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『懐古趣味が行きすぎてこんなん書いた…』 作者: johnnytirst

懐古趣味が行きすぎてこんなん書いた…

作品集: 24 投稿日時: 2011/02/27 19:10:26 更新日時: 2011/02/28 04:10:26
――――守矢神社



「どおー、片付いた〜?」

声の主である洩矢諏訪子はその日、急遽始まった大掃除の発起人でもある。

「知らないよ。わたしは片付けるもんなんて無いからね。」

諏訪子の声に反旗を翻したのは、守矢神社もう一人の神であり諏訪子の思いつきの被害者でもある、八坂神奈子。

「だいたいなんなのさ、急に片付けるって、どう見たって綺麗じゃないか」

「どこが?こたつの位置はずれてるし、ゴミはごちゃごちゃのままだし。」

「まだごみの日じゃないだろう。まとめるのは当日の朝でも構わん」

「そんな事言ってまとめるのはいつもわたしと早苗の役目じゃん。」

「当然だ、わたしは寝てるからな。」

「はぁ?」

と、いつもの日常を繰り返す二神を尻目にこの神社の風祝。東風谷早苗はせっせと自室の整理をしていた。

「捨てるものか、ほとんどそうなんですけどねぇ…」

部屋の向こうでは二神が未だ抗争を広げているが、もはやそんな「日常」は早苗にとって気にもならない。

「みんなそれぞれに思い出が…って我ながら未練たらたらですね。」

そうため息を付いて早苗は、整理のために引っ張り出し、並べたものを見回す。

教科書、バック、学生証、色の剥がれたマスコットストラップ、もう開けることもない自転車の鍵、通学時に使っていたマフラー、最初はなれなくて靴ずれを幾度と無く作ったローファ。

―――――――we-Tech SCAR-L、マルイM4SOPMOD(次世代)、ガス缶(SS)、G&GBB弾、BDU(ACU)、DBIプレキャリ、LiPoバッテリー、自作PC、学校用ハイエンドノートPC…

どれも、この幻想郷では必要ないもの、いわばガラクタである。

(カッパさんたちのおかげで電気はきてるしPC とかサバゲグッズの方はまだ遊べるよね。)

そんな事を思いながら早苗はふと壁にかけられているよく手入れのされたブレザーに目がいった。

(…制服、か)

それは早苗が通っていた高校の制服である。
青のリボンタイに、白のブラウス、紺のブレザーに灰色のスカートとオーソドックスな体をなすその制服は早苗を過去に誘う。

(みんな元気かな…)

早苗はおもむろに制服に近づきそのポケットに手を入れる。

(ホントはアルバムに挟んでおいたほうがいいんだけどこの写真はここが一番だよね。)

ポケットから取り出した早苗の手には一枚の写真。
そこには5人の少女が映っている。中心には早苗。皆一様に笑っている。

ふと早苗は写真から目を離し、ベット脇にあるギタースタンドに立てかけたある黒いギターに目をやる。

(テレキャスター…)

かつて使っていたギター、もう誰かと弾くことはないそのギターが佇む姿は、今の彼女の共有できる過去のある「人」がいない孤独そののもののようだった。
早苗はまるで誘われるように立てかけたギターに向かう。
そして写真をベットに置くとおもむろにギターをとり、ストラップを首にかけ弾く。

(懐かしい…)

目をつむりコードを押さえるたび、ストロークするたび、懐かしい記憶が早苗の頭の中をめぐる。

「澪ちゃん、りっちゃん、むぎちゃん、先生……唯ちゃん…」

懐かしい友の名を口にし終えたときには早苗の頬目から顎へと一筋の水が通っていた。
もう会えない友人たち。もう少し、もう少しだけ記憶の中だけの再会を。

「さなえ〜〜〜、神奈子どうにかしてよ〜〜〜」

そんな早苗の思いを知ってかしらずか涙目の諏訪子が早苗の部屋に飛び込んでくる。

「す、諏訪子様っ?」

「え、早苗…ど、どうしたの?」

急なことなので早苗は涙を拭く余裕すらない。

「わ、わ、早苗?」

自分と同じ涙目の子孫を見た諏訪子は自分が先程まで半なきだったということを忘れてしまった。。

「諏訪子様ぁ…」

早苗は膝立ちになりギターを下げたまま諏訪子に抱きつくとそのまま小さい胸の中で嗚咽を漏らし始める。
突然のことで焦ったがとりあえず早苗の頭を撫でる。ふとベットの上の写真が目に入った。

