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『隷属する血液(前編)』 作者: イル・プリンチベ

隷属する血液(前編)

作品集: 25 投稿日時: 2011/03/28 10:45:00 更新日時: 2011/04/03 15:50:18
CAUTION!

・東方Projectの二次創作ですが、原作と比較すると著しくキャラ設定の変更がありますので、それが耐えられない方はここではないどこかへ。

・スカトロ表現やその他諸々の下品な表現がありますので、それが耐えられない方はここではないどこかへ。(食事中には決して読まないで下さい!)

・すべてを受け入れることができる方や、このSSをネタとして笑ってすませるユーモアを持たれている方はここから先に進んでください。



―1― 紅魔館のメイド長を務める十六夜咲夜こと私の自己紹介



 始めまして、排水口および産廃創想話を閲覧している皆様、そしてこのSSを読まれている皆様、私は紅魔館でメイド長を務めている十六夜咲夜と申します。紅魔館の主は、スカーレット家の当主であり吸血鬼のレミリア・スカーレット様ですが、お嬢様はアレなので、実際紅魔館を取り仕切っているのは私でございます。

 なぜ私が取り仕切っているかと申しますと、他の住人たちもどこかが壊れてるうえに、私以外で紅魔館運営ができる人材がまともにいないのでメイドとしての仕事を始め、会計などの事務処理や新規メイドの採用試験の管理など一通りの業務を全部こなさなくてはならないんです。

 紅魔館にいる住人は基本的に変態なうえにやることなす事いい加減で杜撰なので、自分がやらなくてはならない業務を全部私に押し付けているんですから。どう考えても、紅魔館で一番高給取りになってしかるべき人材は私だと思うのですが、今まで給料というものは一度ももらった事がありませんね。これ、絶対おかしいと思いませんか!?おかしいですよね!?

 一応私は時を止める能力を持っていますので、自分の持っている能力を最大に生かして、紅魔館の為に仕事をしているのですが、いくらお嬢様のために尽くしても全くいい方向にいかないような気がしてなりません。

 あと幻想郷の住人達はどういうわけか、私の年齢を聞こうとする輩がいっぱいいて困るますね。レディに年齢を聞くなんてなんて、常識知らずな上に失礼な人たちなんでしょうか!人里の青年が私の年齢を聞いてきた後にいつも求婚を求められるのですが、私の本当の年齢を教えたらみんなドン引きするのでしょうか?

 でも私は永遠の16歳ですので、そちらの世界でしたらピチピチでかわいいJKで、肌艶良く余計な化粧をしなくても十分すぎる顔を持っていると思うし、スタイルだって抜群で胸だって程よく大きい上にしなやかな脚線美を持っているから、私の魅力に魅かれてしまう殿方がいてもおかしくないんでしょうね。

 ちなみに私の身長とスリーサイズはT167センチのB90(F)W59H90です。もちろん大胸筋サポーターでバストサイズに補正をかけていませんし、私のバストは本物ですのでそこのところもご理解の方をお願いいたします。

 私がお嬢様の為に身命を縛して紅魔館で働き続けることになった理由は、なんといっても吸血鬼としてのレミリア様とフランドール様のカリスマ性に魅かれてしまったのですが、今となってはその時の自分の判断が誤りであったと確信を持てます。

 出会ったその時からお嬢様と妹様の為に身命をかけようと思ったのですが、実際にお嬢様の下で仕事をすると欠点がポロポロ出てきて目も当てられませんでしたから、自分の先見性のなさが招いたことなので激しく後悔しています。なんてったって知性と品性の欠片がなく、本質は稚拙で愚鈍で下品極まりないことを見抜けなかった自分が何よりもふがいないと感じられずにはいられないのですから。



―2― 紅魔館の当主、レミリア・スカーレット様の紹介



 私が使えているレミリア・スカーレット様ですが、とんでもないぐらいの我儘で自分の気に食わないことが起きると周りを気にしないで癇癪を起こしますので、お話をする時は細心の注意が必要となります。なんたってお嬢様は、自分より優れた存在はいないと考えていますので、一部の例外を除いて誰に対しても友好的ではないんです。もちろん私はその対象ではありませんし、そんな素振りを見せた方を今まで見たことが正直言ってないです。

 以前、紅霧異変を起こした時の理由は、自分が昼でも騒ぎまわれるようにしたかったという非常に個人的で自分勝手な理由なんです。こう見えても私はれっきとした人間ですから、実はあのとき死ぬかと思いましたよ。

 500年生きていているにも関わらず、中身はお子様で自分の要求を通すこと以外考えていないので、紅魔館の住人はレミリア様が何か言うとそれに対応しなくてはならないのでみんな戦々恐々していますよ。しかも性質が悪いことに態度は大きいうえに、考え方がお子様なので無尽蔵の好奇心をもっていますから、目新しいものや斬新極まりないものを見たり知ったりすると、兎にも角にも興味を持ちたがるので私はいつもそれに振り回されてしまうんです。

 その上金銭感覚と経済観念は完全に破たんしていますので、私の知らないうちに高額商品を大量に買っているんです。自分の収入=自分の使えるお金と考えてますので、誰かが管理しないと紅魔館は財政破たんを迎え全員路頭に迷うでしょう。お嬢様はメイドの人件費なんて考えていませんから、私も妖精メイドも門番も休みなしにタダ働きで、法外な労働をけしかけられているんですからたまったものじゃありません。

 私の用な使用人の報酬は3度の食事と寝るところが確保されているだけでして、私はメイド長ですから一応は個室を与えられているんですが、他のメイドは4人1部屋というプライベートを与えられていない劣悪な環境で仕事を強いられているんです。だから妖精メイドの定着率は低く、入れ替わり立ち解りが激しい職場で妖精メイド一人ひとりの顔と名前を覚え直さないといけないのが辛いんです。紅魔館が幻想郷の4大ブラック企業の一つと呼ばれた責任は、私はどう考えてもレミリア様にあります。

 レミリア様はいつも私に無茶な仕事をけしかけてきますが、中身はお子様のくせに私が仕事をしている時に堂々とお尻を触ってきたり、おっぱいを揉んできたり、無理やりキスしてきたりするんです。それだけでなく私が寝ている所に忍び込んで、おっぱいにしゃぶり付いたりしてきます。あと吸血鬼なのに、人間と同じく朝起きて夜になるという奇妙な生活習慣を取られています。

 吸血鬼であらせられるお嬢様や妹様の弱点の一つとして有名であるものに、“流れ水を渡る事が出来ない”という弱点があるので、シャワーはもちろんのことお風呂が苦手なせいで、どうしてもそばにいるだけで強烈な刺激臭があたりを漂ってきますので、間違って臭いを嗅いでしまうと思わず胃の中にあるものを吐き出してしまいそうになります。体臭が臭いのは、体を清潔にできない吸血鬼の特徴の一つではないかと思います。

 以前私は、レミリアお嬢様とフランドールお嬢様の身体をなんとかしてきれいにしようと思い、唯一でいる方法の一つとして沐浴をしようと試みたのですが、500年近く蓄積していたあまりの悪臭の酷さに参ってしまい、オマンコと肛門あたりの匂いの酷さに負けてしまい情けないことにゲロを吐いてしまいました。しかも、私がどんなに丁寧に時間をかけて身体と髪の毛を洗っても、染みついた臭いは決して取れることがありませんでした。

 もちろん体をまともに洗っていないので体中に垢が溜まっているだけでなく、生まれて500年まともに体全体を洗っていないせいか、髪の毛はテカテカ光っていてフケがいっぱい付いているので凄く不潔なうえに、信じられないぐらいの悪臭を放っています。

 私が紅魔館のメイド長に赴任する前には、レミリア様は生まれてから一度も歯を磨いたことがないので、口臭もあり得ないほどの匂いを周囲にはなっており、強いていうならば血が腐ったにおいをしているんです。お嬢様の息を吐くと、周囲にいるクリーチャーが毒に汚染されてしまいあえなく息絶えることになるので、神社で宴会をした時にお嬢様がゲップをした時は、みんながゲロを吐いてしまい宴会場は恐ろしい事になってしまいました。

 もちろんお尻の穴や性器からは、この世のものでないほどの悪臭を放っており、レミリア様はおしっこをした後にオマンコをちり紙でふき取っていないようで、ドロワーズにはおしっこの染みが広がっており、長年性器に蓄積しきった悪臭とオリモノと汚物の悪臭が混ざって、それらが組み合わさって混沌とした匂いを放っています。間違ってもお嬢様や妹様の事が大好きでなおかつロリコンの性癖を持っている方は、このスカーレット姉妹に余計な期待をもたない方がいいでしょうね。なんたって、長年蓄積した悪臭のせいで嗅覚がやられてしまい死に至るでしょう。



―3― 悪魔の妹、フランドール・スカーレット様の紹介



 次に紹介するのは、レミリア様の妹であらせられるフランドール・スカーレット様ですが、レミリア様以上にわけのわからない方で、多重人格もちで時折人格が入れ替わるので、私もどう接すればいいのかわかりません。とにかくコロコロ人格が変わるので、まともな会話が出来ないのですから。最近は比較的落ち着いていて、昔と比べたらはるかに安定してますが、それでも細心の注意を払う必要がありますね。

 何でも破壊できるというとんでもない能力を持たれているのですが、その能力に振り回されているのか自分をコントロールすることが出来ないので、人格が入れ替わってしまうんでしょうね。

 わたくしを始め紅魔館の住人は、フランドール様の事を“妹様”と呼び、レミリアお嬢様は“フラン”と呼ばれています。そんなフランドール様はレミリア様の事を普通に“お姉さま”と呼ぶ時もあれば、反抗的な態度で“アイツ”と呼ぶ時もあります。
 
 ちなみにフランドール様の人格は、とにかく破壊衝動を持ち残酷な性格を持っていたり、わがままで甘えん坊で子供っぽかったり、素直で信心深く聞きわけの良かったり、吸血鬼では考えられない聖人君子で人格者であったり、人の話を聞かない陰湿で嫉妬深かったり、典型的お嬢様の振る舞いをしておっとりしていたり、気性が激しく粗暴で攻撃的だったり、ナルシストで自己主張が激しく思った事を口にせずにはいられなかったり、とにかくその時その時で言ってる事とやってることが違うので、それに対応しなくてはならないこちらの身が参ってしまいます。

 妹様はもちろん吸血鬼ですから、異常に体臭が臭くてロクに体を洗っていないせいか、少し肌をなでるだけで消しゴムのカスのような垢がポロポロ取れてしまいますし、495年間蓄積した汗と体臭が染みて、目から涙がとまらなくなってしまうんです。しかもフランドール様はレミリア様と同じで沐浴を非常に嫌っているので、体を洗おうとするだけでも本当に骨が折れる思いがします。フランドール様は長年地下室に引き篭っておられたので、そばに寄るだけで体が痒くなってしまいますし、誤って臭いを嗅いだだけで確実に気絶することになります。

 フランドール様がここ最近になって口から“くさいいき”という下品で厄介な特技を覚えられてしまい、息を吐き出すことで周りにいる生物を無差別に破壊できるためにたいそう気に入られまして、この間は地下に侵入してきた泥棒に向かって遊び感覚で“くさいいき”を吐いてしまった事により見事泥棒を撃退されたのですが、以前博麗神社の宴会場で“くさいいき”を吐いてしまったことで会場全体が偉いことになったという話を聞きました。



―4― 動かない大図書館、パチュリー・ノーレッジ様の紹介



 次に紹介するのは、レミリア様のご親友であるパチュリー・ノーレッジ様です。私が紅魔館のメイドとして働く前に、紅魔館の地下にあるヴアル魔法図書館にひきこもってひたすら魔道書を書いたり、読んだりされているんですが、生まれつき病弱で喘息持ちなので、魔法を唱えている時にいきなり激しく咳きこむんですから、見ていて痛々しいものがあります。酷い時は喀血なされるので、病状は喘息じゃなくて肺結核ではと疑いたくなります。

 個人的にして気をするならば、一刻も早く八意診療所に行って適切な処置を受けるべきだと思うのですが、パチュリー様はどういうわけか全く病院に行こうとしないんです。たぶん病院嫌いで、幼い時に注射を指された痛みが忘れられないから、未だに拒絶し続けるんでしょうね。

 または慢性喀血を患っていて、もう治らないかと勘ぐってしまいますし、長年地下にあるヴアル魔法図書館に引き篭っていたせいか、パチュリー様は体細胞すべてが黴に汚染されてしまったが故に喘息が悪化して、酷い時は何度も何度も吐血をされるのではないかと思います。

 パチュリー様はめったに外出しない理由は、太陽の光が嫌いで、日差しを浴びると髪の毛と本が痛むとおっしゃっていたのですが、実際は体細胞の分子レベルで黴に汚染されてしまったので、日差しを浴びることで蒸発して自分自身が消滅するからだと思います。

 お嬢様と妹様とパチュリー様に共通している事は、入浴はおろか沐浴も非常に嫌っているのでパチュリー様もお嬢様と妹様同様に非常に不潔で酷い悪臭を放っているのですが、長年黴臭い図書館に引き篭っていたせいか体中に黴臭い匂いが染みついてしまったようです。

 私がメイド長に就任する前の話ですが、図書館は基本的に掃除をしていなかったので非常に黴臭く、ずっと図書館に居続けたら確実に喘息を起こしてしまいそうになるので気合を入れて図書館を掃除しようとしたら、パチュリー様が掃除することを激しく拒絶されました。パチュリー様は本のコンディションが悪くなるからやめて欲しいと言われたのですが、図書館を掃除しておかないとパチュリー様の喘息がもっと悪化するのを防ぐためでもあるのですけど、パチュリー様がそれを解ってくださらないからいくら私がやろうとしても無駄に終わるだけですよね。

 パチュリー様は非常に博識でありとあらゆる知識を頭脳に収めているのですが、いざその知識を活用しようとしても、あらかじめ下準備が出来ていないとどうしてもテンパってしまわれるんです。絶対ぶっつけ本番にめっぽう弱く、想定外の出来事が起こってしまうとその場でおろおろするだけの役立たずに成り下がってしまいますね。

 私個人の推測からすれば、パチュリー様は間違いなく知識があっても知恵がないと疑いたくなります。魔理沙が以前地下に行った時にパチュリー様に協力を仰いだのですが、『必要な時に必要な情報が得られず、頭でっかちで肝心な時に喘息を起こしやがって全く使えない!』と私に嘆いたんです。魔理沙にそう言われた時は、流石に苦笑するしかありませんでしたね。

 私個人の見解となりますが、パチュリー様は確かに何かの講習で学科は完璧でも、いざ実技をやるとウンコレベルなので何度も補修を受ける有様なんでしょうね。

 パチュリー様で面白い逸話があるのは、お嬢様の突発的な発案で『紅魔館全員で体力測定』を行った時にとんでもない記録を叩き出したんです。100メートル徒競走は、50メートルの時点でリタイアしましたし、ボール投げは5メートルいきませんでしたし(記録は3メートル)、走り高跳びは50センチ飛べませんでしたし(記録は40センチ)、走り幅跳びに至っては1メートル飛べませんでしたし、(記録は75センチ)持久走に至っては1キロも走れませんでした。(42.195キロのフルマラソンを走らせたが500メートルで限界だった。しかも、リタイアした瞬間に喀血されました。)

 この時お嬢様が霊夢と魔理沙を無理やり呼び出して、(霊夢にはお金、魔理沙にはグリモワールをエサにした。そんな余裕があるなら、私たち従業員に今まで支払っていない給料を全額支払え!)体力測定をさせたのですが、パチュリー様は私を含め人間以下の水準であることが解りました。さすがの私もこれにはおなかを抱えて笑わざるを得ませんでした。

 最近のパチュリー様ですが、何やらエロ漫画やエロ小説あたりを書かれているんですが、私が以前香霖堂で買った外の世界の漫画に影響を受けてしまったせいで創作意欲を持たれてしまったのか、使い魔の小悪魔とパチュリー様付きの妖精メイド全員をアシスタント扱いしているんです。ただでも黴臭いヴアル魔法図書館はインクの匂いが混ざったせいでさらに居心地の悪い空間となってしまったんです。こんな事になってしまったのは私のせいでもあるんですが、パチュリー様が外の世界の漫画に感化されすぎでもあると思います。魔理沙が魔道書を盗んだつもりだったのが、実はエロ漫画とエロ本だったらどんなリアクションを見せるか見ものですね。ちなみにパチュリー様の画風は、典型的な漫画チックなイラストではなく生々しい感じです。
 


―5― 狼少年、小悪魔の紹介



 小悪魔はパチュリー様が魔界から召喚した従者で、ヴアル魔法図書館の司書を務めているのですが、紅魔館の住人なので例外なく性格はアレです。小悪魔は悪戯が好きなのですが、私の仕事を妨害してこないだけマシというべきでしょうね。まぁ、なんというべきか言ってる事と思っていることがあべこべで、好きだといえば嫌いであることを意味し、美人だといえばブスであることを意味し、とにかく狼少年みたいな発言をしてきます。

 小悪魔の取って何よりの喜びは、自分の幸せより他人の不幸で誰かが不幸にあったらあからさまにざまあみろと言って一人で喜んでいますし、誰かの身に幸せなことがあれば畜生と言ってふてくされるんですよね。私から見ても小悪魔の性格は悪魔なので最悪だと思いますし、この天の邪鬼でひねくれた性格はやっぱり魔界にいる悪魔そのものなんだと思います。

 この間紅魔館の地下室に白黒のエプロンドレスを来た泥棒が侵入してきて、パチュリー様があらかじめ仕掛けておいたマジックトラップに白黒のエプロンドレスが引っ掛かっていたのを小悪魔が見ると、「ケッケッケ!ざまあみろ!パチュリー様の罠にはまったお前の醜態で酒が美味いぜ、ケケケケケッ!」と堂々といいましたからね。見た目は可愛らしい小悪魔でも中身は悪魔そのもので、人の不幸と悪夢が大好物なんです。

 そんな性格の悪い小悪魔でも唯一のいいところがあって、パチュリー様が喘息で発作をしている時には甲斐甲斐しく世話をするんですよね。私がそれを見ていると、小悪魔がいきなりキレ出して、「こっち見るんじゃないよ!」と言って私の事を追い払うだけでなく、明らかに殺しに来ます。見た目は天使の部分をもっていても中身はやっぱり悪魔なので、私は彼女とコミュニケーションはとりにくいです。



―6― 中華小娘、門番を務める紅美鈴の紹介



 次は私の部下の一人で、紅魔館の門番をやっている紅美鈴です。美鈴は中華拳法の達人で腕が立つので門番を任せていますが、私と同様に過酷な労働環境と劣悪な待遇を強いられていますので、本来持っているポテンシャルを十分発揮することができないのです。紅魔館の財宝目当てに侵入する賊や、紅白の巫女や白黒の魔法使いをブロックすることが彼女の役割ですが、疲労困憊で門番をやっているので笑顔を見せても凄く痛々しく見えてしまいます。私が美鈴を休ませてあげられるならリフレッシュ・リーブを2〜3カ月ぐらい与えたいために、私はお嬢様に対し美鈴を始め妖精メイドスタッフの待遇改善と人員増加を訴えたのですが、『紅魔館のスタッフをこれ以上増やすと、私のコレクションを毎月買う事が出来ないから却下!メイドたちのご飯大だってばかにならないのよ!』と言われてしまいあえなく却下されてしまいました。

 美鈴が仕事中に寝てしまう理由は、私が紅魔館のメイド長として赴任する前から紅魔館の門番を務めており、何百年も雨の日も風の日も休むことなく教務を遂行してきた事によって、蓄積疲労が溜まりすぎてしまいいつの間にか本人が知らず知らずのうちに寝てしまうという体質になってしまったのです。

 本来の美鈴は白黒のエプロンドレス如きをみずみず通すことはあり得ませんし、紅白の巫女だって何もさせずに追い払えれるのですから、これ以上頼れる門番は幻想郷を探し回ってもまずいないと思いますが、美鈴ほど実力がなくても外敵をシャットアウト出来て信頼出来る門番があと3〜4人ぐらいは欲しいです。

 美鈴歩と強くなくてもそれなりに優秀な人材を確保できれば、全員を適度に休ませれるとともに紅魔館全体のセキュリティレベルを引き上げれるので、これ以上ヴアル魔法図書館から貴重な魔道書を盗まれるという事はないと思うのですが、レミリア様は門の警備に関して大した関心を持っていないどころか美鈴が過労死寸前の段階まで来ているというのに、それをわかっていて何の対策をしないというのが私には到底理解できません。



―7― 紅魔館の労働条件


 もし紅魔館が、外界の企業のように風通しがよくてまともな企業として機能していたならば、間違いなくレミリア様は代表取締役を追われているでしょう。もちろんメイド長を務めている私もお役御免となるでしょうし、今の紅魔館の顔触れで何も変わる事がないのは妖精メイドたちだけだと思います。

 こう見えても私は他の職場から今よりはるかに待遇のいいオファーが舞いこんでいますから、転職するぶんにはまったくといってもいいほど困らないでしょう。それよりも今の私に必要なのは、ボロボロになった身体と心の疲れを癒す時間が欲しいんです。

 このSSを読まれている皆様に説明するのは今更だと思うのですが、紅魔館の劣悪極まりない労働条件を皆さんに教えていませんでしたね。タウンワークやジョブアイデムのような求人誌や人里の職業安定所に掲載されているんですけど、労働条件のあまりの酷さに笑っちゃうと思うのですが一度ご覧になってくださいね。

 私も紅魔館に勤めて、何か人間として大切なものを一度にすべて失ったと思います。まちがいなく私が一番問題あって、狂気に染まってしまった感じがしてならないんです。もし願いがかなうのならば、まともな人権が確約された労働環境がある職場で仕事がしたいと思いますよ。今の私が唯一わかっている事は、私達紅魔館で働いているスタッフ全員が人並みの待遇を望んではいけないって事なんですけどね。少なからず紅魔館で働かされている限りは。

 事業所名   株式会社紅魔館
 所在地    紅魔館
 就業場所   紅魔館
 資本金    5000億円
 職種     メイド、門番
 採用人数   1000名
 雇用形態   正社員
 入居加入住宅 あり(紅魔館メイド寮の住み込み)
 仕事の内容  館内の清掃、調理、その他雑用
 就業時間   0:00〜24:00(変形労働時間制)
 A直(6:00〜14:00)
 B直(14:00〜22:00)
 C直(22:00〜6:00)
 時間外    月平均200時間以上
 賃金     0円(1日3度の食事、睡眠時間)
 休憩時間   なし
 休日     なし
 昇給     なし
 退職金    なし(殉職は2階級の特進あり)
 選考方法   面接
 日時     随時
 事業者    当主 レミリア・スカーレット
 担当者    メイド長 十六夜咲夜


 どうですか?これを目に通してみると皆さんにとって、外界の派遣社員とアルバイトよりもはるかに酷い待遇を強いられているという事が一目瞭然ですよね。妖精メイドは3交代制で働いているんですが、お嬢様達の我儘の尻拭いをしなくてはならないので館内はいつも騒然としていまして、ほぼ16時間以上の長時間労働を強いられるのです。最悪なのはレミリア様が無駄にパーティを開かれた後で、いつも乱痴気騒ぎをした後は館内が災害に巻き込まれたかのような有様になりますので常に掃除と補修をしなくてはならないのです。このSSを読まれている皆様も一度でもいいから紅魔館で働いてみませんか?普通の神経の持ち主じゃ悪魔的感覚についていけず、発狂しかねないという事請け合いですね。



―8― メイド長の過酷な1日



 これ以降は皆様に、私の1日のタイムスケジュールを説明いたしますわ。

 ハッキリ言ってしまうと私の時を止める能力がないと絶対不可能ですし、悪魔的ジョークについていけなかったら、ここで生きていくことは無理でしょうね。正直言ってしまうと私もウンザリしています。衣食住の3つが保障されているだけで何の生きがいも感じられませんから、これ以上紅魔館で働き続けるという必要がないと思いますし、本音をいわせてもらいますとあの我儘吸血鬼に愛想を尽かしているのは事実です。



―午前4時 起床、身支度、メイドと門番用の朝食を作る―


 
 朝起きた時点で全身が鉛のように重く最悪な体調ですが、気合いでベッドから出ます。体が睡眠と休息を要求しているのですが、メイド長としての仕事があるのでそこは我慢します。レミリアお嬢様は少食なのに、朝食から無駄に豪勢な作るよう私に指示してきます。

 洗面所に行って顔を洗い歯磨きを終えると、部屋の鏡台で寝癖のついた髪を櫛で説いて、もみあげに三つ編みをかけた後に一通りのお化粧を済ませると、睡眠中に穿いていたパジャマとドロワーズを脱いでそれらを洗濯かごに入れると、洗濯済みのブラジャーとドロワーズを穿いた後にメイド服を着てカチューシャをつけると、私は無気力人間から紅魔館の瀟洒なメイド長モードに切り替えます。最後に鼻栓をつけ忘れてしまうと、仕事をする前に病院送り確定ですから必ず付けるように心がけています。

 メイド服に着替えるとすぐに厨房に行き、使えない門番と妖精メイドたちの食事をまとめて作ります。厨房担当の妖精メイドを全員コキ使っておきまずが、はっきり言って役に立たないので、仕事の9割を私がやっています。勿論時を止めないと話にならないので、一日の始まりからフル活動で困ってしまいます。

 まだ楽なのは妖精メイドたちが寝坊をしないで起きてくれることです。こればかりは彼女たちに感謝しないといけないです。



―午前5時 朝食をとる、疲れ切ってしまった美鈴を無理やり叩き起こす―



 紅魔館は24時間フル稼働の屋敷なので、A直のメイドたちと共に慌ただしく朝食をとります。食卓に着くなり私も含めメイドたち全員が、全員がパンとスープとサラダと味わうことなく、ただ胃の中にぶち込んでおきます。紅魔館にいて唯一の楽しみの食事なのに、味わい事が出来ないのはどういうことかと腹ただしく感じます。
 
 食事を十分以内で済ますと、この時間で最もやりたくない仕事として疲れ切ってしまった美鈴を強制的に叩き起こさなくてはならないのです。

 蓄積疲労が溜まりすぎた美鈴を無理やり起こすという事は、紅魔館で働いてるスタッフ全員が望んでいる僅かな休息を奪ってしまう事で、“鬼のメイド長”とか“徹仮面”とか“人間の皮をかぶった悪魔”と影口を叩かれて何かと誤解されている私でも、人間としての良心がそれなりにありますので仕事として割り切ってやらないとこなせる代物ではありません。

 私は死んだ用な顔を晒しながらベッドで寝ている美鈴を見るとなんとかして疲れを癒してあげたいと思うのですが、美鈴が門番の業務についてもらわないと白黒のエプロンドレスを来た泥棒がやってくるので、美鈴を起こすために仕事として割り切って寝間着からはみ出している腹にかかと落としをぶちかまします。それでも起きなかったら自慢の銀のナイフを胸に目掛けて突き刺します。それでも起きない場合は脳天目がけて刺すのですが、いくらやっても起きなかったら特製のモルゲンシュテルンでひたすら叩きつけます。

 「美鈴、朝よ。起きなさい!」

 私は美鈴を起こすために、耳元で怒鳴り付けます。

 「あ、咲夜さん、おはようございます…まだ眠いので、もう少し寝かせてください。」

 本当は美鈴を寝かしてあげたいのですが、門番として働いてもらわないと私がレミリア様にドヤされるので非常に徹する以外ありません。

 「美鈴、起きろ!!!」

 ドガッ!

 美鈴の腹をめがけてかかと落としを食らわします。妖怪だから非常に頑丈に出来ているので、多少の無茶をしても問題ありませんがやっている私は心の奥底で涙を流していることでしょう。

 「さ、咲夜さん、痛いじゃないですか。あと5分で起きますから、もう少し寝かせてください…」

 美鈴は私に向かって寝ぼけ眼で答えるのですが、起きるといっても起きたことが一度もないので、ヤリたくないと解っていてもやらざるを得ないので私は無理やり叩き起こすために美鈴の後頭部めがけて蹴りを食らわします。

 「うるさい!口答えするな!いいからさっさと起きろ!」

 ドガッ!

 「咲夜さん、そんなに急かさないで下さいよ。まだ始業時間に余裕があるじゃないですか。」

 門番の始業時間は7時だが、美鈴は遅刻の常習犯のうえにサボタージュに走るので、怠けさせないように私が叩き起こさなくてはならないのだ。サボりに走る門番は仕事においてプロフェッショナル精神が全くもってないので、それを理解させる為に私なりの教育法で門番にマネジメントを施すのだが、今私のすべきことは門番に仕事をさせることが私の仕事なのでこの場合は美鈴を強制的に覚醒させることが私の義務だ。

 仕事だから多少は割り切らなくてはならないのだが、人間らしい感情を破棄しないとどうしても出てきてしまうと紅魔館のメイド長は務まらない。自分の仕事に徹するために門番を叩き起こしておかなければならない。

 「いい加減起きろ!このボケがぁ!!!」

 私は能天気な美鈴の頭に銀のナイフを3本1度に突き刺しました。少しでも手を抜くと美鈴はすぐに居眠りをしてしまうので、門番としての機能を果たさせる為には一切手加減してはならないのです。
 
 グサッ!!!グサッ!!!グサッ!!!

 「ぎゃあああああ!!!!!さ、咲夜さん、い、痛いです!勘弁してください!本当に起きますから、今日は昼寝をしないで一日じゅう門番をしますから、許してください!」

 美鈴は涙目になってベッドから身を起こし、慌ただしく身支度をし始めました。今日はいつもより起きるのが早かったのですが、酷い時は全身ナイフでメッタ刺しにしてから、モルゲンシュテルンで起きるまでひたすら殴りつけます。私は美鈴に嫌われていると思うですが、これも仕事と割り切っておくしかありません。

 「お前がいう事は信用ならん!いいからさっさと着替えろ!えーい、何やってんだ!着替えるのが遅すぎる!早くしろっ!」

 私は美鈴の背中に、思い切りケンカキックを叩きこむのも忘れません。モルゲンシュテルンを見ると美鈴がおびえるのは、以前白黒もエプロンドレスを着た不埒な侵入者に好き勝手に暴れられた時に美鈴をお仕置きする時に使ったのが原因で、それが美鈴のトラウマになっています。私はこんな暴力的なやり方をしたくはないのですが、レミリアお嬢様の鶴の一声で紅魔館の状況は一変してしまうので、美鈴には早く門番の仕事をやってもらわなくてはならないのです。

 「わかりましたから、蹴らないで下さい!」

 寝間着から人民服に着替えさせると、私は美鈴に強制的に朝食を取らせます。パンとスープを無理やり食べさせた後に2リットルのコーヒーをとにかく飲ませるのです。美鈴はコーヒーが苦手ですが、私は少しでも昼寝をさせないために飲ませます。頭に突き刺さったナイフを抜くと美鈴は寝てしまうので、3本のナイフはあえてそのままにしています。これも気を抜かさないための処置です。私が門番を叩き起こすために、2時間も2人以外の時を止めてしまいました。



―午前7時 レミリア様とフランドール様とパチュリー様の朝食を作る。―



 美鈴を叩き起こした後は、レミリア様とフランドール様とパチュリー様の朝御飯を作ります。先歩と述べたように、レミリア様は少食にも関わらず無駄に豪華な朝食を作るように指示されましたので、スキマ妖怪からもらった食料用の外界の人間を紅魔館特製の食材変換機に入れて、牛肉、小麦粉、レタス、生クリームなどの素材に変えてから、レミリア様とフランドール様とパチュリー様用の特製のパンとスープとステーキとサラダと食後のデザートのケーキを拵えます。

 特製の紅茶を作るために、食料用の人間を血液分離機にかけてすべて血液にしておいて、特殊なティーポットに温めた血液を入れて紅茶の葉を入れてからしばらく蒸らすと、紅魔館特製のブラット・ティーが出来上がりです。特殊なティーポットは、八雲紫からもらったもので、お茶を入れっぱなしでも劣化しない優れものです。お嬢様方の朝食を拵えるために、なんと4時間も時を止めました。



―午前7時30分 レミリア様とフランドール様とパチュリー様を起こす。―



 午前7時30分になると、私は最初にレミリア様を起こしに行きます。本来妖怪は夜行性なのでこの時間は寝ている筈ですが、レミリア様とフランドール様とパチュリー様は新世代の妖怪で、人間と同じ朝に起きて夜寝るという生活サイクルと取られています。俗にいうと朝型の妖怪となるわけですが、太陽の光を苦手とする吸血鬼や魔女はなぜ朝型の生活サイクルをとるのか理解できません。

 パチュリー様はその時の体調次第で起きれるかどうか変わってきますが、フランドール様はその時の人格によって私の対応が変わるだけで、自分の面倒はちゃんと一人でやれますので特に気にしなくていいのですが、一番問題のあるレミリア様は500年以上も生きているのに、自分の着替えや身支度が一人でできないヘタレっぷりを遺憾なく発揮するのです。

 「お嬢様、朝です。起きてください。」

 言ってる事は従者として当たり前だったとしても、嫌みを含ませた口調でやります。

 「咲夜〜、二日酔いが酷いから今日はお昼まで寝かせて〜。」

 昨日はパーティをやらせて一人で勝手に楽しむだけ楽しんでおいたくせに、翌日は都合良く二日酔いになっているのを見ると、私は何故か無性に腹ただしくなってきます。

 「いけません、お嬢様。今日は10時に霊夢をひやかすために、博麗神社を訪問する予定があるじゃないですか。昨日はあれほど神社に行くと私に言われたのに、私は霊夢にお菓子を用意するといってアポイントメントを取りましたが、それをドタキャンされるおつもりですか?」

 「そんなこと言ったって、昨日パーティをやって浴びるほどお酒を飲んだんだから、仕方ないでしょう?もういいじゃない!」

 「はぁ、もうこれ以上お嬢様の我儘についていけません。」

 私は寝ぼけ眼を見せるお嬢様に辞表を差し出します。

 「さ、咲夜、冗談でしょ!?メイド長を辞めるなんて、私が許さないからね!」

 お嬢様は私が差し出した辞表を破り捨てるといきなり癇癪を起こしますが、これも私がお嬢様に言う事を聞かせるいつものパターンに持ち込ませれるんです。実際私に紅魔館のメイド長を辞められると一番困るのは他の誰でもなく、一人で自分の面倒すら見れないお嬢様ですから、辞表を差し出せば私のいう事を嫌でも従わざるを得なくなるのです。

 「だったらいい加減に起きてください。フランドール様とパチュリー様が食堂でお待ちですので、さっさと身支度をして朝食をとって頂きたいです。」

 お嬢様は我儘で厄介な性格をしているのですが、私の思うように行動をさせるにはどうすればいいのかわかりきっているので、この場合は冷たくあしらうのがベストで、命令系でいう事を聞かせたい場合は、銀のナイフや炒った豆をちらつかせるとおとなしく従うんです。

 「わかったわよ咲夜、起きればいいんでしょ、起きれば。だったら私にお洋服を着させてよ!」
 
 始まりました。誰に対してもとにかく態度がでかいので、人に物を頼むのも全て命令口調で依頼してきます。その癖自分では何も出来ない痛い子なので、何かを指摘されるとすごく腹が立ってきます。それでも私は笑顔でお嬢様の身支度と着替えをします。

 「かしこまりました。それでは身支度と着替えをさせていただきますので、少々お待ちください。」

 お嬢様は何が起こっているのかさっぱりわかっていませんが、私はパジャマと下着を脱がせてからそれらを洗濯かごの中に入れて、洗顔と歯磨きと沐浴をして、それから洗濯済みの下着と肌着を着せてから、いつもの桃色のドレスを着せてアクセサリーと帽子を身に付けさせます。この間3時間かかりますが、お嬢様は3時間かかったことなんて全く理解していません。

 歯磨きをしても無駄だという事は解っているのですが、それをやっておけば少しでも口臭が和らぐと思っていたんですけど、長年怠っていた生活習慣を改めるのは無理なのでいくらやっても口臭は治りません。それでもやらないよりははるかにましであると思いますが、もはや私がどんなに手を施しても取り返しのつかなくなったと考えるといたたまれない心境がします。

 このお嬢様は抱きまくら代わりに、一昨日私が使っていた使用済みのメイド服と使用済みのブラジャーと使用済みのドロワーズを盗んで勝手に持ち出して、それらをオカズにオナニーしていたようです。私が使っていた衣類もついでに洗濯かごの中に入れておきます。私がいくら回収しても、隙をついて盗むのですからいたちごっこが延々と続くわけです。

 「咲夜凄ーい!アッという間に着替えが済んだじゃないの!それじゃ朝ごはんを食べに行くから、私に着いて来なさいね!」

 これです。この調子の良さと変わり身の速さは、私も是非とも見習いたいぐらいです。お嬢様の座右の銘はまさに、“天上天下唯我独尊”で、自分が一番偉いと思っています。かつて八雲紫や綿月依姫にコテンパンにやられたことも忘れてしまったかのようで、自分より優れた奴はいないとばかりに尊大な態度を誰に対しても取ってきます。私がこの吸血鬼の使用人でない限り、絶対友人関係を持ちたくないですし顔を合わせたくありません。もちろん一緒に食事を取るなんて考えたくもないですよ。



―午前8時 レミリア様とフランドール様とパチュリー様の朝食の時間― 



 問題あるレミリア様を叩き起こした後は、フランドール様とパチュリー様と一緒にお嬢様用の食堂で朝食を取って頂くのですが、レミリア様に朝食をちゃんと食べさせるのも一苦労で、嫌いな食べ物が入っていたら癇癪を起して私が作った料理をあたりにまき散らしたりします。お嬢様が嫌いな食べ物は僧侶が清めた水と炒った豆と鰯の頭と大蒜ですので、これらは絶対に使ってはいけないのです。

 いつものことですが、レミリア様はお嬢様のくせに食べ方が汚いので、周りの人の事を考えずに自分の身の回りに食べカスをまき散らしてきます。あと口に食べ物が入っているのに私に話しかけてくるのですから、見ている者としてはたまったものではありません。もし下品道という武道があるなら、師範代の頂点に立った存在でまさにキング・オブ・下品に君臨しているでしょう。

 「ふぁふや、ほへふふぁい。あひふぁふぉふふっへふへふひゃひや?(咲夜、これ美味い。あしたもつくってくれるかしら?)」

 相変わらずレミリア様は人肉ステーキを口に入れながら、相手の事を考えず話しかけてきた。しかもナイフとフォークを使わず手で人肉ステーキを掴んで齧り付いているので、手の周りと口元は肉汁をだらだら垂らしているだけでなく、騒々しい物音をたてているので、周りから見たらとんでもないマナー違反ぶりに引いてしまうでしょう。

 「うめー、うめー、咲夜の作った人肉ステーキうめーよ!おおっ、ガハ、ガハ、ガハッ!こ、これ胡椒の匂いがしやがるぜっ!うめーよ!オオップ、ウエップ。鼻くそは、しょっぱくて、美味い美味い。」

 フランドール様はスカートからドロワーズが見えるぐらい開脚して、左手の小指で鼻くそをほじりながらそれも食べているので、レミリア様以上に汚くて見ていられない食べ方をしているのですが、これもいつものことなので気にしたら負けです。フランドール様もレミリア様にも勝るとも劣らない下品道を極めた存在で、下品道の至宝と呼ばれてもおかしくないと思います。

 レミリア様とフランドール様は大人しくしていると幻想郷最高の美少女なのですが、なにせ言動がアレなので実際話してみるとその壊れっぷりに幻滅してしまうでしょう。たとえ重度のロリコンの性癖を持っていて、なおかつレミリア様とフランドール様の事を博愛されている方でしたらなおさらですね。

 ジョジョジョジョジョッ!ジョボジョボジョボジョボジョバーーーーーー!

 食堂でおしっこが出される音を聞いた後にアンモニア臭がしましたが、私はアンモニアを持ち出していませんし、ましてや粗相をするといったはしたない真似はしません。でも、私は鼻栓をしているのにそれを通り越して汚物の臭いが漂っていたので、この中の誰かが粗相をしたとしか考えられないのでした。

 ブブブッ!ブリブリブリッ!ブリュリュリュッ!ブリュリュリュッ!ブリブリブリブリブリッ!

 その音はトイレで聞いてしかるべき排泄音が食堂に響き終わると、私の鼻栓を貫通して大便特有の悪臭が食堂一帯に漂い始めました。もちろん部屋の空気は異常なものに変わり、あまりの腐敗臭に私も思わず胃の中にあるものを吐きだしそうになったのですが、なんとかそれをこらえました。

 「ん〜、スッキリしたっ。あっ、みんなごめんね。どうしても我慢できなかったから、つい漏らしちゃったの、テヘッ!」

 なんと粗相をしたのはレミリア様で食堂にいる全員に向かって、犯人はワザとやったんじゃないよとアピールしてきました。しかも自分のやったことを笑って誤魔化そうとしてきます。レミリア様が座席から立つと、お尻の部分が廃絶物でモコモコ膨らんでいて、股間部は黄色に染まっているので、ピンク色のドレスが台無しとなってしまいました。不潔な吸血鬼ですから、排泄物は異常に臭く人間の100倍を上回るのではないかと思います。

 ブブッ!ブリブリブリブリッ!ビビビビビビビッ!ブブブブブッ、ブリブリブリッ!

 また食堂で聞いてはならない排泄音が聞こえてしまいました。ただでもひどい悪臭がさらに酷くなり始めるとさすがの私も頭が痛くなってしまいましたが、紅魔館ではこれも日常茶飯事で珍しいことではありません。

 「お姉さまが臭いうんちをするから、私もつられて漏らしちゃったじゃないの!お姉さまのうんちの匂いが臭すぎてたまらなくて、気持ち悪くなっちゃったから私はここでゲロを吐くわ!」

 「ウプッ、ウエップ、オエッ、オエップ、ウエッ、ウゲッ、ウゲップ、ウオップ、オオップ、オゲエエエエ!ウゲエエエエ!ウェエエエエエッ!」

 ベチャ、ベチャベチャッ!ベチャベチャベチャベチャッ!

 レミリア様がおしっことうんこを漏らしてしまったので、それにつられたフランドール様はうんこを漏らしただけでなく、その場でゲロを盛大に吐いてしまいました。見てあまり気持ちのいいものではありませんので、せめて願うならば吐き出す前にトイレに行ってからゲロを吐いて欲しいものですが、下品道の至宝であり気が触れているフランドール様にそれを求めるのは酷というものでしょうか。

 フランドール様はお尻の周りはレミリア様と同じく汚物でモコモコしていて、赤いスカートは茶色に染まっただけでなく汚物が下着から漏れてしまい、食堂の床に茶色いアレが落ちてました。その上大便特有の腐敗臭をまき散らしているので、さすがの私も鼻が曲がりそうでたまったものではありません。

 「レミィ、フラン、食事中に漏らすのはあり得ないから、いい加減にしてよ。それになんで吸血鬼って、体臭がこんなに臭いのかしらね……、悪臭で肺がやられそうだわ……、うっ、ゴホゴホゴホゴホッ!ゴホゴホゴホゴホゴホッ!ガハガハガハガハッ!ガハッ!!!」

 パチュリー様は持病に喘息を患っているのですが、レミリア様とフランドール様が食堂で粗相をされた煽りを受けて、急に喘息の発作を起こしただけでなく喀血されました。しかも、尋常じゃない量の血液を吐かれているので、魔法使いでなかったら間違いなく死んでいるでしょうし、魔法使いの身だとしても寿命はそう長くないと勘ぐってしまいますね。パチュリー様が吐いた血の匂いは異常に黴臭いので、図書館に引き篭もりすぎたことにより体中が黴で汚染されてしまったんでしょうね。
 
 食堂は大量のうんことおしっことゲロと黴臭い血の匂いがミックスされ、混沌の極みの匂いを放っているので、妖精メイドたちはあまりの気持ち悪さに逃げ出してしまいました。これ全部を処理するのは私以外できないというよりやろうとしないので、紅魔館の住人の行儀の悪さには、使用人の私でもいつもの事ながら呆れてしまいます。以前妖精メイドに汚物の処理を命令したのですが、あいつらはやりたくない仕事はあからさまにやらないので、泣く泣く後で全部私が処理をしました。

 朝食が終わると、嫌がるレミリア様とフランドール様とパチュリー様の着替えと沐浴と匂い消しの3点セットと、食堂の片付けと汚物の処理で軽く8時間を費やすハメになりました。(泣)   

 汚物処理と痛すぎる姉妹の相手をするのはこれ以上耐えられないので、本当に紅魔館のメイド長の仕事を辞めたいです。あぁ、誰か紅魔館のメイド長に就任してくださる方がいらっしゃるなら、今すぐにでも私の代わりをやってほしいですよ。いや、本当にマジで。

 レミリア様は尊大な態度を取るのに見た目も中身もお子様だから、自分の許容量を把握してないので、神社の宴会で酒を飲み過ぎて帰り道の道中でゲロを吐いたり、紅魔館でパーティを開いた時も、調子に乗ってワインを5本一気飲みしてステージでカラオケをしている途中に吐いたり大便と小便を会場内でしたりというとんでもない逸話があります。流石にこの時は、パーティに招待した紅白も白黒も青白を始め来客者全員がドン引きしました。しかもいつも尻拭いをするのは私ですから、本当に嫌になりますよ。

 私はレミリア様がどこでも粗相をするのは当たり前で、やるたびにウンザリするのですがいつものことだから慣れきってしまったのですが、そんなことが当たり前だと感じてしまう自分自身がおかしいと思うんです。



―午前9時 朝食に使った食器の皿洗い、掃除洗濯、お嬢様たちの昼食の仕込み―



 お嬢様達が食事をすまされたらすぐに皿洗いをするのですが、たいていの場合食後になると、レミリア様がおしっことうんこを廊下かプライベートルームで漏らしたり、ゲロを吐かれたりするので、それらの処理で時間を無駄に消費してしまうので、たいていの場合9時から家事の類の仕事をやります。

 メイドの仕事をやる時は、必ずレミリア様がセクハラというか嫌がらせというかとにかく私に絡んできます。私のお尻やおっぱいに狙いを定めて触ってくるのですから、仕事の邪魔でしかないので勘弁してほしいです。怒鳴りつけても殴りつけてもかえって逆ギレされるうえに余計な因縁をつけてくるので、私は一切まともに相手をしないでそこにいなかった事にしています。そうじゃなかったら、紅魔館のメイド長なんてやっていけません。


 ―皿洗いをしている私―


 「咲夜は可愛いお尻をしてるから、わしはこんな可愛いお尻を触らざるを得ないじゃないか。エッヘッヘ。」

 レミリア様は、私が最初に厨房で皿洗いをしている事を知っているので、早速お尻を触ってきます。しかも触り方がただ撫でるだけでなく、中年オヤジが若いOLにセクハラするようにねちっこい感触で触ってくるんです。時を止めて逃げだしても、また私が他の仕事をやっているのにもかかわらずお尻を触ってきます。どこでこんな事を覚えてきたのだかわからないのですが、仕事の効率が著しく下がるので本当に勘弁してほしいです。

 「お嬢様仕事の邪魔をしないで下さい。やることがなかったら、お部屋にお戻りになって棺桶の中に入ってください」

 私がいくら抗議の声を上げてもお嬢様はセクハラの手をやめないので、何を言ってもセクハラの手を止める効果はないのであきらめています。

 「棺桶に入る?冗談じゃないわ!大人しく部屋で休んでいるより、咲夜とセクハラごっこをしたいんだ。咲夜の可愛いお尻は私のものだぞ!けっへっへっへ。じゃあ早速咲夜のお尻の匂いを嗅がせて貰うぞ!」

 レミリア様は私のお尻の割れ目に顔を突っ込むと、鼻息を立てて匂いを嗅いでいるようですが、私にとって非常に不愉快なのですが、レミリア様にとって至福の時間であるようです。

 「お嬢様、恥ずかしいのでやめてください!」

 私はレミリア様に抗議の声をあげるのですが、レミリア様は聞く耳一つ持ちません。

 「くんかくんか、咲夜のお尻はうんちの匂いがあまりしないんだけど、お母さんの臭いとともにエッチな臭いがして堪らないなぁ…。」

 こんな風に言ってきて、一向にやめようとしません。相手の気持ちが理解できない人ですから、私はもう諦めています。私は抵抗する姿勢を見せないで、レミリア様がただやりたいようにやらせておくだけです。


 ―掃除をしている私―


 皿洗いを終わっても、レミリア様のセクハラはまだ終わりません。いえ、さらに勢いを増してくるんです。私が廊下や階段をモップがけしている時に、私のスカートの中身を見ようとしたり、スカートの中に手を忍び込ませ下着越しでお尻を触ったりしてきます。やってて何が楽しいのか理解できませんが、柄の長い棒を使ってスカート中を見ようとしたり、階段の段差を生かしてスカートを見ようとしたりしてきます。

 「げっへっへっへ、お嬢ちゃんは今日どんな下着を穿いているかな?白かな、黒かな、ピンクかな、水色かな、それとも縞々かな?ハァハァハァハァ…、んん〜、見たいのう見たいのう。以前は短めのスカートをはかしていたのに、何で長いスカートにしやがるんだ!咲夜の太ももはエッチだから思う存分舐め回したいのう!けへへへへっ!」

 レミリア様はどこから持って来たのかわからない柄の長い棒を使って、私のスカートに棒を引っかけて下着を見ようとしてきます。棒が私のスカートをとらえてめくられるとレミリア様が見たかった私の下着が露になります。

 「ちっ、色気のないドロワーズか。なんてものを穿きやがるんだ!咲夜はエッチなパンティーを穿いてりゃいいんだ!ついでにミニスカートにしとけば、私がこうも苦労をしないで済むのに、咲夜は一体何を考えているんだ?でも咲夜が今日穿いているドロワーズは、私の物だからな!」

 小声で私が聞こえるように非難してきますが、本当に避難されるのはレミリア様のやられているいかがわしい行為の類だと思います。自分がスカートを捲られるとどれだけ恥ずかしいかということを、その身を持って味わってほしいものです。

 
 ―洗濯をしている私―


 掃除を終えると、レミリア様とフランドール様とパチュリー様と小悪魔と美鈴の使った衣類の洗濯をします。美鈴は外勤で非常に大変な仕事をしているので、服が汚れてしまうのは当然なのですが、ここでもいかんなく問題児ぶりを発揮しているのがレミリア様とフランドール様で、ドレスは胸元に涎や吸血後の血液や食後の名残がいっぱい付いていて、ドロワーズはうんちやおしっこの染みがベットリ付いているのですが、おそらく用を足した後に塵紙で拭き取っていないか、拭き方が甘く汚れを取り切れていないことが推測出来ます。

 それに先程の朝食で、レミリア様とフランドール様が派手に粗相をやらかしてくれたので、レミリア様とフランドール様が先ほどまで穿いていたドロワーズは、オシッコとウンコがたっぷりついていたので、私はビニローブでドロワーズからウンコを取り除いて汚物は全て花畑の肥料に使いました。

 紅魔館での洗濯のやり方は外の世界の皆さんと違って洗濯機に任せておけばいいというものでなくて、盥に水を張って洗濯板を使って汚れを落とす古典的なやり方なので、凄くきつい仕事で手が荒れてしまい冬場になるとメイドたちも嫌がるので、現状を改善するために香霖堂で洗濯機を10台ぐらい買ってほしいと提案したのですが、自分の小遣いが少なくなるのが我慢ならないのでアッサリ却下されました。

 洗濯ものの洗いと濯ぎと脱水を終えると、屋上に洗濯物を乾かすためのスペースがあるので、そこで乾かすのですが当然皺を伸ばしてハンガーに洗濯済みの衣類をかけて物干し竿にひっかけておきます。屋上に行けばレミリア様がセクハラ出来なくなるのですが、屋上にたどり着くまでが非常に大変なんです。

 フランドール様やパチュリー様や小悪魔も外に出てくれば、レミリア様と同じく私の使用済みの衣類を盗もうとしたり、後ろから接近してくると私のおっぱいを揉みつけようとしたりしてきます。まぁ露骨にセクハラしてくるのはレミリア様だけですから、まだ許容範囲といったところでしょうか。

 「咲夜ー!そのでかい胸を揉ませろー!」

 レミリア様は私の胸を揉んできます。いちいち相手にしていると、貴重な時間を無駄に浪費してしまうので、私はあえて無視しています。

 「咲夜のおっぱいはでかくて柔らかくて揉み心地がええのう!」

 自分の父親が使用人のメイドに対しセクハラをしたのを目の当たりにしたので、自分もセクハラをやりたいという歪んだ願望を持ってしまったのでしょうが、これは許されるものではありません。いつもいつも私にセクハラという嫌がらせをしているので、仕事の効率が著しく下がりストレスが増大し胃が痛くなってきます。自分もロリコンの性癖を持つ変態に性的な嫌がらせをされたら、私にやってきたことが出来なくなると思いますよ。

 家事を一通りこなすだけで6時間もかかってしまいました。当然の如く時を止めないとやっていけないのですが、レミリア様のセクハラという妨害がもれなく付いて来るので、いい加減なんとかして欲しいです。あぁ、もうダメだ、こんな馬鹿に絡まれたら出来ることも出来なくなる。もう限界だ、我慢できない、誰か私を助けろ…



―午前10時 博麗神社に行って巫女をひやかす―


 
 私は昨日レミリア様が博麗神社に行かれるといったので、急いでフランドール様とパチュリー様と美鈴と小悪魔の分のお昼ご飯を急いで作って、運搬台車と特製のケースに入れておいたので、味が劣化することはない。

 ちなみにこの特製ケースも八雲紫からもらったもので、こんな素晴らしい道具をくれた八雲紫には感謝してもし足りないのだ。彼女は神出鬼没で会いたい時に会えないし、会いたくない時に会えるし、会いたくない時には会えないので、後日狐の式神を通じて紅魔館特製のビンテージワインを献上しようと思う。もちろん稲荷寿司を忘れずに用意しておこう。

 部下の妖精メイドには、時間になったらフランドール様とパチュリー様と美鈴と小悪魔にお昼ごはんを渡すよう指示した。妖精メイドたちも、最近になって仕事のコツをつかんだので、紅魔館を運営するのに欠かせない人材たちだ。私が命令を下した妖精メイドは、メイド歴が長くベテランの域にあり、仕事を任せられる人材だ。

 私はもっと厄介で神経を使う仕事をしなくてはならない。何かというと、レミリア様の護衛とおもり役だ。好奇心旺盛で何をしだすかわからないので、目を離さずにはいられない。

 コンコン。

 「失礼いたします。」

 「誰?」

 「メイド長の十六夜咲夜でございます。」

 「ああ、咲夜か。入れ。要件を手短に言ってちょうだい。」

 ギィィィィ、ガチャッ、バタン!

 「お嬢様、今日は博麗神社に向かう時間ですので、そろそろ外出の準備をされてはいかがでしょうか。」

 「えー、神社に行くの?めんどくさいから霊夢を連れて来させればいいじゃないの。」

 「お嬢様、昨日はあれほど神社に行くと言われたのに、霊夢にも今日行くと約束をつけるよう命令されたのはお嬢様じゃないですか。」

 「んー、気が変った。今日は咲夜で遊ぶ。フランとパチェと小悪魔はかまってくれないから、私は咲夜で遊びたいの!誰がどうなろうが知ったことじゃない。それに約束ってやつは本来破るためにあるのよ!」

 レミリア様の我儘がまた始まりました。私にあれこれするよう指示する癖に、いきなり気分が変わってドタキャンするのは当たり前なので、一方的に振り回される身としては最悪です。

 「そうですか、わかりました。お嬢様が神社に行かれないのでしたら、私一人で行かせていただきます。」

 「やだー、私も行くー!霊夢をひやかしに行くー!咲夜、日傘を差して付いてきて頂戴!」

 またこれです。レミリア様はとんでもない我儘なうえに天の邪鬼なので、先程と言動が違うのですが、これもいつものことなので気にしたら負けです。なんたって自分が世界の中心にいると思われている方ですから、そんな事を考えている相手に何を言ったて無駄です方それよりもっと実利的な事をした方が自分の為になりますね。

 なんだかんだいいながら神社に行くことになって、霊夢との約束を守ることが出来て良かったと思います。お嬢様の鶴の一声で、いつも私が尻拭いさせられているのですから、本当にたまったものではありません。

 神社に着くと私は霊夢にお茶菓子を渡して、素敵なお賽銭箱に10円硬貨を2枚入れます。霊夢は重度の守銭奴で、神社に参拝してきた人にとにかくお賽銭を入れるように脅迫するため、煙を撒くために1円でもいいから入れておけば問題は起きません。

 お賽銭を入れないと霊夢は鬼巫女になって襲いかかってきますので、誰が相手でも死んでしまう事になります。噂話で聞いたのですが、外界からやって来た人間が博麗神社にやってきてお賽銭を入れなかったがために霊夢に殺されたという話を聞きました。

 神社にいる間、レミリア様は霊夢にくっついて離れないので私にとって気が休まるひと時でもあります。たまたま魔理沙が神社にやって来たので、霊夢は魔理沙にお嬢様のお守りをさせましたが、霊夢と魔理沙もレミリア様の相手をするという事がどれだけ大変かという事を嫌というほど味合わされるでしょう。



―午前11時半 レミリア様の昼食を作る 自分と妖精メイドの昼食を作り、急いで食べる―


 いつもはこの時間帯になると、レミリア様とフランドール様とパチュリー様と小悪魔の昼食をまとめて作るのですが、私と妖精メイドの分も同時進行で作らなくてはなりません。メイドたち全員がお腹を空かせているうえに、ここでの楽しみは3度の食事以外ないのだから、私も少しでも美味しい料理を食べさてあげたいといつも考えています。劣悪な労働条件を課せられた上に食事が不味かったなら、誰だってこんなところで働きたくないです。

 いつもでしたら、紅魔館の管内の清掃をしたり、妖精メイドたちの為に昼食を作ったりするなどやることがいっぱいなのですが、今日は博麗神社に行って守銭奴の鬼巫女をひやかした後に香霖堂の変態店主から、新しいティーカップを奪ってきました。



―午後12時35分 レミリア様に昼食を食べさせる。―



 「咲夜ー、腹減ったから飯食わせろー!」

 先程まで博麗神社で巫女と魔女をおもちゃ扱いして遊んでいたお嬢様は、思い切り体を動かしたこともあって、お腹を空かされているのが我慢できないためにテーブルをバンバン叩いて私に昼食を急いで出すように催促してきます。

 「ゴホゴホッ!咲夜、お昼ご飯食べさせて。咲夜の作る料理を食べないと、私の身体が崩壊しかねないわ。」

 紅魔館で一番のタダ飯ぐらいの役立たずの分際で、食事をよこすようにけしかけてくるのは想像を絶する虚弱体質をもち“紫もやし”という異名を持つパチュリー様です。食事の時間以外はずっと図書館に引き篭って本ばかり読んでいるので、維持コストだけ支払うだけ無駄なのですが、どういうわけかレミリア様と友人関係を持っているせいで紅魔館のヴアル魔法図書館にちゃっかりと居座っているんですから。

 「咲夜メシくれよ!メシメシメシメシメシ!腹減ったー!メシよこせー!」

 フランドール様はいつも通り地下室の中で暴れまわっているので、レミリア様と同様にお腹を空かせているようでテーブルをバンバン叩いて一刻も早く昼食を持って来させようとしています。
 
 「承知いたしました。皆様の昼食を急いで作りますので、少しばかりお待ちいただけないでしょうか?」

 私に食事の用意をするように言われたましたから、いつものことなのですがもちろん時を止めて急いで昼食を作りました。仕込みから何から全部私がやらなくてはならないので、2時間ほどかかりますから時を止めるのは当たり前です。今日のランチは“ハクタクミルクと鴉天狗の卵を使ったフレンチトースト”と“詐欺兎のソテー”と、食事の締めとなるデザートに“Hシャーベット”となります。

 「あ〜、美味い美味い。咲夜、フレンチトーストは普通の牛乳と普通の鶏卵を使っていないようだな。おそらくハクタクミルクと鴉天狗の卵を使ったものだろう?このいつまでも口の中に残る風味がたまらないから、マスゴミビッチでパパラッチの射命丸文と引きこもりで妄想記者の姫海棠はたてと竹林ホームレスの藤原妹紅に食べさせてやりたいものだから、この極上のフレンチトーストを食べた後のあいつらの喜ぶ顔が見たいねぇ。」

 「その通りです。今日のフレンチトーストには鴉天狗の卵とハクタクミルクを使わせていただきました。」

 お嬢様がフレンチトーストに使った食材を見事に当ててきますが、この時にカリスマを最大限に放出されるのですがこんな場面に使わないで欲しいです。しかも射命丸が何よりも嫌っている共食いをさせようと考えているなんて、やはりこのお方は悪魔であるという事を認識させられます。

 「咲夜、この兎のソテーなんだけどソースと絡めて食べると凄く美味しいわね。兎は相当人を騙してきたようだし、咲夜特製のソースと絡めて食べるとこの兎肉の旨味が引き出されて凄く美味しいわ。」

 「左様でございます。兎は詐欺をし続けた兎を捕獲してそれをソテーしたもので、ソースは私オリジナルの配合で作ったものとなります。」

 「だから兎の肉もソースもなんか独特の嫌らしい癖を感じたんだけど、癖のある物同士を絡ませると癖がなくなって逆に旨味が増すっていうわけね。しかも肉とソースから残留思念を感じるのがたまらないなぁ、そんなもの私が壊してあげる!」

 「フラン。そんなものを壊す事などいつでもできるから、それよりこの兎肉のソテーを月の頭脳と蓬莱ニートと玉兎に食べさせてやりたいものだ。間違いなく歓喜の涙を流す筈だし、死ねない蓬莱人は自殺をし続けることだろうよ!あっはっはっはっ!あぁ〜あははははっ!!!!!

 ランチのメインディッシュは皆様の好評なので私としても嬉しいのですが、何も言わないのに食材をピタリと当てることにやはり畏敬の念を感じてしまいます。この味を好まれるのは夜の種族である悪魔であることを証明するものでしょう。

 「お嬢様、妹様、パチュリー様。本日のデザートはこちらとなっております。」

 私はクーラーから“Hシャーベット”を取り出してから、レミリア様とフランドール様とパチュリー様のテーブルにもっていきました。

 「うわぁ、真紅に輝くシャーベットね!すっごく美味しそう!」

 「これぞ究極の赤というものだわ。これは食べずにはいられないわね。」

 「このシャーベットは素晴らしい香りがするな。どれ一口頂くとするか。」

 そう言われるとお嬢様達は激しく物音をたてながらシャーベットを平らげてしまい、なおかつお変わりまで要求されたので私は2杯目のシャーベットを差し出しました。

 「このシャーベットは馬鹿な氷精っぽい味がするんだが、無駄に力があるためにそれが独特の風味を醸し出しており奇妙な感触が舌に絡み付くんだな。うん、凄く美味いな!少食の私が何度もお代わりをしたくなるんだから、このシャーベットが美味いという事は間違いないな!」

 レミリア様はシャーベットを1口食べると、いつものように食材が何かについての蘊蓄を語るのですが、こんな時にかぎって無駄にカリスマを溢れさせています。

 「咲夜ヤバイよ!このシャーベットは美味しすぎるのよ!ついつい食べ過ぎてしまうぐらい美味しいの。なんでだろう?食べ過ぎちゃいけないってわかっているのに、やめられないとまらない!咲夜の料理は凄く美味しいから、他の人が作った料理だと物足りなくなるの。また美味しい料理を作ってね!」

 フランドール様は私の作ったシャーベットが美味しいとひたすら称賛してくださいました上にアンコールをして頂いたので、私は自分の仕事を評価してもらえたのが素直にうれしいので料理人としての誇りを感じます。

 「妹様のいうとおりだわ。これは一度その味を知ってしまったら止められなくなるし、レミィがいったように、複雑な味がする上に何とも言えない風味がしてそれでいて奇妙なんだけど舌に絡み付いていつまでもうまみを味わい続けれるのよね。咲夜、今度もこのシャーベットを食べさせてほしいわ。」

 パチュリー様もシャーベットが気に入られたので嬉しく思いますが、超レア物の食材を贅沢に使ったので2度と食べられないと思います。

 自分の作った料理を食べてもらえるのは嬉しいのですが、レミリア様とフランドール様の食べ方が非常に汚いので頭を抱えてしまいます。ゲップを人前でするのは朝飯前ですし、料理を食べている時にお漏らしをするのはもはや日常茶飯事なのです。名門貴族の出身でテーブルマナーはちゃんと教育されたはずなのに、なぜそれができないのか私には理解できませんよ。

 これで午前中の仕事は終わりとなるのですが、午後からの仕事は午前中の仕事と比較にならない位ハードで、メイド長の私個人の見解となりますがとんでもない量と質を兼ねた仕事をこなさなくてはなりません。

 ここまでの仕事だけでも十分すぎるほど大変なのですが、本当にきつくて厄介なのは午後からやらなくてはならない仕事ですので、強いていうならばこれまでが前菜でこれからがメインディッシュといったところですから、私はいつレミリア様突発的な我儘が襲いかかってくると思うと正直言って気が気でありませんし、突発的なパーティをまたけしかけてくると思うと胃が痛くなって堪らないです。



 中編に続く。
―あとがき―



 このSSも昨年末に執筆作業を始めたのですが、なかなか上手くいかないものでしてここまで時間がかかってしまいました。執筆したものを何度もスクラップにしたと思いきや、また書き込んではスクラップにしての繰り返しを何度かし続けているうちに、容量の関係上読者様に読みやすくするための配慮として前編と後編に分割することにしました。

 レミリアとフランはひたすら痛いキャラをやってもらいましたが、前半ではパチュリーと小悪魔が空気同然でしたので少し出番を増やしておきたいと思っております。
イル・プリンチベ
作品情報
作品集:
25
投稿日時:
2011/03/28 10:45:00
更新日時:
2011/04/03 15:50:18
分類
十六夜咲夜
レミリア・スカーレット
フランドール・スカーレット
パチュリー・ノーレッジ
紅美鈴
小悪魔
スカトロ
セクハラ
ブラック企業
1. NutsIn先任曹長 ■2011/03/28 21:21:45
以前に書かれた話と色々シンクロしていますね。

ああ、これは、酷いですね…。
コンビニで買ってきた夕食が、一段と美味くなりましたよ。
咲夜さん、貴方の待遇もですが、貴方自身も何気に酷いですね。

後編もこの地獄が続くのか…。

間違い?:フレンチトーストの卵、使った物とレミリアが言い当てた物が異なるようですが…。
2. あぶぶ ■2011/03/28 23:39:44
うわぁ・・・
何が凄いって咲夜さんの一日が凄く長いって事に尽きる。
この文章は聖書の次ぐらいに価値がある文章だから、皆目に焼きつけようねw
3. 名無し ■2011/03/29 19:16:09
待ってました。

これ一日より時を止めている時間の方が長いんじゃないだろうか?
もし時を止めている間も咲夜さんの体は歳をとっているとしたら…
こんな生活が毎日続いたら…
あっという間に歳をとってしまいそうだ
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