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『隷属する血液(後編)PART@』 作者: イル・プリンチベ

隷属する血液(後編)PART@

作品集: 25 投稿日時: 2011/04/14 11:01:45 更新日時: 2011/04/14 20:01:45
CAUTION!

・東方Projectの二次創作ですが、原作と比較すると著しくキャラ設定の変更がありますので、それが耐えられない方はここではないどこかへ行った方が望ましいと思います。


・このSS単体でもそれなりに楽しめれると思いますが、隷属する血液(前編)と隷属する血液(後編)を読んでいただけたならよりいっそう楽しめるので、まずはそちらを先に読まれた方が望ましいと思います。


・すべてを受け入れることができる方や、このSSをネタとして笑ってすませるユーモアを持たれている方はここから先に進んでください。




―午後5時35分 脱走計画の打ち合わせとパーティの準備―




 泣きじゃくるフランドール様をなんとかしてなだめた私は、その後パチュリー様と小悪魔と美鈴に紅魔館名義で行われた犯罪に関する書類を見せることにしました。花畑の一部の空きスペースに麻を植えてマリファナにしてそれをどこかに売りつけたり、人里にある幻想郷庁に納めるべき税金を脱税したり、それどころかお嬢様はマリファナだけじゃ飽き足らずコカインとヘロインをどこかから購入していたりするといった内容でした。


 私はヴアル魔法図書館に帳簿や違法取引に関する書類を持ってくると、あまりの量の多さに美鈴が目を丸くして『大小問わずこれだけ悪さをやったら、そりゃもう違法行為の数え役満で私たちみんながトビ終了ですよ。』と驚いてしまうと、書類を呼んだ小悪魔が『そうだな、脱税、窃盗、横領、器物破損、違法ドラックの使用と製造と購入とこれだけやってくれてるしな。』と相手を小馬鹿にした笑みを浮かべれば、パチュリー様は『やりたい放題やってくれるんだから、もう本当に付き合いきれないわ。』と頭を抱え嘆かれてしまいました。


 私たち4人は今日の夜に紅魔館を脱走するという方向で意見が一致し、確実に成功させる為に綿密に計画を練り直しておいてから、パチュリー様と小悪魔は図書館で待機しておいて美鈴と私はそれぞれの持ち場に戻る事にしました。


 いつものことですが、紅魔館はお嬢様の鶴の一声で怪しい行事を行ったりしますので、館外の人から見ると何をやっているのか意味がわからないと言われるのですけど、メイド長を務めている私でさえお嬢様の真意が理解できていないこともあっていつも言われるままに段取りをする始末です。


 また今日の夜の7時にパーティを開催すると言われたので、私は脱出計画の打ち合わせの後にいつものようにパーティの準備に追われてしまうのですけど、持ち場に戻った私が最初に取り掛からなくてはならない事は、今現在勤務館注の妖精メイド達全員をパーティのメイン会場となるホールに招集して業務連絡をしなくてはならないのです。


「みんな、今日の夜七時にお嬢様がパーティを開くとおっしゃっていたから、いつもどおり急いで準備に取り掛かりなさい!第一班は会場の掃除とセッティングを、第二班は料理を作っておく事と、第三班はお酒と出来上がった料理と会場に持ち込むこと。いいわね!?」


 私は妖精メイドたちが全員集まってくるのを確認してから、例の如く自分でも嫌になるぐらい滅茶苦茶な号令をかけました。それもその筈、召集されたメイドたちは全員が過酷な業務によって疲労困憊している有様で、ここにいる全員がやっとの状態で両方の足で立っている有様です。


 中にはデッキブラシで体を支えている者が何名かいるので、私としてもそんな部下達を何とかしてあげたいのに、それができない不甲斐ない上司だという事を嫌というほど認識させられてしまうのですから。


 「咲夜さん、本気ですか!?また今日もパーティをやらなくてはならないのですか?」


 妖精メイドの一人が顔をすっかり蒼白させてしまうと、私にパーティの中止を懇願することを願い出ました。


 「今日もまたやるのですか!?ああ、神よ…。私達を地獄からお救いくださいませ!」


 もう一人の妖精メイドが天を仰いで神に救済を求めてしまいました。


 「もうこれ以上は耐えられませんから、本当に勘弁して下さい…。」


 これから起こりうる悪夢を想像してしまったのか、疲れ切ってしまった妖精メイドたちは立つことができずすっかりしゃがみ込んでしまったのですが、


 「本気よ!お嬢様がそうおっしゃったんだから、私たちはそれに従って動くしかないのよ!?といっても、私も正直言わせて貰うとこれ以上ここで働きたくないから、いい加減誰かにメイド長を引き継いでもらいたいわ…。」


 私は時を止めて休むことができても彼女達はそれができないのだから、私と同じように働くことはできないという事はわかりきった話だという事は間違いありません。


 以前私は妖精メイドたちの事を役立たずだと思っていたのですが、冷静に彼女達の働きぶりを見ると一人一人が精いっぱい出来る限りの仕事をしてくれるから、私は全てを一人で背負いこまずに済んだのです。


 彼女たち妖精メイド一人一人の力量は微々たるものだったとしても、全員が一致団結した時になるとそれは私でさえ計り知れないものがありますから、いざ彼女達がいなくなると紅魔館は完全に機能しなくなるという事が目に見えることだと私は思ったのです。


 「咲夜さん、私、もうこれ以上ここで働きたくありません…。」


 先ほどまでデッキブラシで体を支えていた彼女はもうここで働きたくないと言ってしまったのですが、こうさせてしまったのも部下をいたわらす自分のことだけしか考えていなかった私の責任なのです。


 「私もです、もうこんな酷いところで、奴隷として扱われたくありません。もっと、まともな扱いをしてもらえる職場で働きたいのですから、こんな最低極まりないところなんて今すぐ出ていってもかまいませんよね!?」

 
 普段の彼女はしっかり働いてくれるのだけど、流石にこの劣悪な労働条件を強いられすぎて不満が爆発したので、胸元に隠していた辞表を私に投げつけるかのように差し出してからモップを投げ飛ばしてホールから出ていってしまうと、


 「今日限りで退職したいです!もうやっていられないですよ!」


 「お嬢様の我儘に振り回されるのは、もう耐えられません!」


 「お嬢様がパーティをされるのは構いませんが、昨日も散々暴れまわって私達の同僚が何人もなくなってしまったではありませんか!」


 「私達はお嬢様の玩具や道具扱いさせるだけでしょうか!?下働きの物でさえまともに扱われてしかるべきなのに…。」


 「私もです!」


 「私も。」


 「私も。」


 「私も。」


 彼女に続いてこの場にいたすべての妖精メイドたち全員が私に退職を願い出たので、流石の私もお嬢様に愛想を尽かしてしまったので彼女達の気持ちが痛いぐらい理解できました。


 一人一人の力は弱くても集団を組めば信じられない力を発揮しますので、私どうあがいても彼女達を止めることはできませんし止めようとも全くもって考えていませんが、せめて最後はまともな上司らしく彼女達を気持ちよく送り出してあげたいと心の奥底から思っていました。


 「そう、わかったわ…。あなた達の気持はよくわかったから、これからは好きにしてもいいのよ?」


 「それに私はあなた達を引き留める権利なんてないし、逆に無理矢理ここに残らせるというのも傲慢というものでしょう?」


 私にはメイドを務めてきてくれた彼女達の自由を奪う権利はないので、無理やり引きとめるようなことを一切しなかった為に逆に彼女達が逆に驚いてしまったのか、みんな目を丸くしてしまいました。


 「さ、咲夜さん…。」


 「咲夜さんも今すぐこんなところから逃げればいいのに…。」


 「私もあなた達と一緒にここから逃げ出したいんだけど、まだやらなくてはならないことがあるから今は無理ね。」


 「そ、そんな!」


 「咲夜さんもあんな我儘な奴の相手なんてしなくてもいいのに…。」


 「ふふっ、やっぱりそうよね。こんな働きかたをさせてきたお嬢様にあなた達全員が愛想を尽かしたっておかしくないし、ここでいくら働いたって無益すぎてやるだけ虚しくなってしまうでしょう?」


