Deprecated: Function get_magic_quotes_gpc() is deprecated in /home/thewaterducts/www/php/waterducts/neet/req/util.php on line 270
『楽しい薬』 作者: ゲイリー・ベン

楽しい薬

作品集: 24 投稿日時: 2011/02/23 12:28:43 更新日時: 2011/02/23 21:28:43
とある集落の外れにコロコロとタイヤが転がってくる。

それを追いかけて、棒を持ったチルノと大妖精が走ってきた。

どうやらタイヤを棒で転がす遊びをしていたようだ。

「明け方からずっとやってたけど…飽きたね、さすがに…」

「そ、そうだね チルノちゃん」

大妖精は目に見えてやつれた顔をしている。

時刻は昼を過ぎ、飲まず食わずの強行軍であった彼女らは

肉体、精神ともに追い詰められていた。

「でもしょうがないよね、今日はこれで遊ぶって二人で決めたんだし

途中でやめるだなんて、信念がない奴、あたい絶対許さない!」

「……」

昼食を提案しようと思った大妖精だったが、そうもいかなくなってしまった。

そんな二人の目に奇妙な耳をつけた人影が映る。

鈴仙とかいう月面ウサギの妖怪で、薬物の製造、販売業を営んでいる組織に所属しているらしい。

「お腹が減ったね、あいつ何か持ってるかもしれない」

そういうとチルノは鈴仙の方へ向かっていった。






「あら妖精じゃない 今忙しいから…」

「何か食べるものあるだろ、こいつをやるから交換して!」

チルノは懐からザリガニを出し、鈴仙に突きつけた。

「うっ 臭!?」

いつ入手したのかは不明だが、明らかにザリガニは腐敗していた。

強烈な腐乱臭が鈴仙の嗅覚を襲う。

「ほれ!ほれ!」

鈴仙の顔面に腐ったザリガニをすりつけるチルノ。

「き、汚い!」

チルノの暴挙にたまらずザリガニを払いのけ、地面に叩きつけた。

汁を飛び散らせながらバラバラになったザリガニ。

涙目で震える鈴仙と残骸を見つめたまま動かないチルノ。

気まずい空気がたちこめ、言葉の出ない大妖精はただ立ち尽くす以外の選択を許されなかった。

チルノの目線とザリガニとの間にぼやけた何かが飛び込んでくる。

それが鈴仙の足だと認識した頃、チルノの肺から空気が抜けきっていた。

へそのやや上にめり込んだつま先が静かに引き抜かれると、チルノは痙攣しつつ、必死に抜けた空気を求めた。

「……っ! ぅ…ぅ…!」

「信じられない! こんな真似して、仕事中じゃなけりゃ殺してるところよ!」

顔に残る不快な臭いと腐った汁をぬぐいながら鈴仙はチルノらに背を向けた。

「チルノちゃん! しっかりして!」

「う……ふ、ふぅ〜ふぅ〜…」

痙攣からリカバリーしたチルノは無表情のまま、
立ち去る鈴仙の後姿を見つめている。

「許さないよ、絶対に許さないんだよあいつ…」

口以外は微動だにせず、ぼそぼそとつぶやくチルノ。

「チルノちゃん、今日はもう帰ろう そろそろ日が暮れるし…」

今日という日に心底嫌気が差していた大妖精はチャンスとばかりに提案する。

「いやだめだ、この借りは一両日中に返す、絶対にだ!」

妖精の中では最強と評されるチルノに大妖精は反論できなかった。

ころがし棒を握り締めたチルノは鈴仙の後を追う。

このまま帰ると後で何をされるかが怖かった大妖精もタイヤを抱え、チルノについていく。






それほど時間も経っていなかったので鈴仙にはすぐ追いついた。

「へへ、思い知らせてやる…」

氷柱を構成したチルノは鈴仙の後頭部に狙いをつけ勢いよく放つ。

高速で目標に接近する氷の弾丸は、あと数メートルというところで砕け散った。

「!?」

思わぬ結果に驚く大妖精。

鈴仙は振り返りもせず、自分の後ろを指差していた。

向かってくる氷塊を目視せずに弾丸で打ち抜いたのだ。

「ふふふ、波長を操る能力を使えば、レーダー…

そこまで言いかけて、鈴仙は自身の体に異常を感じた。

(体が、動かない!)

不敵な笑みを浮かべ、後ろを指差した間抜けなポーズのまま固まる鈴仙。

よく見ると体が凍り付いている。

チルノの放った氷柱は強烈な冷気を閉じ込めた特殊な弾頭で、
破砕されると周囲を凍りつかせるタイプだった。

(う、迂闊だった…たかが妖精にこんな…)

チルノが追撃してきたら完全に叩きつぶしてやる。

来なければそれでいいし、向かってきたら実力の違いを見せ付けてやるつもりだったが、墓穴を掘った。

鈴仙の近くに降り立ったチルノは、棒で彼女の体をつつきながら品定めするように観察し始めた。

「な、何するつもり!? どう考えたってあんたが悪いんでしょ!」

「……」

「何とか言え! 後で絶対に仕返しに行ってやるから覚悟しときなさいよ!」

「……」

鈴仙の言葉がまるで耳に入らない様子で、チルノは棒で手のひらをぺちぺちと叩き、感触を確かめていた。

そして棒を握り締め、鈴仙のすねをめがけてフルスイングする。

「ふんっ!」

ゴツン、という硬いもの同士がぶつかり合う音が聞こえ、鈴仙は歯を食いしばり、遅れてやってくる痛みに備えた。

「うぐっ!…ぅ…んん…」

妖精の力など、とタカをくくっていたが、思いのほかチルノのスイングには力強さがあった。

はっきり言ってその辺の成人男性と大差ない力だ。

「ザリガニはきっともっと痛かった…」

「…は?」

黙っていたチルノが一言つぶやいた。

「ザリガニはなあ! バラバラになっちゃったんだよ!バラバラになるってのはすごく痛いんだよ! 分からないのか!?」

「し、知らないわよそんなの! だって…」

鈴仙はまた一つ後悔することになる。

常識の通用しない相手とは一切関わらない、会話もしてはいけないのだ。

「お前が知らないなら教えてやる…その体にな!」

チルノが次に狙ったのは顔面。

身動きの取れない無防備な鈴仙の顔に棒がめり込む。

「うぎっ」

「チルノちゃん! そこは体じゃないよ、顔だよ!」

「お、おう…悪い悪い じゃあ今のなしで」

鼻血がぱたぱたと落ちる鈴仙。

「ま、待って…ザリガニ、謝るから!」

「聞きたいのは謝罪じゃなくて…お前の…悲鳴なんだよぉ!」

次に目星をつけたのは鈴仙の腹部。

「うげぇっ!」

じわりじわりと腹の奥底から痛みが湧き上がってくる。

と同時に肺の下辺りの筋肉が強制的に収縮し、ぽこりと深く沈みこんだ。

それに圧迫された胃から、消化途中の内容物が押し上げられてくる。

「う! う、うおおえぇ…」

黄色っぽい嘔吐物がもりもりと鈴仙の口からはみ出してきた。

「うわっ きったねえ!」

ボタボタと落ちてゆく鈴仙のゲロはたちまち広がっていき、ひどい悪臭を放っていく。

「くせーなオイ! まだ抵抗するつもりか!」

鈴仙のゲロによる反撃に激昂したチルノは思い切り彼女の背中を蹴り飛ばす。

吐しゃ物に倒れこんだ鈴仙は、体の凍結こそなくなっていたものの、反撃の意思は欠片も残っていなかった。

「ふん、勝利の後はいつもむなしい…… お?」

倒れた鈴仙のそばにはカバンが落ちている。

チルノは戦利品とばかりにそれを持っていこうとした。

「それ…持ってかないで…」

チルノはゲロまみれの手を伸ばす鈴仙にツバを吐きかけると、無常にも飛び去っていった。





「何が入ってるのかな?」

奪ったカバンの中を物色するチルノ。

「お、これは…」

中から取り出したのは小さなビン。

ふたをあけると白い錠剤が沢山入っている。

「きっとラムネ菓子とかいう食べ物だろう」

「毒かもしれないよ、危ないからやめとこうよ…」

そう忠告する友人を無視してチルノは錠剤を一掴み口に入れた。

ボリボリと噛み砕く彼女だったが…

「うーん…甘くはないし、おいしくもないなぁ…」

そう感想を述べるとビンを放り投げる。

「もう帰ろうか」

大妖精が退屈そうにタイヤを叩きながらつぶやく。

そして、チルノの返答を確かめるべく、彼女のほうを向くと…

「フーー…フーー…」

突然チルノの鼻息が荒くなった。

「チ、チルノちゃん…?」

歯を食いしばり、目を大きく見開いたチルノはウーウーうなりながら左右に揺れ始めた。

その異常な動作に恐れを抱いた大妖精は彼女から距離をとる。

「どうしたの チルノちゃん!?」

さきほどのころがし棒を思い切り握り締めたこぶしからは血がにじんでいた。

「んーーんーー! フーー! タ…タイヤ!」

全身の筋肉が異常なまでに盛り上がり、血管がみちみちと浮き上がってゆくチルノ。

「こ、転がす! タイヤ転がす転がす! コ・ロ・ガ・ス! ア゛ーーーーー!」

タイヤに突進したチルノは手にした棒でタイヤを叩いた。

ぶよん!とタイヤが跳ねる。

「ウワーーー!楽しい楽しい! ターーノーシイィィーーー!」

眼球が裏返り、完全な白目を剥いたチルノは全身で楽しさを表現した。

「チルノちゃん…」

変わり果てた友人にかけてやる言葉が見つからない大妖精は己の無力さを痛感した。

全身が赤黒く変色したチルノからは湯気が立ち上り、目、耳、鼻からは血液が流れ出していた。

「タイヤ!タノシイ! コロガスタノシイーー!」

蒸気を噴出させつつ、一心不乱にタイヤを転がしていくチルノ。

バスンバスンと棒を叩きつけ、すごい速さでタイヤが斜面を転がっていく。

だがチルノ、その先は崖だ!

大妖精がそう思ったときはすでに遅かった。

タイヤを追いかけるチルノの体は見る見る小さくなり、やがて見えなくなった。

普段であれば、何の問題も無く空を飛べたはずだが、正気を失ったチルノにそれを実行するのは無理だった。

万が一の可能性を信じ、友人の安否を確認しに行く大妖精。

そこには予想を裏切ることなく、地面に叩きつけられた氷精の無残な姿があった。

「チルノちゃん!」

衝撃で眼球が飛び散り、潰れたカエルの死骸のようになったチルノを抱きかかえる。

ビクビクと痙攣しており、みるみるうちにその体がしぼんでいく。

元のサイズよりも一回り小さくなったチルノの残骸はやがて動かなくなる。

原型をとどめていない姿であったが、確かにその表情は満足げに歪んでいた…
以前どこかで、短い文章で書きたいネタをやりきる
という目標を立てたんですが、やはり書くと長くなってしまう。

短い文章なのに面白い作品というのが作りたいです。
それが無理なら、長いけど読ませてしまう作品を。
ゲイリー・ベン
作品情報
作品集:
24
投稿日時:
2011/02/23 12:28:43
更新日時:
2011/02/23 21:28:43
分類
チルノ
鈴仙
大妖精
暴力
1. 名無し ■2011/02/25 14:14:34
すげぇ笑った
2. 名無し ■2011/02/26 04:22:25
なんでそんなとんでもない薬を持ち歩いてたしww
名前 メール
パスワード
投稿パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード