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『東方蒼魔郷After Episode 後編』 作者: ヨーグルト

東方蒼魔郷After Episode 後編

作品集: 24 投稿日時: 2011/03/10 04:28:14 更新日時: 2011/03/10 17:39:38
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   東方蒼魔郷
     Ant. Final / End World
        後編

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辺りは静寂に包まれていた。

「どういうことだよ、紫」

魔理沙は紫自身からの回答を得られるのを期待した。
遅くではあったが、紫はようやく口を開くのであった。

「今回の異変については、蒼霧を発生させることは必須でもありませんでした」
「は?」



蒼霧異変はただの誤魔化しにしかすぎなかったのです。
私が達成させたかったのはただの、そう、幻想郷の住民の失踪です。
ただ失踪させるだけでは私が即疑われるか、他に疑う人が限定されてしまいます。

そこで起こしたのが蒼霧異変です。

原材料とかそういう類は無いですが、魔法としてこれを発生させる至難の業でした。
魔法的に規模が大きいのですから、悟られないのが大事なのです。

一応、これらの『蒼霧』だった魔法はバレずに済んだのですが、問題は他にありました。
そう、生き残らせる人のことです。

本気で異変を起こせば躍起になって対抗するでしょうしね。
そこで思いついたのが、複数の人を私への内通者にすることでした。
私への内通者にすれば今後の計画などが上手く通りますし、親しければ親しいほど、対抗者を言いくるめられます。

例えば、アリス。
あれは演技。
その他に見られた霊夢も、演技。
ただ、一例のその二人については、実際に落ちる所を見たわけですし、血痕などがなければおかしく見えてしまうのです。
とりあえずその辺は、何とかして誤魔化すことはできました。

次ぎなる問題は、幻想郷に戻した時にバレることなどの心配でしたが、問題はなかったのです。
内通者という内通者はだいたい殺しましたからね。
生きているものも何名かいましたが。
そう、蒼霧に自ら入った永琳は内通者だったのです。
ですが、後から反対意見などを出してきたため、貴方達が幻想郷に戻ってくる前に、蒼霧で始末いたしました。
他の人についても同様です。



「でも、咲夜は生きてるんだよな?」
「よく気がつきましたね」
「1341398か。 いざよいさくや、だろ?」
「まぁ、くだらないとんちだったはずだから、そこの皆なら解ってるはずよ?」



問題はその為の偽装死体。
主な人たちは………妖夢と咲夜とミスティアですね。
こっちのほうも魔法やその他の技術で何とかなるのですが、問題は………死体を発見した人物が偽装に気がつくかどうかということでしたね。
あの時ははたても気づいてはいたようでしたが。

ちなみに、はたてが薄々気づいていた何者かの気配というのは、妖精のサニーのことです。
姿を隠してもらった上で、観察させていただきました。
私の能力では気配を察知され易いからですね。

この異変の目的については述べました通り、幻想郷の住民を失踪させた上で、侵入不可能な異次元空間に閉じ込めておくということです。
閉じ込める、ではなく正しく言えば、『保存する』ということです。

数十日前、幻想郷に大量の雑誌、ゲーム、娯楽もの、それ以外の日用品、それらが流れ込んできたのに、私は気づいていました。
霖之助さんも気づいているでしょうね。

詳しくは広めなかったから解りにくいですが、おそらく幻想が消え往く時が来ているのではないかと思いました。
思い込みではないと思いますよ。
ここまでもくると、幻想の里、幻想の生物、危なくなってしまいます。
外の世界の娯楽とは関係ないとは思いますが、このままでは幻想郷も崩壊するのではないか。
このまま異文化が大量に流れ込み、本来の幻想郷のシステムが失われていくのならば………それを止める。



「それは思い違いじゃないのか?」
「………………………は?」

魔理沙の反論に、紫は切れ気味な態度を取る。

「さっきから黙って聞いていたが、わけわかんねぇぜ………外の世界がどうだの関係ねえよ。 幻想郷は幻想郷、それでいいじゃないか」
「異物が入り込むと、人間に限らず、それを取り除こうとはしませんか? それと同じなのです。 外の世界の幻想が失われて幻想郷に流れ込んできたのなら、幻想郷の本来のバランスが傾いてしまいますよ」
「関係ない。 崩れても良いも同じじゃないか。 この世界を作ったのは紫じゃないか? だったらもう一度作っても良いだろう」
「…………昔、花を摘んだことがあるの」
「は?」
「花を摘んで持ち帰った。 丁寧に扱った。 やがて枯れてしまった、綺麗だったの。 その時はたまらなく後悔したの」
「………あっそ」

魔理沙は草薙の剣を鞘から抜き、刀身を紫に向けた。
そして野球で言うホームラン宣言のようなポーズをとり、続けた。

「外がどうとか関係ない、今は今。 あんたが言ってるのは………」

足を踏み出し、駆け出す。

「全て妄言だッッ!!」
「黙れッ!!!!」

瞬間、魔理沙のすぐ横、約五センチほどを光の束が通過する。
それらの光の束は魔理沙が持っていた刀をはじき飛ばし、その刀は刃を下に向けて地面に刺さってしまった。

「歪んでいると言われても良い。 起こってからはどうしようもない」
「………」

さらに、魔理沙の周りを弾幕が取り囲む。

「殺しはしない、半殺しにはする」
「………」



■■■■■■■■■■



カカカカカカカカカカカカカッ!!

その刹那。
魔理沙を取り囲んでいた弾幕は全て、一刀両断された。

「………」

妖夢は楼観剣を構え直し、斜め下に下げた。

「ええ、誰だってキレます、はい、誰だって」
「今なら殺さずに保存ですが?」
「そんなの、断る」

楼観剣、白楼剣を両手につがい、紫にじりじりと歩み寄る。

「半人………前がああぁッ!!」

紫が傘を前にすぅとなぞらせると、その先から光弾がもの凄い早さで放たれた。
バシュゥッ!
しかし、妖夢は白楼剣を軽く振るっただけで、その弾を消し去ってしまった。

「………死ぬわよ?」
「どうぞ、ご勝手に」

妖夢の両手には楼観剣と白楼剣。
そして背中には妖刀、村正。

「死ぬなら『紫』という幻想を殺してからです」
「………」

ダッ!!

妖夢は両剣を振りかぶり、一気に駆け出した。

バアァッ!!

気合一閃。
地を蹴り、空を舞うような体勢となった妖夢は、両手の中の剣を体ごと一回転させ、その両剣の刃先をそろえ、紫に向ける。
そのまま斜め向きの落下体勢となり、紫に向かって突撃する。

「覚悟を決めたかああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!! 妖夢ッッッ!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっッ!!」



深弾幕結界 - 夢幻泡影 -



妖夢の周りを強固な弾幕結界が取り囲み始める。
しかし妖夢は動じない。
刀を構える。



六道剣「一念無量劫 -Lunatic-」



辺りに青白い光を放つ剣跡を走らせ、同時に衝撃波とも言える小さめの弾幕を大量に放つ!
辺りの弾幕結界は一瞬にして消え去り、そのお返しに大量の弾幕がまき散らされる。

「!」
「まだだっ!!」



天神剣「三魂七魄」



剣で走らせた奇跡から目映い(眩い)ほどの多色の光が放たれ、そこから衝撃波と大玉の弾幕が放たれる!
それも速度も尋常ではない。
それに加え、その二つの技を繰り返すように、妖夢は刀を振るう。

「それで……………強がるつもりかあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
「避けきってみろッ!!」
「はああぁぁぁっ?!」

結界やスキマを度々出現させては、弾幕を防ぎ、細かく移動している紫。
何か算段があるようにも見えるが、妖夢は今、そんなことは気にしていなかった。
力で圧倒させる………



結界「動と静の均衡」



紫の手先から無数の小型魔法陣が放たれ、妖夢の周りに乱雑に浮遊する。
そこから、撒く(巻く)ように深海色の弾幕が放出される。

「………緩い」

しかし妖夢は揺るぎもせず、両剣を迸らせたかと思うと、自分に襲いかかってくる弾幕を全て消し去っていく。
紫は同様を少しながらしたものの、すぐに体勢を立て直した。

「だったらこれはどう!? 避けられるかしらああぁ!?」

紫が両手を広げると、本人の右と左にそれぞれ六つの魔法人が放たれ、一定の距離で静止した。

グググ………。

そして魔法陣から怪しげな光が放たれ始め、だんだん形が成形されていく。
それは、霊夢も魔理沙も見たことがある………あの、吸血鬼が………使っていた技………

「馬鹿な………何で使えるの………」
「死ねええぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!」

それは、レミリアが使っていた技、神槍「スピア・ザ・グングニル」だった。
しかし、紫が使う技のグングニルは数が違う、通常の六倍の数なのだ。
魔法陣の狙いは全て妖夢に定められたうえで、槍の形を形成させた。



大六連槍「スピア・ザ・グングニル」



ビュビュビュビュビュビュンッ!!

六つのグングニルがコンマ一秒ずつずれて次々に放たれた!
紫と妖夢の距離………技発動時に距離を大分取ったため、数十メートルはあるが、グングニルの技の前ではそんなものは意味ない。
六つで放たれた槍は妖夢をめがけてまっしぐらであった。

一方、弾消しに専念していた妖夢はグングニルを避ける暇がない。

「ッ!!」

バリィィィィッ!!

もう駄目だと観念した瞬間、妖夢の周りにあった魔法陣は全て消滅した。

ドドドドドドッッ

そして………、聞くにも堪え難い音が六回も聞こえた。

「………え?」
「妖………夢………大……丈夫…………ぅ……?」

妖夢の目の前にはレミリアが浮遊していた。
細かく説明するのならば、レミリアの体には先程の六つのグングニルが刺さっていた。
妖夢の眼前には中くらいの魔法陣が出現しており、グングニルをこれ以上妖夢に近づけないようにするものだった。

「間に合ったようね」
「レ、レミリアさん!?」
「紫の作った空間から何とか抜け出してみたわよ、この結界は………早苗に渡された札を使ったら出てきたの」
「………」

レミリアはその台詞を言い切ると、自分の体に刺さったグングニルを一本ずつ抜いては、投げ捨てていった。
投げ捨てられるたびに、グングニルは霧散していく。

「も、もたない…わね…………紫の、強すぎ………」

そう言って、レミリアは段々脱力していき、地面に降下していった。

次の瞬間、全体の空気が凍り付いた気がした。



デフレーションワールド



レミリアを助け起こそうとする為に地面に降下した妖夢を通り過ぎるように、無数のナイフが紫にめがけて発射されていく。
無数というほどの量ではないが、それらのナイフは全て紫を追尾するような動きだった。

「?」

紫は横にちらちらと動くが、ナイフはそれでも追ってくる。

「! まさか!」

紫が気づく時は、少しだけ遅かったのかも知れない。
一瞬だけ時が止まり、発射されていたナイフを軸に、次々とナイフがチェーン状に連なっていく。
可視ではないが、瞬く間にナイフは紫を貫いた。

「があぁぁぁっ!!」
「! さ、咲夜さん!?」

妖夢の後方数メートル先に咲夜がナイフを構えながら着地。
紫にナイフが刺さっているのを確認すると、妖夢に向き直った。

「す、すいません………」

反射的に、妖夢は何故か謝ってしまう。

「お、お嬢様は」
「………手当てした方が………」

先程まで抱きかかえられていたレミリアは、咲夜に体を預けられると、少しだけ安心したような顔になった。
この反応を見る限り、死んではいない。

「………」
「あ、文さん!」

妖夢は叫び、文に命令しようとする。

「永遠亭まで運んでください!」
「は、はい…!」

文はレミリアを抱えると、目にも留まらぬ早さで永遠亭に向かって飛んでいった。

その文を見送った二人、妖夢と咲夜は立ち上がり、紫に目を向けた。
紫は自分の体に刺さったナイフを丁寧に一本ずつ抜き、地面に投げ捨てていた。
やがて抜き終わると、床にふわふわと降下し、この場に居る皆と同じ目線になった。

「はいはいお疲れさま」
「………勝ったつもり?」
「は?」

ブウウゥゥゥゥンッッ!!

