババババババババババババババババババババッ!
 ババババババババババババババババババババッ!
 ババババババババババババババババババババッ!
 ババババババババババババババババババババッ!
 ババババババババババババババババババババッ!
 ババババババババババババババババババババッ!
 ババババババババババババババババババババッ!
 ババババババババババババババババババババッ!
 ババババババババババババババババババババッ!
 ババババババババババババババババババババッ!


 にとりロボZが放っているオーラが消えたので、霊夢は隙を見てにとりロボZに近寄って見るのだが、ハナアナマシンガンの嵐はそれを許さずまた距離を離さざるを得なくなる。負けじと霊夢も、距離なり角度なりを変えてにとりロボZを破壊する手段を見つけようとと試みるが、にとりロボZはそれに対応してくるので死角に入らせてもらえない。そうこうしているうちに、またにとりロボZはAMBフィールドを展開してしまう。


 ドシュッ!ピチューン!シュルルルルルッ!ドカッ!ドカッ!ドカッ!ドカッ!ドカッ!ドカッ!ドカッ!ドカッ!ドカッ!ドカッ!ドカッ!ドカッ!ドカッ!ボカーン!!!!!


 霊夢がにとりロボZから遠ざかると、にとりは待ってましたと言わんばかりに霊夢を殺すためだけに、メタボ型腹部胡瓜クラスターミサイルの1つを周りの事を一切配慮せず展開し、あっという間に妖怪の山の大半を焦土に変えてしまった。


 霊夢はにとりロボZの攻撃を回避しながら弱点を探していた。この巨大ロボットが暴れまわっているせいで、河童の集落が壊滅状態になってしまうのだが、この犠牲はやむなしと考えるしかなかった。しかも対妖怪の攻撃をする霊夢の精神攻撃が一切通じないうえに、なんとか近づいて蹴り飛ばしてみたものの、あまりの装甲の硬さに物理攻撃ですら効き目がないのだ。


 「この野郎!何で攻撃が当たらないんだよっ!にとりロボZは…、無敵無敵無敵!!!いけっ、ロケットパンチ!!!」


 ブォォォォォオン!


 「くっ!なかなか攻撃のチャンスをもらえはしないし、私の攻撃は全くもって効果がないし、どうやったらこんなのを倒せるっていうのよ!この河童のマッドエンジニアはなんていうものを開発しやがったのかしらね!装甲は無駄に硬いし、接近しようと思ってもミサイルやレーザーやマシンガンの類の弾幕が邪魔でまともな攻撃を当てれないじゃないの!」


 にとりロボZの腕からロケットパンチが霊夢に向かって放たれるが、鬼巫女霊夢にあたることはない替わりに、集落から逃げ遅れた河童の親子に直撃して、河童の親子は粉みじんとなり爆風で塵と化してしまった。再生能力の高い妖怪でも、こうなってしまったら完全に死んでしまうのだ。


 「ぎゃああああああっ!!!!!」


 にとりの攻撃から逃げ遅れてしまった河童の親子は、無残にも塵と化してしまったので、マッドエンジニアの残酷な行為に霊夢は思わず動きを止めて見入ってしまった。


 「し、しまった!アイツの目的はこれだったんだ!なんていう卑劣な手段を使ってくるなんて、本当に許せないわ!」


 イレギュラーと化してしまったにとりは、同族の幼子を殺してしまった事に何の罪の意識がなかったので、霊夢に対し攻撃の手を緩めることがなかったのだ。反面霊夢は自分丸とりロボZの攻撃を回避してきたせいで、民間人の河童の親子を見殺しにしてしまったので、イレギュラーハンターとして恥ずべき行為をしたと思った。


 「あんたねぇ!罪のない子供を殺してしまったことに、罪悪感はないの?あんたの発明品は、すべての人妖の平和の為に生かそうと思わないの?」


 「うるさい!私は世界の覇者となる河城にとり様だっ!口先だけの平和を述べてなんになるんだっ!私のやる事はすべて正しい!私の言う事はすべて正しい!人間は存在すること自体が間違っているんだっ!私のにとりロボZは…、無敵無敵無敵無敵絶対無敵なんだっ!うおおおおっ!」


 にとりロボZは霊夢を殺すために無差別攻撃を派手に仕掛けてきて、目から放たれる曲がるレーザーや、胸部から一斉に放出される胡瓜の形をしたミサイルと、口から魔理沙のマスタースパークを思わせる極太レーザーや左右両方の腕に搭載されているのびるアームなどをガンガン使い霊夢に向かって攻撃を仕掛けてくるので、この時点で河童の集落だけでなく天狗の里にも壊滅させるほどの甚大な被害を与えてしまい、妖怪の山は血の雨が降る有様だった。もちろん守矢神社はにとりロボの攻撃によって、あっけなく焼け野原となり崩壊してしまった。


 「この馬鹿は何を考えているのよっ!妖怪の仲間をいっぱい殺してしまっただけでなく、山の麓にある集落に住んでいる人間もいっぱい殺してきたじゃない!」


 霊夢は改めて河童の集落集辺を見渡すと、にとりロボZの被害は想像をはるかに超えたもので、妖怪の山を始めその周辺まで火の海に変えてしまった。霊夢は直撃を受けてないものの、紅白の巫女服はところどころ破けており、後ろから見るとお尻の部分に穴があいてしまい、霊夢が穿いている純白のドロワーズが見えてしまうという有様だった。


 「この守銭奴め、いい加減に被弾して死んでしまえっ!うおおおおおおおっ!!!!!」


 カチカチっ!


 「な、何っ!弾切れだと!こんな肝心な時に、何で弾切れを起こすんだっ!畜生、巫女を仕留め損ねたじゃないかよ!」


 にとりロボZからミサイルやレーザーが放たれる事はなく、銃口から空気が出てくるだけである。要するに弾切れを起こしてしまったのだが、にとりは霊夢を殺すためだけに、にとりロボZの武器を後先考えず全弾放出していた。そのツケを支払う事になるのは言うまでもないが、接近戦用ののびるアームを使えばまだ戦える。霊夢はにとりロボZが弾切れを起こしたのではないかと思い、自分の攻撃が一切通用しないのなら、こののびるアームを使ってにとりロボZを自爆させる戦術を一瞬にして思いついてしまった。


 「どうしたの馬鹿河童、さっきの激しい攻撃はどうしたのよ?私はまだ直撃を受けてないから、まだ戦えるわよ。ほらほらかかって来なさいよ!」


 霊夢はにとりに挑発したのだが、“馬鹿河童”という言葉を聞くとにとりはカッとなってしまう癖があり、冷静さを無くしてしまう事で過去何度も失敗している。霊夢は知ってか知らずか“馬鹿河童”といった事で、にとりは怒り心頭で冷静さをなくしのびるアームを使って霊夢に攻撃してくることを予測していた。


 「“馬鹿河童”だと!こ、こいつ〜!許さんぞ!この河城にとり様を侮辱するとは許さんぞ〜!!!うおおおおおっ!!!!!」


 にとりは伸びるアームを使って霊夢に攻撃してきたが、霊夢はいつもどおりつかみどころのない動きを取ってにとりの攻撃を回避する。にとりロボZのコックピットが頭部に会ったのを確認したので、霊夢はのびるアームと自分の立ち位置を計算しながら間合いを詰めていき、コックピット付近まで近寄ると例の如く瞬間移動したのか急に離れてしまった事により、にとりロボZはあえなくのびるアームの直撃をコックピット付近で受けてしまい、完全にその機能を停止した瞬間に派手に爆発した。


 「ふぅ、やっとあのデカブツを破壊したわ!はぁ…、私の格好だけどこんなにボロボロじゃないの!またあの変態店主に、巫女服を新調する依頼をしなきゃいけないわね…また出費が増えて嫌になっちゃうわね。」


 霊夢はにとりロボZとの戦闘で激しく消耗してしまった巫女服を見つめると、新調するために変態店主の所に行かなくてはならないと思うと、ため息をつかざるを得なかった。


 「いけないいけない。今日の夕飯は河童巻きにしたいから、肝心要の食材を確保しないといけないじゃないの!」


 霊夢はすっかり鉄くずの塊に成り下がってしまったにとりロボZに近寄ると、世界征服とたくらんでいるイレギュラーである河城にとりの捕獲を試みるが、いつ奇襲されるかわからないので細心の注意を払っておく必要がある。そんな最中霊夢は、すっかりボロボロになったマッドエンジニアの姿をロックオンし、背後から急接近してかかと落としを喰らわせることにした。


 「ひゅ、ひゅい〜!私の何がいけなかったんだ!?にとりロボZは完璧だったはずだが、私の戦い方に問題があったのか!?確かに巫女は、私の予測をはるかに上回っていた…それでも巫女は、私のにとりロボZより強かったのか…い、いかん、このままでは巫女に虐殺される!逃げなくては…」


 にとりは脱出ポットを使ったので、身体的に致命的なダメージを受けることはなかったが、爆風の衝撃によるダメージはあったようで、右足を引きずって必死になって歩いて血路を開いているにとりの背後から、何者かがいきなり蹴り飛ばしてきてにとりを吹き飛ばしてしまった。


 「うびゅう!」


 マヌケな声を上げたにとりをやったのは、勿論幻想郷ではなく子も黙る鬼巫女霊夢でなのだ。


 「逃がさないわよ!私の晩御飯になる河童を、今ここで捕獲してやるわ!そのまえに、みんなの怒りを私が変わってあんたにぶつけてあげるわ!」


 ドガッ!
 ドガッ!ドガッ!


 「ひゅっ、ひゅい〜、お、お許しを〜…」


 にとりはこの場に及んで命乞いをするも、鬼巫女には聞き入れてもらえず、ひたすら鉄拳制裁を受け続けた。にとりのやったことを客観的に考えると、これも当然の報いであり、にとりが生涯をかけても許される事がない重い罪である。


 ドガッ!ドガッ!ドガッ!
 ドガッ!ドガッ!ドガッ!ドガッ! 


 「あんたが余計な事をたくらむから、幻想郷の人妖の命を奪ってしまったじゃないの!だから、私みたいなイレギュラーハンターがボロボロになるまで必死になって、あんたみたいなイレギュラー化したキチガイを退治しなきゃいけなくなるのよ!」


 ドガッ!ドガッ!ドガッ!ドガッ!ドガッ!
 ドガッ!ドガッ!ドガッ!ドガッ!ドガッ!ドガッ!


 自分の攻撃が一切通じなかったのと、無駄にてこずった苛立ちをにとりにぶつける霊夢だが、所詮は陸地に上がった河童だから昨日虐殺した鴉天狗とは比較にならないので、手こずることなく全身を複雑骨折させる圧倒的な実力の差を見せつけた。


 ボロボロになったにとりを縄でぐるぐる巻きにして、奇跡的にも幸い生きていた河童の集落の首長に一旦にとりの身柄を渡してにとりの処遇を決めてもらうと、河童の集落から完全追放する裁量を取り身柄を霊夢に引き渡した後に、霊夢は人里のギルトに寄って報酬を受け取ると、人里にあるスーパーで食材と大量にタダ同然の不当な値段で買い取ると博麗神社へと帰って行った。


―4― 夕飯の献立は河童巻きと兎鍋、そして苦痛の解体作業と楽しいディナータイム

 
 霊夢は仕事を終えて帰宅すると、真っ先に台所に行き、八雲紫から奪った特製の鍋で大量のご飯を炊いている間に、妖怪兎の肉と野菜の下ごしらえを済ましておきながら、兎鍋に使うだし汁を作っておいた。霊夢の中では今日の献立は決まっていたので、炊きあがったご飯に人里のスーパーで略奪同然で買い取ったお酢を混ぜて、酢飯を作っておくことも忘れなかった。


 「おい河童!あんたに課せられた刑は、私に食べてもらう事になったから大人しく食べてもらえる事に感謝して欲しいわね!」


 霊夢はにとりを死刑にすることを伝えるが、斬首刑や切腹でなく最も屈辱的な食刑を宣告されるとにとりの顔色はすっかり青ざめてしまい、まだ死にきれない思いがあったので思わず、


 「れ、霊夢さん。もう2度と世界征服を企むなどという不届きな真似は一切致しませんので、どうかお命だけはお助けください!」


 全裸にされたにとりは死にたくない一心で鬼巫女に対し命乞いをするのだが、相手はこの河童に殺意を抱いていたので一切の効力をもっていないどころか逆に不機嫌にさせてしまった。


 「あんたのせいで巫女服が一着オシャカになったんだし、にとりロボZが派手に派手に暴れてくれたおかげで妖怪の山は焦土と化して、他の妖怪と人間の命を無差別の奪ったんだから死んでその罪を償うべきよ!」


 にとりを罵倒した霊夢は、巨大包丁をにとりの首元に突きつけると同時に無力なマッドエンジニアは失禁をしてしまった。


 「あんたねえ!人様の家の台所でおしっことうんこをするなんて、なんて失礼極まりないことをするのかしら!やっぱり妖怪という生き物は、退治して殺すだけでなくその身を食べなきゃいけないのよね!だからこうするのよっ!」


 ジュシャッ!!!!!


  霊夢は巨大な包丁でにとりの左腕を一刀で切断すると、台所は小便と大便が混ざった饐えた匂いが漂い吐き気をもたらすので、霊夢とにとりはあまりの強烈な腐敗臭に耐えきれずその場でゲロを戻してしまった。


 「あ、あんたのうんちをおしっこの臭いって、異常に生臭く鼻が曲がるだけじゃなく吐き気を催す酷い匂いじゃないの!だ、ダメっ!もう我慢できない!ウゲッ、ゲホゲホッ、ウゲッウゲッ、オッ、オエエエエエッ〜!!!!!」

 ―少女嘔吐中―

 霊夢はトイレに行こうとするも耐えきれず、我慢の限界を超えてしまったことにより台所でゲロを吐いてしまい、にとりの汚物の臭いと霊夢のゲロの臭いが混ざるとにとりも霊夢につられてゲロを吐いてしまった。

 ―少女嘔吐中―

 「うっ、ウェップ!ウゲッ、オゥェップ!オェッ!ウゲッ、ウゲエエエエエッ、ゲエエエエエッ!!!!!」


 にとりも自分の汚物の匂いに拒絶反応を起こしただけでなく、霊夢のゲロのすえた匂いが混ざりそれが異常に強烈な悪臭だったためにゲロを足元にまき散らしてしまったのだ。


 台所は汚物特有の悪臭に包まれてしまい、霊夢が台所の掃除を済ませ河童の解体作業に再び取り掛かるまで1時間以上かかってしまった。


 にとりと霊夢のまき散らした汚物と悪臭の処理は、霊夢が八雲紫から奪い取った汚物に触れても綺麗なままの衛生状態を維持する特製のビニローブを両腕につけてから、井戸の水を水の交換が一切必要ない特殊なバケツにすべての汚れを落とせる洗剤と入れてから、拭くだけであらゆる汚れが取れてしまう特殊な雑巾で台所一体を拭きとってから、仕上げに悪臭を吸収する特殊な木炭を台所に置くことで博麗神社の台所は料理をして問題ない環境を取り戻した。台所の清掃と汚物の処理を含めてさらに1時間以上かかってしまったので、霊夢は非常に不機嫌になってしまった。 


 霊夢が使った掃除用具は全て八雲紫から奪い取ったものであり、これがないと霊夢の生活が著しく不便になる優れものでなので、21世紀からやってきた全身が青ずくめのアーティファクトクリーチャーのポケットから出て来る道具と同じぐらい何かと重宝するのである。


 「あんたが余計の事をしてくれるから、私があんたの解体作業に取り掛かるまでさらに時間がかかってしまったじゃないの!もうあんたに責任はとれないから、あんたの首を刎ねておくから覚悟なさい!」


 「ひゅっ、ひゅい〜!!!!!」


 ドジュッ!!!!!


 霊夢は巨大包丁でにとりの首を切り落とすと、返り血を浴びてしまい巫女服の白い部分は赤く染まってしまうが気にすることなく河童の肉を次々と解体していった。


 「皆さんお待たせいたしました!今日の晩御飯の献立は、河童と兎が手に入ったので河童巻きと兎鍋を作りたいと思います!」


 博麗神社の台所には霊夢以外のクリーチャーはいない上に、調理音と霊夢の歌声しかBGMが流れていないのだが、我々外の世界の人間であれば、昔から国営放送が1日2度の放送をしていて聞いたことのあるBGMが耳に流れてくると思われるのと、民営の放送局で若手や中堅のコメディアン達が、番組の妙な企画のために自前で料理を拵える時に流れるあの聞き馴染みのあるあのBGMか、180秒で料理を作ってしまう番組のオープニングとエンディング時に流れるあのBGMが脳内再生されていると思われる。


 「最初に博麗式兎鍋を作りたいと思いますが、材料はこちらとなっております!妖怪兎一羽と、人参25本と、白菜30個と、長ネギ50本と、魔法の森産の茸50本と、春菊10本と、酒と醤油とみりんそれぞれ2リットルと水が20リットルでございます!」


 ―少女料理中―


 「博麗式兎鍋を作りますが、最初が肝心でここで間違うとせっかくの兎鍋が台無しになります!鍋の中に水と昆布と酒と醤油とみりんを鍋の中に入れてから火をつけます。ここで気をつけたいのは鍋の中に水と調味料を入れる順番ですが、水、昆布、酒、醤油、みりんの順番で入れないと、出し汁の味にムラが出てしまうので気をつけてくださいね!」


 霊夢は巨大な鍋を取り出してそれをコンロにのせると、鍋の中に大量の水と昆布と酒と醤油とみりんを入れてからコンロに火をつけ、火力を最大まで引き上げることにした。


 「鍋に入っているだし汁が沸騰するまで時間がかかりますので、その間に兎肉と野菜の下ごしらえをしておきます。当たり前の話ですが兎肉は余すところなく全部使いますし、骨も全部入れてください。骨を入れることによって兎鍋のスープの旨味がさらに引き立てられますし、野菜にも兎の味が染み込んでより美味しくなるんです。」


 「兎肉は一口大の大きさになるように均等に切って、人参と白菜と長ネギ魔法の森産の茸と春菊は火が通りやすいように切っておくのが望ましいのですが、私でしたら、人参と長ネギは輪切りにして、白菜と春菊は一口大の大きさになるように切りまして、茸はその時の気分次第で変わるのですが、テレビを見ている皆さんは食べやすいように適当なサイズにしておけば問題ないかと思います。」


 霊夢は視聴率ゼロパーセントでもあるにも関わらず、コメディアンが手作り料理を視聴者にみせるように振る舞っていてオーバーアクションをとっているので、傍から見たら痛々しく見えてしまい虚しさを感じる行為だが、霊夢自身がそれを楽しんでいるのだから私だけでなくこのSSを読まれている皆さんもそっとしてあげようと思うだろう。


 霊夢は包丁で食材を着る時は野菜から始めて、メイン食材の兎肉を切るのを最後にやることにこだわりを持っている。


 「皆さん、テレビ画面に注目してくださいね!これから私は兎鍋に入れる肉と野菜を包丁で食べやすいサイズに切りますので、瞼を閉じることなくちゃんと見てくださいね!料理を作る事は戦争なんだ!いくぞおおおおおおっ!うおおおおおおっ!」


 視聴者が一人もいないのにもかかわらず霊夢は、気合いを入れて咆哮すると野菜を一気に切り落とした。そのスピートは常人の目ではとらえられない速さを誇り、あっと言う間に大量の野菜を巨大包丁で食べやすいサイズに切り落としてしまった。この間1分しかかかっていない。


 トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!
 トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!
 トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!
 トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!
 トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!
 トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!
 トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!
 トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!
 トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!
 トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!
 トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!トン!


 霊夢が包丁で切った野菜は巨大な籠の中に全て入ってしまい、後は巨大な鍋の中に全てが投入されるのを待つだけである。


 「野菜をすべて切り落とした後に、メイン食材の兎肉を一口大のサイズに切ります!料理は味も大事だけど、お客様にライブパフォーマンスを見せることが出来なかったら一流の料理人とはいえないんだ!私は!これから!妖怪兎の!肉を!一口大の大きさに!切りたいと思います!いくそおおおおおっ!」


 ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!
 ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!
 ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!
 ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!
 ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!
 ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!
 ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!
 ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!ジョバ!


 霊夢は妖怪兎の肉の塊をすべて宙に打ち上げると、巨大包丁をものすごいスピードで振り回して妖怪兎の肉を一口大サイズに切り分けてしまうが、我々普通の人間には長人である霊夢が何をやったのか見えないために、これでいいのかと言いたくなってしまうだろう。


 妖怪の兎の肉が中から落ちてくると同時に、霊夢は野菜が入っている巨大な籠を妖怪兎の真下に置いた。妖怪兎の肉が籠の下入った瞬間になんとすべて一口大のサイズに切り分けられており、しかもすべてが均等な大きさになっていたのだ!


 「肉と野菜をすべて切り終えましたので、これからだし汁が沸騰している鍋の中に食材をすべて投入したいと思います。兎鍋をよりおいしくするコツは、肉と野菜から出てくる悪を一切取らないことです。凡庸な料理人は悪を取り出してしまうのですが、偉大な料理人であるこの私は食材の味を最大限に引き立てたいので、余計な事は一切致しません。」


 「その前に、ここで出し汁の中に入っている昆布を取り出しておかないと昆布の粘り気が他の食材に移ってしまい、折角の食材の味が死んでしまうので忘れずに取り出してくださいね。あと食材をすべて入れたら鍋に蓋をして1時間煮込めば兎鍋の完成となります!」


 霊夢は素手で鍋の中に入っている昆布を気合いで取り出すと、旨味成分がすべて出てしまった昆布をすべて口の中に放り込んで食べてしまった。


 昆布をすべて食べ終えると霊夢は、肉と野菜が入っている巨大な籠を持ち出して、それらを出し汁が沸騰している鍋の中に一気に放り込んでしまった。


 ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!
 ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!
 ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!
 ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!
 ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!
 ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!
 ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!
 ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!
 ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!
 ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!


