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『東方奇黒球 ~ mission6』 作者: ヨーグルト

東方奇黒球 ~ mission6

作品集: 27 投稿日時: 2011/07/02 06:49:51 更新日時: 2011/07/02 15:49:51
「おはようございます、朝のニュースの時間です」

外界。
幻想郷では『外の世界』と総称され、幻想郷より文化が高度に発達し、とても、人間が造り出したものとは思えない技術までもが存在する。
そのうちの技術のうちの一つ、テレビ。
今では外の世界に置いて、『情報伝達』『娯楽番組』などのことを知る為に重宝されている。
そんな中、ニュースが流れていた。

「昨晩未明、東京駅にて謎の破壊活動。例年、ここのとこ起きている破壊活動との関連性を考えていますが、関係性は不明」

紫はそのニュースを見て目を細めた。



東方奇黒球 ~ mission6



「危なかったですね」
「あの時は油断しただけなのよ。まさかスーツがあんなことになるとは思わなかったから」
「はあ(見放し)」

あのミッションが終わった後の次の日の昼、咲夜とレミリアは前回のミッションについて論争的なことをしていた。
前述の『あの時は油断した』とかそんなことで言い訳している。レミリアはボスの座を取り、異変解決に貢献する程の腕前も持ち、カリスマも有るとの評価が有り、決して弱いと言う訳ではない。そもそも、ミッション初心者なのだからあんなことになっても普通なのだ。

「槍とか使えればもっと良いんだけど」
「でしょうね」
「咲夜だって時を止めて戦えば良いじゃない」
「緊張感と達成感が無いですから」
「……ぅん」

あの後、外界での戦闘の後、ミッションでの被害はどのようになったかは咲夜達は知らないが、問題になっているのは当然だろう。だが、紫がガンツメンバー側を疑うことは無いだろう。少なくとも、メンバーはそう思っている。魔理沙を除いて。

「次のミッションは?」
「最近ペースが微妙に上がって来ましたから、もう少しで呼び出されるんじゃないでしょうか」
「じゃあ咲夜。今夜は練習に付き合ってくれないかしら」
「畏まりました、手加減致しません」
「ご勝手に」



砂利を踏みしめるたびに、あの、乾いたような音が風に揺れる木の葉とともに鳴る。それも気にするようなことではないのだが、魔理沙に取ってはこれ以上に赴き深いことは有るまい。最近はミッションばかりで少し、こういう音を聞くのも悪くないと思ったのだろう。箒ばかりを利用していたからと、魔理沙は自分に納得させた。
最近は文から、紫と霊夢だけでなく阿求と慧音の方も破壊活動の捜査に加わったと言う話も聞いた。
少しは警戒せねば、と、魔理沙は思うのであった。

博麗神社の石段を上がりきり、霊夢が居るかどうかを確認する。

ビュンッ! ビュンッ! ビュンッ!

「はっ……はっ……はっ……ぁぁぁ!」

魔理沙は唖然とし、口をぽかんと開けた。霊夢が珍しく、戦闘らしい修行を始めた。こんな光景を見たのは月に行ったとき以来である。

「おい霊夢、何やってんだよ」
「最! 近! 破壊! 活動! 多い! から! もし! 誰! かが! 破壊! し! にき! たら! 仕! 返す!」
「頼むから普通に喋ってくれ」
「I was shocking!!」
「……」

話にならないと思った魔理沙はそのままその場を立ち去った。

そんな姿を、霊夢は練習を止めて見つめ、目を細めた後に練習を再開するのであった。



それから数日後。
ガンツメンバーはいつものように集結し、スーツを装着すると、それぞれ武器を手に取り、いつでも戦えるように準備運動を始めた。ちなみに、準備運動をしているのは咲夜だけである。他のメンバーは咲夜を怪訝そうに見ているだけだった。

『そーれいっちにいさん!!』

咲夜が瞬時に運動を止め、ガンツに視線を注ぐ。

『てめえ達は今からこの方をヤッつけに行って下ちい』

『ゆっくり星人
 特徴:小さい 生首 うぢい
 好きなもの:あまあま
 口癖:ゆっくりしていってね!!』

今回のターゲットの顔を見た瞬間、文が盛大に吹き出した。その顔をジト目で椛が見ると、直ぐにいつもの営業用の顔に戻って冷静さを取り戻した。椛は溜め息を吐きながら、ガンツソードを手にとり、部屋の奥へと向かって行った。

「まぁ、今回は多かれ少なかれ、皆が点数とれると良いですね」

文がそんなことを呟く。

「このミッションで、活躍していない奴には点を取ってもらうぞ」
「うっ」

魔理沙のその言葉に、文はもちろん、点数の低い一輪と雲山、レミリアは図星だったので、表情を曇らせるやら冷や汗を垂らすなどした。その途端、転送が始まった。
それがきっかけとなり、点の低いメンバーはやる気を起こして気合いを入れた顔になった。
それに満足したのか、魔理沙は鼻を鳴らし、自分の武器を全て抱え、コントローラーも手に取った。

『行って下ちい
 00:30:00』



「今日は胸騒ぎがするな」
「そうですか?」

慧音の言葉を聞いて、阿求は怪訝そうな目で返した。
ここのところ、幻想郷の各地で破壊活動が行われ、その原因などは未だに不明である。そんなことが有れば皆を不安にするのは当然であるし、不用意に出かけられないのも当たり前であった。特に慧音としては、早く寺子屋に子どもたちを戻して楽しくしたいのである。

その時。

ドォォォン……

「?」
「今、何か音が」
「聞き間違いではないな」



ギョーン、ギョギョーン。
ドドォォォオオオオン!!

一輪と燐がXガンの引金を引くのと同時に、同じぐらいの大きさのゆっくり星人が上空からプレスを決めて来た。それを二人は反対の方向に避け、体を反転させてゆっくり星人の様子を窺った。

ババンッ!

「やった!」
「今のはどっちがやっつけたんですかね」
「関係ないでしょ」

ドォン!

笑顔で高揚している一輪と燐の二人の上から、また別のゆっくり星人が落下して来た。

「くっそ!」
「分かれるわよ!」

燐がXガンを上に構え、引金を適当に二、三回程引くと、一輪はそのまま真っすぐに走り抜け、燐は後ろにバック宙のように一回転しながら後退した。やがて、ゆっくり星人の体が地面に打ち付けられると、その体がゴムボールのように弛み、地面を大きく揺らした。
その数秒後。
バンッ!!
最大出力に切り替えて放たれたXガンの力は、ゆっくり星人の体を大きく爆砕した。

燐は小さくガッツポーズを取った。

少し離れた場所で、ルナサが雲山の上を飛び越えて、ゆっくり星人の攻撃を仕掛けていた。
それを悟ったのか、そのゆっくり星人は大きく空中に跳ね上がるように跳躍し、ルナサのソードによる攻撃を回避した。地面に着地し、膝をついたルナサはそのまま地面をゴロゴロと速く転がり、落ちて来たゆっくり星人のプレスを回避した。
雲山がそこからアシストに回り、ゆっくり星人の体を自分の拳で打ち付けた。
殴った瞬間、その星人の顔が苦痛で歪んでいるのが判った。当たり前のことだがそんなことは関係なく、雲山は尚も拳による応酬を続ける。ルナサは一定の距離を保ち、ショットガンをゆっくり星人に向け、外さないようにロックオンをする。

「今だ!」

ギョォォォォォン
雲山が少しだけ後ろに下がったのを確認し、ルナサは外しようも無い位置からショットガンの引金を引いた。その位置から前方に走り、ある程度の距離となったところで前に回り、首だけを後ろに向けた。その先で、十体ぐらいのゆっくり星人が落下してきていた。
ルナサと雲山はお互いに顔を向き合わせ、頷き合った。

ザシュッ!

「ふっ!」
「魔理沙さん! 横!」
「うおっ!」

妖夢のその声がした瞬間、魔理沙のすぐ横をゆっくり星人が転がって通り過ぎた。そのゆっくり星人の顔は攻撃が外れた瞬間、舌打ちでもしながら残念そうな顔をしていた。

「あー、近距離は妖夢に任せた」
「えっ」

魔理沙はそう言うとアサルトを構え、転がって行ったゆっくり星人に向かって慈悲無しに容赦なく引金を引いた。
連続する間延びした銃声とともに、銃身に繋がるX状のユニットからは青白い光が連続で点された。手ぶれが無い分、斜線は自分でずらさなければならない。でが相手は避ける気もないようなので、ずらす必要も無い。
やがて、弾が出なくなる。
魔理沙は一旦アサルトをホルスターに収め(ショットガン程の大きさは有るが、結構細めなのでホルスターに収められる。ただし、動きを大分妨げる)、代わりにXガンを手に取った。

「これでっ!」

妖夢の気合一閃。
切り捨てられたゆっくり星人の身体はゴミのように転がる。

「十五体!!」
「えっ、もう!? 私はまだ六体……」

Xガンので星人を撃ちながらも、魔理沙は他のメンバーが倒した星人の数が気になり始める。
構わなくても良いと言うのに。

「妖夢と咲夜と雲山は近接戦闘かな。だとしたら鈴仙は遠距離専門ってとこか」

魔理沙と妖夢は最初から共闘しているようなもので、既に周りにはゆっくり星人の死体がゴロゴロしていて、非常によろしくない。
死体が溜まれば星人の襲ってくる回数も少なくなると考えている魔理沙は、少しずつ力を押さえていった。

「もう襲ってこないんじゃね?」
「……そのようですね」

妖夢は刀を下げ、死体を飛び越えて他のところに向かう。もちろん、魔理沙はその後を追う。



レミリアは銃は収め、代わりにガンツソードを使うと思いきや、己の手で闘っていた。
武器を使うより自分の手で闘う方がなんか良いと言う。もちろん、武器を使うことも有るが、目の前の星人と言う存在はあまりにも弱いと認識した為であるから、素手である。
今、レミリアの手によって殺された星人はまだ三体。
一輪や空、アリスなどはもう既に十体越えしている。

「レミリア、武器使おうよw」
「素手だと多く倒せる訳無いでしょww」
「いや、汚嬢様だからかもwww」
「もう、五月蝿いわよ!! 語尾に草を生やさないで!!」
「……」

一輪はYガンとXガンで、空はショットガンのみで、アリスはXガンとガンツソードで何とか闘っている。レミリアは一応Xガンを持って来ているが、使用していない。
油断していたレミリアの上からゆっくり星人が一体。

「あ、轢かれたw」
「轢かれたんじゃない、潰されたんだwww」
「いや、笑ってないで助けようよ」
「その必要は無いわ!!」

レミリアがゆっくり星人の胴体の下の方から両手で豪快に引き裂き、二つに分かれた体を一輪達の方向に投げつけた。
反対側の方向からは咲夜の「まだ四体ですかw」と言う声が聞こえて来る。
咲夜も既十体越えをしている。
新しい武器、「ガンツナイフ」を使用、ガンツソードも併用している訳で、ぬかりが無い.
ガンツナイフは、咲夜が使用しているナイフに少し似ているが、全体的に黒く、刀身は微妙に長い。コンクリートをも切り裂く程に切れ味で、付属のホルスターっぽいのが付いている。そのホルスターっぽいのには左右で五本ずつ入る仕組みとなっていて、投げ終わると自動で装着される。原理は不明。

「咲夜はいいわよ、腕前有るし」
「……」
「あっ!!」

レミリアは素っ頓狂な声を上げた。
その声に反応し、近くに居た皆がその声の方向に振り向く。
そして、レミリアの視線の先には阿求と慧音が居たのだ。二人とも無防備である。
そして、そのすぐ近くにゆっくり星人が二体。

「殺される!?」
「今まで無かったと思うけど……でも被害は有るかも」
「ど畜生!!」

ホルスターからXガンを取り出し、レミリアの咆哮が響くと同時に、青白い閃光が迸った。それは一度ならず何度も。
その時だけレミリアの中に芽生えた、正義心であった。



「……」

やがて戦闘が終わると、全員は腰を下ろしてガンツの採点を待った。
今回は、各星人の個体はそれほど強くなかったが、総数的に苦戦を強いた。それでも、歴戦のメンバーに加えての戦闘は頼もしく、大分良い進みであった。
そして、乾いたベルの音。

『それぢはちいてんをはじぬる』

『まりさ
 42てん
 TOTAL94てん
 あと6てんでおわり』

『れいせん
 49てん
 TOTAL96てん
 あと4てんでおわり』

『あや
 35てん
 TOTA44てん
 あと56てんでおわり』

『もみじ
 35
 TOTAL81てん
 あと19てんでおわり』

『るなさ
 56てん
 TOTAL110てん
 100点めにゅ〜から選んで下ちい』

「……!」

その表示を見た瞬間、ルナサの顔が強張るのが判った。
自分は今まで逃げて来たのも同じような身。
メルランとリリカは既に、ルナサより先にミッションで死亡している。
本人は内心、半分ぐらいは解放されたいと思っていて、二人の妹を復活させるかどうかは迷っているのである。

「……」

ルナサは顔を床に向けたまま黙り込んでいる。

『100点めにゅ〜

 1、記憶を消されて解放される

 2、より強い武器が与えられる

 3、好きな人を生き返らせる』

選択を催促するように、メニューが表示される。
それから、ルナサはようやくのことで口を開いた。

「3番を……好きな人を、生き返らせたいです……!」

その言葉を聞き入れ、3番のメニューだけが表示されたかと思うと、代わりに今までのミッションで死んだ人たちの顔がガンツに表示された。
その数はあまりにも多すぎる。

「こ、こんなに死んでるのかよ」

魔理沙は言葉を漏らす。

「にとりも見て来たのよ、たくさん人が死んでいくのを。中でも闘い抜いて来た人は解放されたけど」
「……」

ルナサは死亡者リストの中の内の一つに指を指した。

「私の、妹を……メルランを生き返らせて下さい……!!」

それと同時に、ルナサの所持点がどんどん減っていき、やがては10点のみになった。
そして、ガンツから何本ものビームが伸びた。

「……」

そのビームは縦横無尽に絵を描くように動き、やがては人の形らしきものを形成していった。
数秒もすると、ガンツメンバーからも分かるように、メルランの頭が出て来た。

「あれ、私?」
「やった……メルラン……!」
「え、お姉?」

暫くすると、メルランの体がほどなくして完成した。

「生き返ってもらったのよ」
「もともと死んでるのも同じなのに」
「細かいことは気にしない」

二人でいろいろと言い合っているが、ルナサは既に泣き出していた。

『りん
 21てん
 TOTAL63てん
 あと37てんでおわり』

『ようむ
 112てん
 TOTAL182てん
 100点めにゅ〜から選んで下ちい』

「妖夢さん、気合入ってますね」
「ガンツ、3番」
「は?」

文が茶化すように何か言おうとしていたが、それを遮るように妖夢がメニューの3番を選択した。
そして死亡者リストが表示されると、リリカの顔を指した。
妖夢の所持点がたちまちに減り、82点になった。あまりにも多すぎる。

ビームがリリカの体を作り出し、一分も過ぎれば完全な体となった。

「……」

抱き合っているルナサとリリカを尻目に、メルランが前に出た。

「何で?」
「いや、ほら、姉妹仲良くしてほしいですし」

『さくや
 84てん
 TOTA153てん
 100点めにゅ〜から選んで下ちい』

咲夜もまた、同じように3番を選択、指を指したのは小悪魔だった。
小悪魔の体が形成され、同じように復活する。
本人は自分が復活したことが不可解で、未だに自分の体をぺたぺた触ったりしていた。


『ありす
 28てん
 TOTAL45てん
 あと55てんでおわり』

『うつほ
 49てん
 TOTAL83てん
 あと17てんでおわり』

『いちりん
 56てん
 TOTAL56てん
 あと44てんでおわり』

『うんざん
 14てん
 TOTAL19てん
 あと11てんでおわり』

『れみりあ
 35
 TOTAL35てん
 あと65てんでおわり』

「フラン……」

レミリアは小さく呟き、次のミッションこそ自分の妹を復活させることを心に誓った。



「妹紅!!」
「あ、大丈夫だったか!?」

次の日の早朝、野次馬の集まる人里は当たり前のように騒然としていた。
今回のミッションで被害を受けたのは人里であったが、偶然にも大怪我をしたりした人などは一人も居なかった。
人ごみの中で、家を破壊されて残念そうにしている人や、ただ呆然としていたりする人がいる。
阿求は慧音と妹紅の側に来た。

