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『カタコンベの養鶏場』 作者: sako

カタコンベの養鶏場

作品集: 29 投稿日時: 2011/09/18 23:35:41 更新日時: 2011/09/19 08:35:41
「……んっ」

 かび臭く埃っぽい、冷たい空気に妖夢は目を覚ました。辺りは暗く目覚めたばかりで焦点の合わぬ瞳では伺えない。ここは何処なのだろうという現実的な思考と庭のあの辺りの手入れをそろそろしないとという日常的な思考が入り交じり、なかなかに頭は覚醒しないでいた。

「目が覚めましたか?」

 不意に声をかけられはっ、と妖夢は顔を上げた。聞き慣れない声。いや、少し前に初めて聞いた声だと思い出した。
 そう、自分は幻想郷中に現れ始めた神霊たちの調査をしていて、促されるように訪れた命蓮寺裏手の墓で怪しげなキョンシーと戦い、そうして…そこまで記憶を辿ったところで妖夢の意識は完全に覚醒した。

「お前はっ!」
「はい。今度は丁寧に自己紹介といきましょうか。私は青娥。道士です」

 敵愾心を露わに妖夢は自分の前に立つどこか邪悪な雰囲気のする女性を睨み付ける。青娥のもつ雰囲気に危機感を憶えたのではない。妖夢の記憶ではつい先程、彼女とは弾幕を交えていたのだ。神霊調査の最中、命蓮寺裏手の墓地で見つけた秘密の地下通路を進んでいたところ、不意に襲いかかってきたのだ。

「お前が今回の異変の黒幕か!」
「異変…? ああ、この雑多な霊魂たちの事ですか? まぁ、黒幕と言えば黒幕なんですが」

 妖夢の言葉にふよふよと浮いていた神霊の一つを指で掴んでみせる青娥。つまらなさそうに捕まえた神霊に視線を向け、次いで流し見るよう妖夢に目を向ける。

「まぁ、もうどうだっていいことでしょう。貴女はこの騒ぎにもう直接的には参加できないのですから」
「それはどういう…」

 ことだ、と妖夢が言おうとしたところで鼻先に青娥は指を突きつけた。あっけにとられ、丸い指先に刻まれた指紋に目が行く妖夢。くすり、と青娥は笑みを浮かべるとその指先をゆっくりと下に降ろしていった。自分の目で確認しなさいと言わんばかりに。はたして妖夢の見たものとは…

「きゃっ…きゃぁぁぁぁぁ!?」

 己の身体を見て羞恥の悲鳴を上げる妖夢。身を捩るが殆ど身体は動かなかった。当然だ。妖夢の両腕は肘の辺りまで、足は膝の辺りまで、まるで最初からそうだったように壁面に埋め込まれていたからだ。それは妖夢の身体を壁に押しつけその上から両手足を漆喰やコンクリートで塗り固めたのとは訳が違っていた。腕や足が埋まっている場所は他と同じく千年の時の流れを感じさせるほど古い壁面を晒しているのだ。妖夢を拘束するために後から塗り固めたような見た目では決してなかった。加えそのフィット感は壁に穴を掘って手足を収めたという訳でもなさそうだった。最初からそうであったような、喩えるなら壁から妖夢が生えてきているような有様だったのだ。
 けれど、それだけでは羞恥の悲鳴はでないだろう。出るとすれば恐怖の悲鳴か憤怒の悲鳴。妖夢が身を捩るほど顔を赤らめているのは身体が別の有様になっているからだ。

「ふっ、服は!? どうして私は裸なんですか!?」

 壁に綺麗に埋め込まれている妖夢は何も身につけていなかった。お気に入りの鶯色の服もワイシャツもスカートもドロワーズも、ご丁寧にヘアバンドとリボンもはぎ取られ妖夢は裸ん坊の格好であった。まだまだ未発達の胸も、その頂きの桜色の突起も、産毛も生えていないような綺麗な秘裂も、何もかも晒されていた。先程から妖夢が憶えていた妙な肌寒さはこのせいだった。肌が露出していない箇所と言えば悪意の感じる事に埋められた両手足だけだった。

 くそ、と悪態をつきながら妖夢は藻掻くが腕は引っこ抜けず足はびくともしない。身体は完全に拘束されていた。半霊ならば、と妖夢は自分の分身を探すがそれも同じように壁に埋め込まれていた。霊魂を押さえつけるなんて。どうやらただの石壁ではないらしい。

「こっ、こんな格好にさせてどうするつもりだ!?」

 文字通り手も足も出ず吠える妖夢。とたん、青娥の顔が不機嫌そうに歪んだ。次いで妖夢が憶えたのは頬の痛みだった。叩かれたのだ。突然の衝撃に驚いている妖夢を余所に青娥は叩いた手をそのまま妖夢の胸元へ持っていった。寒さで縮こまっている小さな丘の頂を摘み、捻る。妖夢の口から悲鳴が漏れた。

「どうする? 戦いに敗れた人の末路なんて千年どころか四千年以上前から変わらないでしょうに。全ての人権、尊厳、自由を剥奪され勝者の奴隷になる。時代や国が変わっても変わらないルールでしょうが」

 乳首をつねりつつ妖夢にそう語って聞かせる青娥。眉を顰め冷徹な視線を妖夢に向けている。その目はまさしく仕入れたばかりの奴隷に向けられるものだった。

「っと、あまり乱暴に扱ってはいけませんね。私はこう見えても自分の持ち物は大事にする質なのですよ。ほら、貴女が墓地で戦った芳香も私は大切にしていますから」

 思い出したかのように青娥は手を離した。妖夢は涙目になりながらじんじんと訴えかけられる胸の痛みを堪えた。歯を食いしばりながら青娥が言ったことを嘘だと思ったが口には出さなかった。

「奴隷、だって…? 重い石でも運ばせようって言うんですか? こんな格好にしておきながら」
「まさか。力仕事なら私には力自慢のキョンシーがいますし、今のところ力仕事は必要ないです。必要なのは…」

 言って青娥は再び手を伸ばした。また叩かれるのか、それともつねりあげられるのかと妖夢は身体をビクつかせたが、するどい痛みは飛んでこなかった。代わりに氷のように冷たい青娥の手が妖夢の下腹部に触れた。おへその辺り。そこを打って変わって優しげな手つきで撫回す青娥。

「子供…赤ん坊ですよ」
「赤ん坊?」

 言っている意味が分らず妖夢は疑問符を浮かべた。青娥は応える代わりに妖夢から手を離し、その手を顔の高さまで掲げた。瞬間、ヴン、と空間がひずむような音がして黒色の球状弾が現れた。

「それは…っ」

 その弾に妖夢は見覚えがあった。道中で遭遇した青娥が放ってきたスペルカードの弾幕で、手探り満身創痍で進んでいた妖夢はそのしつこく追尾し、楼観剣の一撃でもかき消すことのできなかった弾。妖夢はこの漆黒の弾幕にやられたのだ。自分が被弾した弾を見せられトラウマでも想起したのか、妖夢は震える。否、それ以上に漆黒の弾から感じる不気味さに震えたのだ。

「これは養小鬼(ヤンシャオグイ)。霊魂を使役したものです。貴女にはこれを造ってもらいます」
「…私を殺して魂をそれに加工しようっていうの?」
「いいえ、違いますよ。出来なくはありませんが貴女ほど成長した子供のヤンシャオグイは強力なのですが使役しにくい。今は兎に角、弾数が欲しいところなので」
「何を言って…」
「正確に言えば貴女にはヤンシャオグイの材料を造ってもらいたいのですよ」

 にこやかに笑いながら仕事の依頼でもするかのように青娥は言った。訳が分らずやはり疑問符を浮かべている妖夢を余所に青娥は薄闇に向け手招きをする。そちらに目を向ける妖夢。ざっ、ざっ、ざっ、と規則正しく湿った土を裸足で踏みつける音が聞こえてきた。ただし、それは歩いているとは言い難いリズムだった。片足跳びを両足でするような奇妙な歩行。程なくして緑色の燐の灯に照らされながら現れたのは大男だった。

「彼も私が使役するキョンシーの一体です。どうですカワイイでしょう」

 闇の中から現れたそれを青娥はそう説明した。だが、妖夢はとても同意できなかった。妖夢の背丈を1.5倍にしてまだ足らぬような巨躯。それに見合うよう屈強な身体をしていた。ただし、肌は土気色で生気というものはまるで感じられなかった。身につけているものはボロ同然で、何故か頭は目元まで包帯のような細長いボロ布が幾重にもまかれ、口は革と金属で出来たくつわが噛まされていた。両手は妖夢ほどではないが後ろ手にボロ布と革のベルトで拘束され、他のキョンシーの例に漏れず関節は殆ど曲らないようで両足をピッタリと並べながら小さくジャンプしながら移動するようだ。そして、何より男の体で目を引くものが股の部分からそそり立っていた。

「そうですか。この陰茎など馬のようでとってもカワイイでしょ」

 それは男性器だった。ただし、大きさはとてもではないがまともなものではなかった。青娥の言う馬のような、が誇張表現には聞こえないほどに。大きさは妖夢の腕ほどもあり切っ先は臍の位置を超えていた。はちきれんほど怒張しておりその角度は常に鋭角を保っていた。鈴口からは淫水が留処なく溢れ亀頭をいやらしく光らせていた。自慢げに青娥がその手でそそり立つ幹に触れると、水が満たされたコップにコインを落としたように淫水がこぼれ、地に落ちていった。

「な、なにそれ…えっ、おちんちん。そんな彼のとは全然形も大きさも…」
「あら、初心そうな顔をして恋人がいたのですね。意外。まぁ、でも、その彼のことは忘れてやってください。今日から貴女の恋人はこの男ですよ」

 男の陰茎のおぞましさに震える妖夢に青娥はそう語って聞かせた。そそり立つ逸物から視線を外し、困惑した顔つきで青娥を見つめる妖夢。そこには絶望の色も見て取れた。

「経験がおありならコウノトリが〜キャベツ畑で〜なんてお話は必要ないでしょう。おしべとめしべ、なんて話も」

 言って青娥は妖夢の耳元に顔をよせた。これから妖夢に何をするのか、何をさせるのか、それをはっきりと説明するために。
 もっともそれは実際のところ必要なかっただろ。絶望した妖夢の顔色が物語っていた。つまり妖夢は当に理解していたのだ。

「ヤンシャオグイの材料は流産した胎児や早死にした子供の亡骸。今から貴女はこの男に犯され、孕み、子供を作る仕事をしてもらいます」
「イヤァァァァァァァァァ!!」

 絶叫が地下墓地に響き渡った。



「嫌ッ!嫌だ! やめて! そんな、そんなことしたくない! やめろ! や、やめてください! お願いですから! そんな、そんなことだけは!」
「駄目です。貴女の利用価値は今のところそれぐらいしかないのですから」

 泣き喚く妖夢を冷静に諭し、離れる青娥。入れ替わりに男が妖夢の前にやってくるといよいよもって悲鳴は大きなものとなった。

「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌っ! やめて! 来るな! あっちにいけ! ああっ、ああっ!」
「初心なネンネじゃないんですから観念しなさい。それに思ったよりきつくはない筈ですよ。この子の陰茎は受精用に調節してありますから」

 勃起し続ける陰茎と溢れ続ける淫水。鋼のような筋肉と死後硬直したままの関節とは違い熟れすぎた果実のようにぶらぶらと揺れる陰嚢は確かに青娥の言うとおりであった。
 男は身体を寄せると妖夢の秘裂に陰茎の切っ先を宛がった。最早、言葉にならぬほど妖夢は涙を流し、唾を飛ばしながら泣き喚くが抵抗は虚しいものだった。壁に埋められている妖夢の身体は丁度、男の腰の高さに妖夢のそれが来るよう調節されており、両足も大の字を画くよう広げられて埋められていた。

「ひっ、や、やめ…!」

 泣き喚くのを辞め、懇願するよう男に涙目で訴えかける妖夢。けれど、男の顔は呪符に被われており、妖夢と視線は交わらないようになっていた。ひっ、と一泣きし妖夢の顔は崩れた。どこか笑っているような顔になった。これ以上は泣けません、喚けません、叫べません、と諦念するよう。そんな事はないのだが。

「ひぎぃ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 かけ声も予備動作もなく唐突に、本当に唐突に男の逸物が妖夢の秘裂に突き刺さった。己の腕のように太いものを前技もなしに無理矢理挿入され、白目を剥いて声にならぬ悲鳴をあげる妖夢。口端から泡を吹き、顔を引き攣らせる。一気に突っ込んだのとは逆にゆっくりと引き出されてきた男の陰茎は血に塗れていた。破瓜の血ではない。余りに太いものを無理矢理突き刺され妖夢の膣壁が裂けたのだ。剛直を引き抜かれ痛みがわずかばかりマシになった瞬間、妖夢は脱力し荒々しく息をついた。続く悲鳴と衝撃に灰の中の酸素はすっかり空っぽになってしまっていたのだ。はっはっはっと暑い日の犬のように早く浅く呼吸を繰り返す妖夢。その息を吐ききった無防備な瞬間を狙ってか、再び男は腰を突き上げてきた。

「ぎゃっ…!! !! !! !! !! !! !! !! !! !! !! !! !! !! !! !! !! !! !!」

 猛烈な勢いで膣孔の最奥、子宮口にぶつかる男の陰茎。あまりの勢いとモノの大きさに妖夢の腹が内側からふくれあがった。まるで寄生生物が腹を突き破って出てくるその前兆のようだった。妖夢にとってそれは真実にも等しかったが。突き刺された陰茎はまさしく妖夢の身体を貫くような勢いを持っていたのだ。
 傷ついた膣壁をカリや浮き上がった脈でなぞりながら陰茎が引き抜かれる。腹部の圧迫感から解放されるや否や、殆ど間も置かず三度陰茎は突っ込まれた。濁点だらけの悲鳴がまたも妖夢の口から漏れた。叫んだ際、口の中を強かに噛んでしまったのだろうか。口端から漏れ出した妖夢の唾液には朱が混じっていた。
 挿入と引出が繰り返される。無理矢理だったその動きは徐々にではあるが段々とスムーズなものになってきた。鈴口から漏れる淫水と傷口から溢れる血糊、そして、女として反応し始めた妖夢の愛液が潤滑油となって陰茎の動きを滑らかなものにし始めたのだ。
 痛みにも慣れ始めてきたのか、妖夢は悲鳴をあげるようなことは次第にやめていった。代わりにふつふつと心の奥底からマグマのように怒りと、深々と降り注ぐ灰のように嫌悪をつのらせていった。涙の痕が残る瞳を伏せ、鈍痛を堪えるよう身体を震わせながら、唇を真一文字に結び黙し、耐える。果てればそれで終わり。経験上、妖夢は男の体をそのようなものだと認識していた。泣き喚いても余計に体力を消耗するだけだとも覚った。今はこうしてされるがままに耐えるのが得策だとも。
 幾分か冷静さを取り戻した妖夢がそう考え始めた頃、男の腰を振う動きに激しさが増してきた。ずちゅずちゅと三種の液体が混じり泡立ち卑猥な音を立てる。そうして…

「―――――――――っ!」
「くぅ―――――――っ!」

 一際強烈に腰を打ち付けると同時に男の陰茎は果てる。尿道を押し広げ精が駆け上ってくる。陰茎は一際大きく膨れあがりぎっちりと妖夢の膣孔を型にそうしたように嵌める。鈴口より勢いよく放たれた精液に行き場はなかった。閉ざされていた子宮口の向こう側以外は。射精の勢いは子宮口というダムを破壊する土石流の勢いを持っていた。子を宿す僅かばかりの空間に多量の粘液が注ぎ込まれる。死体と同じ冷たい体温のキョンシーではあるが精液は生者のものと同じく滾る熱量を持っていた。腹が重くなるのを確かに感じながら、耐え難き気分の悪さを妖夢は歯を食いしばって堪えた。男の射精は何時間も続くのではと思えるほど長かった。それほど多量の精液を放っているのだろう。あの人とは全然違う…と妖夢は怒りと嫌悪に満ちた心から切り離された部分で嘆くように考えた。また、別の部分ではこうするしかなかったのだ、とも。

「終わった…」

 誰にも聞こえないような、自分に膣内射精している男にさえ聞こえないような小さな声で妖夢は勝利を確信するよう僅かにほくそ笑みながらそう口にした。

「えっ?」
(ずちゅ、ずちゅ、ずちゅ…)
 
 その勝利の余韻も、男の射精のそれも僅かばかりのものだったが。
 再び動き始めた男の腰に驚きながらも妖夢は顔を上げた。疑問の答を求めるよう男に顔を向け、そうして無駄だと悟り、黙って妖夢と男の結合を眺めていた青娥に視線を送る。青娥は何、と声を上げた。

「な、なんで、終わらないの…だ、だしちゃったら元気がなくなるって…男の人はそういうものだって…」
「そうね。普通のおちんちんならね。でも、彼のは特別製よ。抜かずの七も八も可能。言ったでしょ。妊娠用に調節してあるって。取り敢ず、そうね。今日は初日だから一時間。ずっと中だしされ続けなさい」
「いやっ…いや! いやぁぁぁぁぁ!」

 一時間もこんな気持ちの悪いことを続けなくてはいけないのか。妖夢は悲鳴をあげた。その最中に妖夢の中でもう一度、男は果てた。早すぎる、と妖夢は顔を引き攣らせる。

「この子も調子づいてきたみたいね。もっと慣れてくれば三擦り半で射精するようになるわよ。もちろん、陰嚢も弄ってあるから精液も尽きないし、受精率もかなり高いわよ。ああ、それと、孕んだからって貴女をそこから動かすつもりは全くないから。そのつもりで」
「そんな…そんな…!」

 妖夢の縋るような懇願を無視し青娥は踵を返した。用事があるからまた後でねお母さん、と後ろに手を振りそんな台詞を残しながら。暗い地下墓地から水音と妖夢の悲鳴が途切れることはなかった。









「はい、あーん」

 それから数刻後。妖夢は宮古に食事を与えられていた。両手が使えないのでレンゲで掬って食べさせてもらっている。食事と聞き、妖夢は青娥が自分のことを奴隷呼ばわりしたことからどんな粗末な料理が出てくるのかと思っていたがなんてことはない。食事は野菜が入った粥だった。まともな状況であれば美味しいとさえいえる味だ。もっともあの陵辱の後ではどんな高級料理も心の底から美味しいと感じられる筈がなかった。二三口、食べたところで妖夢は満腹感というよりかは倦怠感のようなものを憶え、いらないという代わりに口をつぐんだ。

「食べないの?」

 宮古の質問にも沈黙で答える。宮古は暫く妖夢の考えている事が分らなかったのか、暫くの間、器とレンゲを持ったまま棒立ちになっていた。と、

「じゃあ、私が食べてもいい?」

 不意にそんなことを言い出した。面くらい、何も言い返せないでいた妖夢の沈黙を肯定と受け取ったのか、宮古はうぉーやったぜ、と声を上げた。そのまま器に口を付けると一気に粥を口の中に流し込み、更にレンゲを飲み込み、せんべいでも食べるように器も噛砕いてしまった。

「じゃあ、ばりばり、ね、むしゃむしゃ。わたしは、ごくごく、しごとがあるから」

 口の中でレンゲや器を噛砕きながらそう言って戻ろうとする宮古。その背中にまって、と妖夢は声をかけた。

「何?」
「その…トイレに行きたいんですけど…」

 ここに連れてこられてからどれぐらい経っているのか、大まかにしか分らないが丸一日以上は経過しているはずだ。その間、妖夢は排泄をしていなかった。いや、実際の所、妖夢は散々、男キョンシーに犯された後、気絶し、その最中気づかぬうちに小は漏らしていたのだが大の方はそうもいかなかった。食事をしたことで胃腸が動き出したからだろうか。妖夢は便意を覚え、恥を忍んでそう宮古に訴えたのだ。
 或いはこの脳みその足りないゾンビなら自分の言葉を額面通り受け取りこの拘束を解いてくれるかも知れないと、そんな打算もあった。そうなればトイレどころではなく隙を見て逃げ出す処だ。
 だが、そんな妖夢の期待とは裏腹にうーん、と宮古は小首をかしげた。

「うちの人って誰もトイレにいかないからなー。トイレってないのよね。誰も見てないからその辺でしちゃえば?」

 それだけ言うと両手を前に突き出すあの特徴的なキョンシー歩法で宮古は去っていった。妖夢が止めようと声を上げるが聞く耳は持たないのか、聞く脳みそがないのか宮古の足は止らなかった。

「その辺でしろって言われても…」

 困惑する妖夢。その辺も何も移動さえ今は出来ないのだ。どうすることも出来ず暫く妖夢は視線を彷徨わせていたがいよいよもって腹具合はのっぴきならぬ状況になってきた。粥を食べ暖まったお腹がこの寒さのせいでまた冷えてきたのだ。ぎゅるぎゅるぎゅると音を立て鳴動する腸。妖夢は脂汗を浮かべ、唇を噛んで耐えたが時間の問題だった。下腹部は昨日犯され精液を注がれた時とは別種の膨れ具合を見せ、時々、耐えきれず脱力しては音を立て妖夢の尻から放屁が漏れた。静かな地下墓地には異様にその音が響いた。誰に聞かれているわけでもなかったが妖夢は羞恥に耳元まで顔を赤くした。

「ううっ、ううっ…駄目っ、出る…」

 最早、耐えきれぬと覚る妖夢。こんな所でこんな格好で排便などしたくはなかったが生理現象には逆らえなかった。誰も見ていないのがせめてもの幸いか。観念し妖夢は下腹部に力をこめた。こめたところで…

「えっ…?」

 ざっざっ、というキョンシー特有の足音を聞いた。音の大きさからそれは先程立ち去った宮古のものでないことはすぐに分った。ならばこの足音は? 回答は昨日と同じく闇の中からのっそりと現れた巨躯が示した。受精係の男ゾンビだ。

「いやぁ…こっ、来ないで…!」

 今日の射精のノルマだろうか。また犯されるという恐怖に加え、今回は更に別種の感情でもって否定の意を表す妖夢。だが、当然のように男の足は止らず、昨日同様、外側だけ綺麗に拭われ傷薬を塗られた秘裂に剛直が押し当てられた。

「ちょ、ちょっとまって…お願いだから、トイレに…うぎぃ!!?」

 躊躇いなく押し込まれる剛直。腹部に異物が挿入され妖夢の内臓は耐え難いほど圧迫される。必然、別のものを押し出そうとする圧力が妖夢の腹の中に発生する。

「駄目っ…で…」

 苦痛に歪んでいた妖夢の顔が一瞬の開放感に綻ぶ。安堵。それと同時に、いや、その直前、妖夢の腹に詰っていたものがこぼれ落ちた。

「いやっ、いやっ、とまっ、止ってェ!!」

 ぶりぶりぶり、びちびちびち、ぶぶぶぶぶ…!
 豪快な音を立て落ちていく汚物。丸一日分。糞便は妖夢の意思では止めようがなく、妖夢はこれ以上ないほど顔を歪めた。男が腰を突き上げる度に尻穴から太い糞が押し出される。入れられ、出ていく。化物に犯されながら糞を漏らす。その羞恥嫌悪絶望憤怒。感情の坩堝は計り知れないものだろう。

「ひぃあ、あぁぁ、あぁぁぁぁ、あひゃひゃひゃ…!!」

 顔を引き攣らせ、目元に涙を溜めながらも、妖夢の口元に僅かに笑みが浮かぶ。原初の混沌のように渦巻く感情を脳が処理しきれなくなり、加えて排便の心地よさ、それに悲しいかな膣を刺激され妖夢の女としての部分が悦び始めたのだ。

「ひぁ、ああっ…! いやっ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 むせび泣き、芽生え始めた快楽を貪る己の貪欲さに妖夢は絶叫をあげた。追随するよう男の腰の動きも激しくなる。やめてやめて、と叫び続ける妖夢。もはや何を止めて欲しいのか、犯すことか、糞が出ることか、それとも悦楽を享受してしまうことか。訳が分らず妖夢は喚き続ける。だが、そのどれもが止らなかった。男の腰の動きはいよいよ持って激しくなり、便はおろか尿も身体から排出され、脳神経を焼く快楽刺激は確実に妖夢の精神を蝕んでいた。ひき、ひき、ひきききき、と顔を引き攣らせ妖夢は哄笑した。もはや、そこにいたのは一匹の雌だった。精液を注がれ、だらしなく糞尿を垂らし、快楽を貪り、ただ受精し子を孕み造るだけの雌だった。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!!」







 それからも妖夢は毎日のように犯され続けた。
 食事を与えられ、犯され、気絶するように眠る。その繰り返し。いつしか妖夢はその現実を受け入れ、何も考えずなすがまま生かされ続けるだけの存在になった。心が半ば壊れてしまったのだ。代わり映えがなく一切の自由がなく耐え難い陵辱と恥辱が続く生活では、そうするしか他なかった。妖夢は壊れたまま、己を直さないことで、変わらないことで耐えようとしていたのだ。



 もっとも、身体の方はそうも行かなかったが。



 ある日、食事の最中に妖夢は食べていた粥を戻した。不意に悪心に駆られ、吐き出してしまったのである。吐瀉物は丁度、次の一杯を食べさせようとしていた宮古の手にかかった。以前、青娥に叩かれたことを思い出し久しぶりに妖夢は感情を呼び覚ました。恐怖だ。拘束されてから暴力らしい暴力は受けていなかったが世話係である宮古や青娥の機嫌を損なえばいつだって自分は良いように殴られ蹴りつけられ鞭打たれる弱い立場であることを思い出したのだ。

「ご、ごめんなさい…」

 久しぶりに声を発したので出てきた言葉は掠れて聞こえにくいものだった。だが、兎に角謝らないと。そう妖夢は考えた。脅え震えながら何度も何度も謝った。対し宮古の反応は…

「………」

 沈黙であった。汚れた自分の手と妖夢の顔を交互に見やって、ややあってから納得したようにああ、と頷いた。

「青娥さま〜青娥さま〜」

 どうしたことかと訝しむ妖夢を余所に宮古は手にしていた椀をほっぽりだすと急に妖夢から離れていった。ますます訳が分らなかった。どうして、青娥を呼びに行ったのか。自分が吐いたことと関係があるのか。まさか、お仕置きは青娥の手で行うと決まっているのか。そう考えると妖夢は恐ろしくて身体を震わせることしかできなかった。力が強いだけで頭が悪い宮古よりも、頭が良く陰湿で邪悪な術を使う青娥の方が恐ろしかったからだ。程なくして宮古がその恐怖の対象を連れて戻ってきた。

「あ、あの…その食べ物を粗末に扱ってご、ごめんなさい…」
「何言っているの? 少し黙ってて」

 先んじ謝れば少しでも体罰が減ると思っていた妖夢は青娥の態度に面食らった。怒るつもりはまったくないようなのだ。それでも何をされるのか分らず妖夢は震えたまま、いつものようにされるがまま、じっとしていることを選んだ。青娥は壁面に埋め込まれている妖夢の身体、特に下腹部をぺたぺたと触った。特に強くも弱くもない力だ。くすぐったさえ妖夢は憶えていた。ある程度、触ったところで合点がいったのか青娥は離れた。

「ふむ。おしっこを出して」
「え?」

 そして、唐突にそんなことを口にした。妖夢の反応は当然のものだろう。だが、聞き覚えの悪い奴隷に青娥は余り寛容ではなかった。露骨に眉を顰め、聞こえなかったの、と凄みを効かせ言った。

「はっ、はい」

 今度は殴られるだけでは済まないだろう。そう考え妖夢は下腹部に力をこめた。羞恥より恐怖が勝った。ちょろちょろとこの数日の陵辱で形を歪に変え始めた秘裂の上部、尿道口から黄色い液体が流れ始めた。妖夢は恥ずかしさに唇を噛みしめた。生理現象ではなく、命令されおしっこを出しているのだ。先日、男キョンシーの前で糞は漏らしてしまったが相手は妖夢を犯すだけのロボットのような存在だ。人間味なんてない。けれど、今、この部屋にいるキョンシーと邪仙は曲がりなりにも意思の疎通ができる人間味のある連中だった。恥ずかしさは一押し。くぅ、と妖夢は顔を伏せ、排尿が終わるのを待つしかなかった。

 しかし、こんな事をさせて一体何のつもりだ。そう妖夢が考え始めた頃、青娥は手を伸ばした。アーチを画き床にそのまま垂れ流される妖夢の小水に向かってだ。人差し指を出してそれを円弧を描く液体の流れに付ける。青娥の指先が汚れる。その尿が付着した指を青娥は今度は自らの口元に持っていった。そして、躊躇いなくその指先を舐めたのだった。

「うん。おめでとう」
「えっ、えっ」

 混乱の極みだ。嘔吐し、殴られるかと思えば何故か排尿を強要され、出した尿の味見をしたかと思えば祝福の言葉が投げかけられる。本当に本当に意味が分らなかった。妖夢が目を点に、呆然としていると青娥は顔を綻ばせた。

「無事、受精着床したようね。おめでたですよ」
「あ…」

 それ以上、言葉など出るはずもなかった。



 元よりその目的で妖夢はここに拘束されているのだった。
 青娥は何事かを宮古に申しつけると妖夢のお腹に一枚、御札を貼って戻っていった。その日から種付け役のキョンシーは訪れなくなった。これ以上、犯す必要がなくなったからだろう。そして、変化は次の日から現れ始めていた。





「…もうこんなに大きく」

 更に数日後、妖夢は自分の身体を見おろした。数日前までは歪に形を変え始めた自分の性器が見えていたが今は小高い山に阻まれ見えなくなっていた。十月十日と経たずして妖夢の胎は膨れあがっていたのだ。
 青娥は受精用のキョンシーの陰嚢も調整してあると言っていた。この急激な成長はそのためだろう。お腹に張り付けられた御札や毎日の食事にもお腹の中の子の成長を促す禁呪が施されていたのだろう。
 内側から押され突起を晒している臍。痣のような妊娠線。透けて見える青筋。胸もきもち大きくなり僅かに黒ずんだ乳首からは少量ではあるが母乳が流れ出てきていた。そうしてお腹の中に新たにできたものは今や内側から妖夢を蹴り、自分は母とは違う生き物であるということを誇示していた。

 自分の中に自分とは違う生き物が出来る。それも望んでの事ではなく無理矢理、孕まされたものとなれば嫌悪さえ催しそうなものだ。だが、妖夢の顔には途惑いこそあれ、根本的な負の感情は見当たらなかった。いや、微笑さえ浮かべていた。どのような状況であれ子は子だということだろうか。いや、こんな状況だからこそだろうか。こんな薄暗くかび臭い地下墓場の壁に押しつけられ、陵辱され、物の様に扱われ、人間としての権利を全て奪われているからこそ、せめて人並の愛を子供に向けたいと思うようになっているのだろう。妖夢は自分の子の顔が早く見たくて仕方なくなっていた。産気や陣痛なんてものは流石に分らなかったがもうそろそろだという予感はあった。

「あっ…」
「こんにちは。どう具合は?」

 そこへ青娥がやって来た。ここ数日、青娥は時折やってきては妖夢にお腹の子の具合や妖夢自身の体調を尋ねた。まるで主治医のようだ。そのお陰か幾分、妖夢は青娥に気を許していた。青娥の挨拶にもきちんとこんにちわ、と応える。

「はい。今日はよくこの子、私のお腹を蹴るんです。あっ…また。青娥さん、そろそろなんでしょうか?」
「そうね」

 言って妖夢の大きく膨れあがったお腹を触る青娥。ふむ、と頷き確かに十分のようね、と呟いた。

「そうですか。ありがとうございま」

 す、とは言い切れなかった。触診が終わっても青娥は妖夢のお腹から手を離さずまるでお腹の中の子の具合をしっかりと確かめるように撫回していたのだ。否。撫回しているのは妖夢のお腹、その表面ではない。お腹の中、赤子そのものだった。

「なっ…!」

 言葉を失う妖夢。妖夢のお腹に青娥の手が突っ込まれているのだ。しかも、それはお腹に切り込みを入れて手を突っ込んでいるという外科的な方法ではない。まるで桶に張った水に手を浸しているように青娥の手が妖夢のお腹に沈み込んでいるのだ。

「なにを…して…」
「うんうん。程良く育っているわ。これならヤンシャオグイの材料として申し分ない」

 一人したり顔で頷いてみせる青娥。腹の中に手を突っ込まれている妖夢は気が気ではなかった。止めてくれ、そう叫びたかった。その子は私が大きくした子供なんだぞ、乱暴に扱うな、と。

「ところでヤンシャオグイの力の源をご存じかしら?」

 不意にそんな話題を青娥は妖夢に振ってきた。無論、妖夢は応えようがなかった。大陸の仙術になど明るいはずがないからだ。青娥も分っていて質問したのか、すぐに答らしきものの講釈をたれ始めた。

「それは胎内回帰を夢見る子供たちの欲望。だって、そうでしょう。温かで住み心地がよかった母親の胎内から無理矢理ヒリ出されたかと思えばすぐに死んでしまったんですもの。そりゃ、還りたいと思うのが当然ですよね。子供というものが純粋である以上、その力はとてつもなく、強い」

 そこで一端話を切り、青娥は下から妖夢の顔を見上げた。見上げ、そしてきひり、と背筋が凍るような凄惨な笑みを浮かべた。

「道術の一般論において強力なヤンシャオグイの材料となる子供は多くの経験を積んだ子供の遺骸、と言われています。これは当然でしょう。経験を積んだものの方が強い。何にだって当てはまる考えです。ただし、経験を積んでいると言うことはそれだけ賢しく、力もあると言うこと。経験を積んで死んだ子供のヤンシャオグイは強力な分、扱いが難しいのです。それに経験を積んだ子供の遺骸なんてものは余程の偶然でもなければ早々に手に入りません。弾幕ごっこで使い捨てするにはコストパフォーマンスが悪すぎる。そこで捕えた女を苗床に子供を量産する方法を考えたのですが、それはそれで力の弱いヤンシャオグイしか作れない。ワンオフには敵わないものの大量生産品でもそれなりに力を発してもらわないと困るのです。ならば、何かしらもう一手間かけてやればいい。残念ながら子に経験を積ませるという方法は手間暇がかかりすぎて現実味がありません。だったら、別の方法で子の力を、欲望を強化してやればいい。貴女には経験がありませんか? 道に迷い自分の家が何処にあるのか分らなくなったことが。その時、貴女は心底不安になり何でもいいから兎に角家に帰りたいと思いませんでしたか? それが自分が遊び呆けていたからなんて理解可能な理由ではなく、無慈悲に無情に無理矢理に、第三者の悪意によってそれが行われたなら? それは喩えるなら誘拐殺人が一番妥当でしょう。むごたらしく悪意に満ちて、とても凄惨。そんなものに晒された子供が一際強く家に帰りたいと願うのは当然の事。それと同じ事を胎内の子供にしてやれば、その子は何よりも強力な胎内回帰の夢を抱き強力なヤンシャオグイになる。つまり…」

 その後に続けて言われた言葉を妖夢は理解できなかった。

 なんだって、と疑問符を浮かべる。何を言っているのだろうこの人は。そんな残酷なことを口に出来るなんて。気が狂っているに違いない。お腹の中から赤ん坊を引き摺り出す、なんて…!

「産道を通らぬ出産による母子間の愛情の否定、を唄ったのは何処の殺人鬼でしたか」

 ずるり、と音を立て妖夢の腹から青娥の腕が引き抜かれた。血まみれの腕には一抱えほどの肉塊が乗っていた。大きな頭。小さいながらもしっかりと爪が生えそろっている手足。だらりと伸びた臍の緒。暫くするとそれはおぎゃぁおぎゃぁ、と泣き始めた。あぁ、と嘆息を漏らし妖夢も涙を流し始める。自分の子供。お腹の中で育った子供。愛おしい。抱かせて欲しいと願った。今日ほど両手足が拘束されていることを疎ましく思った日はなかった。

「その考えには賛同できません。お腹を痛めず産まれた子とて矢張母親に愛を求めるものなのです。母がお腹を痛めずとも産んだ子に愛情を注ぐのと同じく。そして、その力こそが私が欲している力なのです」

 おぎゃぁおぎゃぁと顔を歪めてなく赤子を掲げる青娥。その様は古代の神に生け贄を捧げる神官に似通っていた。いや、それそのものだ。捧げる先が邪教の神か、邪悪な術を使う自分か、その違いしかない。そうして、ぐっ、と青娥は両手に力をこめると、まるで、そう、まるで粘土細工でも壊すよう、妖夢の目の前で腹から引き摺り出したばかりの赤子を丸めてしまった。文字通りの形状に。

「あ、ああ…」

 言葉なく震え、目を見開く妖夢に自分の手の平の中のものを突きつけ見せつける青娥。血まみれの手の上にはビー玉大の黒い球体が一つっきり乗っているだけだった。産道を通ることなく産声を上げたあの妖夢の子のなれの果てだった。
 妖夢が打ち震えているのを尻目に青娥はなにやら呪文を唱え始めた。すると手の中にあった球体は音もなく浮かび上がり、ヴンと空間を歪ませるような音を発してその体積を十倍程度まで大きくした。それはあの妖夢を落とした青娥のスペルカード『ヤンシャオグイ』に使われた黒色の球状弾であった。

「成功ね。なかなかに強力なヤンシャオグイだわ」
「あぁ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 響き渡る絶叫は最早、怨嗟の声、地獄の悪鬼が吠える声色であった。自分が完全に拘束されていることも意中になく妖夢は暴れる。唸り声を上げ、喚き散らし、言葉にならぬ声で恨み言を吐き連ねる。

「貴様ッ! 貴様ッ! 貴様貴様貴様ッ!!」
「ああ、もう」

 鬼の形相で青娥を睨み付ける妖夢。血走った瞳。噛砕かん程に力のこめられた顎。引き攣った頬は修羅の形相だ。
 対し青娥はあくまでも常識の範疇に収まる表情をしていた。聞き分けのない患者を叱る医者のような。だが、その行いは言いようがないほどに狂っていたが。

「暴れないの。もう貴女一人の身体じゃないのよ」
「うぉぉぉぉぉ! 返せ! 返せ! 私の子供を返せ!」
「貴女のじゃないでしょう」
「黙れ! 殺してやる! 殺してやるぞ!!」
「ああっ、もう!」

 妖夢の怒声がついに琴線に触れたのか青娥は眉を顰めた。怒りの顔。そうしてそのまま青娥は激情にかられ妖夢に生れたばかりのヤンシャオグイを向けた。

「そんなに返して欲しかったら還してあげるわよ!」
「なっ…ぐッ!?」

 黒色の球体を妖夢の腹に押し当てる青娥。この状態のヤンシャオグイは高エネルギー体だ。じゅっ、と肉が焼ける音と臭いが発生し、妖夢の口から悲鳴が漏れる。

「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!」

 焼け焦げる皮膚。熔ける脂肪。沸騰蒸発する血液。崩れる臓物。母胎回帰の願いは呪と入り交じり邪魔をするもの全てを破壊する力となる。喩えそれが母の身体その者であろうとも。

「あっ、しまった!?」

 はっ、と表情を崩し青娥は慌てて手を離すが時既に遅かった。妖夢は悲鳴をあげることなく項垂れ、ぴくりとも動かなくなってしまっていた。その下腹部…いや、下腹部があった場所には今や残っているのは背骨と背中の肉の一分だけで、腸や肝臓と言った臓器は丸ごと焼け焦げなくなってしまっていた。そうして、代わりではないだろうが、子宮があった位置に同じく黒こげの人の赤子を模したような不気味なオブジェが残されているだけだった。

 暫くの間、青娥はそんな妖夢の亡骸を前に自責の念にかられながら肩を落としていた。一時の感情に惑わされて大義を忘れるなんて先任失格ね、と。だが、ややあってからやってしまったものは仕方がないと気を取り直した。

「まぁ、新鮮な死体が一つ手に入ったから良しとしましょう。芳香、これを壁から外しなさい。キョンシーの材料にするわ」

 かしこまりましたー、と声を上げる宮古。陰惨な有様に顔もしかめず寧ろ嬉々としているのは彼女が脳天気だからだけではなく新しい仲間が増えることを喜んでいるからだろうか。

「それに…母胎はまだまだ手に入りそうですしね」

 言って青娥は上げた手の平に水晶玉を一つ出現させた。仙術で創られた遠見の水晶玉。そこには霊廟をめざし飛翔する三人の少女たちの姿が映っていた。



END
法務局と書いてブロイラーハウス(養鶏場)と読んでしまう程度の能力。
sako
http://www.pixiv.net/member.php?id=2347888
作品情報
作品集:
29
投稿日時:
2011/09/18 23:35:41
更新日時:
2011/09/19 08:35:41
分類
青娥
妖夢
宮古
ヤンシャオグイ
ボテ腹
1. 名無し ■2011/09/19 15:31:05
この邪仙は普通にこういう奴だから困る。
産廃二次でよく見る、邪悪化されまくった小悪魔が何を間違ったか
原作に登場しちゃいましたみたいなイメージのキャラ。
2. 名無し ■2011/09/19 17:10:46
それでも…

それでも…茨木華扇ならなんとかしてくれる…!
3. 名無し ■2011/09/19 20:46:49
よかったー。
さすが青娥ちゃんは鬼畜や。
4. NutsIn先任曹長 ■2011/09/19 22:28:01
まだ『神霊廟』はプレイしていないのですが、そんな外道キャラが出るのですか!?
久々の自機キャラ昇格に浮かれている妖夢には、たしかにキツいですね……。
魔理沙のケースとはまた違ったモノを感じます。
って、妖夢、本当に男を知っていたのですか!?

でも、そんな敵キャラでしたら、
霊夢達や全身全霊になった妖夢に陰惨な報復をされても、
良心の呵責に苦しめられる事は無いから良いですねぇ。

霊夢達に操られた芳香や種馬君一号(例の男キョンシー)にファックされやがれ!!
5. 名無し ■2011/09/20 10:39:25
強制妊娠は良い。心があらわれるようだ
孕ませ推奨キャラなんてワクワクしちゃいますね
いろんなキャラにタオ胎動して欲しいです
6. 名無し ■2011/09/20 23:45:35
もうかいたのか!はやい!きた!青娥きた!ヤンシャオグイきた!これで勝つる!
妖夢はアワレにも母の役目を果たせず死んでいた
7. 木質 ■2011/09/20 23:55:35
清々しいほどに腐れ外道。
部下のキョンシーたちを大事そうに扱ってそうに見えて、あっさり捨て駒にしそう。
残りの三人を相手にして、旗色が悪くなると芳香に理不尽な命令を下して、その隙に脇目もふらず逃げ出す姿が容易に想像できる。

そして何より、拘束されて良いように玩ばれる妖夢の描写ひとつひとつが可愛い。
彼女なら改造男根キョンシーの子でも、愛情を持って立派になるまで育てきりそう。

悪人の青蛾と健気な妖夢。素晴らしい組み合わせでした。
8. 名無 ■2011/09/23 01:36:00
このSEGAちゃんとは気が合いそうだけど
仲良くはできそうにないです
9. pnp ■2011/09/23 08:14:24
面白かったです。
10. 名無し ■2011/09/24 22:57:02
自機落ちした妖夢の成れの果て
同じく咲夜のストーリーもありそうだな
そう、自機落ちとはとてもとても恐ろしいものなのですよ
11. 名無し ■2011/09/26 02:59:15
妖夢は人間じゃないから大丈夫そうだけれど、この手の拘束は鬱血して壊疽とかしそうなのが一番怖い
足の壁との接点とかに体重がかかって、ぐじゅぐじゅの褥瘡になったりしそうで…
12. 名無し ■2011/10/01 23:53:02
妖夢ちゃんお母さんになれたんやね……よかったよかった……?

強制妊娠シチュ、楽しませてもらいました。
13. 名無し ■2011/10/04 03:01:13
埋め込み、脱糞セックス、強制孕ませとてんこもりで愚息もキョンシー並に硬くなります

欠損キョンシー妖夢ちゃんVS3人も楽しみ
14. 名無し ■2011/10/05 20:59:36
この人調べるとすごいエログロ要素ばかりが出てくるんですよね。ほんと
キョンシーの整備とかでこの妖夢みたいに人体改造なんかもできそうですし。
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