瞬間、紫の横の地面が砕け散った。

「………」

それは、フランドールがレーヴァティンで行ったもの。
ゆっくりと後退すると、フランドールはスペルカードを提示した。



禁忌「フォーオブアカインド」



分身したフランドール三体と本体のフランドールは紫を睨みつけた。

「何? やるの?」

紫は同じように睨みつけた。

「許さない」
「は?」
「お姉様をッ!!」



双剣「ツインレーヴァティン」



本体のフランドールの両手から、レーヴァティンが出現する。

「………」



双剣「ツインレーヴァティン」
双剣「ツインレーヴァティン」
双剣「ツインレーヴァティン」



「殺るき満万なのね」
「死ねよぉッ!!」

同時に、四体のフランドールがそれぞれの二つのレーヴァティンを振り回し始め、紫に襲いかかった。
その攻撃の早さは、紫に隙を与えない。

「くううぅッ!! いっちょまえにっ!!」
「「黙れ黙れ黙れ黙れええええぇぇぇぇッ!!」」
「「お前なんか………お前なんかお前なんかあああぁぁぁッ!!!」」

ブウウウゥゥンッ、ビュウウゥゥゥンッッ!

紅蓮の双剣が振られるたびに、空を切るもの凄い音が紫の耳に届く。
ちっ、と舌打ちをしつつも、ぎりぎりで、フランドールの攻撃を避けている。

「いつまで持つか………」

カィィィィンッッッ!!

何かが弾ける音がしたかと思うと、偽のフランドールが一体、消滅していた。
それ以降、一旦ながらフランドール達の攻撃は停止した。

「危なっかしいわね、本っっっっっっっっっっっっっ当に」
「………」
「フランドールさん、ここからは、私がやりますから大丈夫です」
「………」

妖夢に諭され、フランドールは静かに後退し、魔理沙達が居る所に戻って行く。
そして妖夢は立ち上がり、背中から一本の刀を抜いた。

妖刀……………村正………

「ッ!!」

その刀を抜いた瞬間、妖夢は苦痛に襲われた。
思わず膝をつきそうになるが、何とか体勢を立て直す。
紫はあざ笑う。

「そんな状態で何秒持つかしら?」
「………」

やがて、村正からどす黒いオーラが出始める。
そのオーラは、今までに見てきたものとは別次元とも言えるものだった。

「私は………もう、一人前だから」
「ハッ! 何が! 今まで散々幽々子に従ってきてっ! 一人前とはまたいっちょまえに!!」
「………だったら、断ち切る」
「は?」

紫が「は?」と言う途中に、瞬間移動とも言えるほどの速さで、妖夢は後ろに回り込んだ。
そして気合一閃。
紫が振り向く前に村正を後ろに抜き、もの凄い速さで振り抜く。
その速さも尋常ではなく、捉えることができない。

「うぐっ!!」
「はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

紫が苦しんでいる間に、妖夢は潡々、紫に村正で切れ込みを入れていく。

ザシュッ!!ザシュッ!!ザシュッ!!

「巫山戯るなよおおおぉぉぉぉぉっ!?」
「!?」

紫が反撃。
妖夢は壁に叩き付けられた。

「はぁ、半人前が、いっちょまえに!!」
「!!」

村正で体力を削られた分、動きか緩慢としてしまう。
そんな妖夢に手を抜かず、紫は両手で、妖夢から奪い取った村正を構え、振り下ろさんとするばかりになった。

「反逆したので、罰します」
「………」

しかし、その刀が振り下ろされることはなかった。
紫の振り上げられた両腕は、紅色のチェーンで縛られ、動かせなくなっていたからだ。

「させるかよ………」
「………! まだ足らないかああぁぁ!?」

レミリアは残りの体力を全力で振り絞り、繋げたチェーンに力を込めた。
チェーンが放つ光がだんだんと強くなっていく。

「ぐうううぅぅぅぅぅ………」

紫はそれをほどこうと、腕を必死に振るってもがいている。

「簡単には外れないわよ」
「どう?」
「………」

紫が余裕ぶっても、レミリアは「紫には外せない」と思っていた。
しかし、

「…………あれ」

紫に繋いでいたチェーンはいつの間にか、レミリアに繋がれていた。
しかも、腕だけでなく、足を全体的に巻き上げて、地面に縛り付けるかのような風にだった。

「終わりよ」

紫が左手をレミリアの方向に向ける。
その左手の先から、怪しげな光が集まっていく。

キィィィィィィィ

光とともに謎の音。
そして、

ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ!!!

何かが何かを貫く音。

その音のもとは…………レミリアだった。

チェーンに縛られた状態で、体中から針とも言えるような物が幾つもレミリアの体を貫いている。
頭部だけに当たらなかったのが幸いとも言えるのだが、レミリアは既に動かなくなっていた。
口からは一筋の血。
体中から飛び出している針状の物には、レミリアの血がべたべたと付着している。

「………次」

紫が村正を再び両手で持ち上げ、振り下ろした。

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だが、皆の目の前では、妖夢に刀が刺さってるなどという事は起こらなかった。
むしろ、変な異変は紫の方に起きていた。

「………」

紫の右手は、二の腕から先が無くなっていた。
地面には刀を握った状態で落ちていた。

「妖夢に手出しはさせない」
「!!」

紫が声の方向に振り向くと、幽々子が扇子を両手に持ちながら、ひたひたと歩み寄ってきていた。
その両手の扇子には、紫のものであろう血が付着していた。

「何………で………?」
「貴方には見えていない物があるわね………」
「………ぁ?」

幽々子が両腕を乱舞のように振るうと、紫の左腕が細切れ状に吹き飛んだ。
まるでスライスハムかチャーシューのようである。

「あ、何でもないわ、思いつきで言っただけ」
「………」



桜符「完全なる墨染の桜 -開花-」



幽々子、妖夢、紫の周りを、夥しいほどの数の桜の花弁(はなびら)が舞い始める。
その量も数秒ずつ経つにつれ、どんどん数は増えていく。

「妖夢」
「は、はいっ」
「あっち行ってなさい」
「え、でも」
「………別にいいけど」

幽々子は妖夢の右手に、村正を手渡した。

「なら、トドメは妖夢がやってちょうだい」
「え?」
「できないというのなら、私がやる」



「反魂蝶 -満開-」

技の発動と同時に、紅魔館一体に大量の霊魂と霊蝶が放たれた。
その光景は幻想的で美しかった。







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「幽々子様ああぁぁぁ!!幽々子様ああああぁああぁぁぁぁあぁぁあああぁぁっっ!!」



「ああぁ…あぁぁぁぁぁ…………」

妖夢の泣き声が木霊し、幽々子の身に起こった事がハッキリと知らされる。
魔理沙は顔を俯かせ、いつも笑顔の絶えない文の顔からは笑みではなく、悲しさしか見て取れなかった。
こんなことが起きただけでは、『死んだ』とは言い切れない。

「よ……………、」
「はたて」
「ん」

諭そうとしたはたてを、文は名前を呼んで止めさせた。
この技を使った上での真実は、妖夢にしか解らない事。
だったら、これ以上追求も何もせず、ただ、宥めるかそっとすることしか、他の皆にはできなかった。



同日。
香霖堂から、当店の店主『森近霖之助』が発見された。
どのような状況で、どのような方法だったかは分からないが、彼だけ蒼霧の脅威から逃れた。
本人は「誰かに襲われた」と語っている。
なお、紫を静止させる人同じ日に、魔理沙と会話している事が、魔理沙本人の発言から判った。

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数週間後。
紫が………死体とも解らない状態で発見された。
幻想郷の住民の証言から、紫は『仮死状態』に限りなく近い状態である事が判明した。

同日。
博麗の巫女、博麗霊夢が紫の状態を戻そうと努力を尽くした。
今の所進展は無いが、微妙に動きが戻ってきてるとの事。

さらに同日。
幻想郷のとある場所で、大量の小動物の死体が発見された。
それぞれの小動物はどれも、細切れに刻まれていたり、原形をとどめてない状態であったりした。
復活を果たした東風谷早苗らの調査により判明した。

その日の午後。
紅魔館の花畑の中心に、館の主の所持している帽子が落ちているのが発見された。
館のメイド長である十六夜咲夜は詳細を語ろうとはしなかった。
魔理沙の証言から判明したレミリアの状態は、館側からも永遠亭側からも報告されていない。

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「………」

妖夢は、白玉楼の一角にある、幽々子の死体が封印されている場所の前に立っていた。
言われてきた事が確かなら、その中にまだ体だけ残っていると考えたのだ。
体は。
だが、妖夢は封印を解く方法を知らないのであった。
あの技を使ってから、幽々子の生存…………………生死は確認されていない。

「だから私はまだ半人前だと………そうですよね」


















































紅魔館全体が、幽々子の生み出した霊蝶弾で包まれ、花畑のように華やかになった頃だった。
景色が真っ白になった世界の中で、妖夢の目の前に幽々子が現れた。
涙で濡れている妖夢の顔を、やさしく手で包み、微笑んだ。

「ぁ」
「だから、貴方は半人前……………、なのよね………?」

妖夢は顔を俯かせた。
そんな妖夢の腕を掴み、村正を握らせた。

「………これで、紫を刺すのよ」
「でも、」
「ここでやらなきゃ誰が殺るの………」

妖夢は答えられない。
異変を起こし、幻想郷全体と住民を陥れた人物だとしても、殺す事はできない。

「だから、貴方は、半人、前、なのよ………殺せと、言った、のに」
「殺せません、殺せないんです………ッ!! たとえ、犯………罪者でも……………ッ!!」
「そうよね。 半人前だから殺せないかも知れないもの。 半人前の方が得するのかもね」

幽々子は村正を地面に置き、妖夢から握るように、諭すように、自分から持つように。
そう無言で伝えるようだった。

「時間はないわね」
「はい……………………」

舞う花弁はどんどん多くなり、激しくなっていく。

「………」

妖夢は村正を握り、ゆっくりと立ち上がった。

「妖夢………」
「やります」
「そうね」

幽々子は妖夢を励まそうとしている。
「殺せるのか」「この先後悔しないか」とでも語るように。

「そうすれば、一人前ですよね……………?」
「………たぶん」

ようやく口から出てきた言葉が、そんな言葉だった。

「その刀を、紫のど真ん中に刺すのよ」
「それで、いいんですよね」
「うん………」

妖夢は表情の曇りを少しだけ晴れさせると、村正の柄を強く握り、地面を踏みしめるように足に力を入れた。
幽々子はまだ伝える事があったが、あえて伝えない事にした。



幽々子が伝えなかった事実、村正に細工をした。
今、妖夢が握っている村正で人を刺しても、死なないように細工した。
しかし刺された場合、他の効果が適用されるように細工した。

そしてもう一つ、今使ってる技が発動し終わった場合、99.999999999999999999999999%の確率で、幻想郷に戻れない事。
全力で発動する、禁忌の技。
妖夢は知らない、知るはずも無い。



ぐっ。

「………」

妖夢は足に力を入れ、刀を振り抜くと、紫を目がけて走り出した。

「うおおおおおおぉぉぉぉおぉぉぉおおぉぉぉおおおおぉぉぉぉぉおおぉぉぉッッッ!!!」

妖夢の怒号。
そして刹那、紫の心臓にダイレクトで村正を突き刺した。

「はぁっ………はぁっ、はぁっ……………あぁっ………」
「………」

紫の心臓からは血は出ていない。
妖夢はそんな事には不信感も何も抱かなかった。

「………ゆ……!!」

振り向き、幽々子に何かを言おうとしたが、目の前には体が徐々に薄くなっていく幽々子が居た。
その顔は笑顔。
この世に二つとない、笑顔。
儚さと、悲しさと、少しばかりの嬉しさを、感じさせる、笑顔。

「お世話になったわね、いえ、お世話にさせたわね」
「幽々子様ッッッ!!?」
「貴方はもう、一人前よ」
「幽々子様ああああぁぁぁぁぁっっっ!! 待ってくださ、」

叫んでいる途中、幽々子は妖夢の体を優しく包み込んだ。
その匂いと感触も、この世に二つとない唯一つの、優しい、儚い、永遠の物。

「………」

妖夢もそれに応えるように抱きしめようとする。
しかし、その腕は空を切り、何も抱く事は無かった。

■■■■■■■■■■

夜。

封印を解こうと、所持している楼観剣と白楼剣で何度も桜木に打ち付けた。
刃こぼれした、何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
だが桜は折れない、傷つかない、判らない解らない分からないワカラナイ………。

