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『アリスと私』 作者: 七色の匿名希望

アリスと私

作品集: 25 投稿日時: 2011/03/29 22:06:01 更新日時: 2011/03/30 08:55:08
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              二次創作注意!私設定や私解釈が含まれてる可能性があります!







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**********彼女と私************


今日も魔法の森の木々は空から降りしきる雪を一身に受け止めている
先月新しい年を迎えたばかりなのに、窓から見える風景は、いつも変わらない
ただひたすら白い雪と、茶色を含んだ木の幹

朝食のパンを齧り、暖かいコーヒー飲み、読みかけの本のページをめくり
窓の外を眺め、少し感傷めいた口ぶりで「今日も雪か」と呟く
そして、すぐ本に視線を戻す、そして少し、感傷めいた気持ちを駆り立てながら、思い出す
去年の末かそれより前からか、雪は降り続けている、雪は木に積もり、屋根に積もり、地面に積もる

貧乏巫女は寒さを凌ぐ毛布を買う金もないのだろう、身体を暖める食べ物も十分に取れていないだろう
吸血鬼は暖の効いた部屋でメイドに紅茶を淹れて貰い、「つまんないわ」と、日常に愚痴を吐いてるのだろう

だが私はそんな2人の事を思い出して心配をするわけでも、笑う訳でもない
それよりも、一番心に留まり、心を爪でカリカリされるような思いを持たせる女性が居るからだ
彼女の事を思うと、冬の寒さも、外の白さも消えて、暖かい気持ちで溢れてくる、だが同時に、雪の冷たさより冷え切った気持ちが流れ込んでくる

残念ながら、彼女は私に対してまったくの無感情である、誰か他に想い人が居る、という素振りもないのだが
ただ、魔法の森に住んでいる物好きなニンゲン、それだけの印象、会った事も話した事もほとんどない
私の事を忘れているかもしれない、むしろ、嫌悪すら抱いているかもしれない、けど、もしかしたら少しは気にかけているかもしれない

そんな気持ちが、心に爪を立てられるが、同時に暖かいミルクを注がれるような、そんな気持ちになるのだ
人里を離れ、魔法の森に移り住んだ時は、ただ、人との関わりを避けたい、そんな排他的な感情でしかなかった
だが今はどうだ、限定的に、だが、むしろ人(人なのかどうかは知らないが)に会いたいとすら思っている

彼女はどんな食べ物が好きなのだろうか、彼女が好きな本は、彼女が好きな色は…
そんな事を思いながらも、会いに行く勇気は沸いて来ない、「まだ雪が降っているから」そんな逃げ文句が頭をよぎる
冬に森の中に食料なんてほとんどない、彼女と自然に会う機会(食料探し)は、無くなってしまっていた、だから、この時期は大嫌いだ

口の中のパンを乱暴に噛み、コーヒーで勢いよく流し込む、カップをテーブルの上に叩きつけ、1つ溜息をついた
「はぁー…」
わかっている、彼女に、完全に惚れきっている、彼女の為なら死ねる、と、そんな冬が更に冬になる言葉すら出てくる


少し、思い出す





*********




一昨年の春、食料を求めて森の中を探索していた、生い茂った草を踏みつけながら、木の根元にキノコが生えていないか
木に実はついていないか、食べられる草はないか…最悪、食べ物がなくなったら人里に下りなければならない
なるべく人との関わりを避けたい私は、自然に自給自足の生活になっていった

ふと、森の中を歩いていると、木の根元に、赤いような、白いような、そんなキノコが生えているのを見つけた
目立つキノコは危ないキノコ…だが、見た事のない種類だ、食べてみないとわからない
私はそのキノコを根元からちぎり、傘の部分を少し齧ってみた、ヘンな味だ、だが食べられない訳ではない

キノコの周りには今食べたものと同じようなキノコがいくつか生えていた、私は「食べられる」と判断した上で生えていたキノコを残らず抜き取った
「今日はキノコで何か作るか…」そんな事を思い、立ち上がり…と、頭で考えていても、立ち上がれない


あれ?どうした?そう思うより前に、私は強い眩暈を感じて、その場に倒れ、視界が暗転していった





***********





次に感じたモノは腹の鈍い痛み、腹を蹴られたような感覚

「う、うぅ…ん?」と、うめき声をあげながら目を開けると、茶色い網目のブーツと青いスカートが視界に入った


「あら、目が覚めたの、残念だわ」


ゆっくり顔をあげて、声の主の顔を見る、赤いカチューシャをした金髪の美しい女性がそこに居た
端正に整った顔と、気だるそうな目つき、腕に抱えた本、そしてその横でふよふよと浮かぶ小さい人形


「毒キノコ齧って倒れるなんて魔理沙でもそうそうしないわよ」


まりさ…?この人の知り合いか何かだろうか、そうか、私はキノコを食べた後に倒れて…


「あ、あの…」

「目が覚めたのなら早く人里に帰る事ね、暗くなったらここは危険よ」


私が言葉を発す前に、金髪の女性は踵を返し、流れるような金髪を手でかきあげて森の中へ消えていった
ただ、美しかった、その姿は、私の心をわしづかみにして、そのまま離さないでいるには十分



私は、女性に惚れた


それからというもの…会った場所に何度も出向き、食料を探すふりをしつつ、彼女を探していた
彼女はどこから来るのだろうか、なんという名前なのか…そんな質問を会った時にしようと思っていた、しかし、数ヶ月通いつめても、会える事はなかった
もう彼女には会えないのか…人生で初めての恋の味、初恋である、諦めたくはなかった


初夏の事、今日はよこしまな気持ちはなく、ただ単に森の食料を集めていた時、彼女を見つけた
あまりに突然、あまりに突拍子もなかった、私は驚きのあまり、手に取った果実を手から落とす、あれだけ通いつめても会えなかった女性が、目の前に居る、あれほど探しても居なかったのに…今になって、彼女への感情が洪水のように押し戻ってくる

私は思わず、反射的に声をかけてしまった、戸惑いも躊躇も何もない
お礼も何もいえてないのだから、彼女の事を少しでも知りたい、そういう気持ちが私を後押しした

「あ、あのっ!」

彼女はこちらを気づき、あの時と同じように、気だるそうな声で返事をする

「あら、人間がこんな所に居るなんて珍しい…」

森に差し込む太陽の光が差し込む魔法の森で、彼女はまたあの時と同じように、綺麗な金髪の髪をかきあげた
どうやら私の事は忘れてしまったらしい、少し寂しい、胸に針でも刺さったような感じがする、だが、私の言葉は止まらない

「あの、あのっ、私、森の中で、キノコを、その、助けてもらった時、あの…」

思った通りに言葉が出ない、会った時、会った時とシミュレーションしていたに関わらず、緊張で身体が張り裂けそうだ、変な人だと思われないだろうか、心配だった

「…?えっと…ちょっと待ってね…」
彼女は一瞬、思い出す素振りを見せると、ピーン、と閃いたように話し始めた

「あ、あー…なるほど、あの時の…それで、何?」

「ああっ、あの、ああの時お礼を言えてなくてっ、その、その節はどうも、ありがとうございました…」

なんでこんな言い方になるんだ、人と触れ合う機会の少ない自分は、人との接し方がよくわからない
自分の想い人であるなら、なおさらだ、嫌われたくない、好かれたい、その気持ちがせめぎあって、言葉がさらにおかしくなる

「クスッ…いいのよ、お礼なんて…気まぐれで見過ごすのも夢見が悪いと思っただけ」

彼女が、笑った、私の顔で?言葉で?何で?理由なんてどうでもいい、彼女の笑顔は、とても、綺麗で、儚くて、愛しかった
その笑顔をもっと見たくなった、私の記憶の中にもっとたくさんしまっておきたかった

私の気持ちは、更に膨らんでいった

「いい、命の恩人、ですので!感謝してます、あ、あの…せめてお名前だけでも…」

聞きたいのは名前だけではない、血液型、誕生日、好きな色、好きな食べ物、好きな…ああ、ありすぎて、どれから尋ねればいいのかわからない
だけど、勇気もなにもない俺は、名前を聞くので精一杯だった

「命の恩人なんて大げさな…まぁ、感謝されるのも悪くはないわね…アリス・マーガトロイドよ、覚えておきなさい」

神秘的だ、彼女にピッタリだ、…アリス…マーガトロイド…絵本の世界から出てきたような、綺麗な、人形のような、ステキな名前だった

「アア、アリスさんですか…!わかりました!このご恩は忘れません…!」

違う、もっと他の事があるだろ、言え、何故言えない、何故…私は臆病なのだ

「それはどうも…それじゃあね」

彼女は、私が何か引きとめせそうな言葉を模索している間に、また気だるそうな顔で、小さな人形と共に森の中へ消えていった



「あ…」
チャンスを、逃してしまった、他に会話が出来たはずだ、何故、こんな堅苦しい挨拶しか、質問しかできない
俺は、足元に落とした果実を見つめながら、悔しくて歯軋りをした、だが、同時に、少し希望が見えた気がした