(ギター…なるほどね)

「早苗…唯ちゃんたちのことが気になる?」

「う…ぐすっ、はい…」

早苗の抱きしめる力が強くなる。

「でも、…もう、戻れない、戻らないんです。自分で決めた…こと…ですから。」

「みんなの記憶を消すのは自分でやりたいって言ったのは早苗だもんね。」

諏訪子は早苗の答えるように強く抱き返す。

「早苗、唯ちゃんたちの様子、見てみようか?」

早苗は諏訪子を見あげる。その目には涙が浮かび顔は既にぐちゃぐちゃ。
そんな早苗の涙を諏訪子は微笑みながら拭う。

「早苗のおかげで信仰が増えて、全盛期ってほどじゃないけど、博麗の巫女と遣り合えるほど力は回復したし。」

「諏訪子様が良くても…私は…」

早苗はうつむき再び諏訪子の胸に顔を埋める。

「またあそこに、あの部室に行ったら、私は……帰ってこられる…自信がありません」

「不安なんだね。大丈夫だよ。早苗なら…」

「でも…諏訪子様に迷惑が…」

諏訪子は早苗の頭をすくように撫でる。

「早苗、たまには立ち止まって後ろを振り返ることも大切だよ。」

「人間ってね、いろんなコトを経て強くなっていくんだよ。神も同じ。簡単に切れる過去しか持ってない人間なんて薄っぺらいもんだよ。」

「諏訪子様…」

早苗は再び目をつむる。浮かんでいた涙が溢れ再び、頬を伝う。
そんな早苗を諏訪子は優しく包み込む。

「諏訪子様…唯ちゃん達元気かな…」

「唯ちゃん、隣の家で子供ころから仲よかったもんね。」

「不安なんです。私のいなくなった世界が正常に回ってることが。まるで…私が嘘だったみたいで、みんな…を……欺いてきたようで…」

「それはないよ。早苗はみんなを騙してきたの?」

「そんなことありませんっっ!!」

早苗は、諏訪子を見上げ涙に濡れてすでに赤くはれた目を見開き、強い口調で言った。

「でしょ?それに、早苗が嘘だったかって言うのは今から自分で確かめてくればいいじゃない。」

「記憶ってね、消したつもりでもなかなか消せないんだよ。こればかりは私たち神でもそう。ほらよく記憶喪失とかで人とか物の名は忘れちゃっても、その人が以前にやってた習慣、例えばギターが弾ける人は何も覚えてなくてもギターに関わること

だけは忘れてなかったりする。そういう事。」

「?…どういう事でしょうか?」

「ま、それは早苗が見て確認することだよ。」

「え?」

そう言うと諏訪子は早苗の両肩をつかみ、早苗を引き離す。

「早苗、私の目を見て。」

「…はい」

言われたとおり早苗は、諏訪子の目を見る。微笑みかける優しい表情を浮かべている。
やがて早苗は諏訪子の瞳に吸い込まれるような感覚に陥った。思わず目をつむると、今度は強烈な立ちくらみのような感覚。
たまらず早苗は目をつむったまま膝立ちで前のめりに倒れる。それを諏訪子が抱きとめてくれたのを感じたところで、

早苗の意識は一旦途切れた。











―――早苗。

「ん…」

誰かに呼ばれて、目を開けると、そこは自室ではなかった。

「え、ここはっ?」

―――起きた?早苗?

「諏訪子様?どこに?」

先程と同じ声、聞き間違いようのない声だった。

―――私は声だけだよ。それより、どうよ?これも早苗のおかげで持ち直した信仰のおかげだね。フンスッ!

いきいきと鼻を鳴らす諏訪子様を尻目に早苗はあたり見回す。

「諏訪子様、それよりここは…」

―――部室の前の踊り場だよ。

「それじゃあ、私。」

―――そ、早苗の考えてるとおり。でも早苗は他の人には見えないよ。さすがにそこまでは今の力じゃ無理かな。ごめんね

「う…ぐずっ…」

―――ほら、泣いてる暇はないよ、早苗が見たかったもの、ドアの向こうだよ。

「…は…い」

早苗は涙拭くと、懐かしいステンドグラスのあしらわれたドアに手をかけ、少し躊躇してノブを回す。

早苗は懐かしい紅茶の香りと暖かさに包まれた。






「みんな〜、お茶が入りました〜」

―――「むぎちゃん…まだお茶会…やってるんだ」

「ムギ、いつもありがとうな。」

―――「澪ちゃん…」

「よ〜し、私このモンブランいただき!」

―――「りっちゃん…」

「え〜ずるいよ、りっちゃん、私もそれが良かったのに〜」

―――「唯ちゃん…」




みんな…みんな、笑顔だ。よかった。みんな、かわらない。
早苗はそれ以上の言葉が出ない、色々な気持ちが溢れて言葉にできなかった。
ただ、涙があふれるだけだった。

ガチャ

不意に自分の後ろでドアが開いた音がした。
早苗が音の方向へ振り返る。

「すみません、先輩方、掃除当番で遅れてしまって。」

そこには、早苗の友人たちと同じ制服に身を包んだ、ツインテールの小柄な女の子が立っていた。

「あっずにゃ〜ん」

あずにゃんと呼ばれた少女は早苗の友人のひとりに抱きつかれる。

―――「かわいい、唯ちゃんが好きそうな子…赤いリボンタイ…?」

―――あぁ早苗。その子は後輩だよ。多分。

―――「後輩?」

―――幻想郷と外では時間の流れが違うんだよ。簡単に言ってしまうと外の世界のほうが時間が早いんだよ、早苗は幻想郷に来て1年経ってないよね。けど外ではもう1年以上は過ぎてるってことだね。

―――「なるほど、あっカレンダーがあります。」

早苗は壁に置かれたカレンダーに近づく。

―――「……2年…経ってるんですね。私たちが1年の時…私がここにいたとき赤のリボンタイは3年生でした。ということはこの子は2年生」

「やめて下さいよ。唯先輩」

嫌そうな顔をしながらもどこか嬉しそうにする少女を早苗は遠い目をしながら見つめる。
やがてツインテールの少女は先ほど抱きついてきた早苗の友人に手をひかれ、奥にいる4人の少女の和の中へと迎え入れられようとしていた。
しかし、ツインテールの少女は足を止め4人に向い疑問を投げかけた。

「あ、そうだ先輩方」

「どうしたのあずにゃん?」


「「ふわふわ時間」って私が軽音部に来たときにはサイドギターのパートが既にできてましたよね?まえに他の部員がいたんでしょうか?」


―――「!!」

早苗はその言葉に動揺した。
本来、幻想郷に移住した者はそれまでの世界での痕跡、証明はすべて消えてなくなる、最初からなかったように、幻想郷に住むとはそういうことである。
しかし、人に刻まれた記憶だけは残る。だからこそ消す。

記憶は全て消したはず。

―――「…なんで」


「あぁ、それな。」

「ちょうどいまそれについて話してたんだ。」

「たまたま手元にあったの、驚いたわ〜。まるで私が書いたようなんですもの。書いた記憶がないのに。」

「ムギちゃんは天才だからきっと寝ながら書いちゃったんだよ」

「意味わからないこと言わないでください。先輩」

でへへと言いながら頭をかく少女の暖かく緩んだ笑顔とは正反対に、早苗は目を口元に両手を置きただただ驚愕の表情を浮かべていた。

―――「諏訪子様、これは」

―――わからないねぇ、こればかりは。


「でもさ、これ見てるとな〜んか懐かしいんだよね。」

「あぁ、はじめから4人だったはずなのにな、今でも、梓のあとに誰か来るんじゃないかって思う時もあるし。」

「りっちゃんもなの〜?」

「私もだわ。」

「唯もムギもか……もしかして私たちが知らない誰かがこの軽音部にぃぃって澪、怖がらないの?」

「いや、なんか詞が浮かんだ。」

「マジかっっ!!」

「どんなの?澪ちゃん、私もなんか曲が書けそうなの。」

「ぜひ、聞きたいです!」

「じ、じゃぁ…」

コホンと一つ咳払いすると、姫カットの少女が目をつむり詞を紡ぎ出す。




奇跡

だれも知らないはずの君を私たちは覚えている

みんな忘れたはずの君を私たちは覚えてる


いつでもすぐ君のギターの音おもいだせる

君はココにいた。

それだけで私たちはいつでもつながれる

ヒトツになれる



ここにあるよ、君が残した奇跡が

ここにあるよ、私たちが刻んだ奇跡が


ありがとう









早苗は最後まで詞を紡ぐ少女が見れなかった。
目からは止めどなく涙が溢れ口元を抑える手を伝い、床へこぼれていった。

―――これは、奇跡としか言い用がないねぇ……さすが我が子孫…

みんなが幸せでさえあればいいと思っていた。私のこと忘れても、私の中にはたしかにみんなとの楽しい思い出もあるのだから。

でも、不定形で曖昧だけど皆しっかりと早苗の存在を覚えていた。

それは早苗にとって十分すぎる結果だった。



―――あ、早苗…そろそろ時間がまずいかも。

―――「う…ぐすっ…すみません、諏訪子様」

―――お帰りは目覚めた場所ね。大丈夫?

―――「大丈夫です。」

早苗は友人たちに背を向ける。

そう思いドアノブに手をかける。



「「「「「ありがとう」」」」」




友人たちの声に早苗は振り返った。
そこには相変わらず談笑を続ける友人たちがいた。最後のフレーズで盛り上がっていたらしい。


―――「ありがとう」


早苗は微笑みながらそう言うと、懐かしくて温かい紅茶の香りに包まれた部屋をあとにした。












「さて、あらかたまとまった。諏訪子のせいでこんな面倒なことに、あとでどうしてやろうか…」


神奈子はまとめたゴミをダストボックスに放りこむ。
そして神である自分にゴミ出しなんて事をさせた諏訪子に対する仕打ちに思考を巡らせながら玄関へと戻る。


「お〜い、諏訪子ゴミ出し終わったぞ」

どの部屋からも返事がない、まるで家がただの屍のようだ。
実際屍になられても困るのだが。
仕方が無いので家の中で諏訪子の居そうな場所を探すが見つからない。
残るは早苗の部屋のみ、

まさかあいつ、私に抜け駆けして早苗の下着をっっ。

神らしからぬ邪念を抱きつつ神奈子は早苗の部屋へ走る。
そして勢い良くドアを開けた。


「諏訪子っっ!お前ばっかりいいおもぃ……どうした?」

「ちょっとね。」

早苗は諏訪子に抱き抱えられて眠っていた。
その涙で赤くなった目元は幸せそうな笑みを浮かべている。

「私はお邪魔かな?」

空気を読んだ神奈子の問に諏訪子はちょっとだけと答えると、神奈子は早苗の部屋のドアをゆっくりと閉じた。

暗くなった部屋に早苗と諏訪子は二人だけとなった。

「みんな早苗が大好きなんだよ。今回のことも奇跡なんかじゃないかもね。」

諏訪子は早苗をベットに寝かせた。
その際に首かけていたギターを外しスタンドに戻し早苗の部屋をあとにした。

「……」

「諏訪子様、神奈子様、申し訳ありません、少しひとりになりたくて」

そう言うと、早苗は起き上がりベットを降り、ギタースタンドに置かれたテレキャスターの前に立つ。

早苗はギターの弦を弾くと少し不思議で懐かしくそして温かい紅茶のような音色がした。

「大好き を ありがとう…」

早苗は友人たちとの写真をギターのフレットと弦の間に挟んだ。

ギターから、すでに孤独の影が消えていた。
…これ、いいのかなぁ
johnnytirst
作品情報
作品集:
24
投稿日時:
2011/02/27 19:10:26
更新日時:
2011/02/28 04:10:26
分類
早苗
諏訪子
諏訪子
守矢神社
けい○ん!
音楽
回想
BD全巻購入勝手に記念
ガンさん嫌いなんだと思ってた。>けい○ん
1. NutsIn先任曹長 ■2011/02/28 08:06:17
これで、良いですよ。

アレは『!』が一つの時にBDを全巻揃えたことがありました。
もう、原作やCDと共に売り払ってしまいましたが。

海外版のSCARとな!?色は!?しかもガスガンときましたか!!サバゲで使えるのかな?

皆の記憶から消えても、
皆の心に刻み込まれた軌跡は消えない。
これは奇跡なんかじゃない。
当然の理である。
2. 名無し ■2011/02/28 13:48:17
「澪ちゃん、りっちゃん、むぎちゃん、先生……唯ちゃん…」

ちょちょちょwww
3. 名無し ■2011/02/28 20:51:40
フンス
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