息切れするころ、村正を握ってさらに打ち付けた。
村正を使って初めて、桜に傷がついた。

だが、木が傷つく事があっても、折れる事は無かった。



それから数時間後。
満月の浮かぶ空を見上げながら、妖夢は何かを願った。

「幽々子様が………………………………戻ってきますように………」





その瞬間、足音が聞こえた気がした。
後ろを振り向いても居るはず無かったから、妖夢はあえて、音のした方向に顔を向けなかった。

後ろの人、霖之助は声をかけずにその場を去る事にした。

捜査の結果、紅魔館の花畑にはもう一つ帽子が落ちている事が分かった。

『伝える必要は無いよな?』



以後、この異変の詳細とその後の経過については、凍結されている。
*スペルの解説*
大六連槍「スピア・ザ・グングニル」
→もともとは『大』が『第』だった。
 「何番目の盛大な槍」という意味では後者の方になってたのです。
 どうでもいいですね。
 技のイメージとしては、非想天則の方でイメージしてください。

双剣「ツインレーヴァティン」
→解説が不要なほど、シンプルなアレンジ物です。
 紅魔郷のレーヴァティンが二方向から迫ってくる感じでイメージしてください。

「反魂蝶 -満開-」
→どうイメージしたらいいのか解らないのです。
 球の速さは「永」のラストワード程で、弾の濃さは「妖」と「永」を掛け合わせて×2したぐらいです。
 ゲームにしたら避けるの困難ですね(汗)
 この小説上では、この技を発動したら幽々子は大変な事になるという事にしています。

*ボツスペル*
第六連槍「スピア・ザ・ロンギヌス」
→やりすぎた。
 この技に関しては『第』だった。

夢想四剣「レーヴァティン」
→レーヴァティンが四本、それだけです。
 腕から左右十度ぐらいの角度で右腕と左腕から二本ずつ出てきます。
 分身すると四×四で十六本となるわけです。
 やりすぎました。



もともと『罪と幻想の果てに』シリーズは、小説とかにして出すつもりでした。
もちろん、全て(?)オリジナルで。
こっちにもいろいろな問題があってか、産廃の方で東方として出しました。
たぶん、東方としてじゃなきゃこういうものは書けなかったかと。

オリジナルの場合、『日本全土が謎の蒼い霧で包まれる』という感じで考えてました。
今時ではそんな事ははやらないし、だすなら漫画とかにした方がやり易かったんですね。
ちなみに、ラノベの方向でです。
事件→避難→生き残る→捜査→発覚→対抗→解決(?)
という流れの予定でした。

東方の形で書いても、自分でも少しぐらいしか理解できないほど意味不明な作品でした。
あまり具体性も無かったわけですし?
推理要素も意味不明でしたし。

ストーリーを楽しむ方向であって、推理をする方ではなかったんです。
この小説に置いて推理するならば、
文章に書かれている推理要素とその発言は八割型噓だと思ってください。
要は、キャラの発言とその状況と様子は、全て疑って下さい。

次回からは本来のシリーズを再開させるつもりです。たぶん。
0.000000001パーセントでもお楽しみにいただければ幸いです。
それでは、また会いましょう。
長文失礼しました。

色んな指摘をお待ちしております。
ヨーグルト
作品情報
作品集:
24
投稿日時:
2011/03/10 04:28:14
更新日時:
2011/03/10 17:39:38
分類
妖夢
幽々子
フランドール
レミリア
1. NutsIn先任曹長 ■2011/03/10 20:31:15
晩酌の肴に読ませていただきました。

結局、真相は『要らんお世話』でしたか。
そんなに信用無いんですかね、幻想郷の住人は。

結局、その後は『知らんで良い』ですか。
まあ、不思議エンドで終わるのも良いでしょう。

では、滞っているシリーズ物を、期待度100%でお待ちしています。
2. 名無し ■2011/03/11 13:51:54
連続ものを何個もやるのはいただけないな。
つーか、お前HAMUだろ?
いや違うなら違うでいいが。
3. ヨーグルト ■2011/03/21 13:15:34
>先任曹長様
大分間が空きましたがこんな出来です。
本当はもっと長かったんですが、最後まで書いてもアレだろうと思ってしまいました。
すいません……。

>2の方
すいません……。
連載型にした方がほんの少しでも続きへの期待が膨らむと考えてました。
どうもすいません。

ところで、HAMUとは誰の事でしょうか……?
私はその人の事を知りませんが……。
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