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『幻想郷外来者録1』 作者: johnnytirst

幻想郷外来者録1

作品集: 30 投稿日時: 2012/06/16 21:05:15 更新日時: 2012/06/17 06:05:15
広葉樹林の開けた場所に一台のジムニーが止まっている。
この車は、小型で軽ナンバーを背負っている割に馬力があり走破性もよく、起伏が激しい場所を走るのにうってつけの車両と言える。またそういった理由から、登山やクライミングなどで主に山を活動フィールドとした趣味人に好まれている。

ジムニーの車内では助手席と運転席に人が一人づつ乗っている。
寝袋にくるまっているためいまいち体型はわからない。

フロントガラスに長方形の光が写り、その直後ピピピッという規則的な電子音が車内に響いた。
ダッシュボード上に置かれた携帯が設定された定刻を告げたためである。

その音に運転席側の男が目を覚ましおもむろに携帯をとり画面をタップしてアラームを止めた。
携帯の明かりが男の顔を照らす。
浅黒くシワが多いが全体的に整った顔立ちで、綺麗に整えられた頭髪、ひげにも白髪が混じっている。

(5;30、そろそろか)

「おい、誠、そろそろ起きろ」

「んあ、」

誠と呼ばれた助手席の男は運転席の男と違い、顔は綺麗な張りがあり若々しい、しかし整った顔立ちはどこか運転席の男と似ている。
誠が間抜けな声を上げるのを尻目に、運転席の男は車内灯のスイッチを入れ、寝袋を脱ぎ後部座席に投げ、ドアのサイドポケットから地図を取り出す。
ついでに昨日、ここにくる前にコンビニで買ったサンドウィッチと、一緒に入れてあるコーヒーの入ったポットを取り出す。

「早いね、光彦爺ちゃん、多分、この時期、日の出は6時半くらいだぜ?」

「誠は人と会う約束した時、約束した時間におきるのか?」

「そうじゃないよ、今から準備しても6時くらいには済むし、それに夜間の発砲は違法、まぁ、処分されたって話はあんま聞かないけど…」

「知っとる。確かに早い、が早いに越したことはない、それにこの時間、鹿はまだ寝とる、連中が餌をさがしだすまではまだ時間があるし今回は待ち伏せ猟だ、狙うのは菜食後の帰路だ、すぐに撃つようなことはない、だがその前にポイントに行って待ってる必要がある、寒さに慣れとく必要もあるしな。わかったら早く寝袋脱いで飯食え、ほれコーヒー」

「はぁ。」

誠の若干の抗議がまじった返事を聞き流しながら、サンドイッチ片手に光彦は地図を確認する。うまくいけばこのポイントから動かずこのルートを通る鹿を撃てる。そうすればわざわざ追う必要はない。糞や足跡を見る限りここを通る確率は高い、待機ポイントもこのルートの位置より低い位置を選んだ、朝は気温が下がり気流が下向きになる、自分たちの匂いを鹿に感ずかれないようになるべく気流の風下に行くようにポイント設定する。

ポイントを確認してるうちに、横では誠が飯を食べ終えコーヒーを飲んでいた。さすが早飯はレンジャー連隊並を自称するだけはある。

「にしても暗いな、なんも見えねーわ。」

「出る前に荷物のチェックしとけ、鹿を見つけて装弾しようと思ったらポーチ内に弾がありません。なんてことのないようにな、」

「大事、ほら12G(ゲージ)弾12発入ってる、後ろのベネリM3のストックのホルダーにも5発、全部3インチの強装弾、スライドにはmagpulAFG2、とSUREFIREのタクティカルライトもつけて来たし。」

「誠はどこかのテロ対策チームかなんかか?これから行くのは浅間山荘でも三菱銀行でもないぞ?」

「わーってるよ爺ちゃん」

誠の返事を聞き流し、光彦は自分のもってきたポーチを確認する。
そこには装弾済みのM1Aライフル(M14の民間仕様モデル)の20連弾倉(マガジン)がしっかり詰まっている。もっとも日本の法規にあわせ詰め物をし、5発以上装填できないようになっている。

「おっとGPSの電池チェックしとかないと。」

「あるに越したことはないが、無くても木の生え方や年輪と地図見ればわかるだろ?最悪コンパスもある。」

「爺ちゃんはわかってない、このガーミン一台でどれだけその時間を省けるか。」

「ふむ…」

最近の物にはどうもついていけない。
自分たちは、知識を得てそしてそれを実践で応用し自分のものとしてきた。それが普通だった。
しかし自分たちが体で覚えてきたことも、今は、誠の持っている手首に付けられる程度の小さい箱さえあれば知識や経験がなくてもすぐにできてしまう。
確かにその箱には自分たちが体得してきた知識や経験に敵うものが詰まっているのだろう。しかし光彦にはその箱から発せられるディスプレイの光が「お前達はもはや過去の遺物だ」と言い放っているように見えて仕方なかった。