「阿求も、死んでなくてよかったな」
「ええ、本当に」
「遂に人里に被害か? 避難させないとまずいんじゃ」
「避難させたとして、その受け入れ先が無い」

ほどなくして霊夢が来る。

「人里が騒がしいから来てみたけど」
「ああ、霊夢、見ての通りだ」
「本当に困るわね。私の神社の修復、守矢神社も命蓮寺も修復作業。湖は汚くなるわ何やらで忙しいわね。力の強い萃香と勇儀は居なくなるし」
「もう猫の手でも借りたいな」
「橙がいないんだけど」
「そう言う意味ではない」



「あっ!」

パチュリーは嬉しそうに駆け出し、目の前に居る人物に思いっきり抱きついた。
抱きつかれた本人は苦しそうである。

「小悪魔、今までどこに行ってたのよ!」
「すいません……ちょっと野暮用で……」
「……」

小悪魔は咲夜に顔を向けた。
咲夜はその目が何が言いたいのかを察し、口パクだけで小悪魔に伝えた。

(次は美鈴か……)

踵を返し、咲夜は厨房に向かった。



スーツを着込んだ魔理沙は廃墟に向かい、プリズムリバー三姉妹と雑談をしていた。
ガンツもミッションについての話も有るが、それ以外の話が九割を占めていた。

「それじゃあ、かれこれ数ヶ月は死んでいたんだね」
「そうだ」
「死んだ実感わかないわね、痛いけど」
「ははは」

魔理沙は部屋を見回し、それから三姉妹に向き直った。

「魔理沙は解放を選ばないの?」
「まだだな。最後まで戦って星人を全滅でもさせようと思ってるぜ。戦い足りない」
「……中毒になっても知らない」
「ふん。お前らは解放されたいんじゃねえの?」
「……魔理沙が解放を選ばないのなら、私も解放を選ばない。戦い続ける」

ルナサは無表情でそう答える。

「勝手だけどよ、他の二人はどうするんだ?」
「……私が守る」
「二人に訊いてるんだ」

顔を向けられたリリカとメルランは少しだけドキッとする。
しかし、直ぐに表情を戻す。

「お姉ちゃんがそう言うし、私も最後まで戦うよ」
「私も」

その言葉に、魔理沙は一瞬だけ表情を曇らせた。
何てやつらだ。

「もう何も言わねえよ。一緒に戦うか」
「……うん」



「妖夢〜! お腹が空いたわ〜!! お昼ぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「あと三分だけ待って下さい」
「分かったわ!! 三分間待ってやる!!」

幽々子の催促に苦笑しながらも、妖夢は包丁を振るっている。
あとは盛りつけであった。

「あら」
「何ですか?」
「葉っぱが口に入っちゃったわ。いいや、食べちゃえ」
「吐き出して下さい」
「じゃあ妖夢、口移し〜」
「絶対嫌です」

完成した料理をテーブルに置く。
それと同時に幽々子がバック宙の要領でテーブルの前の座布団に着地し、捉えられない速さでフォークとナイフを構えた。

「それじゃあ、いっただきむわあああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああああす!!」
「それ、箸で食べるんですけど」
「ぐるうううううおおおおぉぉぉおおおわぁぁああああああああああッッッッッッッッッ!!」

二人の居る居間に、頭を打ち付ける音が響いた。



「これじゃあハッピーエンドじゃないぜ」
「魔理沙さん気合入ってますね」
「当然だ」

スーツ姿のままで腕組みをし、どや顔をしている魔理沙は非常によろしくない。
しかし、他のガンツメンバー、特にメルランとリリカ、そして小悪魔を含めたメンバーは心の底から笑っている。

「次の星人はパパッと倒しちまうか」
「そーですね」

『そーれいっちにいさん!』

『てめえ達は今からこの方をヤッつけに行って下ちい』

『かいむ星人
 特徴:意味不明 きさがい わけわかんない
 口癖:何だと そう』

ガンツの左右と後ろからラックが飛び出し、メンバー全員に戦闘の合図を送る。
そして、転送。

『行って下ちい
 00:25:00』



「今回はやけに急ぐな」

魔理沙はそんなことを呟きながら道を歩く。
転送され終わった後、他のメンバーと会話しようとしたが、周りには誰も居なかった。

現在、魔法の森の中だと思ったがそうではなく、今魔理沙が居るのは博麗神社の近くの森だった。
鉄塔の在る広場に来ていた。

「敵は何体だ?」

コントローラーを見てもそれらしい反応がない。

「おーい!」
「あ、こっちでしたか!」

魔理沙の後ろから文と椛の姿が見えた。
二人は何処にも傷を負っておらず、これといったことは無かったようだ。

「お前ら、星人と遭遇していないのか?」
「魔理沙さんこそ、していないんですか?」
「してねえよ。あー、どんどん時間が過ぎてくぜ」

もう既に五分は経過したであろう。未だにこの三人は星人と遭遇していない上に、他のメンバーが星人と戦闘する場合の騒音も聞こえない。
むしろ不気味であった。

「あ、この広場に?」

一分も経つと、咲夜を中心としたガンツメンバーは鉄塔の在る広場に集まっていた。
魔理沙と文と椛以外の全員も星人と遭遇していないようだ。
鈴仙が前に出る。

「コントローラー、見せてもらっても良いですか?」
「いいけど、敵はいないぜ?」
「居るんじゃないでしょうか……気配だけはしますし」

メンバーはスーツの着心地と感触を確かめている。
今までのミッションなら直ぐに戦闘に入るか、一分程度すれば既に交戦状態であったと言うのに、今回はそれが無い。もう少しで敵は襲って来るだろうと予想した。

「あ、魔理沙さん。コントローラーの端っこに敵らしき反応がありますよ」
「何ぃ? あ、本当だ」
「一体だけですか? 物足りないですね」

鈴仙はYガンを反応のある方向に向け、何時敵が来ても良いように身構えた。
魔理沙はアサルトを、咲夜はナイフとソード、妖夢は二本のガンツソードを構え、プリズムリバーの姉妹達は仲良くXガンを構えた。文はショットガンを、椛はガンツソードを。アリスは両手にXガン、空はショットガン、燐と一輪はYガンを構え、レミリアは大人しくソードを手に取った。雲山は素手である。

「この反応、もう数メートル手前ですか?」

鈴仙はYガンを構えながらそう言う。念の為に上の注意をしてみたが、敵は見当たらない。
そこで、咲夜が武器を下ろした。

「恐らく、敵はステルスモードじゃないのかしら?」
「なるほど……うろぉっっ!!?」

その瞬間、メンバー全員に謎の衝撃、不可視の力が迸り、メンバー達の体に痺れの感覚を刻み込んだ。やがて、雲山と文の体から弱めの電流が走った。

「うっ!?」
「何だこれは?!(←雲山の心の声)」
「やろっ!」

魔理沙はコントローラーを操作し、透明化を図った。
しかし、透明になれない。

「くっ、何故だ!!」
「きっと、今目の前に居る透明化した星人が、そういった技を発動してるんじゃ……うわっ!!」

魔理沙の横で椛が大きく吹っ飛ぶ。
どうやら足下で軽い爆発が有ったようで、その衝撃の所為らしい。

キュィィィィィィィィィィィィィィィィィィ

「はっ?!」

数十秒後。
その場に居るメンバーのスーツの各リング状の部分からゲル状の液体が漏れだした。

「この野郎ッ!!」
「あっ、咲夜さんッ! 危ないです!」

咲夜はソードを前に突き出して、星人が居るであろう方向に走り出した。
その瞬間に咲夜の体が宙に浮いた。
能力ではない。
ほんの数秒後には、咲夜の体が重力で潰されたように地面に叩き付けられた。

「撃て撃て撃てえええええぇえええぇぇぇぇえええええッ!!」

メンバーが一斉にXガンやらショットガンやらを構え、前方に闇雲に乱射する。
間延びした方向が不定期に響き渡り、辺りの木々を爆砕した。

そんな乱れる連続する爆発の中で、何者かの血が飛び散ったのが分かった。



「はっ……ち、くそぅっ……」

ガンツ部屋に転送されたメンバーは全員息を上げ、力を抜いた瞬間に床に座り込んでしまった。
先程の戦闘、かいむ星人は常時ステルスモードであったから、簡単に姿を捉えることは出来ないようだ。だがその戦闘も終わったことで、そんなことは関係なかった。

『それぢはちいてんをはぢぬる』

「だ、誰が倒したんだ……」

『まりさ
 0てんてん
 TOTAL94てん はずれー
 あと6てんでおわり』

『れいせん
 0てん これまたはずれ〜
 TOTAL96てん
 あと4てんでおわり』

『あや
 0てん おそっ
 TOTA44てん
 あと56てんでおわり』

『もみじ
 0てん おそいわ
 TOTAL81てん
 あと19てんでおわり』

『るなさ
 0てん てめえもうごこう
 TOTAL10てん
 あと90てんでおわり』

『りん
 0てん むだのないうごきだったよ
 TOTAL63てん
 あと37てんでおわり』

『ようむ
 0てん むだすぎる
 TOTAL82てん
 あと18てんでおわり』

『さくや
 0てん あほすぎる
 TOTA53てん
 100点めにゅ〜から選んで下ちい』

『ありす
 0てん よわい
 TOTAL45てん
 あと55てんでおわり』

『うつほ
 0てん すこしははたらけ
 TOTAL83てん
 あと17てんでおわり』

『いちりん
 0てん もっといそげ
 TOTAL56てん
 あと44てんでおわり』

『うんざん
 0てん うごこうよ
 TOTAL19てん
 あと11てんでおわり』

『れみりあ
 20てん
 TOTAL55てん
 あと45てんでおわり』

『めるらん
 0てん よわいよわい
 TOTAL0てん
 あと100てんでおわり』

『りりか
 0てん よわすぎる
 TOTAL0てん
 あと100てんでおわり』

『こあくま
 0てん ふっかつおめでとう
 TOTAL0てん
 あと100てんでおわり』

「……」

レミリアの目標はまず、フランドールを生き返らせること。
それに向けて一歩前進、また一歩前進。
残り45点。



それから次のミッションに呼ばれたのは四日後だった。



「文さん、最近ペースが上がっていませんか?」
「椛の言う通りよね」

文と椛はスーツに着替えながら、最近のガンツミッションについて話し合っていた。
前回のミッションは四日前、前々回なら今日を入れてもそれほど経っていない。星人の出現率が高くなっているのだろうか。

「とりあえずはこの星人を倒せば一段落よね」

珍しく、レミリアが活気が入った目で言った。

『てめえ達は今からこの方をヤッつけに行って下ちい』

そのメッセージと入れ替わりに、今回のミッションのターゲットが表示された。

『シヴァ星人
 特徴:神様 つよい あつい
 好きなもの:信仰心 強い人』

文はあっと声を上げ、この星人をどこかで見かけたなと心の中でそう言った。
この星人のもとはおそらく、神である『シヴァ神』であろう。文の記憶の中では、この神様は多彩な炎を使う、という具合である。

「何、天狗。そんなの見てビビってんの?」
「なっ」

レミリアが挑発気味に、文に言う。

「レミリアさんなんか、スーツ破壊されて逃げ惑っていたじゃないですか」
「……( #^ω^)」

いがみ合う二人を無視するように、転送が始まった。

『行って下ちい
 00:40:00』



「咲夜ー」

暗闇に包まれ、少し先なら普通の人には見えなくなる程の時間帯。
パチュリーは紅魔館中を歩き回り、少量の紅茶欲しさに咲夜をずっと探していた。今、紅魔館にはお仕えの妖精メイドと小悪魔しかいない。レミリアから咲夜の居場所を聞き出そうとしたが、レミリアの姿すら見つからないのだ。

「小悪魔、咲夜……どうしたの?」
「分かりません。それより紅茶、何にしますか?」
「任せる」

小悪魔の足が暗がりの廊下に響く中、パチュリーは廊下の窓から魔法の森の方向を見つめ、溜め息を吐いた。



またか、またなのか。
メンバー全員が銃を下ろし、転送された場所を何度も確認した。
転送された場所は命蓮寺。
今回のターゲットはシヴァと言って、暴風雨神ルドラを前身としたヒンドゥー教の3最高神の一柱である。二本では湿婆や大自在天とも呼ばれるが、原点を考えると、日本にはあまり関係ないとも言えるかも知れない。一概ではないが、少なくとも幻想郷には関係を持たないはずである。ナタラージャとも呼ばれることが有る。

「戦場なんて関係ないじゃない」

レミリアが前に出て、ガンツソードを振り回しながらそう言った。
しかし、文は反発する。

「ですが、紫さん曰く大切な文化でもある外の世界はいかに……」
「それもどうでも良いわよ。それより、目の前の奴、倒す自身有るでしょ?」

レミリアが顎で前を指し、文を含めた全員に注意を促す。
そう、メンバーの前には神々しい存在、星人では有るのだが、シヴァが熱を帯びながら仁王立ちしていた。
シヴァは炎を司る神でもある。逆鱗に触れればその劫火で焼き尽くされてもおかしくない。
この星人を、如何に倒すかが重要であった。
目の前のシヴァはバンガロールに在るような大きさは無く、大きさはメンバー達を上回る大きさで、大体二メートル半と言ったところである。Xガンの火力であれば十分応戦できるであろうが、一発で仕留めなければ苦戦を強いられるであろう。
そんな状況を考察しているのかいないのか、レミリアは目の前の敵を倒すことだけを考えていた。
相手がどれだけ強かろうと関係ないのだ。

「あんたら下がってていいわよ。どうせ今回はこいつだけでしょ」
「だが、相手は!!」
「何であろうと……」

レミリアがXガンとガンツソードを掲げたのに応じたのか、シヴァは弓を手に取り、矢を番えた。

「永琳の真似ならあんたは勝てないわよ」

レミリアの右腕に握られている銃のユニットがX状に開き、引金を引くのと同時にユニットから青白い光が点った。
それが始まり。
シヴァの姿が上空に急浮上し、Xガンによる攻撃を回避した。シヴァは空中に浮いた体勢から弓を地上のレミリアに向け、矢を目に見えぬ速さで連続で何本も放った。

「くッ!」

後ろに下がり、連続で降り注ぐ矢を躱し、地面に突き刺さったそれを見やってレミリアはXガンを上空に向けて連射する。シヴァはそれを躱してレミリアに急降下する。
レミリアが横にステップすると、元いた位置にシヴァが着地した。ソードを横に振り抜き、レミリアはシヴァの持つ弓を一刀両断する。シヴァはそれを弓で受け止める。しかし、コンクリートをも容易に切断するソードの刃はシヴァの弓をいとも簡単に破壊した。

「何よ! 案外大したことは……ッ!?」

更なる攻撃を仕掛けようとしたレミリアの足下から火が噴き出し、それが襲いかかった。レミリアはそれを飛び退いて避ける。
レミリアは視線を前に戻し、シヴァを見た。
シヴァは足下から炎を際限なく吹き出し、キャンプファイヤーのように燃え上がらせた。
愛宕様の火程ではないだろう。
レミリアはそう思った。
しかしそうやってレミリアが油断した瞬間、シヴァの額に有る第三の目が見開かれ、眩い閃光がレミリアの視界を包んだ。

「うッ!」
「レミリアッ! 塞ぐなッ!」
「何ッ?!」

その瞬間、レミリアの周りを火の玉とも呼べる仄かな火が包み込み始めた。
その火の粉はレミリアの周りを回り続けるにつれ、形を成していく。
少しすると足下から火が走り始め、一瞬で燃え上がったかと思うと、瞬く間にレミリアを包み込むように火柱を発生させた。そんなレミリアには、シヴァの顔が少しだけ笑っているように見えた。
もう遅い。
シヴァが発生させた火柱は一瞬のうちに業火に変わり、レミリアを焼き尽くし始めた。

「うわああああぁぁぁああぁぁああああああッ!!」
「レミリアぁぁァァァッ! 今すぐそこから離れろッ!!」

メンバーの声は届かない。
スーツの力をも無視するその業火は数秒も経たないうちにレミリアを焼き鳥状態にし、スーツも本人も丸焼きにした。
その燃える体が地面に横たわると、包み込んでいた炎は蝋燭の火のように一瞬で消えた。

「お嬢様ッ!」
「この野郎ッ!」

駆け出した咲夜と魔理沙を足止めするように、その足下から火が走り始める。
しかし、それを無視するように走る二人は、自分を捕らえようとする炎を振り切り、シヴァとの距離を詰めた。

「おいッ! 咲夜ッ! 後ろにッ!!」
「分かってます!!」

魔理沙はアサルトを前に突き出したまま叫び、シヴァの腹に銃を押し付けた。
その間に咲夜はシヴァの後ろに回り込み、背中からソードを突き刺した。その刃がシヴァの腹を貫くと、魔理沙の顔面に大量の血を吹き付けた。その血を浴びながら魔理沙は銃の引金を引きっぱなしにした。咲夜はシヴァの腹を貫かせたソードを上に動かし、シヴァの頭から反らすように肩を切り割いた。
それと同時にシヴァの腹が爆砕される。だがこれだけではこの星人を倒せない。
その場に居る全員はそう直感している。

「破壊しないで捕らえなくてはッ!」
「劫火で焼き尽くされてしまうわッ!!」
「解らないですよッ」

鈴仙は両手に構えたYガンの引金を連続で引く。
六つのアンカーがシヴァを一瞬のうちに絡めとる。やがてはそれらがシヴァを地面に固定する。
鈴仙はそれを確認すると、Yガンの引金をもう一度引き、シヴァを転送させた。



「レミリアはッ?」
「駄目です…………もう息がしません……心拍も、無しと言って良いです」

鈴仙はレミリアから離れてそう告げた。
メンバー全員の顔に影が降り、気分を沈ませる。中でも一番沈んだのは咲夜であるが、一番明るく見せようとしたのも咲夜であった。

「転送は?」

一輪が思い出したように言う。
他のメンバーも転送を思い出し、自分の体が転送されていないかとか、他の人は転送されていないかを確認する。
しかし、誰一人転送されていない。

「まだ、星人が居る?」

妖夢が言った。
鈴仙はその発言に対してかぶりを振るが、妖夢はむしろ賛同した。

「今までなら倒せば転送されるはずだったから」
「てことは……」

魔理沙は後ろを振り向き、笑みに似たものを零した。
目の前には新たな星人。
そいつは前身を金色で輝かせている。

「こいつは……ッ!!」
「魔理沙さんッ!」

魔理沙と小悪魔の顔がみるみる蒼白になる。
目の前の星人……前身を金色で輝かせている目の前の奴は、魔理沙が以前に戦った千手観音に似ている。
いや、違う。
目の前のこいつは千手観音そのままだ。違うのは持っている武器が全て金色の刀であると言うこと。

「千手は倒したんじゃ!」
「知るかよッ! あの後こいつがどうなったかは知らねえぜッ!?」
「……レミリアさん以外なら、全員無事。ソードも所持している。ならば」

妖夢は両手のソードから刃を出し、前に出た。魔理沙もソードを構える。咲夜はナイフを両手の指で挟むように持ち、鈴仙はYガンの代わりにショットガンを構えた。小悪魔は前のときと同じようにXガンを掲げ、それにつられるように他のメンバーもXガンを掲げる。
千手観音は一体。
一人も死なせないのは、簡単とは言えない。

「よう、剣の腕前なら任せるぜ?」
「私を誰だと思ってるんですか」

『何故だ?』

「!?」
「こいつ、喋るのか?!」

千手観音はゆっくりとメンバーに歩み寄りながら喋った。
しかし、武器を下ろすものは一人もいない。

ギョーン

「怯むなッ!!」

千手の言葉を遮るように、魔理沙の怒号と銃声が鳴り響いた。
引金を引いたのは律儀にも一回。だがこれは挑発でもある。魔理沙がこのまま引金を引き続けて、そのまま爆砕させて殺すと言うのもアリでは有ったが、そうしてはいられない。もしこのまま千手が剣で反撃し、メンバーを抹殺すると考えると、このまま一方的に攻撃を仕掛けられない。
千手の持っていた一本の件が爆砕されたのと同時に、震えていた手を気で押さえつけ、妖夢と鈴仙は武器を手に取った。

『半人前の奴が、何故戦う』
「くうぅっ!」

妖夢の日本の刀と千手の無数の刀が交じり合い、金属同士がぶつかる音が鳴る。

『お前は一度、逃げ出したに違いない』

ギィィィィィン!!

『そこの金髪とは違う』

ヂィィィン! ガァンッ!!

『お前が戦うべきは自分自身だ、私でもない』

ガシィィ!!

右手の刀が千手に弾かれる。

『闘いを先に仕掛けたのはお前らだ。お前らは闘いを止めることが出来ない』
「はあぁッ……ああぁッ……」
『私たちは殺された同胞の分、お前達に復讐する。邪魔をするな』
「ッ!!」

千手の無数の手が蠢く蟲の様に、妖夢に斬撃を与える。
妖夢はそれを一本の刀で何とか受け止めているが、次第に劣勢となっていく。
隙が出来る。
その隙を見逃す訳がなく、千手の無数の刀が妖夢の腹を連続で突き刺した。千手は刀に刺した妖夢の刀を差し上げ、そのまま魔理沙達の方向に放り投げた。ゴミを扱う様に。

「よくもッ!」

鈴仙が両手のYガンのトリガーを千手に定めて連続で引いた。
捕まえられるはずが無いと知って。
銃口から放たれた二組三つのアンカーは射線的に千手を捕らえたが、千手の高速な剣捌きによってワイヤーは断ち切られてしまった。
何も効かないのか。
何も、出来ないのか。
そんな言葉がメンバー達の頭に過る。
主力である魔理沙、妖夢、鈴仙、咲夜は相互程ではないが、星人相手には戦える程の力はある。
だが、他のメンバーはどうだろうか。
目の前の敵に怯えているのみで、文ですら攻撃が仕掛けられない。
というより、仕掛けることが出来ない。

「はあぁっ……」

千手につかみかかっていた主力であるメンバー達は立ち上がったが、それぞれのスーツは全て機能を失っており、リング状の部分から液体が流れ出していた。スーツの力がなくなったと言うことでは有るが、言い換えれば千手に対して無力となった、と言う方が正しい。魔理沙は肩が抉れる様に切り裂かれ、妖夢の白い髪は紅く染まり魔理沙と同じような傷を。咲夜の二つの三つ編みは切り取られ、鈴仙の耳の片方が半分以上無くなっている。

「じ、時間が……ッ!!」
「まだ足りるッ……うぐうううぅぅうゥゥゥゥッ」

踏み出した妖夢の腹を一本の刀が貫いた。
その瞬間、メンバー達の頭から先が無くなり始めた。転送されている。

「ま、まだ星人が!」
「倒せて……ない…ッ………!!」



ジリリリリリリリリリリリリリリリ

乾いたベルが鳴り止み、終息が訪れる。
先程の闘いで大ダメージを負ったメンバーの傷は全て完全に修復されており、一番のダメージを負った妖夢でさえ完治している。
レミリアを除いて。

『それぢはちいてんをはじぬる』

『まりさ
 0てんてん
 TOTAL94てん ぼろぼろ
 あと6てんでおわり』

『れいせん
 32
 TOTAL128てん
 100点めにゅ〜から選んで下ちい』

「あ」

鈴仙の目が見開かれる。

「これで、レミリアさんを復活させれば」

『100点めにゅ〜

 1、記憶を消されて解放される

 2、より強力な武器が与えられる』

「え」
「はぁ?」

メンバーは唖然とする。
3番のメニューがガンツに表示されていない。表示されない。

「レミリアさんですよっ!! レミリアさんを復活させてと言ってるんです!!」

『100点めにゅ〜

 1、記憶を消されて解放される

 2、より強力な武器が与えられる』

「くっそおおぉぉぉおオオオオオ!!!」

ガンッ!!

「さ、咲夜さん」
「お嬢様を……妹様を返してよオオオオオォォォォオオォォォオおおおおおおッ!!」

『100点めにゅ〜

 1、記憶を消されて解放される

 2、より強力な武器が与えられる』

「ガンツ……3番は?」

『100点めにゅ〜

 1、記憶を消されて解放される

 2、より強力な武器が与えられる』

「……いえ、いいです。新しい武器をお願いします」



メンバーが全員転送され、静寂に返ったそこで、千手はレミリアの死体を踏み砕いてその場から消える様に姿をくらました。



『あや
 0てん うすのろ
 TOTA44てん
 あと56てんでおわり』

『もみじ
 0てん かす
 TOTAL81てん
 あと19てんでおわり』

『るなさ
 0てん ごみ
 TOTAL10てん
 あと90てんでおわり』

『りん
 0てん ちきん
 TOTAL63てん
 あと37てんでおわり』

『ようむ
 0てん へぼ
 TOTAL82てん
 あと18てんでおわり』

『さくや
 0てん まぬけ
 TOTA53てん
 100点めにゅ〜から選んで下ちい』

『ありす
 0てん にーと
 TOTAL45てん
 あと55てんでおわり』

『うつほ
 0てん たたかえ
 TOTAL83てん
 あと17てんでおわり』

『いちりん
 0てん たすけてあげろ
 TOTAL56てん
 あと44てんでおわり』

『うんざん
 0てん ろんがいです 
 TOTAL19てん
 あと81てんでおわり』

『めるらん
 0てん なにもできないでおわり
 TOTAL0てん
 あと100てんでおわり』

『りりか
 0てん むりょく
 TOTAL0てん
 あと100てんでおわり』

『こあくま
 0てん えーっ
 TOTAL0てん
 あと100てんでおわり』



「咲夜様……最近元気が無いですね……」
「何かあったのかしら」
「元気が無いのは四日前からだったよね」

紅魔館に仕えるメイド達はそんな話をしながら、廊下の掃除をしていた。
誰がいようと居なかろうと、やらなくてはいけないことだ。

「あっ」

一人の妖精メイドがバケツに足を引っかけ、そのバケツを倒してしまった。中の水が流れ出し、床を濡らしてしまう。

「どうかしたの?」
「咲夜さん……」

咲夜が現れる。
その姿を見た瞬間、バケツを倒したメイドが急いで床を拭きだした。

「お見苦しいところを……今すぐ元に戻します!」
「戻せるわけないのに」
「え?」
「何でも無いわよ。頑張って」

踵を返して、パチュリーと小悪魔のところに向かった咲夜の後ろ姿を見ながら、妖精メイド達は互いに顔を見合わせた。
誰も、言葉を発しなかった。





















































「もう、闘うしか無いのよ」
レミリア、シヴァ星人戦で焼かれ、焼死。

待っては無いと思いますがようやく新作です。
そろそろカタストロフィに入ると思います。まだ早いですが。
シヴァについてはウィキをどうぞ。
では、次回で。
ヨーグルト
作品情報
作品集:
27
投稿日時:
2011/07/02 06:49:51
更新日時:
2011/07/02 15:49:51
1. NutsIn先任曹長 ■2011/07/02 19:28:54
メニューから3番が消えましたか……。
腕利きのメンバーでも敵わない星人が出てきましたか……。

元ネタは知らないので(いや、完結するまで知らないほうがいいかも)、
その後どうなるか期待に胸を膨らませています。
2. 名無し ■2011/07/02 21:17:35
0点コメントが相変わらず酷いw
3. ヨーグルト ■2011/07/03 12:47:04
*今後の流れ
吸血鬼星人、紫星人、武者星人→黒服星人、パチュリー→大阪編のポジのミッション→ラストミッションのポジのミッション→カタストロフィ→???
時間軸的に、原作に合わせているので大阪編自体をやるかどうかはわかりません。
ですので、そこのところはあまり期待しない方がいいです。(変更の可能性もあり)

>NutsIn先任曹長様
何というか、流れでやってみたという感じで今回はやってみたんです。
元ネタの方は見ても大丈夫かと思われます。(原作通り行くとは限らないからです)

>2様
こう、書いているとコメントが頭の中に浮かばないのですが、
ふと書きなぐるとそんな感じになるんです。
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