Deprecated: Function get_magic_quotes_gpc() is deprecated in /home/thewaterducts/www/php/waterducts/neet/req/util.php on line 270
『ジャム』 作者: 遊

ジャム

作品集: 26 投稿日時: 2011/05/15 08:19:08 更新日時: 2011/05/15 17:19:08
「咲夜、私スコーンが食べたいわ。」



妹様は言いました。



「スコーン、ですか…。」



確かに、ここ最近お出ししていなかった。
でも、お出ししていなかったのにもちゃんと理由がある。



「しかし妹様。」



「なぁに?」



「スコーン自体は作れますが、スコーンにお付けするジャムがなかなか手に入らないのです。」



ジャムの値段が少しばかり上がったのだ。
手作りという手もあるにはあるのだが、お嬢様には人里の特定の店のものを買うように言われている。
そういった事情をオブラートに包みに包んでお伝えした。



「お姉様の言う店のものじゃなくったって構わないわ。むしろ私、咲夜の手作りのジャム、食べてみたい。」



「わかりました妹様。しかし、苺が…。」



「苺?」



今は苺の季節ではない。
マーマレードが好みでないのは、ずいぶん前に癇癪を起こされたのでよく憶えている。



「…マーマレードはいやよ。」



「承知しております。」



「じゃあもういいわ。」



「すみません、妹様…。」



私は不甲斐無さを抱えながら、妹様の前を後にした。














咲夜にスコーンをねだってみた。
けども、付けるジャムが無いという理由で断られてしまった。
手作りで構わないと言っても、苺の季節じゃないみたい。
私は、我が儘言うのはお姉様だけでいいと思うから大人しく諦めた。
咲夜が去った後、私は口の中にあの、さくさくほろほろと崩れる味を想像した。



「妹様。」



想像の中で、スコーンを味わっていたら急に咲夜が現れた。
別に驚きはしない。
いつものことだし。



「なにかしら?」



「スコーンの件ですが…。」



「もう、別にいいよ。」



「少し、少し遅くなっていいならお出し出来るかもしれません。」



「ほんと?!」



「はい。苺ではありませんが。」



「ピンクグレープフルーツでマーマレードとかだったら怒るわよ。」



「そんなものじゃありませんよ。」



「そう。なら楽しみにしてるわ。」



咲夜は礼をして、消えていった。
それにしても、どうしたんだろう。
さっきはあれほど、お出し出来ないって言ってたのに。





数日後、咲夜がお茶のセットの乗った盆を持って現れた。
そこには、約束のスコーンが。



「お待たせしました。」



「本当に遅かったわね…。」



遅くなる、が予想外に遅かったから私は忘れかけていた。



「申し訳ございません。」



「いいわ。約束は守ってくれたんだし。」



スコーンの乗った皿の横の小さめの瓶。
そこには、赤いジャムが入っていた。
スプーンですくって、一口大に割ったスコーンにのせて口に運ぶ。



「!!」



「いかがでしょうか。」



美味しい。
確かに、大好きな苺のジャムじゃない。
でも、美味しい。
口の中で崩れて、水分を根こそぎ奪うスコーンにねっとり後押しのように絡みついてくる。



「咲夜、とっても美味しいわ!」



「ありがとうございます。傷みが非常に早いジャムですので、今日の内に食べきって下さいませ。」



「明日は楽しめないの?」



「はい。」



「じゃあ、また手に入り次第ね。お姉様にはいいの?」



「お嬢様はクッキーの方がお好きなようですから。」



「そっかー。ジャムクッキーでも美味しそうなものなのになー…。」



そうして、私はとびきり美味しいジャムで咲夜の焼くスコーンを味わった。
その後も一ヶ月に一度、咲夜はジャムを持ってきてくれた。
あるときはジャムクッキー。
またあるときはロシアンティー。
でも、心配事が一つだけ。
咲夜が私のために無理をしていないか、ということ。
なんせ、届けてくれる時、咲夜の顔色が悪いのだ。
暗い部屋にずっといる私だから気づいてしまったのだけれど。



「咲夜、無理しちゃやぁよ?」



「ご心配ありがとうございます。」



咲夜の笑顔は、顔色が悪くても綺麗だった。









妹様の部屋に届けに行った帰り、お嬢様に呼び止められた。



「咲夜。最近、貴女フランに何を届けに行っているのかしら。」



「ジャムを使ったお菓子を。」



「それ以上馬鹿やったら怒るわよ。」








私は腹を殴られた。
いや、うん、色的に。
久しぶりに書いたよ、フランちゃん。
作品情報
作品集:
26
投稿日時:
2011/05/15 08:19:08
更新日時:
2011/05/15 17:19:08
分類
フランドール・スカーレット
十六夜咲夜
1. NutsIn先任曹長 ■2011/05/15 17:28:00
苺ジャム、ねぇ……。
咲夜さん、自前の『希少品』で代用したのかな?
流石、曲がりなりにも主であるレミリアは咲夜さんに止めるように、拳で命令しましたか。
2. 名無し ■2011/05/15 22:07:19
色的には…なるほど…
頑張ったねさくやさん
3. 名無し ■2011/05/15 23:28:28
月1だったら誰も傷つかずに出せるのにね
4. 名無し ■2011/05/15 23:42:45
時間を操って月一より頻度上げられんか。
5. 名無し ■2011/05/16 02:43:20
ブラックかつハートフルでいい話だ
6. 幻想保査長 ■2011/05/17 17:12:02
色的に・・・あぁ成程、そういうことね
7. AKAISIKAIHI ■2011/05/17 19:27:16
レミリアのためならいくらでもジャムを作りそうだな
8. ■2011/05/18 18:31:39
コメ返さん。
>先任曹長さん
希少品を活用させていただきました。カリスマあふれるおぜう様はきっと拳で語るのだと思います。
>2さん
頑張ったんですよ、きっと。
>3さん
出せるんですよねー。一応月一という単語は入れてあります。
>4さん
頑張りすぎて他の仕事に支障をきたしそうですね…。たまの楽しみってのもいいんじゃないかと思います。
>5さん
これがブラックでハートフルというものだったのですか…!定義がよくわかっていません。お言葉ありがとうございます。
>幻想保佐長さん
そういうわけでございます。
>AKAISIKAIHIさん
いぬさくな咲夜さんだったら作りそうですね。命令されないなら月一なイメージです。
名前 メール
パスワード
投稿パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード