熊と鮭

作品集: 26 投稿日時: 2011/05/09 20:41:34 更新日時: 2011/05/09 20:41:34
「魔理沙、次あんたよ。」



霊夢が私に順番を告げる。
今晩の宴、酒の肴は個人個人が経験した『怖かったこと』だ。
『怖かったこと』も様々だ。
他人が聞けばなんてないことや今じゃ笑えること、皆がゾッとするようなことまで、その経験談は多岐に渡る。



「『怖かったこと』、なぁ…。」



なんせこの性格なもんで、あまり本気で怖がったことがないのだ。
あるとすれば、幼少の頃の記憶の中ぐらいだろう。
そうして、ぼんやりと記憶という途方もない情報の奔流に思考を向けていると、一つだけ、思い出した。
あれは確かに『怖かったこと』だ。
数秒の間、話としての体裁を整える。
そして皆の方に向き直り、私は口を開いた。









あれはたぶん、少し秋めいてきた頃のことだと思う。
歳は…、四つかな。
なんでかその日、私は夜中にぱっちり目が覚めてしまった。
朝に小鳥の声を聞いて起きるような、自然な感じでさ。
で、調度私はその時くらいに、『一人でなんでもできる!』って言う、よくある反抗期を迎えてたんだ。
だから、その日の夜もいつも通りに、親父と一緒に寝るのを嫌がった。
でもあれだな、寝始めると大丈夫だけど夜中に起きると怖く感じるんだな。
いや、これで終わりってわけじゃないんだって。
私だってそんなつまらん話は聞きたくない。
だからしない。
あああ、話がずれた。
えっとだな、それで怖くなってきて親父と一緒に寝ようと思ったんだ。
まだ台所では火が少し燻ってたのを憶えてる。
灯り取りの障子が、月明かりか星明かりか知らんが白くぼやけてた。
それを頼りに暗い家の中を、親父の部屋目指したんだ。
そんなことしてるから私は夜目が利くんだろうな。
別に霊夢への当て付けってわけじゃないが。
とりあえず、親父の部屋には着いたんだ。
家の間取りくらい、あんだけちびでも体が憶えてら。
でも、私は部屋に入らなかった。
変だ、って思ったんだ。
親父の豪快な喧しい鼾が聞こえてこない。
その代わりか、聞いたことのない声や音が聞こえてきた。
そんでだな、黙って部屋の障子を少し滑らして中を覗いてみた。
中にはな、親父はいなかった。





でも、熊と鮭がいた。





熊ってさ、秋になると鮭を狩って喰らうだろ?
まさにそれ。
鮭はさ、身ぃくねらせて熊から逃げようとしてて。
でも熊がそれをがっちり捕まえてて逃げられない。
鮭が喰われてくの見てたらさ、なんだか夜の空気に怯えてたのが馬鹿らしくなるくらい怖くなった。
よくわかんねぇ水の音もしてたし。
それが鮭の血やそんなんだと思ったら、背筋がすぅーって冷えたよ。
私は人間だから大丈夫だってのに『食べられたくない!』って臆病風に吹かれて、自分の寝室に逃げ帰ったさ。
未知への恐怖ってのも、少なからずあったろうな。
熊だってわかってんのに。
でも、あの頃の私には本当に『怖かったこと』だった。
これで、私の話は終わりだ。
次は…、次誰なんだ?
あ、香霖?
じゃあ、とびっきりのやつ頼むよ。
てか、なんでそんな顔青くしてるんだよ。
そんなに私の話が怖かったのか?
ったく、男のくせにー。
そんなんだから、私がいなくちゃなんないんだよなー。
小さい頃の記憶って、大体脳内変換されてたりしますよね。
ご想像の通りのオチといつも通りのクオリティで、ホラーもどきをお送りさせていただきました。
百合で可愛いポップな曲をBGMにしてたというのに、何故こうなったんだ。
それとナチュラル魔理霖を目指したけれども撃沈。
魔理霖のあとにモンローとつけたくなるのは自分だけでいい。
作品情報
作品集:
26
投稿日時:
2011/05/09 20:41:34
更新日時:
2011/05/09 20:41:34
分類
霧雨魔理沙
ホラーもどき
いつも通り
1. NutsIn先任曹長 ■2011/05/09 21:05:15
遊さん、ほんっとに、森近霖之助がお好きですね〜。性的な意味で。
以下に今回のSSの感想を書かせていただきました。



これは良い!!
うんうん。

陸海、空……は無いな、ともかく、オールラウンダーな猛獣の熊がお家にいた、と。
ん!? 鮭、とな!? 幼い魔理沙は、何故、海から川を登ってくる魚を知っているのだろう?
絢爛豪華な食事にありつける大店の娘の魔理沙は、外界の鮭を知っていてもおかしくないか。
ついでに言うと、熊も良く知っていたな。熊は鮭を食う獣。木彫りの熊のイメージ?
魔理沙って、たまにお嬢な発言をするな……。

ん!? 臆病者のお兄さんはっけ〜ん!!
香霖、何びびってんだか……。
2. 名無し ■2011/05/09 22:59:30
コメントがカオスになってるw
3. あぶぶ ■2011/05/09 23:07:59
プッツンしたんですな?
4. 名無し ■2011/05/09 23:28:49
やはり香霖受けを想起するのだが、いいのかな?
リバもいいかなと思う今日この頃
5. ■2011/05/10 15:32:17
コメ返さん。
>先任曹長さん
最大級の褒め言葉として受け取らせていただきます。はい、大好きです。そのあたりの疑問解決のためにまた補足的小話を上げる予定です。
>2さん
あとがきもカオスだから仕方ないんじゃないですかね。
>あぶぶさん
自分が、ですね。
>4さん
おkです。そろそろ書きましょうか、おっさん受けを。
6. 名無し ■2011/05/11 15:14:42
どうゆうこと?
7. ■2011/05/15 17:04:27
>6さん
要約すると、熊=霧雨の親父さん、鮭=香霖。
鮭が熊にアッーな方向で食べられてたのを魔理沙が見て、あまりのショックに脳内変換した。
脳内変換結果を、怪談として話した。ら、香霖が焦った。
といった感じです。
名前 メール
パスワード
投稿パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード