東方奇黒球 ~ mission3

作品集: 26 投稿日時: 2011/05/21 14:55:58 更新日時: 2011/05/21 14:55:58
「え、今何と?」

白蓮の提案に、ぬえは素っ頓狂な声を上げた。一輪、村紗、星、ぬえの四人の声は綺麗に重なる。

「外の世界に慰安旅行にでも出かけませんか?」
「で、ですが……」

一輪が手を上げる。

「今、幻想郷の各地で破壊活動中です。ここを空けたらここも被害に遭ってしまうかもしれません……、だったら」
「でも、安心はできるものよ……心配しないで」

白蓮の考えている事はいまいち解らない。他の四人は同時に首を傾げる。ナズーリンと小傘が行方不明(死亡)となった今、出かけようとする事もしなかった。白蓮以外の四人は、いなくなった二人を探すのが優先と考えている。

「先ずは心を落ち着かせる、それが大事でしょう?」
「瞑想は……」
「そう言うものではなく、身体的にも精神的にも安らかに……それに加えて、楽しみを上塗りするのです」

『ニュ、ニュース!!』

外から騒がしい声が聞こえる。
命蓮寺に居る全員も聞いた事のある、幻想郷一騒がしいと言っても過言ではない妖怪の山の鴉天狗、射命丸文だった。新聞を一束だけ持って、命蓮寺に来たようだ。

「文さん、落ち着いて下さい」
「ま、それほどニュースって分けでもないんですけどね」

文は皆の前に新聞を置いた。

『不定期ごとに、幻想郷の住民が夜に行方不明になっている事が判明した。
 数週間ほど前から、魔法使いの霧雨魔理沙や守矢神社の巫女、東風谷早苗が行方知れずとなっている。
 しかし、行方不明となった次の日にはいつもの場所に居る事が確認確認されている。
 なお、十数ヶ月前には、紅魔館のメイド長の十六夜咲夜が行方不明になっていた事が、本人への取材で判った。
 しかし、十六夜咲夜本人はその事を語ろうとはしなかった。
 その当時は破壊活動は幻想郷内で発生していなかったが、大賢者、八雲紫は
 「外の世界の各地で破壊活動が行われていた。前鬼後鬼にも偵察させていたが、破壊活動の原因は判明しなかった」
 と語っている。
 なお、今の所で幻想郷内での破壊活動は、ここ数週間では外れの人里、妖怪の山であったが、それ以前では無縁塚、
 冥界内、迷いの竹林などでも行われていた
 今の所、人口密集度が高い人里などでは破壊活動は行われていないが、引き続き、警戒態勢がとられている』

「さっきちょろっと聞こえましたけど、ここを空けるなら十分な注意は払った方が良いですよ」



東方奇黒球 ~ mission3



博麗神社、居間。
卓袱台の端と端で、巫女、博麗霊夢と八雲紫が向き合っていた。今起きている『異変』らしきこと、それの事について話し合うと言うのも主題であったが、不定期で居なくなっている人と、今まで居なくなった人の事について……むしろそっちが主題であった。

「魔理沙に訊いたけど、魔法の研究がどうとかね」
「何でも、紅魔館の門番と図書館を整理している人も居なくなったらしいわ。給士は戻って来ているそうだけど。それに加え、河童も消えたらしいし、地獄の妖怪とか命蓮寺の妖怪も何人か姿が見えないわ」
「あんたの鬼は働いているのよね?」
「心外ね。私の使いをどう捉えているのかしら?幻想郷内のあらゆるものは何でも見えるのよ?」
「科学の方には向いていないんじゃないの?」
「にとりのこと?だったらなおさらよ、人の姿が見えなくなる事が有ったとしても……にとりがいなくなった後ならどういう原理か判るでしょう」
「にとりを疑っていたのね?」
「……ちょっと」



魔理沙の行動は確かに、霊夢にも、紫にも、五月蝿い文にも怪しまれている。だが、どのような方法でも魔理沙の足跡をたどれない以上、捜査側がどれだけ疑おうと魔理沙が破壊活動に関与しているとは言い切れないのだ。咲夜が行方不明になった事が何度かあったが、その時は、紫達は『お嬢様の我が儘』ということで流していた。何か変な命令でもされていたのだろうと。

「咲夜の時とそっくりね」

レミリアは咲夜にそう言った。
咲夜は首を傾げる。

「お嬢様がそう仰るのならそうなのでしょうが、私はハッキリと覚えていませんよ?」
「突然、夜に消えなくなったけど、それ以降から記憶が曖昧なのね……竹林の医者も『間違いなく、一部だけの記憶が失われている』とか言ってたし」
「魔理沙と早苗、その他の下級妖怪、あと、小悪魔もたまーに居なくなりますね」

レミリアは紅茶のカップを小さく揺らした。

「咲夜は居なくならない?」
「居なくなりませんよ」

咲夜は笑顔でレミリアの質問に答え、容器から角砂糖を取り出した。しかし、その角砂糖をカップに入れようとしない。

「咲夜?」
「居なくなったとしても、戻って来ますよ、絶対に」
「……それならいいんだけど、美鈴はどうするの?」

そこが問題であった。
美鈴はある晩突然居なくなり、それ以来戻ってくる気配がなかった。鴉天狗や霊夢に頼むなどして探したが、姿どころか気配すら見つかっていない。数日前、咲夜は香霖堂に、レミリアに頼まれた日傘を買いに行ったが、霖之助の姿は消えていた。時を止めて店内を隈無く探すも、見つからなかった。

「館の中でも、戦闘力の高い妖精メイドを時間の交代制で四、五体ほど置きましょう」
「気安めでね」



魔理沙が博麗神社に来た頃は、霊夢が出かけようとしていた頃だった。
その霊夢を呼び止める。

「何処行くんだ?」
「あー魔理沙。あんたたまーにいなくなってるけど」
「不過視魔法だ」
「あっそ」

話が反れそうだったので、魔理沙は話題を戻す。

「で、何処行くんだ?」
「命蓮寺。災いを守る札を何枚か貼って、序でに結界も張っておく。そして、礼拝するとこにお守りを設置する」
「面倒くさいな」
「今置きている事の処理と重ねてよ。魔理沙は人ごとで良いわね」

魔理沙は霊夢に付いて行き、その作業を手伝う事にした。



少しして命蓮寺に着いた。霊夢は懐から札を取り外すと、建物の柱一本ずつに一枚貼って、鐘には十枚、それが設置されている建物には柱に一枚ずつ屋根には五枚、五角形ができるように張るように、と命令した。魔理沙は快く了解し、早速作業に取りかかった。

「これでいいか……」

先ず最初に取りかかったのは、鐘に札を貼る作業。表と裏に五枚ずつ貼らないで、表だけでも大丈夫と霊夢に言われて、表だけに貼る。柱と屋根に札を貼り終えると、残っている札をポケットにしまって霊夢の所に向かった。

「なぁ、これで何の意味が有るんだ?」
「早く済ませなさい。えっとね、気安め」
「そうか……」



少女作業中…………。



「終わったな」
「結界も張るから、外に出るわよ」
「おう」



再び博麗神社。
霊夢は魔理沙に命令を下す。

「今日はお願いが有るわ。紫から言われてるの」
「何だ」
「今日は此処に泊まってもらうわ」























































「またか……」

魔理沙本人予想はしていたのだが、がっくりした。またガンツ部屋に呼ばれた。
現在、魔理沙はトータル90てん、早苗は3てん、小悪魔が10てんで、リグルが8てん。まだまだ100てんには遠いのである。
部屋の中を見渡し、新しいメンバーを確認する。
部屋端から順に、フランドール、小町、ミスティア、勇儀、ヤマメ、サニー、スター。後は生き残りの魔理沙、早苗、リグル、小悪魔。十一人である。

魔理沙達四人はスーツを着ると、ラックに入っていたアタッシュケースを全員に配った。そして、着るように促す。
フランドールはアタッシュケースの中身よりも、ラックにかかっていたショットガンに興味を持っているようだ。色んな角度から眺めて恍惚の表情をしている。

それ以外の人、勇儀とフランドールを除く全員はスーツを着て、ガンツの在る部屋に戻って来た。

そして流れる、あの歌が。

『あーたーらしーいーあーさがきたっ、きーのーおのーあーさーだ』

新しくこの事を体験する全員は、これに反応し、ガンツを凝視する。

『よーろこーびにむねをひーろげ、おーおおぞーらあーおーげー』

この部屋で大量に死に、そしてまた補給される人々。魔理沙に守れる自身は無い。

『ラージオーのこーえにー、すーこやーかな、むーねをー』

『こーのかおーるかぜーにひらーけよ』

『そーれいっちにーさん!』

いつものように曲が終わり、いつものようにガンツの表面に文字が表示される。



『てめえ達の命は無くなりました
 新しい命をどう使おうと
 私の勝手です。
 という理屈なわけだす』

『てめえ達は今からこの方をヤッつけに行って下ちい』



魔理沙はラックからXガンを取り出し、ホルスターに収め、新しい対象を確認する。



『あばれんぼう星人
 特徴:つよい おおきい
 好きなもの:せまいとこ おこりんぼう
 口癖:ぬん』



「あれ?」

魔理沙よりも先に、早苗がこのミッションのおかしい所に気づく。ボスが居るとか、そう言う事ではない。



『おこりんぼう星人
 特徴:つよい おおきい
 好きなもの:せまいとこ あばれんぼう
 口癖:はっ』



それぞれ、説明の横に表示される。
魔理沙は既に転送され始めている。早苗も……他のメンバーも転送して、戦闘エリアへ送られる。そして始まる、星人との、死と隣り合わせの闘いが。



まず、転送された全員が驚いたのは転送された場所。その場所とは、命蓮寺。一番驚いたのは魔理沙で、今日の昼頃、霊夢と一緒に札を貼って結界を張った。その札は全て剥がされたように消えていて、結界も完全に消えている。何があったのか、判らない。

転送されて最初のポジションは、門。その少し先に、大きな仏像が二体。

早苗が皆の前に出て説明しようとする。

「い、今から恐ろしいことが起きます。でも、皆で力を合わせれば------」

ギョオオオォォォォォン

その台詞の途中で、大きな銃声。フランドールがショットガンを片方の仏像、あばれんぼう星人に向けて発砲してしまったのだ。フランドールは首を傾げ、もう一度引き金を引こうとするが、引き金を引く瞬間にあばれんぼう星人が爆発した。
辺りに体の破片と臓物、体液が飛び散る。

「ひいいいぃぃぃぃぃぃぃっっ!!」

それがもとで、皆が逃げ出す。フランドールは少し遅れるようにだったが、慌てて逃げ出す。かろうじて、降り掛かる肉片は回避できた。サニーが逃げた先に、もう片方の方の、おこりんぼう星人の拳が降り掛かる。

「うわあああああ!!!」
「危ないッ!!」

小悪魔が飛びつき、サニーを突き飛ばす。突き飛ばすと同時に体を反転させ、Xガンを拳に向けて乱射した。直ぐさまその場を抜け、地面を転がって拳を回避する。
ザザザザ……!!
地面の砂利と靴の摩擦する音が小悪魔の耳に響く。勢いが弱まったとことで、Xガンをおこりんぼう星人に向け、ロックオンの体勢をとる。その瞬間、おこりんぼう星人の拳が砕けた。破砕と同時に、ロックオン。さらに数連射。

「なかなか……!」
「ヒュー……危ないですよ……」

ドシャアアアアアァァァァァァァァァァ!!!
魔理沙の後ろで、おこりんぼう星人がバラバラになる音が鳴った。

「これで終わりか?」
「いや、コントローラーの画面にはまだ標的が居るようで……」

小悪魔が合図をだすと、他の皆が集まって来た。そこに、早苗がコントローラーを前にだしてまだ標的が居る事を教えた。標的の位置は、魔理沙達の後ろ。

「早苗ぇぇえ!!!」
「えっ!?」

早苗の後ろから空を切る音。早苗が咄嗟に反応しその場を飛び退くと、早苗が居た場所に拳が振り落とされ、砂利をまき散らした。皆が後ろを確認すると、大きさがにメートルにも及ぶ仏像が九人、さっきの攻撃を仕掛けて来た奴は早苗に向かって突進して来ていた。早苗がガンツソードを抜き、居合い切りの要領で襲いかかって来た仏像を切り捨てた。

「お前ら!!銃を構えろ!!」

仏像星人がスターに向かってタックルを決める。スターの叫び声が木霊し、その体は鐘にぶつかるまで止まる事は無かった。
ゴォォォォォン
その小さな体が鐘にぶつかると、大きな鐘の音が寺中に響き渡った。

「しまっ!」

その音に釣られたのか、仏像星人全員が鐘の方向、正確にはスターの方向を向き、一斉に突進を始めた。スターは頭を痛そうに抑えているだけで、仏像を回避する事ができない。

「くっそおおおぉぉぉ!」

魔理沙は慌ててXガンを連射する。しかし、その間延びした銃声が響く頃には既に、全部の仏像がスターの位置に到達していた。

「ぎゃああああぁぁぁぁぁあああっ!!やめてえええええぇぇぇぇぇぇっっ!!助けてえぇぇぇぇぇ!!!」

スターの断末魔が響き、仏像星人の集団の隙間から血が流れ出し、上の方にも吹き出すように血が出ている。そのうちの一体の仏像星人は、先程の魔理沙の攻撃によって破裂した。(残り七体)その瞬間、仏像星人達は攻撃を止め、魔理沙の方向を向いた。

「来いよ」
「ま、魔理沙さん!?」
「何だよ」
「一人だけでは危険です!ここは皆で力を合わせた方が!!」

魔理沙は早苗の方を向いて残念そうな顔をする。

「使えない奴が居るなら、いない方がマシさ」

ホルスターにXガンを収め、その代わりにガンツソードを構える、居合い切りの体勢で。それと同時に、仏像星人達が一斉に突進を始める。
一体が魔理沙の正面まで来るが、一瞬の判断によって魔理沙に切り捨てられる。刀を振った勢いに乗ってコンボを繋げるように、もう一体の仏像星人の首を刎ねる。

「危ないっ!!」
「むっ!」

魔理沙の正面から二体の仏像星人が迫って来ていた。しかし、今の声が注意を促したのはその正面の仏像の事ではない。上にも居たのだ。

「魔理沙、上!!」
「ぐっ!」

頭上の仏像星人が魔理沙に乗っかると思った瞬間、緊迫していた空気から皆を目覚めさせるかのように、銃声が響いた。フランドールがショットガンを、魔理沙の頭上の仏像目がけて発射していたのだ。魔理沙は刀を要領よく振り抜いて、頭上の仏像星人を縦に切り裂いた。ちょど、股間の辺りである。

「まだだって」

リグルは魔理沙を飛び越え、Yガンを正面の仏像星人に発射した。右手にはXガンを構え、もう一体の仏像星人をロックオンにして、引き金を引いた。そんなこんなをしている頃、先のフランドールの攻撃を喰らっていた仏像星人が大きく破裂した。(残り六体)
二体の仏像のうち一体は破裂し、一体は拘束されて地面に縛り付けられた。その頃、ヤマメはサニーを抱え、小町はミスティアを抱え、襲いかかってくる仏像星人から逃げ惑っていた。小悪魔はXガンを右手に持って応戦する。フランドールもXショットガンを構えて応戦しようとする。しかし、フランドールの背後には仏像星人が一体、拳を振り上げて突進して来ていた。

「避ろっ!」

勇儀はスーツの力を利用してフランドールの後ろの仏像星人に飛びかかった。リング状の部分から青白い光を放ち、その拳は数倍に膨れ上がった。そのまま勢いに任せて拳を振ると、人間の目では捉えられないほどの早さで仏像星人を殴った。それだけの攻撃で頭部は破壊され、動かなくなった。勇儀は頭を地面に向けながら宙を舞い、体操選手のような動きを見せると、体を上下逆にして地面に着地した。(残り五体)
フランドールは、拘束されていた仏像星人に向けてショットガンの引き金を引き、殺した。(残り四体)その隣の星人も破裂。(残り三体)
小悪魔は突進して来た仏像星人を、両拳を両拳で受け止めた。

「ふっ!ぐうううぅぅぅぅううううううううっ!!!」

リング状の部分から青白い光が放たれる。その瞬間、小悪魔が掴んでいた仏像星人の両拳が思いっきり、いい音を出して砕けた。一瞬怯む仏像星人、その隙を見逃さずに小悪魔が仏像星人の顎に向かってアッパーを炸裂させる。仏像星人の顎が軽く砕ける。漁父の利、フランドールがショットガンをその仏像星人に向かって引き金を引いた。リグルと早苗はガンツソードを引き抜くと、他の二体に向かってダッシュした。



辺りには仏像九体分の死体、巨体が二つ転がっていた。そんな中で、生き残ったいるものはコントローラーを覗いていた。それから外れるように、リグルと早苗の二人は刀を持ったまま、自分たちの足下に転がっている仏像の死体を見下ろしていた。

「これで終わりか?」
「まだ……いる!!」

瞬間、本殿が砕ける音。
バキバキィィィィィィィィ!!!
本殿の屋根を突き破り、壁を破壊して出て来たのは大きさが二十メートルは有りそうな巨大な仏像だった。魔理沙達の頭上に木片が豪雨のように降り注ぎ、視界を煙らせる。魔理沙はXガンを大仏に向けて乱射すると一旦銃を下ろし、ショットガンを構え、一気に駆け出した。

「魔理沙!!」
「お前らがやらないなら私がやる!!この仏像はぶっ殺す!!!」

フランドールは魔理沙に続くように駆け出し、持っていたショットガンを大仏の足の辺りに連射した。魔理沙は大仏の足下。
フランドールの攻撃した部分が破裂したのだが、その影響は無いに等しく、三十センチほど抉れているだけだった。

「き、効かない!!?」

怯むフランドールは後ずさってショットガンを大仏の両藍に数回に渡って発射する。幾つもの穴が開き、体内に侵入できるような形だった。だが入っている余裕は無い。

「うおおぉおっ!!」

大仏の巨大な拳がフランドールと魔理沙の間に振り落とされ、地面がクレーターのようになった。その風圧で魔理沙とフランドールは大きく吹き飛び、壁に激突した。
早苗はXガンを構え大仏に連射するも、ほとんど効果は無い。
魔理沙は立ち上がってフランドールを抱えて皆の元に戻ってきた。

「火力が足りないですよ……!」
「判ってるって」

小悪魔の言葉を無視するように魔理沙が言う。

「死ぬが良いッ!!!」

魔理沙は体を反転させ、大ジャンプをする。その高さは二十メートルはある。ショットガンを携え、そのまま水泳選手のように大仏の口にダイブする。咥内に侵入した魔理沙はショットガンを四方、八方に連射し、口の中だけでなく、部位的に心臓の方にもショットガンを発射する。体よく大仏の頭部がはじける。魔理沙は急いで脱出し、早苗達の居る所に着地した。



近くの階段に腰掛けている魔理沙は気力を失っているのかどうかは分からないが、ただ空をボーッと眺めて暇人のようにしている。
早苗はコントローラーを覗いて皆に指示した。

「まだ、礼拝殿の中に五体ほど的の存在があります」
「え」

小町は気怠そうに反応する。

「まださっきのような事をするのか」
「死にたいから言ってるんですか?」
「そういうわけじゃ……」

やれやれと肩をすくめると、小町は胡座で地面に座り込んだ。
早苗はYガンをホルスターに収め、礼拝殿に向かった。しかしそれを、勇儀、小町、ヤマメの三人が止める。

「早苗さんは……行っては駄目です」
「何故ですか!?」
「巫女だからです」



礼拝殿。
普通なら有りはしないような物が置かれており、仏具神具に限らず、ありとあらゆる物が置いてある。外の世界ではにわかに信じ難いかも知れないが、幻想郷に限らず現代でも、世界中のどんなにちっぽけな物でも神や霊が憑いて(宿って)いるのである。
コントローラーに表示されている敵は、その、礼拝殿の中に居る。

「開けるぞ?」
『いつでも』
「いきなり飛び出して来たらまずいので、あたいはこっち、あんたらは反対側に」

小町は礼拝殿の扉をゆっくりと開けて行く。
すーっという音が続くたびに、小町、勇儀、ヤマメの三人の鼓動は高鳴って行く。

「ッ!!」

小町はXショットガンを、勇儀は素手、ヤマメはXガンを構えて敵が居るであろう全方向に銃口を向ける。しかし、中に敵らしい姿は見当たらない。

「……これ?」
「五体だったよな」

三人の目の前に在るのは、五体の仏像。そのうち四体……中央の金に輝いている仏像を取り囲んでいる物、どれも巧みが彫り上げたであろう、精巧にできている。そして中央にある金に輝く仏像。これは小町が一番知っている。
千手観音だ。
またの名を十一面観音とも言う。
その観音像と言うと、体から生えている無数の手に、金の刀、金の小壺、金の手鏡、などなど、みたこともない仏具らしきものを持っている。
ヤマメはXガンを千手観音に向けてみる。
反応しない。

「これは敵じゃないんじゃない?」

ヤマメが言う。

「いや、敵だろう?異様な気配を放っているし」
「そうかなぁ……」

ヤマメは銃を下ろして下がった。
それと入れ替わりに勇儀が壇に上がり、千手観音を囲んでいるうちの一体の仏像に近づいた。持国天だろうか。小町は仏像を幾つか見て来た事は有るが、名前はハッキリと覚えていない。

「じゃあ、さっきのがボスだったっぽいし、一気に片付けるか」

勇儀は拳を後ろに引いた。

「おい」

小町が止めようとするが、それを聞かず、勇儀は動かない仏像に容赦なく拳を振るった。
その時、

バシッ

「!!」

勇儀の右拳が、目の前の仏像に平手で受け止められた。少し力を入れてみるが、びくともしない。入れ替わりに左手の方も全力を込めて振るう。

バシッ

またも受け止められる。

ビュッ!!
バシッ!!
ビュッ!!
バシッ!!

「く……ぐく…………」

しまいに勇儀は目の前の仏像を押し倒し、タコ殴り状態にしようとする。しかし、その勇儀の首をその仏像が締め上げる。

「ぐぁ……がが…があぁぁぁ………」
「勇儀!!」
「勇儀さん!!!」

他の二人が見ている間にも、勇儀の首はどんどん締め上げられて行く。
そして、二人の目の前で勇儀の首が……、

ボキリ

折れた。

「うわああああああ!!うあああぁぁ!!!」
「くそっ!!こいつら!!」

しっかり握っていた、Xガンもつヤマメの手ががたがたと震え、狙いが定まらない。

「くっそ!」

次の瞬間、千手観音の周りに在った四つの仏像が宙を舞い、二人の前に神が降臨するように着地した。槍を持つ仏像……おそらく、増長天と思われる仏像が槍を振るい、小町を刺そうとする。小町は間一髪の所でそれをかわす。

「助太刀する!!」

そこにフランドールが飛び込んで来て、小町の目の前の増長天を蹴り飛ばした。増長天は頭から壁に激突し、少しだけ木片をまき散らした。

「ヤマメは逃げて!!」
「ええ、でも……」
「魔理沙の分なら私と小町でぎりぎり補える!!」
「なら私が居ても……!!」
「少しでも生き残らせる為!!」
「……」

ヤマメはXガンを残りの仏像三体に向けて構える。小町は動き易いようにショットガンを捨て置き、ホルスターからXガンを取り出して同じように構える。入り口の方には残りの、多聞天と広目天が門番のように構えている。小町が振り返り様にその二体にXガンを連射し、ちょうど頭の部分を破壊させる。その隙を見逃さずにヤマメは駆け出し、二体の間を抜けると、魔理沙達に報告する為に全力で走った。

「……」

のこすは持国天と増長天、そして千手観音。

「……あ」

銃を構えていざ戦闘しようと思ったその瞬間、千手観音が二人の視界を遮るかのように現れた。

「やるか」



砂利をまき散らす音とともに、魔理沙達の前にヤマメが息を切らしながら走って来た。早苗が体を支える。

「何か有ったんですか?!」
「小町さんと……フランドールさんが!!」
「え!?」

その場の全員の空気が張り詰める。

「すぐに助けに行きましょう!!」
「待てよ、全員で行ったら危ないから、何人か残すぞ!!」
「でも!!」
「私が一番自身が有る」

そう言うと魔理沙はショットガンを持って礼拝殿に向かった。それに釣られるかのように、早苗と小悪魔、それにリグルが走り出した。

「あんたら」

ヤマメはサニーとミスティアの方を向いて告げる。

「銃を持って。いざと言う時に役立つかも」

ガンツ部屋から持って来ておいたライフルを両手で抱えると、ヤマメは走り去った。走り去り際に「どこかに隠れていて」とだけ言い残した。



ザザッ

全員の足音が一斉に止まると、礼拝殿の戸の前で一斉に銃を構えた。早苗が勢いよくドアを開けた。

「ッ!!」

空気が凍る。魔理沙達の眼前。小町とフランドールが床に横たわっている。もっと詳しく言うのなら、二人の体はそれぞれ真っ二つにされ、床に転がってると言う方が正しい。

「皆で帰るんですよ!!!」

早苗は駆け出し、持っていたYガンを千手観音に向けた。しかし、数メートル手前で、残っていた持国天にYガンを蹴りではじき飛ばされた。

「うらあああああああああああ!!!!」

体を捻り、足を上げて持国天を蹴りとばす。一旦しゃがんでから、スーツのホルスターからXガンを取り出し、千手観音に銃口を向ける。三連射。
ギョォンギョォンギョォン。
数秒のタイムラグの後、千手観音の顔面がおぞましく歪んだ。

「うぅぅぅぅぅぉぉぉ………」

しかし、瞬間的に千手観音の顔が、歪んでいた顔から素の慈悲の有る顔に戻った。いや、再生した。
次の瞬間、複数の手のうち、一本が所持していた水瓶から液体が放たれた。

「早苗さん!!」

リグルは魔理沙達の間を抜け、早苗をかばうように立つ。液体がリグルの体にかかり、体が溶け出す。

「ぎゃああぁぁあああああああ!!!」
「……ぁぁ!!」

骨の髄が見えるほどまで体と言うからだが溶けると、リグルは動かなくなった。

「やろおおおおおおおおおおおおお!!!!」

魔理沙は千手観音に迫り、Xショットガンを顔面零距離で何回も何回も何回も何回も連射する。小悪魔は地面に落ちていたXガンを拾い上げ、自分の持っていた方も手に持ち、二丁拳銃の体勢で、残りの持国天と増長天を粉砕する。
そして数秒、二体の仏像は破裂した。
それに遅れて、千手観音の顔が再びおぞましく歪み、大爆発を起こした。
辺りに臓物と大量の血をまき散らし、あれほど神聖だった礼拝殿も見る影が無い。

「ひっ!!」

室内を赤色に染めた、辺りに飛び散っていて見たくなくなるような血と臓物が、千手観音の顔面に集まり、破壊された顔が修復されて行く。そんな事もあって、魔理沙は一瞬怯んで後ろに下がってしまう。やがて、顔面が完全に直った千手観音は、右と左にあるうちの一本ずつ、刀を持っている腕を動かして魔理沙の腹に直で突き刺した。

「がはあああああ!!!」

魔理沙の体は空中高く差し上げられ、数メートル上げられたその高さから早苗達の方向に投げ飛ばされた。床を大きく軋ませながら、魔理沙の体はボールのように転がって行った。

「魔理沙ぁ!!」
「早苗さん、一旦退きましょう!!」



戸を過ぎると、その横に細めの縁がある。そこに魔理沙を横にした早苗達は、警戒を解くのを忘れないように魔理沙の状態を確かめる。先程差し上げられてはいたが、刺した際の二本、差し上げたままの追撃で五本、その分の穴が、スーツ越しに魔理沙の体に空いていた。

「私は……大丈夫…だか……!!」

魔理沙が目を見開く。
早苗達が振り返った先には千手観音が魔理沙達を見下ろすように、いや、見下すように立っていた。攻撃を仕掛けようとする早苗を、小悪魔は手で制した。

「早苗さんは……魔理沙さんも」
「はい?」
「帰らなきゃいけないじゃないですか……神奈子さん、諏訪子さんが待ってますよ? 魔理沙さんは……霊夢さん達が待っています。行って上げて下さい」

小悪魔は銃も刀も持たない無手スタイルで千手観音と向かい合う。その戦闘態勢が合図だったのだろう、早苗は魔理沙を千手観音の死角まで引きずって隠すと、他の二人の安否を確認する為に走り出した。



「……」

『復讐だ』

「……!!」

今まで喋らなかった千手観音が何かを言い出した。

『お前達は私たちの仲間を殺した。だから私たちもお前達に同じ事をする』

「……ッ!!」

『復讐だ』

戦闘開始。
千手観音の二本の腕が小悪魔に迫り、金に輝く鋭い刃が目の前をもの凄い早さで通り過ぎる。それを毎回毎回ギリギリで避ける。
十数回、剣が小悪魔に近づいて来た時、小悪魔は足で刀を蹴り飛ばし、礼拝殿の木の壁に突き刺させた。小悪魔と千手観音の距離は二、三メートル。近距離系攻撃なら普通に避けられる距離。

「はっ!?」

瞬間、腕に置かれていたルーレットらしき物が眩く光り、そこからレーザーが照射された。そのレーザーは小悪魔の方の辺りを貫き、そのまま上下運動をして腕を切り落とした。小悪魔は自分の身に何が起きたのか理解できないようで、自分の左腕だった物を呆然と見ていた。その隙を見逃さなかった。レーザーは小悪魔の脳天を貫いた。



「……」

早苗は一旦、命蓮寺の入り口、つまること門の柱に身を隠した。奥の方に千手観音の姿が確認できたのだ。それに加え、そこから離れた所にXガンを構えたヤマメの姿。千手観音の後ろには息を殺しているサニーとミスティアの姿があった。声を出すと見つかる。故に三人に指示が送れない。ヤマメは早苗と同じように、物陰に身を隠している。
そんな時、サニーとミスティアの二人が飛び出し、Xガンを千手観音に向けた。しかし、その突き出された両腕は見えない速度で切り落とされた。

「ぐうああぁぁぁ……」
「右腕を!! くっつけて!!」
「くっ付くわけ無いじゃないの!!」

漫才が始まっていた。
怯む二人の脳天に光り輝くレーザーが直撃、二人はそのまま地面に倒れ伏して動かなくなる。

そこで、ヤマメが飛び出し、Xガンを千手観音に向けた。ホルスターには念のためのガンツソードが収められている。千手観音の腕からレーザーが放たれる。それを間一髪でかわす。そしてXガンを素早く構えて発射。その斜線は千手観音を捉えたのだろうが、それを察知されたらしく、残った刀で防がれる。数秒のタイムラグの後、刀が粉砕。さらにトリガーを引き、持っていた水瓶を斜線が捉える。

バンッ!!

水瓶だけが綺麗に破裂したと思っていたヤマメが見たのは、もっと違う物だった。自分の顔面にかかったのは赤い血。地面に転がっていたサニーの首を盾にしていたのだ。

「くあっ!!」

レーザーが照射され、ヤマメの左腕が切り落とされる。

「まだまだぁあああああッッ!!!」

残った腕にガンツソードを持たせ、残る限りの力を振り絞って千手観音との距離を詰める。
そして、ヤマメの命が尽きるまでの戦闘時間は……そう長くはなかった。



千手観音との距離、数十メートル。
ホルスターには使うかは判らないYガンとガンツソード。
右手にはXガン。

「……」

神奈子と諏訪子のもとへ帰る為、今、生きなければならない。
それだけでなく、皆も生き返らせてもとに戻さなくてはいけない。
それが今の使命。

「死ぬがよい」

柱から勢いよく飛び出して、左手にガンツソードを持って千手観音に迫った。それに反応するや否や千手観音の腕からレーザーが放たれた。それを寸分の距離でかわす。またレーザー。かわす。何回か避けた後、Xガンをロックオンで構えるが、向いている方向とは逆にレーザーが飛び出し、早苗の手の中のXガンが真ん中辺りで両断される。ガンツソードを両手に持ち替え、さらに間合いを詰める。
早苗の顔面に千手観音の両手が添えられ、その手が突き出されると早苗を空中高く放り上げた。そこにレーザーが発射される。首をひねってかわす。
地面に着地。
その瞬間、早苗の手に握られていたガンツソードが千手観音の手にはじかれた。それだけでなく、レーザーで左腕がすっぱりと切られる。

「あが……」

うずくまりかけた早苗にレーザー口が向けられる。それを察知したのか、横に軽いステップで避けた。そのまま急いで駆け出し、礼拝殿の壁に刺さっていた金の……千手観音がもともと装備していた刀を抜こうとする。走っている早苗に向かってレーザーが連射されるが、反射神経が大分良い早苗はそれを左右に避けたりフェイクをかけたりしてかわす。礼拝殿に辿り着くと急いで刀を引き抜き、千手観音に向かって一気に駆け出す。その間もレーザーは止めどなく連射されるが、それも回避しきる。
刀を残った右手で握る。
だが、それを地面に捨て置いて、ホルスターのYガンを手に取った。
早苗は、目の前の千手観音を逃さないように体勢を整える。

そして発射。




















































「早苗、また居ないな」

神奈子は空に浮かぶ月を見ながら酒を啜った。

「もし、帰ってこなかったら?今までは帰って来たけど……」
「……」




















































Yガンのユニットからアンカーが放たれ、千手観音を瞬く間に絡めとり、拘束し、地面に固定させた。
その時、千手観音の口が動くのが見えた。

「……」
『待って!!私だよ!!』
「え………………?」

早苗は理解できなかった。理解できなかったのは千手観音が喋った事ではなく、その口調であった。
聞いたことが有る声。

「貴方は……」
『そうだよ!フランドールだよ!!』

身動きが取れない、攻撃が仕掛けられない千手観音の口調はフランドールそのものだった。早苗はYガンを下ろし、千手観音の話を聞く。

「何で……死んだはずじゃ……」
『最初のだよ!最初の星人を殺した時にそいつの血に接触していたの!!それの所為で浸食されちゃったんだよ!!』
「でも、何で攻撃を……!」
『止めたかったけど止められなかったの!!』
「……」

弁明している千手観音の顔に一瞬だけ、笑みみたいなものが零れたのが判った。
早苗は手に力を込める。再びYガンを千手観音に向け、トリガーを引く。

『何だとぉ!?』

それから、千手観音の頭から先がどんどん輪っか状に、まるで解剖図のように消えて行く。
『転送』されているのだ。

「悪いですけど……貴方は今は星人。たとえフランドールさんの人格が宿っていても、所詮は敵……助けません……」
『巫山戯ないでよぉ!!助けろよぉ!!』
「……」
『くそおぉうぅぅぅ!!復讐してやるぞ!!お前も、お前の同胞も絶対に殺す!!!』

千手観音がそう言った瞬間、転送途中だった部位が突然すっぱりと切られたように取れ、そこから深い緑色をしたような物体らしモノが出て来た。それが地面に落ちると生々しい音を立てた。分離した部分はそのまま、転送されていった。

「……」

地面に転がっている緑の物体はだんだん姿を変えて行き、その大きさは早苗の身長を大きく上回るモノとなった。その物体が顔を上げ、早苗を睨みつけた。

「……さっきはよくも……」
「……!!」

次の瞬間、目の前の物体が早苗に連続攻撃を叩き込む。拳を何回も早苗の顔面に打ち付けているそいつの顔は恍惚とした表情であった。

「強い!!私は最強だ!!何でもできるんだッ!!」
「……ふ…フラン…………!!フランドールううううぅぅぅぅううううううううう!!!」
「はあぁ!?!???」

早苗の起死回生の反撃。右手に、先程引き抜いた金の刀を闇雲に振るい、目の前の悪の権化の右腕に大きな溝を作った。

「ぎゃあああああああッ!!」

攻撃の手を緩めず、右腕を止める事無く振るってさらに切り込んで、右腕を切り落とす。そこで気を抜いたらまずいことぐらい、早苗にも判っていた。攻撃を喰らわないように左腕も切り落とし、腹や胸をズタズタに切り裂いた。

「……ぐっぞぞおおおおおおおおおおお………………!」

早苗の目の前の千手観音……フランドールは動かなくなった。早苗もだんだんと脱力、もとい、血が無くなって行って死に近づいているのが判った。地面に膝をつき、持っていた刀を握る力もどんどん失われて行き、しまいには視界も狭くなって行った。自分の体が冷たい地面に触れたのが判ると、最後に小さく呟いた。

「神奈子様……………………諏訪子様……大好きでした………………………」




















































『00:00:00』



静寂に還ったガンツ部屋。
そこには直径一メートルの黒い球と、一人の『ヒト』の影が在るだけだった。
霧雨魔理沙は床をジッと見つめている。
その見つめる先の板には、黒いシミが幾つも出来ていて、魔理沙が独りになった事を物語っていた。

「あ、ありえねぇって……他の……他の皆は……?!」

チーン。

「あ…………………?」

独りになった事を馬鹿にするように鳴る音。
そして始まる採点。

『それぢはちいてんをはじぬる』

「皆を返せよおおおおおおおおおおおおォォォォォォォォッ!!!」

『まりさ
 16てん
 TOTAL26てん
 あと74てんでおわり』

「戦って……生き返らせろってことかよぉ……」

魔理沙の嗚咽が、部屋中に響く。
響くと言うようなものではなく、誰もいないから聞こえてしょうがないと言った方が正しいのかも知れない。

「やってやろうじゃねえか……………ガンツ」



紅魔館。
魔理沙はいつものように、紅魔館の図書館に来ていた。いつもの場所でパチュリーと一緒に本を読んで、時折談笑をした。だが、双方の顔からは何かを考え、隠している事がお互いに見え見えだった。だが、二人はお互いにそれを指摘し合おうとしない。当然かも知れない。

「小悪魔は?」

探りを入れたわけではないが、魔理沙はそれっぽく、普段通りの自分を装うように言ってみた。
パチュリーは弱く、首を横に振る。

「いないのか?」
「美鈴同様、いなくなったっていう言い方の方が正しいわね……咲夜にも似たような事は有ったけど」
「そうなのか……」
「あ」

二人の後ろから声。
咲夜だった。

「あら、魔理沙も来ていたのね」
「暇だから来た」
「そうかしら。まあ、それはいいとして。パチュリー様、三人分のお茶が入りましたよ」
「置いておいて」
「畏まりました」
「え、ちょっと……」

パチュリーが何か言おうとしたのより早く、咲夜は姿を消した。

「『三人分』容れたのね……咲夜は教えてくれないのね」
「誰か来るってことか」
「もしくはもう来てるのかもね、案外」

二人の後ろに再び影が降りた。

「私も。一緒にお茶を」



二人分の本の頁をめくる音と、お茶を啜る音が静かな図書館を少しだけ濁す。
突然来訪した文は早速切り出す。

「早苗さんの件、聞きましたか?」

判ってはいる。この質問は魔理沙に向けてだった。

「何が」
「行方不明なんですよ。他の人もですけど、とくににとりさんは」
「にとりが……どうかしたのか?」
「食いつきがいまいちですね」

文は胸ポケットから写真数枚取り出し、魔理沙とパチュリーの二人に見えるようにした。魔理沙は気怠るそうに見るが、パチュリーは半分ぐらい興味を持っているようで、本を閉じて写真に写っている物を見た。

「判ります……よね?にとりさんの工房です」

その写真は、とてもじゃないがにとりのいた工房には見えない。
内部が全て焼けただれていると言って良い。

「にとりさんが何かを開発していたようでですね、それが爆発した物です。音が大きかったので近くの鴉天狗が何体か調べに行きましたよ。爆発場所を調べましたが、にとりさんの姿は身あたらず、証拠も無し」

文は胸ポケットから追加で写真を出した。
それに添えられるように、フロッピーディスクをテーブルに置いた。

「工房の壁に有った走り書きと、地面に落ちていた物です」

『私は開発に失敗して爆発を起こした。
 爆発は自然を破壊するほどのモノではなかったが、自分の命を落とす被害となった。
 次の番に目が覚めると此処に居たが、その日の晩、あるいは昨晩の出来事はとてもじゃないが言葉にできない。
 あの事は話す気になれない、話してはいけない。 
 ミッションをクリアしたらこれも全て忘れる』

苦笑。
文はその写真を二人の目の前でびりびりに破いた。
フロッピーディスクは魔理沙に手に放り投げた。

「意味不明ですよね」

文が去ってから数分後、魔理沙は紅魔館の外で咲夜と話をしていた。何でも、咲夜は文からいろいろな話を聞いたらしい。

「魔理沙も時々夜に消えているらしいわね」
「も?」
「お嬢様の話だと、私も夜に消えていたらしいの」
「(咲夜もガンツ部屋に行ったことがあるのか)それで?」
「天狗からいろいろと聞いたんだけど、ここ最近、幻想郷の住人が謎の集団に襲われている事件が有るらしいの」

それは魔理沙も経験した事。魔法の森で謎の集団に襲われて殺された事。

「霧の湖妖精が何体か襲われてたらしいわ。文はその場面をバレないように一部始終見ていたらしいけど」
「(私も見られていたのだろうか……)」
「集団が去った後、文は妖精達の死体を確認しに行ったらしいけど、見つからなかったそうよ。死体は愚か、血も。襲われたのはチルノって言う妖精と大妖精。神社の近くでは二人の妖精が襲われたそうよ。残りの一匹は命からがら逃げて来たそうだけど。にとりは貴方も聞いた通り、爆死。他の妖怪も謎の集団に襲われたから死んだみたいだけど」



香霖堂。
もちろん、店主の森近霖之助はいない。
以前この店に来た時、魔理沙はある説明を受けた事が有る。ノートパソコンと言う物には、この店内にあるものであればまだ電源が付く物が有ったそうだ。それを言われたのを思い出して、今、此処に来ている。魔理沙の手に握られているフロッピーディスクは、おそらく、にとりが開発して何かを記録した物だろう。そんな事を考えながら魔理沙はパソコンを探す。以前、パソコンを貰った時に、大きいパソコンは動かなかった。だが、小さいパソコンは別。持ち運びが可能なら何処でも使う事ができるはずだ。そう魔理沙は思っていた。

「お、あった」

見た目は銀っぽいだろうか。サイズは普通のノートパソコンを引っ張りだした。しかし、肝心の起動方法が判らないのだ。
その時、棚の隅に小さな冊子が有るのが判った。魔理沙はそれを手に取り、表面に書いてある文字を読み取る。

「取り扱い説明書……表紙に書いてある絵はこのパソコンと一緒だな……」

説明書を開き、目次を見る。項目の上に『本体の各ボタンの説明』と書かれていた。説明書に書かれている通りに、電源ボタンを押す。やがて起動完了されると、最初の何も無い画面、もとい、アイコンがほとんど並んでいない状態の画面が表示された。

「で、何何。フロッピーディスクは本体の横の細い隙間に挿入するのか。なるほど」

魔理沙はノートパソコンを横に傾け、フロッピーディスクが入るであろう隙間にディスクを挿入した。

『読み込み中』

画面にその文字が表示され、魔理沙はふぅと一息ついた。
やがて、フロッピーディスクのファイルが展開された。
魔理沙は説明書をちらちら見ながらパソコンの操作法を脳に叩き込む。

「マウスで……いや、キーボードの矢印でスクロールか……」


『私が死んだ次に目が覚めたのは見た事が無い、とある部屋だった。
 その部屋に有ったのは気怠そうな人たちの顔と黒い球。
 しばらく時間が経つと黒い球から曲が流れて来て、私の恐怖心を少しばかり煽った。
 その球に文字が表示されると、球の左右と後ろからラックが飛び出し、そのラックには幾つかの武器とアタッシュケースが置いてあった。
 私のそばに居た人、メイド長、紅魔館に仕える十六夜咲夜だ。
 そいつが私にアタッシュケースを渡して着るようにと指令して来たのを覚えている。
 そして武器を持たされたのも覚えている。
 一定時間が経ったら部屋の皆がどんどん輪切りされているように消えて行った。
 私の体も同じ。
 他の皆はこれを転送と呼んでいた。
 転送された先では変な敵と戦った。
 皆強い。咲夜も。
 他に居たので顔を覚えているのは、たぶん巫女の博麗霊夢だ。
 あいつは言うまでもなく強かった。
 ただ、その時戦っていたのが巫女の姿をしたような奴だった。
 皆は敵を星人と呼んだ。
 私達が返ると採点なる物が始まり、皆は高得点を取っていた。私0点。
 点数を稼いだ皆は百点と言う物を取っていたらしく、皆はメニューの『解放される』を選んでいた。
 皆百点で、私は0点。解放される事など無かった。
 次来たときは魔法使いの魔理沙が一緒だった。
 他にも緑の巫女とか給仕とかが一緒だったよ。
 皆弱い。
 だが魔理沙は違う。
 あいつは同じ、私と同じ目をしていた。
 星人倒せてなかったけど。
 次の同行者がどんな奴かは気になっていたけど、ある意味どうでも良い事だったかも知れない。
 どんな奴が来ても、死ねば一緒だから
 あと少しで、私も解放される。
 その時まで、死ぬわけにはいかない』

画面を一瞥し、フロッピーディスクを取り出すと、足で踏みつけて粉々に壊した。



数日後、魔理沙はスーツを着て、ガンツ部屋に転送されるのを待っていた。
そして来る硬直感。

高鳴る鼓動とともに来たのは一種の高揚感だった。
ある週の日曜。
「そういえば、ガンツオーサカが有ったような」
そう思いながら書店に向かい、店頭で見つけたオーサカを手に取りました。

1619円+税

(;^^)

再符の中身はその時千円。冊数を考えれば合計五千円を超す代物。
まずい、非常にまずい。甘く見すぎたかもしれません。
そんなこんなで大阪編はもう少し時間がかかりそうです。

どいうわけで、あばれんぼう、おこりんぼう星人編はこれでおしまいです。
原作通りいくならこんな簡単に死んでくれる相手では有りませんが、その辺の弱さは実写版並みです。
大仏さんもこんな簡単に死んでくれないはずです、確か。

あばれんぼう星人、一体。点数:3点。
おこりんぼう星人、一体。点数:3点。
仏像星人:九体。点数(こっちが勝手に決めた奴で)2点。
大仏星人:一体。点数:6点ぐらい。
千手観音を守る仏像星人、四体。一体4点ぐらい。
千手観音、一体。15点ぐらい。
点数の数え間違いが有ったら遠慮なく指摘して下さい。
その他の指摘もお待ちしております。

なお、次回以降の数回はオリジナル星人を使用致します。
それに付きまして、読者の方々からオリジナル星人を応募したいと思います。

テンプレ↓
名前「」
特徴「」
備考「」

それ以外の項目は自由で、勝手にいろいろと書いて下さるとありがたいです。
イメージが違った場合はごめんなさい。
なお、次回はこちらで考えた一体目のオリジナル星人です。

次回、幽香星人。
一割以下でもお楽しみに。
誤字脱字等の指摘も遠慮なくどうぞ。

長文失礼しました。
ヨーグルト
作品情報
作品集:
26
投稿日時:
2011/05/21 14:55:58
更新日時:
2011/05/21 14:55:58
分類
魔理沙
さなえ
その他
ガンツ
千手観音編
オリジナル星人募集
1. NutsIn先任曹長 ■2011/05/21 15:47:26
ふむ。既に何人かはお勤めを終えていたのですか。
謎の襲撃犯、参加者を集めるミッションを受けた者達か?
魔理沙は皆を生き返らせるとか、復讐とか考えているようですが、そのうち戦闘中毒になったりして。



ぼくのかんがえたせいじん

名前「さるの星人」
特徴「ちいきょー しめたい まる6」
好きな物「かゑろ こおい だいさゃん」
口癖「あたりってぼ、ちいきょーわ」
備考「チルノの姿をした星人。Hぶりもそっくり。だが、冷気攻撃は馬鹿にできない」

ってな具合でどうでしょうか?

そのうち、Vガンダムのアインラッドみたいなバイクも出るのかな?
では、続きを楽しみにしています。
2. ぼくのかんがえたせいじん ■2011/05/21 21:20:46
名前「たかむら星人」
特徴「最強 野獣 変態 リーゼント」
好きなもの 「後輩イジメ コスプレ」
備考 「むちゃくちゃつよい。熊を素手で殺す程強い。普段は只の変態だが、ライバルのブライアン星人に会うと豹変する。というか嫌いなものには大抵豹変する。」
3. ぼくががかんがえたせいじん ■2011/05/21 22:33:20
名前「かいむせいじん」
特徴「意味不明 キチガイ わけわかんない」
口癖「何だと そう」
備考「頭がおかしいせいじん。ただその未知の力で相手を混乱させる」
4. 名無し ■2011/05/22 02:59:18
名前「ゆっくり星人」
特徴「小さい、生首、うざい」
好きな物「あまあま」
口癖「ゆっくりしていってね!!」
備考「生首、とにかくうざい、デカい種類もいる、ゆっくりしていってね!!」
5. わたしがかんがえたせいじん ■2011/05/22 10:45:04
東方と全然関係なくてもいいのならこんなのはどうでしょう

名前「タワー星人」
特徴「あかい しろい かたい やわらかい」
口癖 「こんにちは」
概要「外来人が見れば“人間大の東京タワー”と形容するであろう外見。それにたがわぬ堅牢さと、たがう柔軟さを持つ。
   先端部で生物を突き刺し、自分の体を血で染めることを好むが、悪気はない。Xガンが効き辛く、武装によっては苦戦する。」

名前「てっとう星人」
特徴「ぎん かたい やわらかい」
口癖 「むしすんなごらあ」
概要「外来人が見れば“人間大の鉄塔”と形容するであろう外見。タワー星人よりも多い。肉体的特徴はタワー星人とほぼ同様。
   電撃を放ち、生物を痙攣させたり機械を故障させたりすることを好むが、悪気はない。」
6. 名無し ■2011/05/23 06:56:26
今までの読んで来て思ったのですがもうちょっと東方らしさを出してわどうですか?

能力を出すとか、妖怪の頑丈差を出すとか正直魔理沙以外があっけなさすぎる気がします
7. ヨーグルト ■2011/05/23 21:58:37
>NutsIn先任曹長様
襲った敵は黒服星人で、ウィキを見れば判ると思います。
あと、魔理沙は玄野ポジションなので、たぶんそうなるかと。
第五話に出すことにしました。

>2様
第五話に出すことにしました。

>3様
第六話に出すことにしました。

>4様
第六話に出すことにしました。
ちなみに、もう既に考えていました。

>5様
第七話に出すことにしました。

>7様
一応、ガンツのミッションでは能力を使わせないことにしていますが、百点とったら解放しようとも考えています。
頑丈さについては、ミッション初心者かどうかで分けています。私がもともと強いと思っている妖怪は強くなります。 
8. 名無し ■2011/07/20 07:19:35
ゆうかりんとか、雛とかいつのまにか描写なしで消えたけど
死んだの?
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