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『よじれた実験』 作者: スレイプニル

よじれた実験

作品集: 24 投稿日時: 2011/02/10 16:07:16 更新日時: 2012/12/31 14:42:17
―――ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ

何かを砕き、穿孔する音

―――ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ

その音が段々と大きくなっていく

―――ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ

音が1つ鳴る度に揺れる

―――ゴリゴリゴリゴリ…

音が止まる。

―――ズブリズズズズズズ

何かを徐々に突き刺す音

―――ズズズズズズズズズ

それがどんどん飲み込まれていく

―――ズズズズズズズズズ

深く深く、ソレが侵入していく

―――ズズズズズ…

ソレが、侵入を停止する。









………



……
















【永遠亭より、博麗神社の巫女へ】
お求めの論文を発見したので、同封の資料と共にお確かめ下さい。
時間がお有りであれば、研究成果を頂きたい。













【博麗の神社の巫女より、永遠亭へ】
本書は、脳科学論文「PHYSICAL CONTROL OF THE MIND」における「スティモシーバー(Stimoceiver)」について取り扱う。
下記全ての報告書は研究対象の観察を元に記す。






                …





【1:装置取り付け】
本実験を行う為、被験者08番(東風谷早苗の劣化クローン、廃棄処分確定済み)と54番を本実験に使用する事とする。
予め被験者が暴れないよう麻酔で昏睡させておき、装置の取り付けを行う。
本実験では、装置を脳の前頭葉及び各種脳部位にインプラント作業を行う前に、それには事前に頭蓋骨に穴を開けなければならない。
頭蓋骨を露出する為に、邪魔にならないよう毛髪の切除すること、そして穴あけ機(名称不明)を使い、手回し機の要領で、頭蓋骨にインプラント可能な程の穴を開ける。インプラント数によって穴を空ける数は変化する。
穿孔作業中に気をつけたいのが、誤って脳を傷つけてはいけない事。脳は極めてデリケートな部位であるため少しのミスが実験に支障をきたす。気をつけて頂きたい。
調度良い穴が空いたら、インプラント作業を行う。
インプラントする物は電極と回路を上部に搭載した白金針(針金程度でも良い)でそのユニットを前頭葉に向けて突き刺す。
実験の程度によっては何本も突き刺して良い。しかし突き刺すにはきちんとした脳科学知識を知っていなければならない。

インプラントが完了したら、電極コネクタの上部の無線チャンネルの動作チェックを行う。無線の反応が良好なら成功である。
その後、コンクリパテで頭蓋骨を固める。固め終わったら、ユニットの余った部分を邪魔にならないように寝かせるように曲げる。
特に異常が無い場合はこれで装置の設置は完了である。

装置の概要としては、親機から受け取った電波を元に電極コネクタを通し針先から電流が流れ脳のその部位に作用する仕組みである。

本実験では3箇所、左右対称にする為1部位事に2本、計6本のインプラントを行った。
インプラントした場所は尾状核、視床下核、黒質緻密部である。
これらは極めてオーソドックスな部位であり、簡素ではあるが、部位毎の説明を行う。

【尾状核】…哺乳類が行動を起こす際、その行動を続けようとする場合には、まず前頭連合野の認知的指令が出される。それが尾状核に送られ、視床から運動野へと指令をループすることで、状況に合わせて選択されたパターン運動が行われる。
しかし、この尾状核に電流が流れると、機能が麻痺し、指令が中断される。つまりは、何かの行動が強制中断されてしまうことになる。

【視床下核】…やる気が出ない場合、それは今やっている事が不利益だと脳の報酬系(ヒト・動物の脳において、欲求が満たされたとき、あるいは満たされることが分かったときに活性化し、その個体に快の感覚を与える神経系のこと、哺乳類の場合はA10神経系)が判断をしているからである。
主に扁桃体という部位が感情的、気分的な評価を行うが、それが視床下核を通じて報酬系に伝わると、マイナスな行動は急速にやる気がなくなる。
この部位に電流を流すと、現在行っているという事に対してつまらないと感じてもそれを気づいたとしてもそれを感じない状態になるという事になる。