「あ?おかしいな…」

そんなことを考えていると誠が疑問の声を上げた。

「どうした?」

「位置データの取得ができないみたい。何度やってもエラーコードが表示される」

「まぁ、誠もこの機にコンパスと地図の使い方を覚えろ。今みたいなこともあるわけだし。」

「まぁ確かにどっちも使えるのが理想だよね。待ってて、もう一回再起動してみる。」


光彦は内心ほっとしていた。
しかし本来なら時代の流れについて行くべきなのだろう。
実際使い方を教わろうともした、が先述のような正体不明の拒絶感のようなものに遮られどうもためらってしまう。

(そういえば、定年ちょっと前にマシニングが導入された時もこんな感じだったな…)

若い時に光彦は集団就職で工場に勤務した。そこでの仕事にマニュアルは無い、全て自分の体で覚えるしかなかった。
そんな光彦には全自動と言う名の機械はすべて自分への戦力外通告に聞こえた。
実質そうである。本人にしかわからない微妙な感覚を頼りにした職人芸、一方でマシニングならコマンドでだれでも同じ物を安く精密に作れるのだから。

(親父らもこうやってアメリカに負けたんだったな…。)

やるせない思いを振り切るように窓の外に顔を向けた。

辺りがや明るくなってきている。日の出が近いようだ。
これほど寒くても青々しく、いきいきと生える竹が見える。

「…ん…竹?」

おかしい。
辺りを見回す。
バックミラー、フロントガラス、バックガラス…すべてから朝靄に包まれた青々しい竹が見える。

「どうしたん?爺ちゃん。」

せわしなく首を動かし辺りを観察する光彦の様子に気づいた誠は相変わらずのエラーコードを吐き出すガーミンから目を離し、怪訝な顔で言う。
誠の問に相変わらず外を見回しながら光彦が答える。

「なんでだ。なんで外が竹林なんだ…」

「え?」

一瞬戸惑った誠だが、光彦越しに見た外の風景からそれらが嘘でないことを知る。

「マジかよ…」

誠はいかにも現代の若者らしい感嘆の言葉を上げ先ほどまでのガーミンの不調に細ませていた目を大きく見開きを胴体ごと振り向きながら外をうかがう。

「どうゆうことだ。」

「いや爺ちゃん、俺に聞かれても…それよりも爺ちゃんあれ…」

様子をうかがっていた誠の動きが光彦を見て止まった。そしてその指は光彦の更に後ろを指している。

「ん?」

それはちょうどジムニーの正面からちょうど真横、3時方向にいた。
目は赤くひかり、朝靄の中でもはっきりと見える。大きさはツキノワグマ程度だろうか…

「こりゃああんま刺激しないほうがいいな…奴さん気が立ってる。」

「逃げると良くないんだよね?爺ちゃんもしかして撃つの?」

「わからん…おじいちゃんも熊を撃ったことは一度しかねぇ…」

光彦は一度友人のマタギとともに熊撃ちを行ったことがある。しかしそれも一度だけで多少とは言えマタギである友人のお膳立てあってのことである。
ただ、対象が分かってる以上、やることは無視か射殺かである、このままこちらが害のない存在だと分かれば向こうは獣。伊達や酔狂で人を殺したりはしない。
だが向こうが空腹のときは別だ。熊は相変わらずこちらを見ている。なんのアクションもない。

「爺ちゃん、熊は基本的に臆病なんだよね?…人工的な音を嫌うって言うし、エンジンかけてみれば?」

「やめたほうがいい、この時期にホイホイ出歩いとる熊は"穴持たず"の可能背が高い。」

「冬眠できてないってこと?」

「そうだ。」

基本、熊は秋ごろに冬眠に備え十分に栄養を取る。しかしエサが十分に取れず冬眠できない場合それらは穴持たずとよばれ、生物とあればなんでも襲う危険な存在となる。

(やるしかないのか…)

なにか、何か策はないか、あまり危険な行動には出られない。
ふと熊の近く、ほぼ同距離の位置に熊と同じ程の大きさの岩を見つけた。熊に気を取られていて気が付かなかったようだ。

「誠、測定器とってくれ。」

「レンジファインダーのこと?」

「ああ」

熊から目を離さずに誠に言った。
誠は後部のトランクルームにあるポーチからレーザーレンジファインダーを取り出し光彦に渡す。

「ありがとう。」

光彦は短く答えるとジムニーのキーをスタンバイレンジまで回す。
静かにエアコンから冷たい空気が吹き出しやや遅れてカーステレオから場違いなアニメソングが流れた、誠が持ってきたCDだ…。

「ステレオとエアコンを消してくれそしたらおじいちゃんの銃をとってくれ。」

「あ…お、OK。」

少し焦った様子の誠だが、ステレオをオフにしエアコンを止めると、助手席から器用にトランクルームに移りケースから光彦のM1Aを取り出しにかかった。
光彦はその間に運転席のパワーウィンドウを下げレンジファインダーを先ほどの岩に照準し距離を測定する。

(400か…)

…スコープの1ミルドット(スコープのレティクル(十字線)に等間隔で置かれている丸い点)で角度1ミル、1ミル違うと目標距離1000の時1m着弾点がずれる、鼠との距離は400てことは1ミル40pだ、俺のスコープは300mに0点を合わせてある400mなら36cm下に着弾する。ならば1ミル下に照準すればいい…4cmの誤差など状況で簡単に変わってしまうからこだわる必要はない

レンジファインダーから得た情報から光彦はこれら全てを一瞬で考える。
若いころ周りの友人が運転免許を取り、車を買う中、光彦は先んじて猟銃の免許を取り散弾銃を買った。
趣味とはいえ、そのキャリアも入れ込みも違う。

「爺ちゃん、これ」

誠がトランクルームから光彦のM1Aを渡す。
光彦はそれを無言で受け取るとベストのマガジンポーチから弾倉を取り出しM1Aへ装填。
そして助手席に敷いてあるクッションをパワーウィンドウの縁に置く。ライフルを安定させるためだ。

(あとは朝靄の湿気が悪さしないことだけを…)

光彦は助手席に移動し祈りながらチャージングハンドルを引き薬室に弾を送る。そしてライフルを先ほど置いたクッションの上に置き固定する。深呼吸し呼吸を整え、両目を開きスコープを覗く、熊は相変わらず赤いくひかる目でこちらを凝視している。
そして、予定通り中央より1ミルドット下の点を熊のアバラ三枚に置く。

(すまんの。熊よ。お前が生きたいように俺にも守らんといかん孫がいる。)

一瞬息を止め、トリガーを引き絞る…


突如、熊がきびすを返して逃げた。光彦は一瞬遅れをとるもそれをスコープで追う。
逃げ方は熊というよりもウサギのそれに近い。

そして先ほどまで熊がこちらを睨んでいた場所が炎に包まれた。

「うぉ!!」

炎の明るさに思わずスコープから目を離す。

「なんだあれ!」

トランクルームから見ていた光彦もその様子にただ驚くだけ。
炎は不自然にも燃え広がることなく消えていた。幻かとも思ったが、余程の熱だったのか炎が現れた周辺の竹が竹炭と化している様子がそれを現実であることを示している。

とりあえずM1Aライフルから弾を抜きライフルをパワーウィンドウから引っ込めるとそのまま助手席のドアにもたれかかった。
状況がいまいち整理できない。誠も呆けた顔で先ほどの場所を見ているだけである。

ふと助手席のパワーウィンドウが2回ほどノックされた。頭をつけていたために振動がガラス越しに伝わる。

光彦が振り返ると、そこには長い白髪のところどころをリボンでむすびそれと同じ柄の大きなカチューシャ状のリボンを頭につけて白のブラウスに赤いボンタンのようなスボンとサスペンダーという奇妙な身なりの少女が立っている。
ややつり目で口にはタバコをくわえ片手をボンタンのポケットに入れいている。

光彦が振り返ったのを窓越しに確認すると少女は咥えているタバコを取り煙を吐き出す。

「ここらの竹林のウサギは悪戯好きでねぇ、迷ったのなら案内するよ。」

光彦はますます混乱した。
設定変更。書き直し。前作はいくらなんでも無理がありすぎた。ロシア人とか出てきちゃったし。
今回はコンスタントにあげられるよう努力しますといってもいつもできてないorz
johnnytirst
作品情報
作品集:
30
投稿日時:
2012/06/16 21:05:15
更新日時:
2012/06/17 06:05:15
分類
設定変更
書き直し
前作引用有り
M1A
ジムニー
ガーミン
1. NutsIn先任曹長 ■2012/06/17 06:23:49
こりゃまた、懐かしい作品のリメイクですねぇ。
まだ私が産廃SS作家を始める前のヤツですよね。
確か中断して久しかった気が……。

愛用のタクティカルにカスタムしたベネリM3(Twitpic参照)とM2カービン(大藪作品に登場する30発用マガジンにフルオートを眠らせていない違法なヤツ)をスタンバって続きを楽しみにしています。
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