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『常在精神』 作者: スレイプニル

常在精神

作品集: 29 投稿日時: 2011/09/13 00:32:27 更新日時: 2012/12/31 14:41:08
この話もお久しぶりなのでぱぱっと登場人物紹介

霊夢:唯一まともなそうな人

008:ショッ○ーみたいなの。中々強いけど霊夢の言うことしか聞かない。

NO.001〜:出来損ないの早苗達、200人ぐらい博麗神社の地下に収容されてる

諏訪子、神奈子:霊夢にまともな早苗ちゃんを要求してる人、信仰がないと生きられない神様。

永遠亭の人達:霊夢に技術提供してる機関、色々データ貰ってるマッドサイエンティストみたいな人がいる。キチガイの集まり

NO.201:今日の主役


あらすじ

早苗ちゃんビッチ過ぎて信仰入らない!助けて霊夢ちゃん!→よし分かった。クローンを作ろう→私の求める東風谷早苗にはまだ遠い→元が元だから無理だろ…←イマココ

















「―――ああ、面倒くさい事になったわね…」

博麗神社の地下室で、博麗神社の主、博麗霊夢が机に突っ伏すようにもたれ掛かっていた。

その後ろでは、1人の女が従者の如く直立不動で立っている。

その女の目には、霊夢の前に広がっている。何枚ものモニターが映しだされていた。

この地下を監視する為のモニターであろうか、各種牢屋や階段付近など、死角がないように張り巡らされていた。

その中の1枚のモニターには、霊夢が現在頭を抱えている問題の原因が映しだされていた。

「008番、消息は掴めないの?」

霊夢がそのままの体勢で、後ろの女に投げやりに尋ねる。

「はい、ここから脱出した後の消息事態は掴めていませんが、北へ向かったかと思われます。」

008番と呼ばれた女は、虚ろな目で機械のような口調で答える。

そう、今起きている問題は、モニターに映っている牢屋の一番隅の隅、頑丈な鉄格子が無様にも開け放たれているという簡単に言えば脱走だ。

脱走など起きないと霊夢自身も思っていたのだが、牢屋の老朽化かそれとも鍵を取られたか、逃げ出されてしまっている事は事実である。

「しかも…逃げ出した…アレは、よりによって一番面倒臭いシロモノじゃない…」

「………」

霊夢が独り言を呟く。

「まぁ…起きちゃったものは仕方がないわね。丁度いいわ。008番、001番から051番まで牢から出して武器を持たせなさい。ちゃんと、起爆符を背中に取付けなさいよ。」