 鍋の中に食材が投入されたので、出し汁の温度が一気に下がったために霊夢は鍋に蓋をすると、出来上がりを楽しみにして待つことにした。鍋が完成するまでの間の時間を有効に使いたいので、霊夢はもう一つのご飯ものの料理を作ることにしたが、久々の寿司を口にする楽しみが脳裏を駆け巡っていた。


 「テレビを見ている皆さん、兎鍋が出来上がる間にもう一つの料理を作りたいです。今日のご飯ものは寿司もので、妖怪河童を使った河童巻きを作りたいと思います!普通の河童巻きは胡瓜を酢飯でくるんだものを海苔で捲いたものですが、私の作る河童巻きはそんな凡庸な代物ではありませんので、この番組を最後まで見なさいよね。」


 霊夢はカメラがないにも関わらず、ドヤ顔をしてカメラ目線で台所全体を見つめると河童巻きに使う食材を持ってきた。


 「博麗式河童巻きは、妖怪河童を使わないとできない寿司で、私も以前食べたのかをすっかり忘れてしまいました。それでは博麗式河童巻きの材料は、妖怪河童一匹とご飯10升とお酢小瓶一本と砂糖と塩を適量用意してくださいね。」


 「河童巻きを作るのに絶対必要な寿司飯を作りたいのですが、お酢に砂糖と塩を混ぜて寿司飯用のお酢を作っておきます。お酢をご飯の中に混ぜるだけでも問題ありませんが、ひと手間加えることでより美味しく頂けるじゃないの。ご飯を美味しく作るには、手と手間を面倒くさがっちゃいけないのよね。」


 霊夢は河童と米以外の食材をまな板の上にのせると、小さい鍋を取りだしてお酢を砂糖と塩を鍋の中に入れてから、沸騰させないように弱火に調節してそれらを混ぜて寿司飯に使う酢を作っておいた。


 「次に炊きあがったご飯に、先程作った寿司飯用のお酢をご飯の中に混ぜるのですが、この時気をつけたいのはお酢をご飯になじませる為にはお米を潰さないように切るように混ぜてください。お酢とご飯を混ぜる時にやってはいけないのは、寿司飯用のお酢を一度にご飯に混ぜないで何度かに分けないと寿司飯の味にムラが出てしまうので、細心の注意を払ってくださいね。ご飯にお酢が混ざり終わると、仕上げにうちわで寿司飯を煽いで熱を覚まさないといけません。これ、霊夢ちゃんとのお約束ですよ!」


 霊夢は米櫃に入ったご飯にお酢を何度かに分けて、ご飯とお酢を切るように混ぜ終わってから、団扇を取り出し寿司飯を一気に冷ました。


 「寿司飯を作り終わったら、河童の下ごしらえをするのですが河童の肉を使っているので生では食べられないから、ここで加熱処理をしないと食中毒になってゲロを吐いたり下痢で苦しんだりしますので気をつけてくださいね。今回の河童の肉は一度ミンチ状にしてから、形を棒状に整えてから衣をつけて揚げておきたいと思います。」


 霊夢は河童の肉を一度特製のミキサーに入るサイズに切り落とすと、河童の肉をすべて放り込み終えてミキサーに蓋をして電源を入れると、河童の骨を砕く轟音を鳴らしながらミンチ状にしてしまった。


 ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリッ!
 ギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュルッ!
 ジュリジュリジュリジュリジュリジュリジュリジュリジュリジュリジュリッ!
 シュイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!
 

 パチッ!


 霊夢はミキサーの中に入っている河童の肉が、程よくミンチ状態になったのを確認すると、ミキサーの電源をOFFにすると台所じゅうに響いていた轟音はすっかり収まったしまった。


 「河童の肉が程よくミンチ状になったら、一度ボールに入れてからこれを握りこぶし一つ分の大きさ分を取り出してから筒状にまとめると、だいたい20センチぐらいの長さにして小麦粉をつけた後に卵を絡めて最後にパン粉をまぶしてから、油であげましょうね。揚げる時に気をつけたいのは、一度にまとめて入れると油の温度が下がってしまううえに形が変わってしまうので、油の温度を一定に保つように一つ一つ様子を見ながら入れて衣に焦げ色がついて油から浮き上がってくるのを待ちましょうね!」


 ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!ボチョン!
 バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチッ!
 ジュワジュワジュワジュワジュワジュワジュワジュワジュワジュワジュワジュワッ!

 河童の肉を棒状にしたメンチカツを一つ一つ丁寧に上げていき、200本出来上がると霊夢はメンチカツに染み込んだ油を取るために一度クッキングペーパーを置いた皿にメンチカツをのせていった。


 「最後に河童巻きの仕上げを行いたいと思いますが、メンチカツを寿司飯でくるんだ後に、外界から入った貴重な海苔で包む作業をしたいと思います!みなさん、ここの作業を見ずして博麗霊夢のファンを名乗るのは絶対にあり得ない話です。なんたって私は幻想郷で一番強くて、美人で可愛い女の子なんだからねっ!私の作る料理は絶対美味しくて、あんたたちなら涙を流して感動しないわけがないのよ!」


 霊夢は巻きすに海苔を敷くと、その上に寿司飯をのせ終えるとメンチカツを置いて綺麗な丸を描くように、くるっと撒くと見事な河童巻きが出来上がったのだ。それを200本分作る作業をひたすら繰り返し行い、全てをやりきるまでに口元が寂しくなるので自己愛を訴えたのだ。そうこうしているうちに、兎鍋に入っている食材に火が通っていたのは言うまでもない。


 「皆さん、今日の晩御飯は博麗式河童巻きと博麗式兎鍋でございま〜す!早速兎鍋の方から試食をしたいのですが、皆さんにこの美味しさを上手く伝えられるように努力したいと思います。部屋には河童巻きと兎鍋の美味しそうな匂いが充満して、もう辛抱たまらないので兎鍋を食べたいです!」


 霊夢は巨大な鍋から愛用の食器に兎鍋を一人分入れると、ドヤ顔でどこかにあるカメラを見つめていたが、現実は誰も見ていないのにもかかわらず兎鍋の肉を最初に口に入れた。


 「うっ、この兎鍋は凄く美味しいです!長年生きた妖怪兎の肉は、淡白であるにも拘らずとっても柔らかくそれ出てうまみが口にあふれるので、私は天界の有頂天に登ってしまいそうな気分になるわね。」


 妖怪兎の肉の味を十二分に堪能し終わると、白菜と人参と長ネギと春菊の野菜を口の中に入れるのを我慢しなかった。いや、今日のハードワークからあまりの空腹状態が続いたので、博麗の巫女でもそれが出来なかったのである。


 「兎鍋のだし汁を吸った野菜ですが、兎の味がするともにそれぞれの野菜がちゃんと自己主張しているので、お互いの癖を殺し合うとともに旨味成分を引き立て合っているわよ!」


 「でもこの美味しい兎鍋を食べる権利があるのは、私以外の存在は許されていないからテレビを見ている視聴者の皆さんも頑張って妖怪退治をしてほしいわね。働かざる者は食うべからずって昔からいうけど全くその通りだわ!」


 霊夢は無意識のうちに何度か兎鍋をおかわりして、巨大な鍋の中に入っている兎鍋をたった25分ですべて食べきってしまい兎鍋を堪能すると、次に河童巻きを一本取り出して小皿の上にのせたが、全長20センチ直径6センチの河童巻きは小皿をはみ出してしまった。


 「テレビを見ている皆さん、いよいよ私は河童巻きを食べたいと思いますが、この河童は激しい死闘の末に退治した河童をミンチ状にして、衣をつけて油で揚げた物に寿司飯と海苔で捲いた革新的な河童巻きです。それにどうですか、この圧倒的なボリューム感。あんた達がこれを見たら、圧倒されないわけがないじゃないの。」
 

 霊夢は河童巻きを手づかみで齧り付くと、河童巻きが想像以上に美味しかったので思わず涙を流してしまった。にとりロボZとの死闘を賭けた戦いの末に勝ち取った河童なので、私たちも自分の手で勝ち取った食料の美味さを理解していないわけがないと思う。


 「うっ…、この河童巻きの味は説明のしようがないほど美味しいです!当たり前だけど、私が丹精込めて作った料理だから、不味いという事は絶対にあり得ないし失敗することなんてまずないわ。河童の肉はそのまま食べると強烈な生臭さに耐えきれず吐いてしまうんだけど、油で揚げることで余計な臭みを消して旨味だけが残るのよ!」


 自分が作った料理を自画自賛するのはいつものことであり、他人の作った料理を酷評するのも当たり前のことで、他人が作った料理には必ずケチをつけるのだ。


 「お寿司はわさび醤油をつけて食べるのが一般的なんだけど、この河童巻きは余計な醤油なんていらないわ!だけどこの河童巻きを食べる権利があるのは私だけなんだから、あんた達にこの河童巻きを食べさせてあげることができなくて本当に残念だわ。」


 霊夢は河童巻きの説明を視聴者にすると、ものすごい勢いで河童巻きを貪り始めて30分足らずで200本全てを食べきってしまった。前作を読まれている方なら蛇足でもあるのですが、霊夢の食欲は幻想郷最強のフードファイターである亡霊姫の西行寺幽々子に勝るとも劣らないので、この程度なら瞬時に食べてしまう食欲を持っているのだ。


 「あぁ、お腹いっぱいで満足したわ。それにしても私の作った河童巻きと兎鍋ってとんでもなく美味しいのね!明日は何を食べようかなぁ?幻想郷は食材がいっぱいだから、なんだかんだいいながら材料だけは無駄に確保できちゃうのよね。あとかた付けをさっさと済まして、トイレに行っていっぱいうんちをして、お風呂に入って寝るだけだわ。」


 河童巻きと兎鍋をすべて食べ終えると、霊夢は10分ほど休憩を取って料理道具一式を流し場にもっていき洗うのだが、使う洗剤は八雲紫から強引に奪った万能洗剤を愛用している。この洗剤の素晴らしいところは、一度で脂汚れを落とすだけでなく研磨剤も兼ねている優れものである。


 皿洗いを済ませてからトイレに行くのは、仕事時間は一度もトイレに行かないのでその分をまとめてこの時間にするのは霊夢の生活習慣になっている。その後は入浴を済ました後に就寝につくのだ。


 幻想郷では人間が圧倒的に弱い存在であるが、力を持った人間は妖怪に退治してその肉を喰らう事でより強い力を身につけているのだ。博麗の巫女は幻想郷の食物連鎖の頂点に君臨する存在であり、スキマ妖怪の賢者も月の頭脳はおろか、幻想郷で力のある妖怪達ですら敵わない絶対的な強さを持つ神の申し子であると共に、残酷無比で敵対するものを容赦することなく捕食することが許される唯一の人間である。


 幻想郷では我々外界でも概念や常識が一切通用せず、究極の実力主義が成り立つ弱肉強食の世界なのだから、力の弱い外界の人間の我々は捕食者である妖怪の脅威から逃げまわり日々を生き延びるだけで限界なのだ。
―あとがき―

 イル・プリンチベです。また滅茶苦茶で下品なSSを投稿して誠に申し訳ございません。

 今回は妖怪狩りの続編として執筆したもので、霊夢ちゃんに河童巻きと兎鍋を食べさせたいと思ったので、河城にとりさんと因幡てゐさんに犠牲になってもらいました。

 てゐは完全におまけ扱いですが、にとりさんに巨大ロボットにのせて好き勝手に暴れさせたかったので、余計な戦闘シーンを追加で執筆しました。にとりロボZの後継機ネタは使えるようで使えないかもしれませんね。

 幻想郷には常識が通用しないので、前作よりさらに想像を絶する料理を霊夢ちゃんに作らせました。
イル・プリンチベ
作品情報
作品集:
23
投稿日時:
2011/01/28 08:13:10
更新日時:
2011/01/28 17:13:10
分類
博麗霊夢
因幡てゐ
河城にとり
スカトロ
ゲロ
受け付けのお姉さんは美人なんです。
1. NutsIn先任曹長 ■2011/01/28 21:35:11
相変わらず読むだけで、私の夕食の侘しいコンビニ弁当がフルコースに変わりますね。

兎は予想の範疇ですが、かっぱ巻きと来ましたか!!
今回の食材達の最大のミスは、霊夢を怒らせたことに尽きます。

ギルドは男性同性愛者のたまり場、と。いや、別に東方の数少ない男性レギュラーがホモだと言っている訳ではないのですが…。
にとりロボZ、エスコートがいればもう少し使えたかも…。最後はラフレシアVSガンダムF91を髣髴させました。

幻想郷は、常識に囚われないのであって、断じて常識が通用しないのではないのですが…。
では、また食欲をそそる作品を楽しみにしています。
2. n ■2011/01/30 11:37:56
てゐの持ってたさい銭箱は回収したのか?いや・・・金の亡者ならしてるか・・。
次のメニューはミスティアの七面鳥ですかね?^^wkwktktk
3. 名無し ■2011/01/31 23:37:19
ニトリンガーZの突っ込みどころの多さに吹いたw
う詐欺も居なくなり平和な幻想郷に。
霊夢も屠殺場と調理場は分けないと衛生上よくないなw

次の獲物はなんだろ?無限再生する蓬莱ミートとかwヒキコ鴉に卵を産ませるとかw
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