 「私はあなた達にとって最低な上司で、働きやすくするために何一つたりともやってあげれなかったから、せめてもの償いとしてあなた達を全員送り出すことがここを取り仕切っているメイド長としての義務よ。」


 私としてはただメイド長を務めているという事でごく当たり前のことを言っただけですが、


 「私達は一方的にやりにくいところを改善するように要求するだけしかしてこなかったのに、咲夜さんは改善提案策を考えられたじゃないですか!」


 「みんなが嫌がる冬場の洗濯を率先とやられていましたが、私達はただ逃げているだけで何もしようとしていませんでした。」


 「それにウンザリするほどレミリアお嬢様の我儘に対応されてきたじゃないですか!」


 「私だけでなくここにいる妖精メイド全員が咲夜さんを尊敬しています。」


 彼女達にとって私は頼れる上司だったので、今まで無理をして頑張ってきたかいがあったと思うとやっと報われたような気がしてなりませんでした。


 今の今まで気づかなかったのですが、彼女達は私を必要としていたように、私も彼女達の事を必要としていたのです。


 おそらく彼女達の助け無くして、私一人ではメイド長をやっていけなかったと思いますし、おそらく日々の仕事がきつすぎて耐えられなかったから、早々に逃げ出していたに違いありません。


 彼女達は運命共同体というものほど強い結束で結ばれているわけではないのですが、お互いが共に支え合うというのですから1+1=2ではなく3にも4にもなるほど強力な力を生み出せるのです。


 「みんな、ありがとう…。」


 去っていく彼女達に退職金を出してあげたいのに出せないので、私としては情けなく思うのですが私ができることといったら一人一人の手を握手した後に抱擁するだけですが、


 「咲夜さん、今までありがとうございました…」


 やはり彼女達も別れがつらいのか、私に抱擁された後に泣かざるを得なかったのでしょう。たぶん過酷な業務を共にこなしていくことによって、なんとなくお互いが解り会えたのかもしれないと思うのです。


 やはり別れというものは誰でも辛いものがあるのですが、ここは彼女達の未来が明るいものだという事を信じて送り出したいという晴れ晴れしい気持ちになったとともに、お嬢様が働いているメイドたちに何の配慮をしていないという腹立たしさを感じてしまいました。




―午後6時 レミリアお嬢様に呼び出される―




 私がパーティの開催を中止するための理由を真剣に考えている時に、レミリアお嬢様に呼び出され何事かと思っていたら、来客者を何人か呼び寄せて無駄に豪勢なパーティをしようと言われてしまいました。どうせなら私の事をクビにしてほしいと願っている自分と、誰かに必要とされたい自分の2人がいるので、なんともいえない複雑な心境になってしまいます。


 「咲夜、今日のパーティは思い切り派手に行くわよ!」


 「さっきは夜の7時からやるって言ったんだけど、急に気分が変わって夜の10時からやりたくなったからよろしくね。」


 「招待客は霊夢に魔理沙にアリスに紫と式神2人幽々子と妖夢と、いつもの天狗3人と永遠亭の連中と河童のにとりと早苗と神奈子と諏訪子に、それから萃香と勇儀の鬼2人と地霊殿の住人達と命蓮寺の連中を連れて来い!」


 またいつもの我儘が始まりました。レミリアお嬢様はヤル気満々で瞳を爛々と輝かせているうえに、招待客のリストが書かれた紙を私に提出してきました。


 皆様にとってすでにわかりきった話だと思うのですが、リストに書かれているメンバーを誰ひとりたりとも欠くことのないように呼ばなくてはならないので、私と致しましても頭が痛くなってしまうものなのです。特に永遠亭と命蓮寺の住人達はお嬢様の事を嫌っている者が多いので、パーティに誘い出すのが非常に難しく可能性で例えると256回やって1回成功すればいい方ですね。


 私にとって唯一の救いは、7時から始める予定だったものを10時に遅らせるというものですが、私がやらなくてはならない仕事の量は多いのですから、こうなってしまった以上は多少なりとも開始時間を遅らせても焼け石に水といったところでしょうか。


 お嬢様は相手の都合というものをまともに考慮していないので、いつも自分が物事の中心にいて誰もが自分のいう事を聞いて当然であると思っていますから、自分の威光が解らない相手を決して認めることがありません。


 なんたってパーティに招待という名義を使って、紅魔館に強制招集をさせる代物なのですから、誰だってお嬢様とは出来るだけ関わり合いを持ちたくないというわけですから、招待客になると思われるであろう皆さんが私の顔を見るだけで苦汁を吸わされたような顔をされますので、仕事だと解りきっていたとしても物凄く心苦しいものがありますね。


 例えば招待客の方々が風邪やインフルエンザを患ってしまった事で寝込んでいたり、以前から計画していた宴会やその他の約束事を破棄したりしてもお構いなしですので、その度に相手に交渉を挑むのも非常に心苦しいものがもの凄くあります。


 「お嬢様、申し訳ございません。紅魔館の金庫は空になってしまいましたので、贅沢はおろか普通のパーティですら出来る状態ではないのです。」


 「このままでは紅魔館が差し押さえられ、お嬢様と妹様はおろかパチュリー様や小悪魔さんや美鈴や私だけでなく妖精メイドたち全員が皆路頭に迷ってしまう事になるでしょうし、現にそうなっていますので少しは自重されては頂きたいと思います。」


 「それに妖精メイドたちのほとんどが今日付けで退職してしまいましたので、パーティの準備ができる状態ではありませんから、どうか今日のパーティはぜひとも中止にして頂けないでしょうか?」


 私はレミリア様に財政問題が極めて深刻であるとともに働いている妖精メイドたち全員が退職してしまったために人員が不足した事により、現状においてとてもパーティをやれる状態でないということを伝えたのですが、


 「うるさい!今日の夜の10時からパーティをやるというのに、なんでできないと勝手に決め付ける?咲夜、お前は私に素直に従えばいいのに、なぜこうも反抗的な態度を取りやがる!飼い主に逆らう犬は立場をわからせてやるために、後でたっぷりとお仕置きと躾のやり直しをしてやろう。そしてお前を今まで養ってやっているのと、素晴らしい名前をつけてやった事を忘れてしまったというわけではあるまいな!」


 いつもの通りお嬢様はパーティができないと聞くと鬼のような形相で私を睨みつけて、是が非でもやるように言いつけてきただけでなく私が反抗的な態度を取ったと思ったのか、今まで私の事を養ってきた事と名前を付けた事に関して恩を忘れたのではないかとみられてしまい、私の事を後でお仕置きと躾をするとおっしゃられてしまいました。


 「それにメイドたちが辞めただと!?嘘をつくものじゃないし、お前は私にくだらない冗談を言ってる暇があるのかね?いや、ないだろう?仮に妖精メイドたちが辞めると言ってきたら、その場で殺せばいいし、妖精狩りをした際に強制的にメイドとして死ぬまで働かせてやっておけばいいじゃないか。」


 実際メイドたちが全員になくなったことを信じていないので、私のいった事を信用していないのか全くの嘘だと思っているようです。それに妖精たちを拉致してメイドに仕立て上げればいいと言われた上に、ここから逃げ出そうとしたものを殺せばいいと仰られたのです。


 「それにいつもいつもお前は素直に私のいう事を素直に聞いていればいいものを、なんでこうも主人に歯向かってくる発言をしてくるんだ!いいからさっさと私のいったとおりに招待客を連れてくればいい話だから、さっさと連中どもを無理矢理でもいいからなんとしても連れて来い!」


 杜撰極まりない現場の状況をお嬢様に説明したのですが、残念ながらそれが伝わることがないどころか怒りを買ってしまいましたので、


 「もう我慢できない!我々吸血鬼という偉大な種族が、人間という劣等種族に仕事を任すというのはそもそもありえない話だった。」


 「私の手で育ててくれてやったのに、人間はすぐに使い物にならなくなってしまう上に、いつまでたっても無能で役に立たなくてどうやっても使い道のない無能なメイドは、この私の手で躾をしてやるから有り難く思えよなっ!」


 バチッ!


 レミリアお嬢様が癇癪を起されてしまい平手打ちをしてきましたので、私大人しく左側の頬に受けることにしました。


 「申し訳ございません、お嬢様。招待状を皆様に手渡してきますので、少々お待ち下さい。」


 私はその場を取り繕うために大人しくお嬢様に非礼を詫び、招待客という名の拉致被害者を紅魔館に連れて行くために幻想郷中を駆け巡る事になるのです。全員のもとに辿り着いて返事をもらいに行くのに時より休みながら行かなくてはやっていけないので、24時間も時を止めなくてはなりません。


 「そうだ、お前は私のいう事を聞いていれば何の問題もないんだ。お前は悪魔の狗だから、悪魔である私に従っていればそれでいい。」


 「咲夜。今回はこれで許してやるが、今度も私に逆らったなら命はないと思えよ?お前の代わりなんていくらでもいるから、今すぐクビにすることができるのにポカをしてもここで働かしてもらえる事に感謝するんだぞ!わかったな!?」


 こうなってしまうとレミリアお嬢様に何を言っても無駄ですから、私は招待状を届けるために大人しく部屋を出るしかありません。今日はどういうわけかいつもと違って嫌な予感がしてならないのですが、気にしていたら仕事が出来なくなってしまうのでやるしかないのです。


 「かしこまりました。」

 
 これからメイド業務で最低最悪なものの一つで、招待客を拉致して強制的に紅魔館に連れてくるという最も過酷でなおかつ割に合わない仕事をしなくてはならないのです。比較的力の弱い妖怪や人間相手だったら力づくで連れていけるのですが、幻想郷において力の強くてパワーバランスの一角を担っている妖怪を無理やりつれていくほど困難極まりないことはありません。 


 実際は幻想郷にはスペルカードルールがありますので、とりあえず弾幕ごっこの範囲内で済ましておけば関係が悪化することがありませんが、お嬢様がスペルカードルールを無視して暴力事件を起こしてかまわないと仰っていましたが、後々にまで響くリスクを考慮すると絶対に避けて通りたいものです。


 私はいつも特製のヴィンテージワインを差し出して相手の機嫌を取っておくのは、相手が誰であろうとも嫌がる相手を力で無理やり連れていくやり方をしたくないのと、招待客に対し最大限の敬意を払っていることをアピールすることが目的ですから、人間である私は目上の妖怪に対し紳士的に振る舞っておかないと命がいくらあっても足りないのですから。




―午後6時30分 博麗神社で飲み会をしている霊夢達を交渉する―




 お嬢様のいう事を聞くしかない私が真っ先に博麗神社に行ったのは、深刻な財政難でお腹を空かせている博麗神社の巫女である博麗霊夢に紅魔館のパーティに招待するといえば高確率で参加するのですが、神社につくと珍しいことに今日は恒例の宴会の日だったようで、魔法の森に住んでいる霧雨魔理沙とアリス・マーガトロイドに、スキマ妖怪の八雲紫とその式神の八雲藍に橙と、冥界の白玉楼に住んでいる西行寺幽々子とその従者で庭師を務める魂魄妖夢と、花の大妖怪の風見幽香を始めリグル・ナイトバグとミスティア・ローレライとルーミアあたりの在野妖怪達と、チルノと大妖精とサニーミルクとルナチャイルドとスターサファイアなどの妖精たちが集まっていました。


 これは私にとっても都合がいいことに、いつもどこで何をしているのかわからない八雲紫にパーティの参加を交渉する願ってもやまないチャンスなのですが、私が来た時点で狐の式神と半人前の剣士以外がみんなそれぞれ宴会を楽しんでいるようで、とても私がどんなに頑張って交渉しても、ここにいる全員が紅魔館にやってきてくれる望みが薄いと思えてしまいました。


 「藍、私のお酒が飲めないの!?何チビチビ飲んでいるのよ!そうだ、いいこと思い付いたっ!これからうちの藍が一気飲みをするから、こっちに注目〜。」


 胡散臭いスキマ妖怪は式神の九尾の狐に無理やり浴びるほどの酒を飲まそうとしているのですが、


 「ゆ、紫様、勘弁して下さい…。もうこれ以上は飲めません…。」


 九尾の狐の式神は、胡散臭いスキマ妖怪に限界だと伝えたのだが、


 「うるさい!藍は大人しく私のいう事を聞けばいいのよ!だから素直に一気飲みをしなさいっ!」


 胡散臭いスキマ妖怪は、容赦することなく九尾の狐の式神に酒を一気飲みさせようとしているので、


 「紫様落ち着いてください!これ以上藍様にお酒を飲まさないで下さい!藍様が酔っぱらってしまったら衣を脱いでしまうじゃないですか。」


 猫又の式神は、自分の主の主であるスキマ妖怪が、自分の主にお酒を無理やり飲まそうとしているのを必死になって止めようとしているも、


 「それがいいのよっ!私は藍が衣を脱ぎ捨てるのをみたいのよっ!」


 スキマ妖怪は猫又の式神の主張を一蹴してしまった。


 「私、藍ちゃんが一気飲みした後に衣を派手に脱ぎ飛ばすとこをみたいわぁ〜。」


 調子に乗った亡霊の姫君は、九尾の狐の式神が衣を脱ぎ捨てるのを楽しみにしているようだが、


 「幽々子様、紫様と一緒に悪ノリしないで下さい…。」


 半人前の庭師は亡霊の姫君が調子に乗らないように諫めてみるも、


 「何よ、妖夢ったらノリが悪いわね。そんな妖夢はこうしてあげるわ!」


 亡霊の姫君は全く話を聞いていなかったために、半人前の庭師のお尻を撫でまわすかのように触りだしたので、


 「みょ、みょん!幽々子様、どこ触っているんですか、は、破廉恥です!セ、セクハラです!う、訴えてやるっ!」


 半人前の庭師は日本の刀を抜いて今にも襲いかかろうとしたのだが、


 「妖夢も藍ちゃんと一緒に潰れるまで一気飲みをしなさい。これは主としての命令よ!」


 亡霊の姫君が扇子を差し出してから、半人前の庭師に飲みつぶれるまで一気飲みをするように命令したので、


 「わ、わかりました…。」


 亡霊の姫君がみょんな圧力がかけてきたために、半人前の庭師はあっけなく刀を鞘におさめると九尾の狐の式神を一緒に一気飲みを始めてしまった。

 
 「いけー!」


 「飲め飲めー!」


 「おっ、やるのか!?」


 「脱げ脱げー!」


 「スッパスッパ!」


 宴会に参加している者が、九尾の狐の式神と半人前の庭師にさらに飲むように煽ったり、ヤジを入れたりするなどしています。
 

 「ああ、可哀相に。またやらかされちゃうのね。だが、それがいいんだけど。」


 九尾の狐の式神と半人前の庭師が一気飲みをさせられているのを見て、花の大妖怪は先が解っているのか期待と呆れが入り混じった笑顔をしています。


 私は一緒にお酒を飲んでいる霊夢と魔理沙とアリスの傍に近寄ると、


 「失礼するわ。」


 私はボストンバックからパーティの招待状を霊夢と魔理沙とアリスに手渡してから、


 「今日の夜10時に紅魔館でパーティをしますが、参加していただけないでしょうか?お嬢様がぜひ参加して欲しいと言われましたので、ぜひとも紅魔館に足を運んでいただきたいのです。」


 私は無理を承知で交渉してみたのですが、


 「えー、また紅魔館に行かなきゃいけないの?あんたのところの下品極まりない“汚嬢様”が、いつもいつも粗相をやらかしてくれるじゃないの!あんたはどう思っているか知らないんだけど、あんな奴と一緒にメシを食べれるわけがないわ!」


 霊夢は招待状を受け取った後すぐにそれを丸めてゴミ箱の中に放り込んでしまうと、眉間にしわを寄せてあからさまに苛立ってしまいました。それもその筈、霊夢がパーティ料理を堪能している時にお嬢様が何度も粗相をしている事を根に持っているようです。


 「レミリアと絡まなきゃいけないのは勘弁してほしいぜ。私はあんな下品な“汚嬢様”の相手なんかしたくないから、私の代わりにスカトロジストのアリスが紅魔館に行ってくれるぜ。」


 魔理沙も霊夢同様に紅魔館に絶対に行きたくないようで、霊夢と同じくパーティの招待状を丸めてゴミ箱に放り投げてしまいました。


 「パス。何が悲しくてあんなところに私が好きで行かなきゃいけないのよ!あんな下品でわがままな“汚嬢様”の相手なんて絶対したくないわ!あそこに行ったら確実に汚物を見るハメになるんだから、本当に勘弁してよね。」


 アリスも紅魔館のパーティにはどんなことがあっても絶対に行きたくないようで、招待状を人形に渡してからそれをゴミ箱に捨てさせてしまいました。


 「御三方は今日のパーティに参加されないのですね、わかりました。お嬢様にはそのように伝えておきますので、どうかご容赦してくださいませ。」


 私はあくまでも事務的に振る舞っておいたのですが、実際こうもあからさまに嫌がられるのを目の当たりにすると、どういうわけかやるせない気持ちになってしまいましたのでただ苦笑するしかありませんでした。


 「だけど、本当にあんたも大変ね。私だったら、あんなところ1日たりとも耐えられないわ。お給料も休みもないし、メイドはみんな相部屋なんて今どきあり得ないじゃないの。」


 「あんたがどれだけ必死になってあの”汚嬢様”のために身命を賭ける一心で働いても、絶対状況はよくなるどころかより悪くなる一方だと思うわ。」


 霊夢が紅魔館の労働条件があり得ないという事を私に指摘してくると、


 「同感だな。私はお前じゃないんだから、あんな我儘お嬢様には付き合ってられないぜ。それにタダ働きで休み無しで働かされるなんて理解しがたいぜ。」


 「こんな酷い条件じゃ、香霖堂でバイトをした方がまだマシだ。言っちゃあ難だが、頑張っているお前が滑稽に見えるぜ。」


 魔理沙も雇い主のお嬢様につきあいきれない事と、香霖堂の変態店主のセクハラに耐えながらもお金がもらえた方がマシだという事を言ってきました。


 「魔理沙と霊夢にしては珍しく適切なことを言うじゃないの。でも、確かにそれは同意するしかないわね。」


 「その上奴隷のように働かされて使い物にならなくなったら、ゴミみたいにポイ捨てされるんでしょう?信じられないわ。だけど私から見たら咲夜はブーイングを浴び続けている哀れなピエロよ。やるだけ時間の無駄でしかないと思うわ。」


 アリスは私の働きかたをあり得ないというどころか、私のやっていることが無駄で意味のないことだと言われたので愕然としてしまったのですが、自分でもこんなことやっても無駄なんじゃないかなと思っているのもまた事実であります。


 霊夢と魔理沙とアリスにこうも紅魔館の労働条件と労働環境をボロカスにいわれても、反論できない自分が情けなくなったのですが、完全に同意せざるを得ない自分もいることが確かです。その上自分の頑張りが報われないと言われたうえに、他人から見たら道化師みたいに滑稽に見えてしまうなんて馬鹿馬鹿しくてなりませんでした。


 「私、今まで頑張ってきたけど、あなた達から見たらピエロに見えるんだ…。本当に今まで何をしてきたんだろう?あはっ、あはははは…。」
  

 こうなったらやるせない心境を吐露しないと完全におかしくなってしまいそうなので、思いっきり自虐的に笑うしかないですが、どうやっても乾いた笑いしかできない自分が嫌で仕方ないものがあります。


 霊夢と魔理沙とアリスに断られた後に、次に私は幽香達の座っている席に向かってからパーティに参加するように交渉してみたのですが、私の姿を見るとみんな宴会を楽しんでいる妖怪達はみんな怪訝そうな顔をしてきました。


 「すいません幽香さん。無理を承知で言わせていただきますが、今日の夜10時に紅魔館でパーティを開催するのですが、参加していただけないでしょうか?」


 私は死を覚悟して花の大妖怪の風見幽香にパーティの招待状を渡してから、一応参加するように交渉をしてみたのですが、


 「嫌よ。あなたのお嬢様相手じゃ、折角のお酒とご馳走の味が不味くなるじゃないの。確かにあなたが作ってくれるご馳走は非の打ちどころがないんだけど、お嬢様の痛々しい言動と我儘につきあうのはもうウンザリ。」


 「それに私達は今神社で宴会をしているし、2次会3次会も人里の酒場に行くのを予定しているんだからね。大変な仕事をさせられているあなたは別として、レミリアもいい加減に相手の都合を考えないといけないと思うわ。」


 「私個人の予測に過ぎないんだけど、あなたの顔を見ればいい加減にあの我儘なお嬢様に愛想を尽かしているんでしょう?」


 私の考えている事を見透かされて驚きを感じざるを得なかったのですが、


 「私だって伊達に長生きしてきてるわけじゃないわ。私は相手の精神を逆撫でたり、挑発したり、貶したりすることが得意だからね。まぁ〜、相手の心を見抜くってことはさとりより劣るんだけど、相手の顔を見ればなんとなく考えていることがわかるわ。」


 そんな幽香はいつも通り笑顔を絶やさず私を見つめて来ました。


 「確かに…、幽香さんの…、おっしゃる通りでございます…。」


 お嬢様に愛想をついている事を見抜かれてしまった自分が情けなくてならないのですが、相手は幻想郷でトップクラスの実力を持つ妖怪ですから恥じることはないと思います。


 幽香の後にその場にいたリグルやミスティアやルーミアあたりの妖怪組や、チルノや大妖精やサニーやルナやスターあたりの洋精組にも招待状を渡してみたのですが、みんなあからさまに嫌そうな顔をしていますが無理もない話です。


 「幽香さんが行かないなら私も行かないですが、仮に行けと言われても絶対に行きたくありません。」


 リグルがはっきりと断ってくれると、


 「この間言った時には危うく死にそうだったんですよ!もうあんな思いしたくありません。」


 ミスティアもあからさまに嫌がってくれましたし、


 「嫌だなー。飯と酒がマズくなるもんなー。」


 ルーミアも最大限に紅魔館に行かないことをアピールしてくれたら、


 「あたいだってあんな所には絶対に行きたくないよ。」


 「私もです…。」


 チルノと大妖精も同じく参加を拒否した後に、


 「「「絶対行きたくないです。拉致監禁しないでください。勘弁して下さい。」」」


 いつも一緒に行動しているサニーとルナとスターが、手を突きだしこれ以上私が近づかないのようにしてから綺麗なハモリを見せながら断ってくれました。


 最後に全裸になった九尾の狐の式神と半人前の庭師がいる所に行くと、私は一世一代の覚悟を決めて八雲紫に紅魔館のパーティに参加するように交渉しようと思いましたが、


 「あ〜ら、悪魔の舘にいる悪魔の狗じゃないのよ〜。こうやってみるとセクハラしたくなっちゃうほど食べたいぐらいに可愛いわぁ〜。右手に持っているそれはきっと美味しそうなご馳走ね。じゃ、いただきます!」


 すっかり酔っぱらって正気を失った西行寺幽々子は、私の右腕に持っていたパーティの招待状に噛みついて飲み込もうとしたのですが、


 「ペッペ!ペッペ!何これマズいじゃないの〜。折角の御馳走だと思って期待したのに、紙きれだったわぁ…、がっかりしちゃうじゃないの〜。」


 「幽々子。あんた何やってんのよ!それパーティの招待状じゃないの!」


 八雲紫が破れかけたパーティの招待状を幽々子から奪い取ると、


 「はは〜ん、また今日も紅魔館で盛大なパーティをするのね。残念だけど、私達は今神社で飲み会をしていて、2次会と3次会は人里に繰り出す予定なの。だからレミリアにはパーティには参加しないということを伝えておいてほしいわ。」


 「はい…、そうですか…、お嬢様には、そのように伝えさせていただきます。」


 私が交渉をする前にあっけなく断られてしまったのでこれ以上は何とも言えませんでしたが、やはり妖怪の賢者相手が放つ加齢臭と胡散臭いオーラが強烈なので、私ごときに凡庸な人間がとても太刀打ちできるわけではありませんでした。


 紫に断られるということが何を意味するかというと、藍も橙も幽々子も妖夢も参加しないということでもありますので、私ができることといえばおとなしく引き下がるしかないのです。


 宴会組に断られた私は命蓮寺か永遠亭か守矢神社か地霊殿のいずれに行くしかないのですが、たぶんみんな何かと様々な口実をつけて断ってくることに違いはないでしょう。


 しかも今日は満月ですので、確実に永遠亭の住人達が紅魔館に足を運ぶと思えない上に、守矢神社も天狗と河童を集めて会合という名の宴会をしているからさりげなく断りを入れてくるでしょうし、命蓮寺は贅沢を嫌っているので盛大な紅魔館のパーティの参加することに関しては絶対に首を縦に振ることはあり得ませんし、地霊殿の面々は原子力発電所の落成式を近日中にやるとかなんか言ってたような事を記憶していますが、どれもダメ元で行ってみることにしましょう。



―午後7時30分 人里に住んでいるワーハクタクと稗田阿求との交渉―



 あれから博麗神社から去って命蓮寺の中間地点である人里にたどり着いた私は、寺小屋で教師を務めるワーハクタクの上白沢慧音と、稗田家の9代目の阿礼乙女で頭脳明晰で幻想郷縁記の著者で代々の未阿礼の子を記憶の一部を持っているも、非常に短命でパチュリー様にも勝るとも劣らないほどの病弱な稗田阿求にパーティの招待状を渡す事にしました。


 たぶん阿求はとこについて体を休めていると思われるので、間違いなくパーティの参加要請を何かと理由をつけて断ると考えられますが、それより厄介な問題は、今日は見事な満月なのでワーハクタクの上白沢慧音が“キモけーね”と呼ばれる角が生えた獣人の状態に変身していて、普段のユーモアにかけていても温厚で話しかけやすい性格から、非常に荒々しくて攻撃的かつ暴力的な性格に変貌していますから、話しかける時には非常に気を使わなくてはなりません。


 ます私は稗田家に行く事にしましたが、仕事をしている時以外は寝たきりで病弱な人間相手を無理やり外出させようとするお嬢様の考えがアレですので、使いの者だったとしても間違いなく門前払いをさせられるでしょう。


 コンコン。


 私は稗田家の屋敷にたどりつくと、玄関には誰もいなかったので扉をたたくことにしました。


 「どちらさまでしょうか?」


 阿求本人が出てくる前に私のような使用人が出てくるのですが、これだけ大きい屋敷をもっていて幻想郷で最高クラスの名家である稗田家だと、私の用な使用人や奴婢を与えられてもおかしくありませんので、よほどのことがない限り本人が出てくることがないでしょう。


 案の定出てきたのは使用人の若い男性で、おそらく私と同じ立場で働いている事が窺えました。


 「夜分遅く申し訳ございませんが、私は紅魔館のメイド長を務めている十六夜咲夜と申しますが、お嬢様の使いで稗田阿求様に今夜の10時から開催されるパーティの招待状をお渡ししたいのですがよろしいでしょうか?」


 私は使用人にパーティの招待状を手渡したのですが、


 「誠に申し訳ありませんが、亜求様はすでにお休みとなられておりますので、その招待状は明日お見せいたしますからこれでお引き取りをお願いできないでしょうか。」


 「それに私が阿求様を起こせなくもないのですが、もしこれが旦那さまに見つかると取り返しのつかないことになりますから、本当にご容赦いただけないかと存じ上げております。」


 彼は仕様にとしてあるまじきことに、必要以上に阿求さんと稗田家の旦那さまに関わるのが面倒なのか、とにかく私の事を門前払いしようと躍起になっているようです。


 「それなら稗田家の当主様に伝えていただけないでしょうか?」


 このまま門前払いされる屈辱は耐えがたいものがありますので、せめて稗田家の当主に伝えるように交渉してみました。


 「しかたないですねぇ…、私は旦那さまにこの招待状をお見せして致しますので、そこで少々お待ち下さいませ。」


 彼は嫌そうに屋敷の中に入っていくと、稗田家の頭領を務める者の部屋に向かっていったようなので、私は少しばかり玄関前で待たされることになりました。


 「はぁ…、やっぱりうちのお嬢様は自分のことしか考えていませんから、阿求さんを拉致してもいいから無理やり参加させると言ってくるでしょうね。」


 稗田家と紅魔館では方針が違うので、私が無理矢理侵入して阿求に見せてからつれだすという事が出来ないのですからここは大人しく彼らの要望に従うしかありませんが、招待状を渡せないまま門前払いをされるよりはまだいいかと思いました。


 あれから10分ほど待つと、先程の使用人の他に当主らしき立派な着物を身にまとった初老の男性が屋敷から出てくると、


 「お前は一体何を考えているのだ!?このような寒空の下でわざわざ来訪してくれた客人を玄関で待たせたというのか、このバカ者めっ!」


 バギッ!


 初老の男性は使用人の若者の頬を殴ったようで、
 

 「も、申し訳ございません旦那さま!」


 使用人の彼は初老の男性に土下座をしたのですが、


 「お前が謝らなければならないのは、私ではなくこのメイドさんだろう!客人を丁重にもてなす事が出来ない奴に何ができるというのだ!」


 初老の男性は土下座をしている使用人の彼に対し蹴りを一発入れた後に、私の傍に近寄り会釈をすると、
 

 「君があの紅魔館でメイド長を務める十六夜咲夜さんか。私は今の稗田家の当主を務める稗田源三郎というものだが、先程はこの使用人が無礼な態度を取ったのでこれでゆるしていただけないだろうか。」


 初老の男性は袖の下から何やら巾着袋を取りだすと、どういうわけかそれを私に差し出してくれました。私はどうすればいいのかわからなかったのですが、遠慮するのもかえって難ですからここは有難く受け取っておく事にしました。


 「先程の招待状は有難く受け取らせてもらったが、うちの阿求はこの通り病弱ですでに床についているから、本当に申し訳ないと思うんだが今晩のパーティに参加することを辞退させていただけないだろうか?」


 源三郎さんは申し訳なさそうにしているので、私もこれ以上要望を押し通す事が出来ないので譲歩することにしました。


 「承知いたしましたので、私のほうからお嬢様にはそのように伝えさせていただきます。」


 私は源三郎さんに会釈をしてから稗田家を立ち去ると、寺小屋にいる上白沢慧音に会いに行く事にしましたが寺小屋から『ぶおおぉおおぉおおぉぉおおおん!』と唸り声と叫び声が入り混じった音が聞こえてくるので、扉を見ると『面会謝絶』の表紙がされてありましたから私は寺小屋から立ち去ることにしました。


 この様子だと“キモけーね”が必死で一カ月分の歴史の編纂作業をしていて、気が荒れている事が目に見えてわかりますから下手に刺激をしない方が得策というものです。この場合“キモけーね”に会いに行って殺されることになっても、それは自己責任という扱いで肩を付けられてしまいますので“君子危うきは近寄ることなかれ”という諺にならうべきでしょう。



―午後8時 命蓮寺に行って聖白蓮とその従者に交渉をする―



 人里を去った私は永遠亭に向かいパーティに参加するように交渉してみたのですが、今日は満月の為に例月祭という重要な儀式をやるとのことで、取りやめるわけにはいかないと言われてしまったので商談はあえなく失敗に終わってしまい、迷いの竹林から出る途中に藤原妹紅と出会いパーティの参加を申し込んでみるも『私はあんまり人前に出たくないんだ。』の一言で交渉は失敗に終わりました。


 私は人里付近でパーティに参加させたい面々がいる命蓮寺に足を運んだのですが、流石に早寝早起きと質素倹約をモットーとしているので、住人達は簡素に済ませた夕食を食べ終わらせただけでなく、本来は夜行性の妖怪の癖にみんな昼型の妖怪になってしまったかのように寝てしまったと思わされてしまいました。


 今どき朝日とともに起きて日暮れとともに寝るという規則正しい生活習慣を送っているのは、幻想郷でも命蓮寺の住人だけじゃないかと考えさせられてしまいます。ある意味感心だと思う反面、別の意味では楽しみがない生活をしていると考えるのですが、それでいいと思えるならこの行き方をすることで幸せだと思えるならそれはそれで羨ましい話です。


 私が扉をたたいても誰も出てきませんので、今日はもう交渉するのも無理かと考えて立ち去ろうと思ったその時、何と命蓮寺の住職を務めている聖白蓮本人が寝間着を着たまま出てきてくれたではありませんか。


 「夜分遅く…、いえ、寝ているところ大変申し訳ございません。私は紅魔館のメイド長を務めております十六夜咲夜と申しますが、白蓮さんと命蓮寺の皆様にはお嬢様が今夜の10時に開催するパーティにぜひとも参加していただきたいとのことでございます。」


 私は白蓮さんに会釈をすると、白蓮さんの分を始め星さんと水蜜さんと一輪さんとナズーリンさんとぬえさんと小傘さんの分の招待状を手渡したのですが、


 「またこのような時間に訪れるとは一体何ことかと思いきや、また紅魔館で開催される豪勢なパーティに私たちを招待するということですね。」


 半ばあきれ顔を私に見せた白蓮さんを説得するのは非常に困難で、首を縦に振らせるのは私ごときではまず無理だと思いました。


 「毎度のことですが、あれだけ豪勢なパーティをしていればおのずと財政難に陥るであろうというのに、それを顧みず奢侈贅沢をし続けるのに何の意味があるのでしょうか?」


 「いえ、ないでしょう。あなたのお嬢様は人の事を考えないで、いつも自分を中心に世の中が動いていると考えていますから、これは誠に自分勝手で思慮に欠けた行為であります。」


 「いつもわざわざ足を運んでもらって申し訳ないと思っているのですが、私達は紅魔館のパーティに参加するつもりはありませんので、どうかお引き取りを。」


 失敗することを覚悟で白蓮さんと交渉したのですが、白蓮さんは人間と妖怪は平等であるべきだという信念をお持ちの方なので、うちの下品で我儘なお嬢様には欠辺も感じないカリスマが漂ってしましたので、凡庸なメイド程度しかない私はただただ圧倒されてしまうだけです。


 「かしこまりました、お嬢様にはそのように伝えさせていただきます。」


 白蓮さんが放つ空気に耐えきれなくなってしまった私は、ただ逃げるように命蓮寺を立ち去ることしかできませんでした。あえてそのような顔つきは見せていないの思うのですが、白蓮さんから見たら私が動揺していることぐらい間違いなく見抜いていることでしょう。


 「私達はレミリアさんが命蓮寺で修業をなさるというならば、いつでも歓迎いたしますがいかが致しますか?」


 「奢侈贅沢をせず質素倹約をするものいいと思いますので、ぜひとも修行生活をお勧めいたしますよ。」


 私が次の目的地に向かおうとすると、なんと白蓮さんがうちのお嬢様を妙蓮寺に住まわせるという事を提案してきましたが、豪勢なパーティを好むお嬢様は命蓮寺の早寝早起き生活に間違いなく耐えきれないので、


 「その御誘いは私といたしましては誠にありがたく頂戴したいところですが、間違いなくレミリア様がお断りすると思います。」


 白蓮さんがけしかけてきた素晴らしい提案ですが、私は皮肉のジョークで切り返すことで精いっぱいですから、まるで濡れた兎みたいに見えてしまうでしょう。

 

―午後8時20分 守矢神社にいる2柱と現人神にパーティ参加の要請をする―



 命蓮寺から去っていった私が次に向かったのは妖怪の山にある守矢神社ですが、途中に河童の集落にいる河城にとりと天狗の集落にいる射命丸文と姫海棠はたての2人に会いに行ってもそこにはいませんでしたので、彼女達を探すのはあきらめて守矢神社を目指すことにしました。


 私が守矢神社にたどり着くと、やっぱり最初に予測していた通り八坂神奈子と守矢諏訪子と東風谷早苗の守矢一家の他に、天狗のリーダーを務める天魔と大天狗の他に射命丸文と姫海棠はたて以外の天狗数名ほどいるだけでなく、河城にとりを始めとした河童が何名かがいる他に、どういうわけか鬼の伊吹萃香と星熊勇儀もいて、その上地霊殿の主の古明地さとりと妹の古明寺こいしと従者の火炎錨燐と霊烏寺空もいるではありませんか。


 私が合わなくてはならない人たちが揃って守矢神社にいたので、これから移動する手間が省けて嬉しいのと残酷な理由を付けられて断られるという怖さを味わえました。



 守矢神社の石畳にいる妖怪達はみんな楽しそうにお酒を飲んでいるので、私も妖怪だったなら一緒に酒を飲みかわしたいと思わされるのですが、私が話を切り出すと和やかな雰囲気が一触即発の危険なムードに変わりかねないと思うと、どうすればいいのかわからなくなってしまいましたが、


 「あれっ?紅魔館のメイド長の咲夜じゃないか!珍しくここにきて一体どうしたっていうんだい?なんか言いたそうな気がするんだけど、折角ここにやってきたんだから一緒にお酒を飲もうじゃないか。」


 私が宴会の会場に飛び出ようかどうか迷った時に、面識がある鬼の伊吹萃香が私に気づいたようで一緒にお酒を飲みかわそうと言ってくれたと同時に、


 「あやややや、ここに咲夜さんが来るなんて珍しいじゃないですか。妖怪の山の住人として本来は追い返さなくてはならないのですが、今日はエネルギー革命の成功を祝って宴会をしているんですから、どうせなら私達と一緒に飲まないですか?」


 鴉天狗の射命丸文さんが珍しく友好的に接してくれただけでなく、私に盃を差し出してくれたのでここは一杯戴くことにしました。


 「そうですよ!今日は無礼講ですから、ガンガンいっちゃいましょうよ!」


 同じ鴉天狗でひきこもり癖があることで有名な姫海棠はたてさんが、私の盃にお酒をなみなみ注いでくれたのですが、私は彼女達のような酒豪ではないのであまり飲まないようにしたのですが、


 「お前さんがあの悪魔の舘のメイド長か。萃香からあんたの話は聞いたんだが、時を止めちまうんらしいね。私は山の四天王の一人の星熊勇儀だよ。私と一緒に飲もうじゃないか!ほれ、飲め!」


 鬼の星熊勇儀さんは私の盃にお酒を入れようとしたのですが、


 「勇儀さん、彼女は今仕事中だからお酒を飲ましちゃいけないですよ。どれ、私が代わりに。」


 河童のマッド・エンジニアの河城にとりさんは、人間のことを自分たち河童の盟友と思っているので、私の盃に入っているお酒を一気に飲んでしまうと盃を逆さまにしてしまいました。人間である私が鬼と天狗と一緒に飲むと間違いなく酔いつぶれてしまうので、にとりさんは私に助け船を出してくれたことに感謝をしなくてはなりませんね。


 「そうですね。私はお嬢様の使いという仕事でここに来たのですから。」


 「おいおい、私はお前じゃなく咲夜さんに酒を注いだんだ。と言いたいところだが、仕事中とあっちゃあ仕方ないな。今日は無理でも、近いうちに一緒に酒を飲みかわしたいなぁ…。」


 自分が注いだ酒をにとりさんに飲まれた勇儀さんは少し機嫌が悪そうでしたが、私が仕事中だと聞くと残念そうにしょぼくれていました。


 「でもってお前さんがここに来た理由ってなんなんだい!?」


 勇儀さんは私の仕事が何かを聞いて来ましたので、


 「私がここにやってきた理由は、今日の夜10時から紅魔館で盛大なパーティを開くので皆様に招待状をお配りしたいと思った所存でございます。」


 私が宴会場にいる一人一人に丁寧にパーティの招待状を手渡したのですが、あまりにも急な話なのでみんな目を丸くして驚かれてしまいました。


 「咲夜さん。これマジですか?夜の10時っていったら後1時間半しかないじゃないですか!えー、これから急いで紅魔館に行くとしても30分はかかると思います!無理です、絶対無理です!」


 「それにこの間紅魔館のパーティに行った時なんですけど、吸血鬼のお嬢様が信じられない位の粗相をしでかしてくれたから、これから何があっても紅魔館には絶対行きたくありません!あんな酷いの見せられたら誰だってドン引きしますって!」


 守矢神社の風祝の東風谷早苗さんは、お嬢様かけしかけるあまりの非常識さに驚かれているようですが、実際紅魔館にいればもっと卒倒しかねない出来事を体験することになるでしょうね。


 「レミリアさんですか…、確かにお嬢様というよりは“汚嬢様”といった方がいいですね。咲夜さんはわかりきっていると思うのですが。」


 文さんが私とはたてさんとにとりさんと早苗さんに当て字を見せると、


 「そうですね…。」


 私は何一つも否定できませんでしたし、


 「それには同意するしかないですね。」


 はたてさんも首を縦に振りました。


 「確かに“汚嬢様”だなぁ…。」


 にとりさんは妙な笑い方をして、その場を誤魔化そうとしていました。


 「そうですよ、あの人は“お嬢様”じゃなくて、絶対に“汚嬢様”です!せっかく楽しい雰囲気をアレで台無しにしてくれるんですから、たまったものじゃないですよ!」


 それにこの間早苗さんが来てくれた時にお嬢様は、パーティ会場で盛大に粗相をやらかしてくれたので、私と美鈴と小悪魔さんとパチュリー様は必死になって尻拭いをさせられたのです。私の個人的な見解ですと早苗さんの感覚はたぶん正常だと思いますので、下品極まりなく感覚が異常なお嬢様には付き合いきれない筈です。


 「おいおい、ちょっと待ってくれ。私達は地底にある核融合施設の完成を祝って宴会をしていたんだが、まさかそれを取り辞めて紅魔館に来いっていうわけじゃないだろう?そんでもってあの下品極まりないあの“汚嬢様”の相手は流石に我慢ならんぞ。」


 守矢神社の2柱の一人の八坂神奈子さんはこの祝宴を取りやめるのかどうかを聞いて来ましたので、


 「誠に言いにくい話ですが、その通りでございます。」 


 私は精いっぱい平静を取り繕うように振る舞っておきましたが、神徳あふれる神を相手にし続けるのは精神的に凄くきついものがあります。なんたって威圧感が半端じゃないので、目を見て話すだけでも凄く疲れてしまいそうですよ。


 「あーうー、あんな下品な奴の相手をするのは無理があるよ。お前さんもあいつのお守りをし続けなきゃいかんというのは、さぞやしんどいだろうねぇ…。」

 
 「たぶんあの様子だと早苗が言った事は本当みたいだから、私と神奈子と早苗は今回のパーティに参加しないでおくよ。」


 もう一人の1柱の洩矢諏訪子さんは、紅魔館のパーティに行くととんでもないことになると思ったのか、神奈子さんと早苗さんと自分を含めて参加することを辞退してくださいましたので、私にとってありがたいかなと思いました。諏訪子さんも見た目はちびっこくても中身は神徳溢れる神なので、話し続けるだけでこちらが参ってしまいそうです。


 「それじゃ、私も参加を辞退させていただきます。モケーレムベンベを毎度毎度させられるのは、いい加減に勘弁していただきたいですよ。」


 「私もだよ。あそこで飲む酒は上物で凄く美味しいはずなのに、なぜか凄く不味く感じるんだ。残念だけど、今回は紅魔館のパーティには欠席させて貰うよ。」


 「萃香も行かないっていうんだったら、私も行かないほうがいいだろうな。酒がマズくなるのは耐えられん。悪いが紅魔館のパーティには参加しないでおくよ。」


 それを聞いた萃香さんと勇儀さんはパーティに参加しないと宣言しましたので、私はさとりさんに参加されるかどうかを聞き出そうとしたのですが、


 「今更だけど私はあなたの言いたい事はわかるから、私達はあえてパーティに参加しないでおくわ。私が下手にあれこれいうのはあなたの名誉を台無しにしてしまうし、酷い状況をより悪くしてしまう代物でしょう?」


 地霊殿の主を務められている古明地さとりさんは“さとり妖怪”という種族で、相手の心を覗き見して何を考えているかを見抜いてしまいますから、私が考えている事がモロにバレてしまうのです。


 邪なことを考えていると、ジト目で見てくるのはパチュリー様と変わらないのですが、自分の考えていることが筒抜けなのは想像以上に大変怖いです。


 「かくがくしかじかで。」


 私は紅魔館が深刻極まりない財政難で、豪勢なパーティを開催することができないことを思い浮かべると、


 「かくがくしかじかね。わかったわ、今あなたの考えている事は多言しないよう努めるわ。」


 「そこで美味しそうにご馳走を食べている妹とペット達は、別の理由で適当に誤魔化しておくから安心して頂戴な。」


 案の定さとりさんは私の考えている事を理解してくださったので、妹とペット達には適当な理由をつけて誤魔化すという事を耳打ちしてくださいました。


 話が通じるといえば余計な事を口にしないでいいという事なのですが、知られては困る企業秘密が漏れてしまいますから、商談相手にはなってほしくないです。


 「私もお嬢様には適当な理由をつけて誤魔化しておきますから、どうぞ2次会と3次会を楽しんでください。」


 私はさとりさんに誤魔化すことを伝えると、すぐさま守矢神社から立ち去ろうと思いましたが、


 「うにゅっ、ゆでたまごは、いつ食べても、美味しい。お酒のつまみにもなるし、ご飯のオカズにもなるし、おやつにも最適な素晴らしい食べ物だよ。」


 地獄烏の霊烏寺空はゆでたまごを頬張りながら食べると、


 「お空、あんたはいつでもゆでたまごのことしか考えてないのかい?やっぱりあんたは良くも悪くも馬鹿だねぇ…。私はそんなあんたが羨ましくもあり情けなくもあるよ。」


 猫車の火炎錨燐は、ゆでたまごを頬張り続ける空を羨望と失望が入り混じった視線で見つめていると、


 「うにゅ、そんなこと言ったって、ゆでたまごが美味しいことには変わりないんだな。うにゅ、うにゅ、いくらお燐が私をおだてたって、このゆでたまごはゆずらないもんね。うにゅ、うにゅ。」


 お燐の事を気にも留めずひたすらゆで卵を頬張り続けるお空を見ると、ある意味幸せな生き方をしていることで羨ましくて仕方ありませんでしたが、

 
 「あんたのバカは死んでも治りそうにもないよ。たぶんあたいは生まれ変わってもまたあんたと絡むことが定めづけられているみたいだね。」


 幸せそうにゆで卵を食べ続けているお空を見たお燐は、自分の運命を呪わずただあるがままに物事を受け入れる生き方をしているようで、何ともいえない清々しさを感じてしまいました。


 「2次会はお姉ちゃんとファックして、3次会はお姉ちゃんがファックして、4次会はみんながうんこして、5次会は私がゲロを吐くの。どう、凄いでしょ?6次会は私以外の全員がゲロを吐くの。」


 「ゆかりんとえーりんとかなことゆゆことびゃくれんは年増のババァで、加齢臭がきついんですますざますわ。おほほほほほっ!権力が持つ魔力に取りつかれた老害は、便器にこびりついた大便のようにくっついて離れない。自分の実力が衰えてしまった事を認めず、次の世代を谷間の世代と罵り意気地になって権力にしがみつくの邪魔者でしかない。」


 「咲夜さんのおっぱいは偽乳で大胸筋サポーターをして誤魔化しています。悪魔の狗、悪魔の狗、悪魔の狗。でも偽乳じゃないとメイド長はいい張るんだなっ!自分の姿を偽り続け、本当の自分の姿を見失ってしまった。お前はマリオネットで操られているだけの哀れな存在で、自分の意思で動くことができなくて誰にも必要とされないのだ。だけど、自分の生き方を変えることで誰かに必要とされるかもしれないだろう。」


 「ケロちゃんの帽子はクリーチャーなんですわん。げろげろ、あーうー、げろげろ、あーうー。蛙の歌は聞こえてこないし、理科の授業で解剖実験に使われるだけ使われてゴミ箱行きだよ。だけど僕らには生きる権利がある。誰もが一度の失敗で死を強制される事はあってはならない。」


 「もこたんとゆうかりんは出番が少ないのに、人気があるのはなぜなぜ?それは君たちの嫁だからさっ!不死鳥の火は決して燃え尽きないし、花は決して枯れたりはしない。一度土に帰っても、また蘇って生を謳歌するのだ。草の根はコンクリートから割れて生える強さを持っている。君ならたぶん大丈夫だと思うよ。諦めてしまったらそこで終わりなんだから。」


 「どんなに頑張っても意味がない。身命をかけて仕事しても決して報われない。やるだけ無駄だから始めからやらない方がいい。ヒッヒッヒッ!ブラック企業で身についたスキルは他の会社では役には立たないんだぜベイベー!だけど、今までやってきた事は決して無駄ではなく必ずどこかで生きるだろう。」


 「ボーダー商事はブラック企業、白玉楼はブラック企業、八意診療所はブラック企業、紅魔館はブラック企業、地獄の裁判所も一応ブラック企業。だけど幻想郷そのものがブラック企業で救いようのない状態に陥ってしまった。企業は利潤を求めるだけの存在ではなく、利潤を得るために社会貢献をしなくてはならないのだが、社会貢献をするためには人々に必要とされる事をしなくてはならない義務がある。その義務を果たしてこそ始めて本物の利潤を得ることができるのだ。ハンバーガーショップはお腹を空かせた人のお腹を満たすことが最大の目的であることにかわりはないから、この順序が逆になってしまうと意味がなくなってしまう。」


 「命蓮寺はキチガイ宗教団体だもんだもんっ!守矢神社はキチガイ宗教だぜだぜっ!博麗神社には神様がいないんだよだよっ!正しいマネジメントを施さないと、そこにいる人員は人材にならずじまいで終わってしまうだろう。こうなってはお互いにとってマイナス面しか残らないのだよ。」


 「どいつもこいつも下衆だらけ。崇高な理念を持った偉大な指導者はどこにもいない。種族問わず皆が助け合った美しい幻想郷は過去のもので、今は究極の実力主義社会でセーフティネットはどこにも存在しない。一度転がってしまったら、後は死ぬという選択しか残されていないのだ。」


 「我々指導者は、人民が人民による人民のための政治を行わなければならない。みんなニートやホームレスになりたくてなっているわけではないのだ。有望な人材は育たず産業は空洞化してしまい、将来的な見解で見ると国力が衰退する結末になるので、我々は若い世代を育てていくことで明るい将来が見えてくるのではないだろうか?」


 「些細なことでもするともう取り返しがつかなくなってしまい、修正することは極めて困難なのだ。誰もが幸せになれる権利を有していることは確かなのだから。」


 「強者は一方的に弱者から雀の涙ほどの蓄えを容赦なく奪う。誰もが組織に忠誠心を持っていた時代はとうに過ぎ去り、ただ自分の欲望と生存を確保するために組織にいるだけなのだ。」


 「非正規雇用を増やしていくと一時的に利益は得るが、いつか全てを失うだろう。低賃金と低待遇で働かせても人はいつか去ってしまうのだ。どれを選択しても地獄行きは避けられないし、何をしてもすべてが裏目に働いてしまう。自分がいるだけで多くの人を不幸にしてしまう星の運命にいる。」


 さとり妖怪なのにサードアイを閉ざしたことで心が読めなくなった反面、無意識を操るという奇妙な力を持ったさとりさんの妹の古明寺こいしさんは、よくわからないことを口にしていますが、たぶん無意識に発言していると思われるでしょう。


 でも意味のないことを言っているようで、物凄く哲学的なことを言ってるような気がしてならないのですが、今の私がそれを気にしている精神的な余裕はありません。落ち着いて聞くとどれかすべてが私に該当する気がしてならないのです。


 とりあえず守矢神社にいた全員にパーティの参加を断られたので、私は大人しく紅魔館に帰ってお嬢様にこのことを報告しなくてはならないのです。


 間違いなく物凄い癇癪を起して私の事を「無能で使えないメイドだ」と言って、罰として殺されてしまうんじゃないかなと思いましたが、皮肉なことにお嬢様は幻想郷の住人達に凄く嫌われていて誰からも相手にされたくないという事を私は改めて思い知らされました。



 隷属する血液(後編)Aに続く
 イル・プリンチベです。本当は今回で終わらせる予定だったのですが、やりたい事をやっていくうちにシナリオが肉付けされていったので、終わらずしまいになってしまいました。


 あえて今回は自分の実力の向上と試験的な意味合いも込めて、紅魔館勢以外の東方キャラをチョイ役で出してみたのですが、一人一人にセリフと意味合いを込めると大変なことになりました。無駄に要領があってあんまり意味のないお話だと思いますが、これがないと無理やり突貫工事で終わらせてしまう感があるので、あえてこのような形式にしました。


 次回が間違いなく最終回になりますが、エンディングはおそらくとんでもないことになってしまうでしょうが、読者の皆様が期待されるほどのカタルシスがあるかどうかは定かではありません。
イル・プリンチベ
作品情報
作品集:
25
投稿日時:
2011/04/14 11:01:45
更新日時:
2011/04/14 20:01:45
分類
十六夜咲夜
紅魔館
ブラック企業
オリキャラ
幻想郷の住人たち
1. NutsIn先任曹長 ■2011/04/14 21:04:55
最終回かと思いきや、まだこのお勤めストーリーは続くのですか…。

咲夜さんの地獄行脚、コリャきつい。
こいしの無意識の語り、幻想郷どころか外界の労働者達の血の叫びを傍受したのかな?

あせって書いたのですか? 誤字脱字が目立ちましたけれど。
次回で最終回(予定)なのですから、落ち着いて執筆して下さい。

最終回で私が流すのは感動の涙か、咲夜さんの不憫さを目の当たりにした悲しみの涙か…、
あるいは、何か変な液体か。楽しみに待っていますからね。
2. 名無し ■2011/04/14 21:57:25
うぜぇ
3. 名無し ■2011/04/15 08:43:25
このレミリア、カリスマが微塵もありゃしねぇ・・・
4. 名無し ■2011/04/23 18:47:03
続編が極めて楽しみです
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