「はい。」

命令を聞き、008番が部屋を出ていく。

1人になった部屋で、霊夢が身体を起こし、椅子の背にもたれかかる。

その右手には1枚の写真付きの紙が1枚握られていた。

「201番…本当に面倒くさい事になったわね。」

霊夢がその紙を流し目で読む。

「本当に、本当に、面倒くさい事になったわ。」

繰り返す文言

「あぁ、面倒くさい。面倒くさい。」




少しだけ、霊夢の口元が上に上がったように見えた。














「早苗ー、今日の晩御飯は?」

守矢神社の奥の居間で、子どもぐらいの背丈ぐらいの少女が早苗の名を呼ぶ。

「もう少しですよー。」

そのまた奥の台所で東風谷早苗がそう返す。

これは守矢神社の夜の日常だ。

今宵の食事は何だろうと子どもぐらいの背丈の少女、洩矢諏訪子がもう一人の長身の女性…八坂神奈子に語りかけている。

この台所に居る早苗は、霊夢の元で製造されたクローンの1人で、成功例の1人だ。

しかし、成功例と言っても「出来損ないの中でのまともな方」なだけであって、またいつものような穢れに汚染されるか分からない。

そうなった場合は、神のどちらかが、霊夢に連絡し、始末者を寄越してくるのが契約の中に含まれている。

その代わり、霊夢側は、一定の守矢神社への信仰譲渡と、出来損ない達を自由にしても良い権利を得ている。

このままこの早苗と同じ生活が続けば良いと諏訪子は一人思っていた。隣に居る神奈子も同じ気持ちだろう。

台所からはまだ、湯が煮立つ音が聞こえてくる。

だが、その沸騰音とはまた別に、違う足音が何処からか聞こえた。

来客だろうか?と諏訪子は思った、しかしこんな夜遅くに挨拶も無しに来るのはおかしい。

「諏訪子様ー、神奈子様ー。夕飯が出来上がりましたよー」

鍋を両手で掴み、居間へと運んで来る早苗。あぁ、何だ早苗の足音だったかと諏訪子が胸をなで下ろす。

それにしても今日もお腹が空いたなぁと、諏訪子は鍋を見ながら思った。

やはり、日常は続いていくのだと、これからも、この先も。

そうやって一人目を細めながらこの幸せな空間を愉しんでいた諏訪子であったが、異変に気づいた。

また別に気配を感じたからである。

やっぱり誰か―――

そう諏訪子が思考する前に、台所とは真逆の麩が連続した音と主に幾つもの穴が開く。

それと同時に、鍋を引っ掴んでいた早苗の右胸にぽっかりと赤い点が3つか4つぐらい出現した。早苗自身も何が起きたか分からない表情をしながら床に鍋と共に倒れ伏した。

始末者?でも何もしていないはず―――諏訪子はこの異常を何とか理解しようとしたが、理解が追いついてこない。

穴が空いた麩が何者かによって蹴破られる。

「は〜ろ〜♪どーもどーも!」

軽快な軽口と共に麩の奥から現れたのは右手に小型の鉄の塊を握りしめた女の姿だった。

「あれぇ?諏訪子様と神奈子様じゃあないDEATHかぁ!これはこれはご機嫌麗しゅう!」

その声と顔を諏訪子と神奈子は知っていた。

「なっ…あっ…?」

呻き声を上げている早苗も、その顔を見て驚愕の顔をしている。

「やぁやぁ!コンニチワ〜!現『東風谷早苗』ちゃん!お久しぶりDEATHね〜!お元気してましたか?ちゃんと信仰心が無いと風祝は務まらないゾ!」

右手に握っている小型の鉄の塊と一緒に手を振る女。

その女を目の前に、床に倒れている早苗は未だに驚きの表情をしている。

「あっ…貴方は…!?」

「あっ!これはこれは私とした事がッ!名を名乗らずに不意打ち食らわせちゃって半殺しにしちゃってゴメンなさいねェ〜東風谷早苗ちゃん!私のなーまーえーはーあなたと同じく早苗ちゃんDEA-TH!」

馬鹿なという顔をしている東風谷早苗に、軽口を続ける早苗。

「はいはい。分かるよ〜その気持ち!早苗ちゃんとーっても分かる!ここに来る時あのこわーい霊夢ちゃんから記憶を根こそぎ消されちゃってるもんネ!わかるよー!とっても分かる!だ・か・ら。東風谷早苗ちゃんの目の前にいるこの早苗ちゃんが誰なのかーっていうのも分からないよ・ネ!」

右胸を貫かれ、多量の血を流し、息絶え絶えな早苗を意も介さず笑顔な早苗。

「よぅし!冥土の土産って言うの生まれて初めて使うけど早苗ちゃん頑張って説明しちゃうゾー!簡単に言うと貴方は『東風谷早苗』のクローンなのDEATHよ!ハハハ、そんなに驚いちゃって、もしかして自分が本当の『東風谷早苗』って思っちゃってた〜!?バカダネー!もうオリジナルちゃんはどっか知らない所でわけわからない事ばっかりされてると思うよ〜!あっ、そうそう貴方と同じ境遇の早苗ちゃんとその仲間達がまだ後200人ぐらい博麗神社の某所に監禁同然で生活していマース!ま、もう死に絶えるかもしんない東風谷早苗ちゃんには関係ないか!南無阿弥陀仏法蓮華経!」

とここまで早口でまくしたて、挙句に大げさな動作で両手を揃え目を閉じる演技をする早苗。

終止訳がわからないという顔をしている東風谷早苗。

「あ、もしかして、まだ信じれないの?じゃあ簡単な方法を特別に教えてあげまshow!そこの諏訪子サマと神奈子サマの目を見てごらん!多分華麗にスルーしてくれるヨ!世の中は無常なのです!ああここに人生極まれり!!111」

その言葉に、早苗は力を振り絞り、諏訪子と神奈子の方へと顔を向ける。

「まさか…諏訪子様、神奈子様…」

その目を座っていた二柱は目を背ける。

「ほうら!早苗ちゃんの言ったとーりでshow!残念ながら、東風谷早苗ちゃんにはここで死んでもらいまーす!ハハハ!アーメンアーメンですよ!ちょっと西洋宗教なんてウチは認めませんよって!良いじゃないですか無礼講無礼講!」

ボロ雑巾を脚で拭くかのように、東風谷早苗の背を踏みつけ、ぐりぐりと傷めつける早苗。

「痛いでしょ!でも残念!意外と人間というのは死なない生き物なのDEATH!いやー人間の生存本能は逞しい!早苗ちゃん感動しました!このレポートを100ページぐらいにまとめて学会に提出したい!題名は『如何に傷めつけても人は死なないか』で!これはノーベル残酷賞貰えそうDEATH!」

「やっ…やめて…」

最早死にかけの東風谷早苗が血を吐きながら、懇願する。

それを、聞いたか聞いていないか、早苗は右手に握っている塊を肩にトントンを当て、笑顔になる。

「OK!分かりました!」

と同時に、早苗の右手から一発の撃発音が鳴り、床を張っていた東風谷早苗の頭部がまるで完熟トマトを壁に投げつけたようにぐしゃりと潰れる。

その周りは血で一杯になり、返り血が早苗の頬を伝う。

「ほぅら!やめましたよぉ!?あれあれ、どうしたんですか?お礼を言わないといけないでshow!」

早苗の右足が潰れた東風谷早苗の頭部を蹴り上げる。

千切れた脳と脳漿が飛び散り、壁に叩きつけられ、赤と黄土色の気持ち悪い塗装を施す。

「あー、もう壊れてちゃってたんですねぇ!あぁ実は人間は脆い生き物だったんDEATHか!!悲しい!早苗ちゃんは悲しいDEATH!」

そこまで言い終えて、くるりと、諏訪子達の方を向く早苗。

一瞬だけその笑顔から滲む狂気にびくりとした諏訪子はすぐに平静を装った。

早苗の右手ばかりに眼がいっていたが、よく見るとその背中には黒い布で包まれた人の脚程度の長さのモノが背負われていた。

「やぁやぁ!諏訪子サマ!神奈子サマ!お久しぶりDEATHね!お元気しておられましたか!?私?私は超超超超元気一杯DEATHよ!!!えっ?そんなの聞いていないって?アハハハハ!気にしないの助三郎!!」

満面の笑みでそこまで早口で言い終わると、早苗は右手の塊の先を諏訪子に突きつけた。

「止めなさい。こんな事して、どうなると言うの?」

冷静に早苗に言う諏訪子。

それに対して、一瞬だけそれぐらい知っているといった不機嫌な顔になったと思うと早苗は再び笑顔になる。

「さっすが!守谷のカミサマ!こんな状況でも冷静DEATHね!分かっていますよ、神仏なんて殺せる訳ないじゃないDEATHか!そういう設定があるって事ぐらい早苗ちゃんはよぉぉぉぉぉぉくわかっているつもりでございますよ!」

今にも踊りだしそうな笑顔でそう答えながら早苗は右手に握っているモノの先を少し下にずらすと、引き金を1度引いた。

「ぐぅ…!」

一発の軽い爆発音と共に、座っていた諏訪子の右ふとももに鉛筆程度の穴が開く。

「諏訪子!」

今まで黙っていた神奈子が諏訪子を心配して、寄ろうとするが

その立ち上がろうとした頭に硬い熱せられた何かが押し付けられる。

「熱っ…」

「おおっと!動かないでください!!動いたらここまでの早苗ちゃんの綿密な計画が一瞬で壊☆滅しちゃいますので!何事も穏便に行きまshow!人類の発展は譲り合いと我慢DEATH!一応言っておきますが、この早苗ちゃんの愛銃ステアーTMPに逆らっちゃあいけません!死にますよ!あぁカミサマは死なないんでしたネ!」

その握られている短機関銃を少しだけ揺らして、早苗は笑顔のまま喋り続ける。

「でぇも、早苗ちゃんは知っているのDEATHよ!実は守矢神社にはもう信仰が殆ど無いって事を!そりゃそうDEATHよねーオリジナルの東風谷早苗ですら風祝としては3流以下のノミの糞みたいな風祝だったのにそれの劣化コピーなんかじゃ信仰なんて手に入りませんよねぇ!つ・ま・り」

そこまで言って、不敵に笑う早苗。二柱は、ずっと黙ったままだ。

「今の、お二人にはそれ程力が無いって事なのDEATHよね?とーなーるーとー!今普通に殺しちゃったらー!ちょーっとアブナイ事になっちゃいマスよねぇ!これは大変だ!早く早苗ちゃんを止めないと!うわー!でも安心!怖い怖オオカミさんはまだお鼻が効かなくて困っているのDEATH!やったね早苗ちゃん!」

早苗が、引き金を引く。短く。

「いやぁー!悲しい話DEATHよねぇー!カミサマって偉いはずなのに人間以下みたいな扱いの早苗ちゃんに手も足も出せないなんて!早苗ちゃんは知っていますよ!今晩の夕飯は何かなって浮かれている間に早苗ちゃんがこの神社に強力な結界を張っちゃったって事!あーあー早苗ちゃんったらゴクアク〜さいきょう!しかもあの博麗霊夢謹製の結界符だなんて口が裂けても言えないよねー!って言ってました!」

早苗が、引き金を引く。少し長く。

「おやおや、泣かないで諏訪子サマ!クローンと言えど神を敬う心は大有りDEATHよ!そんなに泣いているとこっちまで泣いちゃうそうDEATH!」

早苗が、引き金を引く。かなり長く。

「あーあーあーしーらーないぞー神奈子サマが止めないから諏訪子サマがまるでボロ雑巾みたいに泣いちゃってるじゃないDEATHかー!うわー神奈子サマってそんな趣味がお有りだったんDEATH〜?」

早苗が、引き金を引こうとしたが、カキンという音が銃の内部で反響し、弾切れを教えた。

「TMPちゃん!お疲れ様DEATH…おーっとっと?諏訪子サマ?もしもーし、大丈夫DEATHかぁ?死んでたら返事お願いしますよぉ!」

早苗の眼前には、所々に赤い穴が開いているその姿は守矢神社の神ではなく、ただの死にかけの少女であった。

「諏訪子!」

弾が切れたのを悟ると、神奈子が諏訪子へと駆け寄る。

「あっ…がっ…」

諏訪子はもう生命力が尽きかけ、まともに喋ることもかなわない。むしろ、これだけ撃ちこまれて死なないというのは奇跡に近く、やはり神というだけあるだろう。

「うーわーひどい!こんな話ってあります!?誰ですか!いたいけな諏訪子サマにこんなひどい事をしたの!教えてください!誰がやったんDEATHか?あ!私でしたね!失礼失礼!!」

早苗は短機関銃を投げ捨て、背中に背負っていた黒い布をそれごと手にかける。

両手に持ち替え、黒い布が床に落ち、神奈子の眼に、早苗が持っているそれが目に映る。

のこぎりを両刃にしたような形状で先端は丸く、とても機械的で無骨なソレの刃を早苗はなでる。

「じゃっじゃーん!初お披露目!チェーンソーちゃん!霊夢姉さまはこんなものを隠し持っていたんDEATHねー。こわいこわい!これで何人の同胞が処理されたんでshowか!私にはこわくてこわくて絶頂しちゃいそうDEATH!」

早苗のチェーンソーを支えていた左手が、手元の取っ手みたいなモノを握り込み豪快に引き抜く動作をする。

同時に、小さい爆発が連続で続くような異音が神奈子達を耳を劈く。

「と・り・あ・え・ず…神奈子サマに逃げられると早苗ちゃんとっても困るのーーーーでーーーッ!カミサマのお御足切断ショーから始めまshowッ!!!」

ぶぅんと、低速で回転する刃が神奈子の右足を捉え一文字に薙ぐ、だがその途中で、奈子の右足に引っかかり、刃が強引に左へと進もうと刃を回転させる。

肉を鈍く斬り裂く音と、血が泡立つ音が同時に聞こえ、不気味なハーモニーを奏でる。

「やめっ…あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

当然のように、神奈子が痛みで絶叫する。その絶叫に何も出来ずに諏訪子は呻くだけだ。

「くぅぅぅぅぅ!!どーDEATHかー!?もうすぐ右足の骨ちゃんまで逝っちゃいますよ!ご安心ください!死亡保障なんて体の良いモノなんてこの幻想郷にはありません!これが外の世界なら私は1億円ぐらい掛けてる所DEATHね!老後も安心!そして死後も安心!これぞ一挙両得って奴DEATHね!あああああああああ!!アドレナリンがどばどば出てますよぉぉぉぉぉ!ふぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

気違いめいた言葉を吐き散らしながら、グッグッと右へと力を込める早苗。

やがて神奈子の右足を切断し、大根大の綺麗な脚が畳の上に落ちる。

「ヒュゥ♪じょうずにきれましたぁー!ってヤツですかねー!これならこんがり肉にも出来そうな大きさですね!今日のおまんまはコレでいきまshow!」

赤くデコレーションされた刃を神奈子の左足に近づける。

「さなっ…やめな…さ…私が…わ…―――」

神奈子が言いかけたその言葉に早苗の笑顔が消える。

「はああああああああああああああ!!!???ざっけんなよぉぉ!!!クソビッ○ババアァァァァァァ!!!!??今更そんな事言うかぁぁぁ!!??先に"こういう事"をしたのは神奈子サマ!!アンタの方でshowが!!!それを自分の身が危うくなったからってぇぇぇぇ!!!??『わるかったごめんなさいすみませんゆるしてください』なんて道理が通るわきゃねぇえええええええええええええええええだらああああああああああああああ!!!!????!??!?!?」

先程の上機嫌な口調とは打って変わって、鬼気迫る表情と怒号を吐き散らす早苗。

それと同時に先程まで低速に動いていた刃が高速に動き、なんなく神奈子の左足を切断する。

両足を斬られ、手が生えた芋虫のような形になる神奈子。

「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

畳に落ちた足と共にまた同じ絶叫を上げる神奈子、だが早苗の怒りは収まらない。

「あああああああああああああああ!!!!!?!??!?!!!イライラさせやがってぇぇぇええええええ!!!!?!?!!!!!激痛と共に殺してやるらああああああああああああ!!!!!!」

チェーンソーを上段に持ち替え、処刑人の斧のように、豪快に振り下ろされる。

刃は高速で動きながら、神奈子の右肩を深々と斜めに切断し始める。

「残念でしたァ!神奈子サマ!早苗ちゃんを怒らせたアナタが悪いんですよぉぉぉぉぉ!!!!!!11111?????ああああああああ!!!!??!?!1111?!?聞いてんのかよォォォォ!!!!!?!?!?!」

ズブズブと身体に埋まっていく刃は肺に穴を開け、骨を切り裂き、やがて心臓近くに到達する。

「どうどうどうどうどうどうどう!!!?!?!??!今どんな気持ち!?!?!もうコレ絶対死んじゃいますよねぇぇぇぇぇえええええええ!!!!!!!」

「やっ…」

最後に何か漏らした神奈子は、それが最後の言葉となり、刃は柔らかい心臓を簡単に斬り裂いた。




死ぬか死なないかの瀬戸際に立っている諏訪子の眼には数秒、時が止まったかのような錯覚を覚える光景が広がっていた。

眼前では高速で動く刃が、神奈子の右肩から右斜めに綺麗に斬られ、その上の肉がごろんと落ち、急速に広がりつつある瞳孔が、諏訪子の眼と合った。

死体の近くで、乱痴気めいた笑いを繰り返す早苗の姿の殺人鬼。笑うどころか、右足で死体をぐちゃぐちゃに踏みつぶしている。

「ふぅ…あーあー行き遅れのビッ○神の癖によ…はぁ…やっと…落ち着いてき…っと…諏訪子サマ!」

死体の方を注視していた早苗がくるりと首だけ諏訪子の方を向く。その顔は笑顔であったが、所々に赤い液体が付着していた。

「ねー聞いてくださいよー。神奈子サマったらさー。なんでしたっけ…?まぁ良いDEATHね!さて、諏訪子サマ!ここでクイズタァァァイム!!問題!この後諏訪子サマは"どうなってしまうのでしょう?"

1、早苗ちゃんのチェーンソーで殺される。
2、早苗ちゃんがステアーTMPの弾を再装填して撃ち殺される。
3、このまま生命力が尽きて出血多量で死ぬ。
4、ここでまさかの神奈子サマが復活して早苗ちゃんが殺される。
5、どうにもならない現実は非情である。

さあ!どれだっ!個人的には大穴の4と逝きたいトコロなのDEATHが!」

活き活きした表情で、顔を諏訪子の顔にギリギリまで近づけてそう叫ぶ早苗。

どちらにせよ、死んでしまう事には変わりがない。諏訪子はもう心の中では諦めていた。

どうせなら…どうせならと、諏訪子は回想する―――








パァン



「おおおおおおおおおおおおっっと!お涙頂戴の走馬灯はナシナシナッシングゥ!!!」

諏訪子の身体がびくりと大きく1度震えた。もう視界を有してない諏訪子の眼は驚きに見開かれたまま閉じようとしない。その両目の上、つるつるとした額をちょうど何かが射抜いた痕が新しく出現していた。

その目線と繋ぐように、早苗の左手に握られている小型の拳銃が真新しい硝煙をくゆらせていた。

「正解は『6、早苗ちゃんの隠された早撃ちの特技が覚醒して撃ち殺される』でした!一発KO!WIN早苗ちゃん!ぱーふぇくと!やったね早苗ちゃん!他の早苗ちゃんの無念を晴らしてあげたよ!偉い偉い!!」

一人喜ぶ早苗の周りには血と肉と死体だけが残されていた。

「さてさて、憂さ晴らしとお礼参りも済んだ事DEATHし!おまんまのおじかんですよ〜!」

周りに残った肉塊の1つを拾い上げ、にんまりと笑う早苗の表情はこれまで以上に狂っていた。




















守矢神社のすぐ近くの森、月に照らされる黒い塊の集団。

それらは幾つもの塊のグループで一定の速さで森を走っていた。よく見れば、それら1つ1つは人間で、1人1人各々銃を携えていた。

50名あまりの人数は守矢神社前の森の端っこで並ぶように列をなしていた。


《―――位置に着いたわね。じゃあ作戦通りに突入しなさい。》

各々の右耳に取り付けられている小型の機械から霊夢の声が入ってくる。

《―――わかっていると思うけど、命令に背いたら駄目よ。そうじゃなくても、この場所より一定の距離を離れれば、008番が綺麗に始末してくれるわ。アンタ達の代わりなんて幾らでもいるんだから、それじゃあ作戦開始》

簡潔にそこまで言うと、皆の右耳から音声が入ってこなくなった。

―――言われた通り、突入してください。

50名あまりの早苗達の後ろから早苗と同じ声が聞こえた。だが、早苗達の視界には映らない遠い距離からの声だ。

見張られているという警告も含めているのだろう、どちらにせよ突入しなければ、早苗達はここで殺されてしまうのだ。

この早苗達にとっては霊夢の存在は絶対的で、殺すと言ったら本当に殺されてしまう。

意を決して、早苗達の1塊が動いた。

霊夢から振り分けられたグループは50人10班方式、つまり1〜5で1グループが10班だ。

先陣切った1班に連れられるように、他の班も動いていく。

かといって、これら全ての早苗達の戦闘経験はほぼ0と言っても過言ではない。

本の数分、霊夢本人から作戦指示と、銃の簡単な扱い方を習っただけだ。

しかし、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると言った所であろうか、霊夢は数を増やすことによって201番を始末しようという面持ちだ。

一番前に出ていた班が守矢神社の玄関まで後半分といった距離にさしかかろうとしていた時、その前方から何倍にも増幅された電子音が聞こえた。

《ハロー!ハロー!お元気DEATHか!?あいむふぁいんせんきゅー!あ、聞いてない?まぁ良いでshow!おっけー!おっけー!ビンビン来てますねぇ!早苗ちゃんレーダーに機影多数!機影多数!警告!警告!これ以上近づくとこちらにも自衛権を行使させてもらいますよぉ〜?》

その声が言い終わると同時位に、一番前方を走っていた早苗達の班の先頭の1人の右足が硬い、"なにか"を踏んだ。

「?」

不思議に思いながらも、その右足はそこから持ち上がり、次の地面へと着こうとした。

その刹那、ボシュっと気が抜けた音が、早苗の後方から聞こえたかと思うと、突然、まるで暴風に前へ押し流されるように地面へ叩きつけられた。

一瞬の事で何が起きたか理解が追いつかない早苗に遅れて身体の後ろから側面にかけて、激痛は走る。

「げほっ…」

血を吐き、自分が何かされたとやっとそこで理解する早苗、だが、背中の損傷はあまりにも酷く、徐々に痛みが緩和されつつある早苗のその背中は、それ程までに酷かった。

残された力で、後ろに振り返る早苗、そこには数秒前まで一緒に付いてきたモノの蠢く塊の群であった。

《いやっはああ!教えてませんでしたが、そこらには『地雷』っていうビックリドッキリアイテムが埋まってまーす!し・か・も!今踏んだのはSマイン!とーっても殺傷能力があるでございますよ!》

その拡声器から聞こえる早苗の声を聴けるものは殆どいなかった。

地雷によって半数以上が死に、残された十数名は同胞の骸を踏みしめ、前へ前へと走っていく。

どちらにせよ死ぬのだ。もしかしたら201を倒せるかも知れない。とても低い確率であろうが、そうするしか無いのだ。

そうしなければ、無駄死、ならば、進むしか無い。

数名の早苗が途中で立ち止まり小銃を構え、居るであろう箇所に数十発撃ち込む。

そうしながらも、他の数名は前へと進んでいく。

《はっずれ〜!そんな豆鉄砲当たりまセン!これぐらいしないと…NE★》

木造の板が叩き割られる音が聞こえると共に、棒が突き出される。

その棒は、黒く、そして―――













《あっれー手応えがゼンッゼンないDEATHね!》

一帯には、細かく千切れた肉の塊と、それに重なるように倒れる鮮血を吹き出す真新しい肉塊が8ツ程新しく生まれた。

辺り一帯は硝煙の匂いと、肉が焼き焦げる匂いと、鉄臭い血の霧で埋め尽くされていた。

《これで全☆滅なら良いんDEATHが、まだまだ蝿のようにこっちに迫ってきている可愛娘ちゃんが5人も居るようDEATHねぇ〜!早苗ちゃん感動しちゃうぞ!》

そう一人つぶやいて、両手で腰の辺りで構えていた鉄の塊…MG42を適当に投げ捨てると、201は武器を取り、下へと消えていった。

畳に転がったMG42の銃身は程よく熱せれていた。















201が高所から去った後、ギリギリで玄関までたどり着いていた早苗の1人は未だに足をガクガクと震わせていた。

その目には、先程の光景が未だにループし続けていた。

前方を走る早苗達

後方から援護する早苗達

その早苗達を容赦なく無残に殺し尽くしたあの悪魔の銃

耳に残る布を引き裂くような音

はじけたポップコーンのように肉を飛び散らせる早苗達

それを無視して走り…



ぎゅっと、両手で相棒の小銃を握る。

倒さなければならない。討ち倒して、仇を取らねばならない。

紛いなりにも、一瞬の仲間だった者たちの敵を

決心し、ゆっくりと早苗は立ちあがった。

そして、他の中に入った4人の早苗達を追うように、力強く走りだした。






















「しかし、その先に広がっていたのは先に突入していたはずの早苗達の見るも無残な死体だった…TE☆NE」

玄関を入ってすぐ、早苗の目に広がったのは、血の溜池だった。

壁や天井まで赤く塗られた4人分の血や肉片、まるで地獄への道のような、そこだけでも絵になりそうな光景だった。

その奥で、ケタケタと独り笑っている早苗、右手にはナタのような幅の広い刃物をだらんと下へ向けていた。

その根元から刃先まででっぷりと人の脂と血で鈍く光っていた。

「やぁ、やぁ、やぁ!多分、最後のお一人サンDEATHね!いやはや、まったく…イージーモードにも程がありますよ。ひょっとしてボーナスステージって面持ちで逝かせて頂きました!さぁさぁお立会い!お立会い!」

右手が持ち上がり、振りかぶるような格好のままこちらへ突撃してくる早苗、それに反応して、早苗が小銃を持ち上げ、照門と照星をしっかり合わせ、こちらへ向かってくる狂気の代弁者に向けて、引き金を引こうとした。

「おーそーいーッ!スロウリィ!スロウリィ!」

喚き、右手をこちらへと高速で振り下ろす。

それと同時にブゥンと空を鈍く裂く音が聞こえたかと思うと、早苗が引き金を引く前に、投げつけられた刃物が小銃に金属がぶつかり合うと共にぶつかり、小銃の射線を崩れさせた。

「くっ…!」

咄嗟に照準を立てなおそうと構え直そうとするが、目の前の早苗の左手に握られているソレが、真新しい煙をゆらゆらと揺らめかせていた。

視界が歪み、天井を見ている。

倒れたのだろうか?右太腿に激痛が走りながらも、早苗は床に落ちた小銃を拾い直そうと力を込めた。

「はーい。ダメダメダメっと〜!負け犬ちゃんはとっとと死ぬが良いのDEATH!」

と、狂気に満ちた笑顔で左人差し指に力を込め、引き金を絞る。

地面に倒れ伏した早苗はこれで自分が死んだと、思った。











「えっ?」

瞬間、狂気に満ちた笑顔だった早苗の顔が素っ頓狂な顔になる。

思いもよらなかった事態が起きたのだ。

今さっきまで死体だった早苗の身体が、爆発したのである。

その爆風に吹っ飛ばされるように外に押し出される早苗2人。

二人共血だらけで、撃たれた早苗はもちろん、狂った201の方も相当なダメージを受けていた。

「ああああああああああああ!!!!?!??!?!何だよコレ!!!!!?!?!今まで上手くいってただろうがよぉぉぉぉぉぉ!!!!???!?!そういう設定なんて聞いてねぇぞ!!!!!saiosfaiiiんさお甘あば!!!!?!?!?!?!?1111111」

立ち上がり、あらぬ方向に怒号する201



「―――設定?まぁ知らないけれど、『起爆札を付ける』という話はあったはずよ?まぁ貴方には関係ないけれど」

透き通った声が、静かな神社に響く。

その声に201がびくっと身体を震わす。

201が恐る恐る前を見る。

「今晩和、良い夜ね。」

挨拶と共に、右手から花火のような光と鈍重な爆発音が発せられる。

放たれた銃弾が201の右太腿を吹き飛ばし、地面に這わせる。

「あっ…がっ…」

吹き飛ばされた右足を見るまでもなく、憎々しげに目の前の銃を持った巫女を睨む。

「あら睨むなんてとんでもない。これは躾が必要ね。」

もう一度、引き金引き、今度は左足を吹き飛ばす。

「あぎゃあああああ!!!」

まるで、自分がやったような格好にされた201はまともに声を出すことすら出来ない。

それに意も介さず、硝煙を燻らせている銃を見ては、吹き飛ばした脚と見比べる巫女。

「スーパーレッドホーク454カスール…まぁまぁね。ちょっとピリリとするぐらいかしら。躾をするのには最適でしょうけれど」

そう言いながらも、巫女は201に近づき、喜怒哀楽の顔が行ったり来たりしているその額に銃口を押し当てた。

「さ、言い残す事はあるかしら?本当ならば、ここは一騎打ちという所なのでしょうけれど、私はそんな面倒臭い事なんてしたくないわ。」

冷たく言い放つ巫女…いや、博麗の巫女、博麗霊夢。

それに対し、整わない息で、未だ睨みつつも、201は口を開く。

「この…クソビ―――」

そこから先の言葉は爆音に掻き消されてしまった。

脳蓋は弾け飛び、凝縮された火薬が、脳の中心部で爆発し、顎から上が綺麗に吹き飛ばされてしまった。

辺りは千切れた脳のかけらや血で濡れており、それを博麗霊夢が靴で踏みつける。

「まったく、二度手間じゃない。結局生き残ったのは1人…と言っても、もう死にかけでしょうけれど…」

荒い息で霊夢を見る生き残りの早苗、爆風の傷と銃弾による傷でもう死ぬ寸前であった。

その上下に止まらず動き続ける胸の中心に、霊夢は引き金を引いた。








「これで、生き残りは0人っと…あの2柱が殺されたのは意外だったけれど、それ以外はまったくもって計算通り」

薄く笑い、シリンダーを器用に片手で開くと、懐から弾を取り出し、穴に詰めていく。

「それにしても、永遠亭も面白い薬渡すわよねぇ…あれじゃあただの合成麻薬みたいじゃない。まぁ、口調も性格もこれまでの早苗とはまったく違ったから、そうなのでしょうけれど」

補充し終わり、服の中に銃をしまい、代わりに、小型のインカムを取り出す。

「008?聞こえるかしら?もう警戒しなくて良いわ、とっとと死体を土に埋めておきなさい。私はこれからあの2柱に信仰を与えて身体を構築しなおさないといけないから、終わったら帰ってくるのよ」

簡潔にそう言って、インカムを切り、霊夢は足の下の血の海や異臭を意も介さず爆発で壊れた玄関の中に入る。

「あぁ、この神社も結構壊れちゃったけど、なんて言い訳させておこうかしら…面倒くさいから天狗の仕業で良いか」

そう独り言を残し、霊夢は守矢神社の中へと消えていった。




















【201の観察結果】
>そちらから渡された特殊な精神薬を一週間投与の結果、性格が反転、まるで気が狂ったような性格へと変わった。
>これは薬の効果かは分からないが身体能力が上がっている模様、詳しくは添付されたデータを参照されたし。
>禁断症状が出る前に牢から解き放ってみた。結果、守矢神社で2柱が惨殺される事態となったが、特に問題は無し。
>こちらの廃棄物達の廃棄にも役立った為、結果は良好とみられる。
>しかし、前回の実験と真逆に位置する為、運用事態は難しいと思われる。
>よって、こちらとしては採用は難しいという結論を出した。 
                           ―――博麗霊夢から永遠亭へ













―――


「ふぅん…意外とあの巫女も頑張ってるじゃない。」

暗がりで薄く光るモニターを見ながら、薄く微笑む女性。

高級そうな椅子にもたれかかり、添えられたデータを流し読みする。

「まぁ、上手くはいかないとは思っていたけれど、存外捨てたものじゃなかったわね」

ふふっと笑いが口から漏れ、モニターから目を離す。

「さて、次は何をやってもらおうかしらね…生きた人間に実験できるなんて機会…早々ありはしないのだから…」

その妙齢の女性の口元がこれまで以上に歪んだ気がした。











END
お久しぶりですお久しぶりです。
久しぶりにこういうの書いてみました。
たまにはこういう早苗さんも良いかなぁ…みたいな。

お月見団子食べたかった。
スレイプニル
http://twitter.com/_Sleipnir
作品情報
作品集:
29
投稿日時:
2011/09/13 00:32:27
更新日時:
2012/12/31 14:41:08
分類
クロさな!
早苗
霊夢
クローン
1. NutsIn先任曹長 ■2011/09/13 21:56:32
お久しぶりの早苗クローンシリーズ最新作、堪能させていただきました。

ほんっとうに、流石、数があるだけあって、様々なバージョンの早苗さんがいますねぇ〜。
でも、全員、霊夢の手の中。
霊夢もクライアントの手駒に過ぎないようですけれど……。

次回も楽しみにしていますから。
2. 名無し ■2011/09/14 09:43:22
チェーンソーが出てくると無条件でわくわくしてしまう
3. 名無し ■2011/09/14 13:43:49
DEATHが出てくるたびになぜか笑ってしまう
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