【黒質緻密部】…この部位は、辺縁系からの信号によって行動の評価、価値判断と行動の学習を行う。
この部位が電流により麻痺すると、価値判断というものが正常に行われなくなり、どんな事でも『拒否』という意識が湧いてこなくなる。



以上の備考を踏まえ、実験を開始する。


                …



【2:研究実施】

装置の取り付けが完了した後は実際に被験者の反応を見てみる。
昏睡状態から醒めた08番は、装置を付けられた事に強い憤りと困惑の表情を見せていたが、痛みは感じていないようである。それは、脳が痛みを感じない部位であるからだが、ともあれ実験に移るとする。
まず、最初に、きちんと機能するか、私は08番の腹部に死なない程度の打撃を与えた。
当然、08番は吐瀉し、こちらに向けて敵意の眼で見てきた。
それを見て、私はボタンを押した。そのボタンは、前述の尾状核へと繋がっており、そこへと電流が流れる
すると08番は今さっきまでの怒りは何処かへ飛び急に大人しくなった、それは装置が正常に作動している事を示していた。

次に、私は08番に「服を脱いで犬の真似をしろ」と命令した。
08番は激しく反発し、到底命令を聞きそうになかった。
ここまでは計画通りと、黒質緻密部を刺激するボタンを押した。
表面上何も変わりは無いが、再度同じ命令をすると、直ぐ様着ていた服を脱ぎ捨て四つん這いになり、犬の鳴きまでする程、従順に命令をこなした。
この事から、脳の部位に効率的に電流を送り、器官を麻痺させると、このように普段とまったく違う挙動を取ると言うことが分かる。
この実験では三箇所にしかインプラントしなかったが、論文には100箇所もインプラントした例があり、まだまだこれには先があることが伺える。

次に、人を傷つける事に対して何も思わなくなるのかの実験を行った。
08番に対して、黒質緻密部と尾状核に刺激を与え、ベレッタM92Fを握らせた。
08番は不審がる様子も無く、銃を握った。私は「その銃で54番射殺しろ」と命令した。
すると、08番は何の躊躇いも無くその銃で54番を撃った。
間もなく54番は死に絶えたが、08番は何もそれに対しての感情をいだいていないようである。
つまりは、被験者は正常の脳の活動をしてはいるが、部分的麻痺により、実際不当な命令であろうが、聞いてしまう状態になってしまうという事になる。
しかし、少し元気が無いようである。テストも合わせて、私は視床下核を刺激するボタンを押した。
すると、表面上元気になった模様である。これも論文通りであり、効果的な刺激方法である。

このように、電気的刺激により心を物理的にコントロールする事が可能であるということが立証された。


【3:研究応用】

前述の研究を踏まえ、私はこれを応用し、理想的な東風谷早苗を脳インプラントにより、開発が可能かどうかを考えた。
つまりは、脳改造による心のコントロールにより東風谷早苗を客観的に支配出来るかの実験である。
前述の実験に使った08番に新たに脳インプラントを施す事で、睡眠から運動、そして行動まで電気的に支配出来るか試すことにする。赤核近くを電気的に刺激すると、急に08番が眠り出した。睡眠は可能である。
運動については、脳蓋の一部を電流的刺激を行うと体のバランスを失い転倒した。
しかし、人体の操作の方は大きな動作自体は電気的刺激で動かす事が出来るが、何度試しても指先までの細かい作業はどうしても無理であった。
これは、運動系全般を麻痺させている為、余計な器官まで電気的刺激を行っているからであるのだが、もしかしたら、超微量の電気を局地的に与えると細かい運動操作が可能かも知れない。
参考論文ではあまりにも資料が足りない為、人体操作自体はとても難しい。
しかし、ある種従順な人形のように命令を聞くため、行動の抑制は極めて有用である。
何度か、試験的に他の早苗の殺傷実験を行ったが、それ全てを平然とこなしている。
つまりは、『心労』というものを物理的に排除出来る為、管理自体は楽である。だが、東風谷早苗という身体自体それほど強くない為、戦闘向きでは無い。
冷徹な戦闘機械という観点としては有用ではあるが、無線機器の範囲外だとスティモシーバーの電気刺激も行われなくなるため親機との遠距離行動は難しい。
打開策としては無線機器を内臓に埋め込み、埋め込んだ無線機を仲介機として遠距離行動も可能にさせるか、それとも運用するときだけ起こすようにするかの2つがあるが、前者が管理が簡単な為、そちらにする事にする。
無線インカムと呼ばれる遠距離でも声を通す機械を装着させれば、遠距離命令も可能な為、安全に運用も出来そうである。


応用に関してはここまでである。



【4:見解】

ここまでの実験で、個人的見解を下す事にする。
論文通りに電気的刺激により心を物理コントロールする事は可能である。
確かにボタンひとつで人の言う事を聞き、疲れを知らず、不満を言わない理想の人物が出来るだろう。
しかし、これには致命的な欠陥があり、これは私の目指す「東風谷早苗」に反する部分がある。
それは、巫女としての気高さがない。このスティモシーバーは確かに「理想的な命令」は可能である。
だが、それには巫女としての何かが足りない。つまりはただ聞くだけの木偶に成り下がってしまうのではないか?
つまりは、ただの人形では駄目なのである。守谷の巫女にはこれでは駄目だと私は結論付ける。
これまで通り、『クローン』による生産を主眼とする事とする。

これにてスティモシーバーに対しての実験は終わりである。


                           ―――博麗霊夢





………

……








「やっぱり近道ってのは駄目ってことねぇ…」

書き上げた書類をもう一度眼に通しながら博麗霊夢は溜息をついた。
ここは、博麗神社の地下…、霊夢は、その地下の実験施設、到底外の光が入らないその部屋の片隅で椅子に座って書類を書き上げていた。

「まぁ、良い経験が出来たわ。とてもね。」

書類から霊夢の隣に居るソレに目を向ける。

「………。」

08番と右肩に烙印が押されている元東風谷早苗は、その視線に対して何も言うことは無く、ずっと無表情でこちらを見ていた。
霊夢は、つまらなそうな目でその早苗を見た。
この早苗がスティモシーバーによって改造された早苗であり、今もその脳深くまで何本もインプラントされている。


「それにしても沢山出来たわねぇ…」


08番の他にも地下の収容所に100を超える程の早苗が檻に入れられている。
その中に僅かだが、素質があり、守谷の巫女として東風谷早苗の座についていた者も居るが、その殆どが生産の過程で「東風谷早苗」として不適格とされた者ばかりである。
この地下の収容所にも限界がある、だから定期的に「処理」しなければならない。
霊夢に取ってそれが唯一の娯楽のようなものではあるが、ここまで色々な処刑方法を試したりした。
ギロチン…絞首刑…銃殺…etc、だが最近になってその手法も数少なって霊夢も飽き飽きしていた。
人間の処理というものは、存外面倒なものである。
身体が吹き飛べば臓腑が周囲に飛び散るし、糞尿は臭い。そして血は中々取れない。
まぁ、死体の後処理については、同じ収容された早苗にやらせているので別に構わないのだが、霊夢は楽しめさえすれば良いのである。
霊夢でさえ、こうまで「失敗作」がゴミ溜めのように大量生産されるとは思いもよらなかったのである。
これは、東風谷早苗自体が駄目なのか分かりかねるが、数を作るしかないだろうと、もしかしたら、ある日突然、思いもよらない形で誰もが認める「東風谷早苗」が出来るかも知れない。
霊夢は度重なる実験と思案の日々で何か解決策を探していた。
永遠亭に協力を依頼し、指南を仰いだが、人体の扱いは極めて難しい為、数をこなすしかないと答えられた
しかし、もしかしたらと、今回行った「スティモシーバー」を効率的に行えば人為的に可能かも知れないと論文を送ってきたのだ。
霊夢は、それにかなりの期待をしていたが、実際やってみると霊夢の考えるものではなかった。

「これじゃあ、ただ限定的に言う事聞く機械みたいなもんだしねぇ…」

その右手には数個のボタンが付いたリモコンが握られている。
このリモコンが08番の脳にインプラントされているものと無線で繋がっている。

「そうだ。面白いこと考えたわ」

ずっと同じ体勢で居る08番を冷ややかな目で見ながら、霊夢はその準備を始める為、立ち上がった。

「………。」

08番は何も言わず霊夢をただただ見ていた。







………


……







「ふ〜ん♪ふふふ〜ん♪」

可愛らしい鼻歌が聞こえる。その特徴的な振袖をはためかせながら、東風谷早苗は守矢神社の木張りの通路を今にも踊りだしそうに歩いていた。

「おや、早苗、ご機嫌じゃないか。何かあったかい?」

にょきっと、居間からモグラたたきのモグラのように顔を出す、2柱の1人、八坂神奈子。

「あ、神奈子様♪いえ、何でもありません♪」

声をかけられ、怪訝そうな顔一つせず、信仰する神に笑顔でそう答える早苗。
その笑顔を残したまま、早苗は本殿の奥へと消えて行った。






「神奈子」


早苗が行った後、2柱のもう1人、洩矢諏訪子が静かに神奈子の名前を呼んだ。

「あぁ、分かってる。」

早苗が去った後の廊下から諏訪子の居る居間へと目を移す。
諏訪子はちゃぶ台から少し離れた所できっちりと正座していて、その双眸はしっかりと神奈子の方を見ていた。
神奈子は、ふぅと息をひとつつき、諏訪子と対面するように正座する。

「早苗、またしちゃうよ」

「あぁ、今回の早苗も耐え切れなかったのかい」

「このままでは信仰がなくなって、私達消えちゃうよ」

「今まであった信仰もどんどん減りつつある。霊夢は何をやっているんだ…」

「もう少し、もう少しできっと…」

希望があるかのように、2人は落ち着いた声で話す。
確かに、早苗は知っていないが、守矢神社の信仰が少しずつではあるが、減りつつあった。
それは一番初めの早苗の時からもであったが、何度も挿げ替え挿げ替えやっている今も、その勢いは止まらなかった。
まだ先ではあるが、この日々が続けば遠くない日に諏訪子と神奈子は消えてしまう。
2人とて、何もしなかった訳ではない。きちんと幻想郷各地に出向いたり、力を与えたりもした。
だが、しかし問題は風祝の東風谷早苗にあった。2人がどう指導しようが、きちんと聞かないのだ。
それは生来の性格かどうかは知らないが、参拝客にも表面上の優しさだけを振りまいているだけである。
頼みの綱である霊夢も、まだきちんとした結果が出せてない状況、2人にとっては早く打開したい問題であった。

「今の早苗もダメだったって…訳。」

「なら、また処理するしかないねぇ…」

2人の意見が合致し、諏訪子が立ち上がる。

「霊夢に連絡するね。」

神奈子はそれを黙って見送った。










………


……









夜、満月が守矢神社から少し離れた寂れた小屋をくっきりと照らしていた。
とっくにガタがきているその扉がゆっくりと開く。
中から出てきたのは東風谷早苗、諏訪子の予想通り、その股ぐらは愛液と白濁でまみれていた。
続くようにわらわらと男達が10人程出てくる。男達は早苗の身体目当ての参拝客である。

「いやー、早苗ちゃん。処女だったのにあんなに気持ちいい顔しちゃって」

背の高い男が、歪んだ笑みを浮かべ早苗の肩を叩く。

「はい♪セックスがこんなに気持ちいいなんて思いもしませんでした♪」

まだ余韻に浸っているかのような顔で行為の感想を述べる早苗、その言葉に男達はいやらしい笑いを浮かべていた。

「ま、早苗ちゃんが空いてるなら俺達いつでも来るから、ね。」

背の高い男が、そう言って、他の男達を見やりながら言った。
他の男達は今さっきまでの行為について口元が歪んでいるのを隠さず口々に言っていた。

「そうですね♪またシたいです♪毎日♪」

あ、でもと背の高い男が何かを思い出したかのような声を上げる。

「神社の方、良いの?」

その言葉に、早苗はそんな言葉あったかのような顔をした。

「良いんですよ♪守矢神社は神奈子様と諏訪子様がいますし♪私はそう頑張らなくても♪安泰です♪」

早苗は、快楽の味を知り、神社の事を今さっきまで頭から放り出していた。
男達と交わる事の気持よさに、早苗が気づいてしまった。

「でよぉ…早苗ちゃんのアソコの気持よさったらなぁ…」

早苗の後ろで、小太りの男が痩せた男と行為について自分の武勇伝のように語り合っていた。

「あぁ、そうだそうだ。アソコも気持良かったがケツも中々―――あっ?」

ぱすっと、袋から空気が抜けたような音が何処か遠くから聞こえた。
先程まで小太りの男と卑猥な言葉をべらべらと並べ立てていた痩せた男の口が止まる。
小太りの男が怪訝な顔でその男の顔を見る。

「は?」

小太りの男は、意味が分からない顔をしていた。
何が起こったかと、早苗と他の男達も痩せた男の方へと目をやる。
小太りの男が、痩せた男の顔を覗き込んだ。


「うわあああああああああああああああああああああああああ!!!!」

小太りの男がえんがちょと言わんばかりに痩せた男から離れ、その拍子に尻餅をついてしまった。

痩せた男は額を何かで撃ち抜かれ、物言わぬ死体と化していた。

他の者達もそれに気づき、散るように離れた。

また、ぱすっという音が2度聞こえた。

その音と同時にぎゃあと男の悲鳴が1つ上がり地面に前のめりに倒れ伏す。


「何だ!何だ!」

小太りの男がまだ立ち上がれず喚く。早苗は2人の死体を見て、失禁を覚えそうな感覚に陥っていた。

「何かに襲われている。はっ早く逃げないと!」

背の高い男が叫び、森の中に消えていく。他の男達もそれに続いた。小太りの男と早苗は逃げ遅れてしまった。












「はぁ…はぁ…何だよ何だってんだよチクショウ!」


背の高い男が悪態つきながら森の中を無茶苦茶に走る。他の男達もそれに金魚のフンのように着いて来る。

「俺達が何かしたってんのかよ…ん…?」

先頭を走っていた背の高い男の足が止まり釣られて他の男達の足が止まる。
獣道に近い山道の先に、逃げ遅れたはずの早苗が居たからである。
男達は他に近道でもあったのかと不思議そうに、近寄る。

「あ…あれ?早苗ちゃん。随分早い…」

「………。」

山道の先に居る早苗は何も答えなかった。

「そうだ、俺達の隠れ家があるんだ。そこに行こう!そこなら見つからないよ。」

早苗の手を取ろうと背の高い男が近づく。でも背の高い男は早苗がこんなに無表情だったか?と思っていた。

「………《08番、殺しなさい》」

3メートル程までの距離まで男が近づいた所で、早苗の耳から電子音が聞こえた。とても若く何処かで聞いた事のあるような声だった。

「……はい。」

早苗が、冷たく呟いた。右手が持ち上がる。

「あっ、あれ早苗ちゃんどうしたの?」

男の動揺した声に、早苗は何も答えなかった。
男を指差すように向けている右手には…その身体には似合わない取っ手のようなものが3つ程付いている無骨な塊が握られて―――

















「ひゃっ」

小屋近くに取り残された早苗は、連続した爆発音のような音に驚いた。

「な、なんだ!」

一緒に取り残された小太りの男は、慌てふためき忙しない鶏のように辺りを見回していた。
もう一度、同じ爆発音のような音が小屋まで届いた。

「何が起きているんだってんだ!」

小太りの男が見えもしない何かに向けて悪態をつく。

「わっ私にも分かりませんよ!襲われる理由も無いですし…」

「兎に角、俺は逃げるぞ!ここじゃあ危ない!」

小太りの男が、森の中に入ろうとした。

「………。」

森の中に、東風谷早苗がいた。

「あっ…あれ…」

小太りの男は、狐に包まれたかのような感覚に陥っていた。

今さっきまで自分の後ろに居たはずの早苗が、自分の前にいるのだ。
男は後ろを振り返った。そこには早苗がいた。

「これ…どういう…。」

小太りの男の問いに誰も声を与えぬまま、目の前にいた早苗から森の中を照らすような連続した火花が上がった。
轟音の音律が鳴り止んだ後、細切れの肉塊のようなモノが地面に倒れ伏した。

「ひぃっ!」

硝煙を挙げている右手のモノを下げ、森の中を居たソレが月の光に照らされ顔を映す。

「えっ…私…?」

早苗は、自分と瓜二つのソレを見て驚いた。
何処をどう見ても、自分と同じ体型で、同じ顔なのだ。
違うところと言えば、その右手に持っている黒い固まり、背中に何か背負っているという点だけだ。


「………。《あぁ、聞こえているかしら?》」

瓜二つの早苗の耳から電子的に増幅させられた声が聞こえる。
それは早苗が良く知っている女の声だった。

「霊夢…さん…?」

そう、知る人ぞ知る博麗神社の博麗霊夢である。それが、自分と瓜二つのソレの耳からしゃべっているのだ。

「………。《やっぱり今回もやってしまったわね、まぁ良いわ。今回は連れて行くのも面倒臭いしこの場で殺すことにするわ。》」

「は…えっ…?」

「………。《あぁ、知らないわね。別に知らなくて良いわ。08番、殺しなさい。》」

霊夢の命令に、無言で頷く08番と呼ばれた早苗、それと同じく右手が水平に持ち上がる。

「えっあっ…嫌だ!死にたく…死にたくない!」

右手から向けられた針のような殺意を感じ脱兎の如く早苗が守矢神社の方へと逃げ出す。
早苗がいたところには、轟音と共に黒い嵐が空を切りながら何処かへと飛んでいった。

「………。《みっともないったらありゃしない。…追跡して殺しなさい。》」

冷徹に08番に聞こえる霊夢の声、その声に、08番は無表情ではい、と答えた。














「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」


時々後ろを確認しながら、守矢神社まで逃げる早苗。
小屋から守矢神社まではそう遠くなく、裏口までは後10メートルと言わんばかりの距離にあった。

「何で…何で…何で…!」

今まの意味のわからない出来事をそう評価する早苗、そして、裏口のドアへと手をかける。


「あっ…れ…?」

開かない、早苗の記憶では、鍵は掛けていないはずである。すると…誰が…?


早苗の思案が追いつかないまま、ぱぱぱっと連続した轟音が後方から鳴り響く。


「ぎゃあっ!」

その音と同時に早苗の右腕に激痛は走る。
早苗は何をされたか分からなかったが、その腕の傷を見て、自分が撃たれたのだと理解した。

「………。《いやぁ、残念ねぇ…"開かなくて"》」

何もかも分かっていたかのように、霊夢の電子的に増幅された声が聞こえる。
早苗は、今なお血が出ている右腕を抑えながら、キッと敵視するように08番と呼ばれる襲撃者を見る。

「何で―――」

「………。《あー、『何でこんなことするんですか』とか言おうと思った?もうその言葉聞き飽きたわ。》」

「えっ?」

「………。《まぁ、今となってはどうでもいいじゃない。08番、殺しなさい。》」

はい、と機械のように呟く08番と呼ばれた早苗がもう一度、その右手の黒い固まり…ベレッタM12Sのトリガーに指をかける。
とても

「ッ…!」

早苗は、歯ぎしりをした。最早早苗の逃げる場所は何処にも無かった。
















「………。《ちゃっちゃと回収しなさい。あんまり時間無いんだから。》」

はい、と呟きながら早苗だった死体を手際よく麻袋に入れる08番。
内臓は遠くまでへばりついていて、裏口のドアを汚くペイントしていた。

「………。《ソレの回収が終わったら下衆を穴にでも埋めておきなさいね。まぁ後処理は神奈子達が何とかしてくれるでしょ、それじゃ私は寝るから終わったら勝手に帰ってきなさい。あぁ、また代わりよこさないと…いたかしらねぇ…》」

ブツリと08番の耳元から切断される音。

「………。」

08番は持っていた銃をしまい、麻袋を担いで森の中に消えて行った。







…END
人間の脳って簡単ですね。
スティモシーバーについては80%程本当の話ですので、お暇があったら論文を見てみると良いと思われます。

量産型早苗は中々使いやすいネタですけど、次かその次ぐらいで完結するかもしれません。


>>NutsIn先任曹長様
気づいたら、ベレッタオンパレードでした、ちなみに背中に背負っていたのはベレッタAR70でした。
実際はもっとキモイ程の重装備だったんですが、遊撃手みたいな軽装備がいいかなーなんて思ってベレッタM12S、ベレッタM92F(サプレッサー装備)、ベレッタAR70という装備になりました。
スティモシーバーについては、思考をキャンセルしたり、強制的に従わせたりすることが本当に出来るので、そういったのも込みで20%か10%ぐらいはフィクションです。

>>2様
霊夢が今やっているのは、ポケモンでいう6V性格一致が出るまで永遠に羽化を繰り返しているようなもんですよ。ある意味、今までの作品はそれを揶揄しています。

>>3様
2柱は悪くないんや…早苗にちょっと優しいだけ…
とまぁ置いておいて、東風谷早苗のビッチはオリジナルの先天的なものだと思っているので、それがクローンに受け継がれている訳で、「良さそうな早苗」もやっぱりビッチになってしまうんですね。
誘う男達も男達ですが、それを受ける早苗も早苗だと思っています。
イシターが幻想入りすれば、早苗はそっちに鞍替えするでしょうね!

>>4様
ありがとうございます!拙い文章書きですが、これからもよろしくお願いしますね!

>>5様

スティモシーバーに関する資料が論文ぐらいとあまりにも少なかった為、脳の詳しい説明については参考にしてます。ザ・突貫クオリティ☆
スレイプニル
http://twitter.com/_Sleipnir
作品情報
作品集:
24
投稿日時:
2011/02/10 16:07:16
更新日時:
2012/12/31 14:42:17
分類
クロさな!
早苗
霊夢
クローン
ベレッタ系列
スティモシーバー
2/12コメント返信
1. NutsIn先任曹長 ■2011/02/11 01:29:31
はぁ…、早苗のビッチさは遺伝子レベルなのかねぇ。
ベレッタ社とタイアップでもしたのですか?M12Sとはこりゃまた日本ではマイナーな傑作短機関銃を出しましたね。

脳は生体コンピュータですから、電気信号である程度操作は出来ますが、実用化には程遠いですねぇ。
残り20%を占めるフィクション部分はロボット同然に操れるって所ぐらいですか。
08番の早苗がここまで使えるようになったのは、彼女の心が死んでしまったからなのかな?

このシリーズのラストには、理想の早苗は誕生するのか。期待して待っています。
2. 名無し ■2011/02/11 02:54:05
大量のコピーのなかのホンの一つまみ程度しか、少しはまともなのが出来ない早苗もアレだが、
貴重なそれらをことごとくオリジナル同様の出来にさせる二柱の対応にこそ問題ありそうだ。
3. 名無し ■2011/02/11 02:58:33
 ここまで来ると早苗がビッチなのか人里の男集が下衆なのか解らなくなってきた・・・
もう、人格そのものをインストールし直さないといけない気がしてきた・・・
理想の巫女像ってなんだろう?

早苗さんも仕えてる神がイシターなら最高の巫女だったのにw
4. 名無し ■2011/02/11 04:24:41
毎回すごく好きな内容です
5. 名無し ■2011/02/12 15:53:52
こちらはア理科を参考にされたのでしょうか?
6. ■2011/02/13 11:17:05
遺伝子操作すればビッチは治るのかな(チラッ)
7. 名無し ■2011/02/15 03:16:12
自分の頭にインプラントして仕事や作業が捗る用にしたいなぁ…
報酬系マジ麻痺させたい。
8. 名無し ■2011/03/12 11:11:02
よく考えてみたら
親の早苗(本物)が6逆Vだから子はどんなに頑張っても6V出来ないっていう。
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