*********





それから、今に至る、彼女とは、あの夏も含めて、4回会った、だが多くの事も聞けず、多くの会話も出来なかった
臆病な私は、今年も何も、聞けず、関係も進まず、顔見知り、いや、それ以下の関係が続いていくのだろうか
冬に入ってからは外に出る事すら少なくなった
私は、彼女と一緒に暮らし、一緒に朝を迎え、一緒に夜に眠り、一緒に本を読み、一緒にコーヒーを飲み、一緒に変わらない風景を見つめていたい
人との関わりを避け、魔法の森に移り住んだというのに、とんだお笑い草だ



私は…彼女と、両思いになりたい、彼女の想われ人になりたい




だが、私は、臆病だった




彼女が住んでいる所も知らない、知っているのは、名前と、種族(魔法使いらしい(?)と、あの、端正な容姿だけ
皿とカップを片付けて、本にしおりを挟んで、テーブルの上でうな垂れる
打つ手がない、夏や春まで待てと言われても、胸が張り裂けそうだ、今すぐにでも会いたい…
テーブルの上で頭をかきむしり、イラだちをぶつけるようにテーブルを叩いたり、まるで女に振られた哀れな男である

そんな事を一通りやった後、イスから立ち上がり、暖炉に木でもくべようかと思った時、ふと、頭に1つの事が思い浮かぶ

彼女は春、あの場所で会った時以外、夏を迎えるまで見ていない、つまり、どういうことか?
あの場所の近くに、彼女の家があるのではないか?しかし、突然家まで押しかけていって迷惑にならないか
家の場所を確かめるだけ、それ以上は何もしない、家の場所を確かめるだけ、しかしバレたら、魔法使いというくらいだ、殺されるかもしれない


しかし、私の恐怖心は、好奇心と、興味にうちのめされた
思い立ったが吉日、私は毛皮を剥いで作った暖着を羽織り、外へ出た
外ではまだ、世界が雪を覆っていた、寒さは、感じなかった、いや、実際は寒かったのかもしれない、だが、感じられなかった

地面に積もった雪を踏み、進む、行き先は決まっている、去年初めて彼女に会った所へ

数十分ほど歩き、その場所にたどり着いた、彼女は去年、どの方向へ向かった?右だ、私は自分のおぼろげになっていた記憶を頼りに、私は右へ向かった
雪が酷くなってきたが、そんなことは気に留まらなかった、そんな事より、彼女の事が気になった

雪をかきわけ、前へ、前へと進む、心には彼女への熱い思い、その思いは雪すら溶けそうであった

木と雪をかきわけたその先に、ぽつん、と家があった、あまりにも突拍子がなくて驚いた、それより驚いたのは

家の周りは、とても静かだった、温かみが感じられない
冬の寒さで枯れた花と、灯りの消えた窓、そこに人が住んでいる気配は、ほとんどなかった

「ここが…あの人の家なのか…?」

そう思うと、自然と足が動いた、あの人の顔が見たい、声が聞きたい、もはや、ストーカーじみていたのかもしれない
自分を肯定する、「そうだ、雪で迷ったことにしてしまえばいい」案外あっさり家に入れてくれるかもしれない
私は家の玄関までたどり着く、ノックをしようか、迷った、だが、考えるより先に身体が動いた
(もう後戻りはできない…)
トントン、と、寒さでほとんど固まったような手の甲で、ドアを叩く、返事はない

(誰も居ないのか…?ここは、ただの無人の家だったのか?)

もう一度トントン、と、今度は少し強めに叩いてみる、が、返事はない

(…そんなに、都合よく見つかる訳がないか…)

「!」

少し諦めかけたその時、家の中から、少し物音が聞こえた、物が落ちたような、絹が擦れたような、そんな音

(居る、中に人が、彼女が…あの人が…?)

確認の為に、ドアの向こうから声をかけてみる
「すみません、雪が酷くて森の中で迷ってしまったのですが、おさまるまで中で雨宿りさせてくれないでしょうか?」

…返事はない、だが、中に確実に、人が居る、私はドアのノブを1度回してみた
ガチャ、と音がして、ドアがゆっくりと開いた、鍵はしていないらしい、身体の雪を少し落とし、中に足を踏み入れてみる

「返事がないですが、失礼します…」
常識外れた行為だ、普段はこんな事はしないが、もう、私は止められなかった
雪が中まで入ってこないように、ドアを閉める、家の中は、閑散としていた、だが、生活感が少し残っている
本や、縫いかけの布、裁縫道具、テーブル…誰かが住んでいる痕跡が、ここにあった

足を前に出そうとすると、足元に何かが当たった、布か何かと思って見てみると

そこに、いつも彼女に付き添っている人形が、力なく地面に転がっていた

「…やっぱりここは彼女の家だ、だけど、この雪の中鍵も閉めずに外出するとは思えない…何故?」
足元に転がった人形を拾い上げ、テーブルの上に寝かせる、人形でも、地面は寒いだろう

ふと

頭の中に嫌な予感がよぎる、何故、この人形が地面で寝ている?普通は、使わないときでもしまったり、どこかに乗せておくだろう?

家の中に入ってから、頭が別のことでいっぱいだったが、気がついたらそこらじゅうに人形が散乱している
明らかに異様だった、彼女の事だから、家ではズボラ…そんなことは、きっとないだろう、そうと思いたい
私は家の奥へ進んでいった、ふと、咳き込むような、そんな声が聞こえた気がした

その声の元へ、私は考えるより先に、足が動いていた、歩くたびに床が軋む音が聞こえる
声の元に居た人、それは私の想い人、アリスが、さっきの人形のように、ベッドに力なく横たわっていた
私は思わず、食いつくようにアリスの元へ飛び込んでいった

「ア、アリスさん…!!大丈夫ですか!?」
「だ、だれ…?ゲホッゲホッ…」
あきらかに、体調が悪い、もしかしてあの人形は、このせいだったのか!

「私です!貴方に森で助けてもらった…一体どうしたんですか!?」

「ちょ、ちょっと、あまり大きな声を出さないで…頭に響く…
 ゲホッ…それに貴方…女性の家に勝手に入って…ゲホッ…まぁいいわ…見てわからないの…?風邪よ…」

「すっ、すみません…風邪って…大丈夫なんですか?いつから…?」

「そうね…今年に入って、から、くらいかしら…新年早々このざまよ…ゲホッ…」

「こ、今年に入ってからって…!一ヶ月たつじゃないですか、薬とか食べ物は…?」

「最初はとれていたのよ…でも、風邪の影響で魔力が…人形を操れなくなってからは…ほとんど寝たきりね…まともに動けやしない…」

「と、とにかく薬を飲まないと、あと何か食べ物も…薬はどこにしまってありますか!?」

「…台所の前にある棚の、上から4番目の引き出しよ…ゲホッ…赤いラベルの…蒼いビン…」

彼女の言う通り、棚を漁る、薬はあっさり見つかった、台所で保存食のパンを取り出し、薬と一緒に運んでいく
私が彼女の前まで運んでいくと、彼女は力なく身体を起こし、錠剤の薬を口に入れ、水でゆっくり流し込むと、また力なくベットに倒れこんだ
顔は青く、額も熱い、呼吸も荒く、不規則…咳もひどい…

明らかに衰弱している、どれだけ薬を、栄養を取ってなかったのだろう、このままでも死んでしまうかもしれない

「アリスさん、パンを食べて、栄養も取らないと…薬だけじゃ治りません…」
そう言っても、彼女はうつろな目でパンを眺めるだけで、手が出る様子はない

このまま食べるのを待っていても仕方ない、無理やりにでも食べさせないと、と思った私は、パンを一口サイズにちぎり、アリスの口元へ運んだ
「食べてください…少しでも食べないと…良くなりませんよ…」

アリスさんは、少し口をあけると、パンを口の中へ入れていった、アリスさんの綺麗な唇が指先に少し触れた、とても、柔らかい、けど、冷たかった
「パン、ここに置いておきますから、食べたくなったら食べてください」

私は頭を冷やす為に、台所で濡れタオルを作りにいった、看病なんてまともにしたことはないが、なんとなく、やり方はわかっていた
水を溜めるタライに水を入れ、そこにタオルを浸けて、アリスの元まで持って行った

パンは手付かずのままだった、ただ力なく横たわり、苦しそうに咳をしていた、私はベッドの横で、タオルの水を絞り、折り畳んで、アリスのおでこに優しく置いた
「…ありがとう…ゲホッ…」

苦しそうなアリスは、少しだけ、微笑んだように見えた…

魔力は尽きた、人形は頼れない、誰も訪問してこない、誰も来ない魔法の森で、1人で風邪に苦しむ
心細かったのかもしれない、不安で仕方なかったのかもしれない…そう思うと

少しだけ、胸が苦しくなった、もっと早く来れば、と





********






それから1日、アリスの隣でタオルを代えたり、パンを食べさせたり、人形を片付けたりしていた

何の苦でもなかった、むしろ、嬉しかった、いや、幸せだった

アリスが風邪で苦しんでいるのに、幸せなんて言うと、怒られるかもしれない、だから、なるべく顔には出さないようにしていた
ただ、一言二言の会話、それだけの関係だった、眺めているだけ、思い出しているだけ、そんな関係
だが今は自分がアリスに、どんな形であれ、今は必要にされている、そういう現実が、突然舞い込んできたからだ
アリスが治るまで、または、人形を扱えるようになるまで回復するまで、そんな短くてもいい、アリスの、命の恩人になれたかもしれない
私は嬉しかった



それから、

何回目かはもう忘れた、アリスのおでこに乗せたタオルを代えようとアリスに覆いかぶさるような、そんな形になった時、突然の事だった







アリスが、抱きついてきた








その細い、綺麗で、白い腕で、弱く、けど、力強く



私の背中に、アリスの両腕が回されて、そのまま、アリスの身体に優しく引きこまれた




私は驚いて、手に持っていたタオルを落としてしまった、あまりに突然すぎて言葉も出なかった
アリスの顔が赤いのは風邪のせいで当たり前だが、何故だか私も、顔が赤くなってきた

どうして、抱きついてきたのか、わからなかった、何故、私に、突然何も言わずに、なのか

アリスは少し呼吸を整えると、ゆっくりと口を動かした



「このまま…死んでしまうのかと、思ってたの…」

ああ…

「人形は動かない…身体も動かせない…出来ることは、天井を眺めて、窓から、雪の降る風景をずっと眺めるだけ」

今わかった…

「そして、そのまま死んでしまうのかと…思って…とても、怖かった…」

この人は…

「誰にも気づかれない…この、埃が被った、森の奥深くの、家の中の…ベッドの上で…死…



それ以上言わなくていい、と言うように、私は、何も言わずに彼女を抱きしめ返した

彼女は、それに答えるように、言葉を止めた

「大丈夫ですよ、私が死なせません、絶対に」




彼女も、私と同じ、臆病だった



アリスはやがて、安心したのか


目を閉じて、静かな寝息を立て始めた




私は、看病の続きをしようと、アリスの身体から離れようとした

しかし、アリスは寝たままでも、離れないで、と、言うように、私の身体を強く抱きしめていた







…今年も、もうそろそろ春がやってくる、リリーホワイトが春を告げ、雪が溶け、動物達が地上へ出てくる、西行妖の桜も満開になるだろう


その頃には…………



……



……

















                           〜Happy End〜
ほとんど生まれて初めてのSSです

アリスが可愛すぎてラブラブになりたいな〜と思った結果がコレ

後日談とか書くかもしれませんが、まあご了承ください

鬼畜とかファッキンエンドじゃないのも、ご了承ください

3/30 8:44 ちょっと加筆&修正
七色の匿名希望
作品情報
作品集:
25
投稿日時:
2011/03/29 22:06:01
更新日時:
2011/03/30 08:55:08
分類
アリス
1. NutsIn先任曹長 ■2011/03/30 07:50:34
この後、主人公はアリスを永遠に寝たきりにして飼い続けるクソッタレな結末かと思いきや…。
いやはや、朝から素晴らしいもの読ませていただきました。

主人公、いったいどんな人なのだろう?
男性か? 女性か?
霊夢やレミリアのことをある程度は知っているから、
種族は妖怪? それとも天狗の新聞や幻想郷縁起等で知識だけはある隠者か?
作者様は、こういったお楽しみも仕込めるようですね。

次回作、楽しみにしております。
2. もやし ■2011/04/01 00:41:46
NutsIn先任曹長さんと同じく寝たきりでずっと一緒という展開が思い浮かびましたがこれはw
二人の会話のやり取りが微笑ましいです( ^ω^)
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