Deprecated: Function get_magic_quotes_gpc() is deprecated in /home/thewaterducts/www/php/waterducts/neet/req/util.php on line 270
『翠月』 作者: ニトレタ

翠月

作品集: 31 投稿日時: 2012/09/18 01:43:38 更新日時: 2012/09/18 10:46:55
ベッドに腰掛け、月を眺める。その姿がどこか寂しげで。触れることすら許されないほど脆いもののように見えた。
ルナサは、そんな彼女の姿がふっと消えてしまう幻覚にとらわれ、慌てて目をこする。そのとき初めて自分が目に涙を溜めていたことに気付いた。
まだ少し濡れている髪をそのままに、彼女の隣にそっと座る。
「月を見ていたの?綺麗な満月ね。」
「満月は明日よ。」
パルスィはそっけなく答えベッドに仰向けに寝転ぶ。その緑色の瞳に月が映り込み、とても扇情的だった。
「ん……」
体をこちらに向けてルナサの太ももに手を置く。ルナサはその手に自分の手を重ね、空いているほうの手でパルスィの頬をそっと撫でた。
「膝枕して。」
少し不機嫌そうにパルスィが言った。ルナサが体の下に手を滑り込ませると、パルスィは上半身を持ち上げ、そしてルナサの膝に頭をのせる。
もう一度頭を撫でると、パルスィは艶かしく息を漏らす。最近はこうして、パルスィを膝枕しながら月を見ることが日課となっていた。
彼女の金色の髪を指先でくるくると弄るルナサ。パルスィも、満更でもなさそうにルナサに体をくっつける。
「寝ないの?」
「膝の上に誰かの頭があって、寝ようにも寝れないのよ。」
パルスィは億劫そうに体を起こしルナサを見つめる。緑色の瞳にまっすぐ見据えられ、緊張のあまり目を外せない。そうしているうちに、彼女を愛したいという感情が湧き立ち始めた。
肩に手を回しパルスィを抱き締める。パルスィは抵抗もせず、なすがままにされる。そのまま横に倒れ込み、添い寝する格好となった。
またも彼女に潤んだ眼で見つめられ、ルナサは自分の枷が外れたことを悟った。
「んっ…………うぁ。」
少しばかり強引なキス。パルスィもそれを受け入れ、ルナサの首に腕を回す。
数秒の後、お互いに息を荒げながら唇を離した。
そうしてそのまま互いに抱き締めあい、二人は眠りについた。






静かに鳴く虫の声で目を覚ます。隣にいる彼女はまだ寝ていて、いつもは見せない儚げな微笑みを浮かべていた。
起こしてしまうのも忍びなく、つい癖で彼女の頭を撫でてしまう。それで目覚めたのか、パルスィが少しばかり声を漏らした。
ルナサの胸にしがみつくような体勢で寝ていたパルスィは少々気恥ずかしくなり、天井に目を逸らす。
気まずい沈黙が降りているところに、まるで見計らったかのように飛び込んできたものがあった。
「姉さんたち、いつまでも寝てないで起きてきてよ。私がご飯作ったんだから。」
「ありがとうメルラン。じゃあ、ご飯にしましょうか。」
ルナサがメルランの頭を撫でる。ただの姉妹間の触れ合い、日常の一部だというのに、パルスィは鳥肌が立つほどの嫌悪感に襲われる。頭が痛み、呼吸することも辛くなり、吐き気を催す。それが何に基づくものなのか、パルスィは認めることをしなかった。






「それじゃあ。私は出掛けるわ。さようなら。」
食後のコーヒーを軽く飲み干し、パルスィが言う。そのまま有無を言わせず屋敷を後にした。
三人とも呆気にとられていたが構うものか。彼女の家族に嫉妬するよりはよっぽどましだ。そう自分に言い聞かせ、またも嫌気が差す。
他にいくらでも方法はあっただろう。いや、それこそ甘えだ。自分のことは自分が一番よくわかっている。
もう、戻らない。





夜。風呂から上がり、いつものようにパルスィを待つ。今日は朝に出掛けて以来、彼女の姿を見かけていない。今日は満月だと彼女だって把握しているはずなのに……
日付が変わり、それでもパルスィは姿を見せなかった。
彼女は来るのだろうか。不意に不安になる。ほんのわずかな時間姿を見ていないだけなのに、寂しさで泣き出しそうになる。
「待ち人来たらず。ってところかしらね?」
いつの間に現れたのか、妹が茶化すように投げ掛けてきた。
「うるさい。彼女はきっと来る。それまで待ってるわ。」
「ふーん。」
興味なさげに相槌をうち、ルナサの横に座ろうとする。
「やめて!」
思った以上に大きな声が出てしまったことにも驚くが、それ以上に自分が実の妹に暴力を振るったことにとても大きなショックを受けた。謝ろうにも声が出ず、呆然としてしまう。メルランはそんな姉に呆れたように声をかける。
「そんなに好きなら大丈夫ね。私はもう寝るから、……おやすみ!」
慌ただしく部屋から出ていくメルラン。パルスィを想い続けるルナサは、メルランが涙をこらえていることには気付くことができなかった。
最近はパルスィがここにいない日はなかった。ルナサが無理を言って引っ張ってきていたというのもあるが、パルスィもそれを嫌がる素振りは見せていなかった。もはや同棲といっても過言ではないほどである。
……いなくなってしまったのではないか。根拠のない恐怖。
自分勝手なのはわかってるが、彼女がそばにいないと途端に心細くなるというのも事実だった。
彼女に、そばにいてほしい。
ルナサは今頃認めたのかと自嘲する。彼女が来たら、真っ先にそのことを伝えよう。一人で月を見つめながら、そう心に決めた。





私は、彼女と一緒にいるべきではない。
彼女のそばにいると、否が応でも嫉妬してしまう。姉妹。家族だということはわかっている。わかっているのに。またも自己嫌悪。嫉妬するということの苦しさを改めて理解する。
今朝のあの感情。あれは嫉妬だ。醜悪に全てを傷つけ、容赦無く燃やし尽くす嫉妬。こんな私は……
パルスィが水面に映る月を見つめる。今頃彼女は、月を見上げているのだろう。
そのそばには、きっと誰かが寄り添って。
またも嫉妬。ほら。こんな醜く嫉妬しちゃう私は、彼女に寄り添っちゃいけないんだ。
嫉妬は身を焼き滅ぼす。嫉妬なんかに焼かれる前に。からかうような笑みを浮かべ息を吐く。
パルスィは波打つ月に飛び込んでいった。
初投稿です。最近ROMに対する風当たりが強くなってきたので投稿しました。
パルスィは自殺なんかがよく似合うと思うんです。
ニトレタ
作品情報
作品集:
31
投稿日時:
2012/09/18 01:43:38
更新日時:
2012/09/18 10:46:55
分類
ルナサ
パルスィ
1. NutsIn先任曹長 ■2012/09/18 13:14:44
傍に月は輝いているのに、
彼女は水面に鬱ったほうを望んだ。
2. 名無し ■2012/09/21 22:48:27
自殺未遂しまくりで半身不随とかになっちゃうパルスィを思うととっても悲しくなりますね
嫉妬心を操るどころか振り回されるパルスィかわいい

てか、ROMに対する風当たり強くなってるんだね。俺も何か書くかな
名前 メール
パスワード
投稿パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード