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『東方奇黒球 ~ mission8 中盤戦』 作者: ヨーグルト

東方奇黒球 ~ mission8 中盤戦

作品集: 29 投稿日時: 2011/11/20 01:42:48 更新日時: 2011/11/20 10:42:48
そーれいっちにいさん!!

新しいミッションだ。
この黒い玉、この大阪の地域では「黒アメちゃん」と呼ばれていて、一部のメンバーはそれを気に入っている。

外の世界でもこれと同じ様な物体が在るらしく、今私たちが居る「幻想」の世界では「幻想の黒アメちゃん」と呼んだりもする。
この黒い玉に幾つか制約が有るらしく、他人に秘密をばらすなとかは普通なのだが、この幻想の世界においてのこれにはもう何個か他にルールが在ったりする。

『幻想の世界のガンツ(黒アメちゃん)は、同じ幻想の世界との別地域のメンバーとの会話は可能だが、
 表世界(外の世界)との通信及び会話等の機能は使用不可能である』

私の言葉で表せばこんな感じだ。
このルールは私が来る以前に他のメンバーが知っていたし、私が考えた訳でもない。

転送が始まる。

私たち、「幻想の大阪チーム」はスーツを着て武器を手に取り、戦闘態勢に入った。
状況が飲み込めない奴らに、救いの手は差し伸べられない。

それが、大阪での伝統的なモノだった。


















「何やお前ら」
「何……これ……」

狼狽える幻想郷のガンツメンバー。
自分たちの目の前に姿を現したのは星人などではなく、今自分たちの前に居る、同じ様にスーツを着用し、同じ様にXガンやショットガンなどの武器を所持した人間達であった。
中には人間じゃない者も混じっている。

「待って」

美鈴が呆れた様な声を出す。

「この人たちが星人かも……」
「星人?」
「星人!?」

メンバー達が銃に手をかける。
向こうの相手も銃に手をかける。

「んだとォ!?」
「星人はお前らやろがァ!!」
「こいつらが星人や!!」

幻想郷のメンバーと大阪側のメンバーが互いに、Xガンやらショットガンやらを向け合い、牽制している様な形になる。
牽制などしていないのかも知れない。幻想郷側のメンバーは目の前の人たちが星人かどうか分からないから引金を引かないでいるものの、大阪側のメンバーはほとんどの人が撃たんばかりでいる。

そんな状況で、岡崎とちゆりが前に出て、自分が属す側の方を向いて手で制した。

「あんたらは星人と黒アメちゃんのメンバーの区別もつかない訳?」

岡崎は自分らと同じチームを挑発する様な口調で言い放った。
その言葉に、「なんやねん、お前ら」と言った先程の男が岡崎に詰め寄った。そして、顎にショットガンの銃口を押し付ける。

引金に指は掛けているが、力はまだ込めていなかった。

「俺らが殺されたらどうするつもりや!!?」
「馬鹿じゃないの? こいつらが星人なら私はとっくに殺してるよ」

岡崎は更に挑発する。男はいよいよと、堪忍袋の緒がキレたようだ。ショットガンの引金に掛けた指に力がこもる。

「死ねやぁぁあアアア!!」

「Είναι ότι εσείς.
Αυτό είναι ηλίθιος」

「!?」

その瞬間、岡崎のスーツが膨れ上がり、その数倍もの大きさになった拳が男の顎を強打した。
男はそのまま地面に崩れ落ちるが、自分の身に一体何が起こったのかを理解できていなかった様だ。自分の顎をさすりながら岡崎を見上げる。

「リーダーに逆らったら、どうなるって言ったっけ? 答えてみて」
「お、おぉぉ……悪かったよォォオッ!!」

「残念ハズレ」

岡崎は、そう言って地面に置かれていた巨大な銃を右手で拾い上げ、地面に転がっている男を全力で蹴り上げた。
体がくの字に曲がった男の体は空中を舞い、遠く百メートル先の駐輪場に突っ込んだ。止められていた自転車やらバイクやらを散らす様に吹き飛ばした。

同時に、男の体から血が散った。

「……驚かせてごめん。あの、えっと、北沢って言う男は、少し短気だからさ」

岡崎はそう言いながら、北沢と言う男に近寄って行き、右手に握られた銃を掲げた。
近く数十メートルの距離になると、北沢の顔を覗いたりしていたが、どうも不満そうな顔をした。

「まだ、意識は在るのね。さすが、80点保持の男。100点はまだだったみたいだけどね」

岡崎が銃を構える。

キュィィィィィイイイイイイイインン

幻想郷メンバーの目に、前回のミッションと同じ光景が映し出される。
既視感。

「さよなら、屑」

岡崎が銃の引金を引く。
その腕が跳ね上がると、男の位置が円形状の血だまりに変わった。あの時見たのと同じものだった。

霊夢の方をちらっと見たかと思うと、何も言わずに他のメンバーを連れてそのまま何処かへ行ってしまった。
幻想郷のメンバーが星人を倒す事を思い出して、敵を見つけに走り出したのは五分後だった。



「うわああぁぁああぁぁあぁぁあああああ!!」

その頃、萃香は先程遭遇したお歯黒の妖怪から可能な限りで全力で逃げていた。

後ろを振り返ると、変わらない和服の妖怪がずっと同じペースで追いかけて来ている。からんからんと音を立てながら、足の速さとは合わない速さで走っている。
近くに居る傍観者である一般人は、その様子を押さえようと携帯電話で撮影しようとしたり追跡したり、「気持ち悪い」と言ったり、怖じ気づいて逃げようとしたりするだけであった。
助けようとする者はいない。

それは最もであったかも知れない。

やがて、萃香はお歯黒の妖怪に追いつかれ、腕を掴まれて捕まってしまった。
お歯黒の妖怪は萃香の頭を包み込む様に、手を添える。

そして、口を開けて萃香の頭部を丸呑みしようとする。

「おいしそう……」
「うわああああああぁぁぁぁ!! 助けてええええええええええぇぇぇぇッ!」



ダンッ

「目標を補足。排除に移ります」
「あまり派手にやるな」
「分かっています」




















































「……」
「……」

大阪側に属するメンバーのうちの二人、魅魔とマエベリー・ハーン。
二人はこの幻想郷に出現した妖怪、ガンツ側では星人と称されている

「この状況をどう思うか、ハーン女史」
「蓮子の予言が当たりかねないわね…他の地域でも似た様な予想は在るって聞いてるけど」
「そうだな……ん…」

ハーンは立ち止まり、少しだけショットガンを上方向に向けたが直ぐに下ろした。魅魔の顔をちらっとだけ見た。
魅魔は、その行動に対して少しの疑問を投げかけた。

「どうか、したか?」
「あれ、見える? あの紅い館の上」
「ん?」

ハーンが顎で上を指す。
魅魔はその指の指す方向を見やる。そこに、星人らしき存在を確認した。

そこに居たのは、星人と思われる個体が三体。
天狗の様な形をした巨体、頭部が犬の頭をしている人形の妖怪。そして、その二体に挟まれる様に立っている、和服の妖怪。
他の二体とは違う存在感を放ってはいるが、それほどの体格は無いようだ。

「やつら、100ぐらいありそうよ」
「そっかなー…」



殺伐とした空気。
ミッション開始時に比べると、その時よりはこの村は静かになっていた。

『にとりの姿が見当たらないから探して来てくれ』

そう言われた妖夢と小悪魔は静まり返った人里内を探索していた。
この中ににとりがうろついていたりくつろいでいたりしているという確信は無いが、なんとなくこの辺に居ると思っていた。
もちろん、星人に遭遇するかも知れないと言う危険を冒して。

「このミッションが終われば…」
「終わる筈が無い、です…コレごときが最後のミッションなわけが無いですから…」
「そう、ですね…っ?」

ふと、小悪魔の足が止まる。
それに合わせて妖夢の足も止まる。

二人の視線の先に、二つの何かが姿を現した。
この二人には判っていた。その存在がこのミッション内で殺すべき星人であると言う事は。

だが、動かなかった。
小悪魔は特に。

二人の目の前に現れたのは、般若のお面を付けた星人と…福の面をつけた星人。二体は互いに長身。
同じ様に刀を一本ずつ所持している。

「っ…」

反射的に妖夢は刀の柄まで手を持って行く。
しかし、その言葉は般若の星人の言葉で止められた。

「まて、まてまてまて、おぬし達ヒトえではなかろう…」
「……」
「なにがしそれがしキデンら…」



やがて、妖夢達四人(星人二人含め)は一緒に歩き出した。
小悪魔はまだ怯え、警戒しているが、この般若の星人と小面の星人は攻撃をしてくる様子は無かった。

ただ、妖夢は小面に対しては少しの注意を払っている。
般若は喋るが、こっちは殆ど口を開いていないのだ。

喋ったときでも

「うふふ…臭い臭い…」

この程度。
その笑い方は不快かつ不気味で、両者に探り合いをしている気分にさせた。

「臭ッ臭ッ……バカ…うふふ…」
「はははははは」

その小面の笑いに合わせる様に笑う般若が、実に気持ち悪い。
小悪魔はその二体に決して、視線どころか話を合わせようとはしなかった。

「刀…その刀… 見たいぞその刀、刀! う〜んみたい」
「……」

般若の方は唐突にこんな事を要求して来たりもしていた。
小悪魔は汗だくになってその状況を見守っていた。万が一、刀を見せてその刀で妖夢が切られたら…

何て事を考えた。



そんな四人の向かう方向に三人程のガンツメンバーが出て来た。
妖夢と小悪魔の二人に見覚えは無いから、恐らく大阪側のメンバーだろう。

三人のうちの一人が、巨大な銃を向けている。

嫌な予感がした。

「来るぞッ!!」
「え?!」

その予感は的中した。

妖夢達はバックステップで後方に下がった。
その瞬間にもともといた場所が、円形状に大きく沈む様に窪んだ。

撃った男は舌打ちした。

「よけた!! アイツら避けよった」
「やっぱ足から潰すか、セオリー通りやな」

大阪側のガンツメンバーは狂っていた。
例え、星人を殺す側であろうと、少しでも星人と同伴していれば容赦なく殺そうとして来るのか。

妖夢は、刀を抜いた。
小悪魔が止めようとしたが、聞かなかった。

「キモイのがおるわ!」
「どれや?!」
「全部キモイやん!」

妖夢がガンツソードを二本構える、般若も小面も態勢に入った。

「刀持ってるやん!」
「うおー! 切り合いかっけー!!」

頭のリボンを外して、一気に踏み出した。



その頃、萃香は駆けつけた勇儀の手助けで取り囲んでいた星人を一掃した。
時間が経つ頃、霊夢達と合流していた。

「妖夢は、小悪魔は?」

その問い掛けには、今居るメンバーは全員頭を振る。

霊夢がそこらに散らばっている星人を倒している間に、二人の姿は見えなくなっていた。
正確にはにとりの姿も見当たらない。

「ったく、仕方ないわね…」

気付けば、アリスの姿も見当たらなかった。




















































「……」

ものの数分が経過した頃には、妖夢達四人に襲いかかった大阪のメンバーは、圧倒的力の前に殲滅させられていた。
特に、般若と小面の早さを捉える事が出来なかったのが、三人の敗因だった。

妖夢は内心、般若達が奇襲を仕掛けてくるんじゃないかと警戒していた。
般若との距離は大分とれている。
小面とは般若以上に離れている。

ただ、小悪魔は小面に異常なまでに近い。

そろそろだった。

「うわあああぁぁぁぁぁぁッ!!」

そんな中、妖夢の予感は的中した。

小面が小悪魔に向けて刀を抜くやいなや、人間では不可能な早さで彼女の両腕を切り落とした。
地面に倒れた小悪魔は、自分を見下ろす妖夢に救いの視線を向けた。

妖夢の二本のガンツソードは伸びたままである。

「クサイクサイ」
「のう……クサイのう…」

般若がその巨大な足で小悪魔の顔を踏みつける。

「クサイ!! ふふふふ、やっぱりクサイ!!」
「キデンら…クサいぞ… 斬りとーてしょーがないわ」
「そう、ですか…」

小悪魔を一瞥。
妖夢はガンツソードを構え直し、柄を握り直した。

「こっちもイカレタ奴らとはやってられないですよ…」

般若と小面は妖夢を挟み込む様に立ち、髪を風になびかせた。
そして、宣言した。

『まずは指一本!!』

二人の星人が刀に手を掛けた。

キンチョウ。

「指ッ!!」
「指ッ!!」

一閃。

小面の振り抜いた剣先が妖夢の髪の毛を僅かに切り取った。
妖夢のその回避先を読んだかの様に般若の刃が頭上から振り下ろされる。

それも横に躱す。

「それ!! それそれ!!」

リボンの端が持っていかれた。

「それいッた!!」

次の瞬間には、妖夢は右手の人差し指が切断された。

「ほらほらほらッ」
「ほらほらほら ほらッ」
「もッと、もッとォ!!」

次々と繰り出される般若と小面のコンビネーションによる連続した斬撃により、妖夢は徐々に体中に傷を負っていく。
スーツにはいくつもの小さな傷が、鼻に微妙な切れ込み、髪の毛も何回か切り取られ、頬や顎にも刀の切れ痕がどんどん刻まれいった。

「目玉をつくぞ!!」

小面が宣言。
その刃先が妖夢の目を狙う。

「首はまだ早い、首はまだといッたろうッ!」

その刀を、態勢を下げて避ける。

後ろからは般若からの斬撃が同時に迫っていた。
その二つの攻撃を躱し、小面の直ぐ脇に退避する。

それと同時に、小面の両足をソードで切り落とし、般若側に転倒させた。

しかし、その小面を飛び越える様に跳躍して、鬼神の如く刀を振り下ろす。
その後も何回にも渡る連続攻撃が続く。
妖夢は持ち前の技術と能力によってそれを次々と回避する。

そして、ほんの一瞬だけ見せた隙を見計らい、般若の両腕を切り上げで切り落とした。



「……」

もう一度、幻想郷のガンツメンバーは集合した。
ミッション開始時よりは星人の数が激減し、事態も大分収まっていた。

それでも、ガンツメンバーと大量の星人との衝突によって大打撃を受けた幻想郷は、異様な程に静まり返っていた。

一輪が、妖夢とその背中に背負われた小悪魔の存在に気付いた。
二人はボロボロ、特に小悪魔は腕が無くなっていて、スーツの効果は既に失われていた。

「小悪魔を助けたいの?」
「いいえ。……別に。…この指を元に戻したいだけです」




















































「ゴキブリ共はまだ邪魔をするのか。いい加減に我々への危害を加えるのを止めてもらいたいな…。そろそろ、全勢力を掛けて奴らを星ごと全滅させるか……」

そいつは、画面に向き直った。

「緊急召集。一ヶ月後に、ゴキブリ共と…そのゴキブリ共が住む星に仕掛ける。至急、集合しろ」



このミッション終了後、一ヶ月後にあの大惨劇が発生する事は、ガンツメンバーにも一般人にも予想は出来なかった。
どうも、お久しぶりです。
有言不実行なヨーグルトです。

次回で何とかとか言っておいて終わらなかったと言う始末です。
次回からカタストロフィが始まる予定です。

このぐだぐだな大阪編もどきの話も終わります。

ではまた次回。

P.S.
『約束』の第二話は、奇黒球のmission8が終わり次第アップします。
ヨーグルト
作品情報
作品集:
29
投稿日時:
2011/11/20 01:42:48
更新日時:
2011/11/20 10:42:48
1. NutsIn先任曹長 ■2011/11/20 11:02:05
待たせてくれましたね。
もう、メンバーは身内しか信じられない殺伐とした状況。
さらに、よりヤバい状況になりつつある、と。

この話と『約束』の続き、楽しみにしていますよ。
2. 夕月 ■2011/11/20 19:11:17
続きものらしいので、全部読んできました!
画面に向き直った”そいつ”の正体が気になりますね〜

次回も期待しています!
3. ヨーグルト ■2011/11/25 19:31:44
>先任曹長様
待たせてしまってすいません!

各地域でのメンバー内での統制と信頼は完全に崩れた訳ではないです…!

>夕月様
そいつの正体は最終回近くで…!
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