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『レイマリ荒野を行く・ぷろろーぐ』 作者: パワフル裸ロボ

レイマリ荒野を行く・ぷろろーぐ

作品集: 31 投稿日時: 2012/11/21 02:49:48 更新日時: 2012/12/16 22:14:02
 喧騒猛々しい荒廃した街の酒場。ならず者や賞金稼ぎ等がない交ぜになって酒を酌み交わす。ここは無法者の街。女子供、正義の保安官はお呼びじゃあない。
 そんな街の酒場の扉を、蹴破る勢いで開く人物がいた。酒場は一瞬にして静まり帰り、視線はその一ヶ所に集中する。
「邪魔……するぜ」
 そこには、この場に似付かわしくない、白と黒を基調とした、白いフリルがふんだんにあしらわれたコンパクトなドレスを着込んだ少女がいた。顔はフリルをあしらった魔女のような帽子で隠れて見えなかったが、後ろに伸びた、ウェーブのかかった美しい金髪が、それなりの身分であることを表していた。
 暫く酒場は、その少女に釘付けになっていたが、バネ付き蝶番で固定された扉はそれに限らない。限界まで開き切ったそれは、それなりの勢いで戻るもの。
「酒を一杯もらっぷぎゃぁ!?」
 見事に、蹴り開けた扉のカウンターを貰った少女は、後ろに吹き飛んで行った。そして、それと入れ違いに呆れ混じりのため息を吐きながら違う人物が入って来た。こちらは黒い長髪にテンガロンハットを被り、皮のズボンに皮のジャケット、首元には日光避けのマフラー、腰にはガンベルトという、まさにガンマンな出で立ちだ。ただ、色が全て紅白で統一されているので、趣味の悪さは群を抜いているだろう。
「マスター、スコッチを一杯。水割りで」
 発した声の高さに、その人物が少女であると判明した。カウンターに座り、扉の方を見る。
「イタタタ。鼻が折れるかと思ったぜ」
 先ほど扉に吹き飛ばされた女が、今度は普通に押して入って来た。鼻を擦っているあたり、鼻を強打したらしい。よく見ると、片方の鼻の穴には、ほんのり赤く染まった布が詰め込まれているのがわかる。
 そして、その二人の顔をよく見てみたならば、うら若き少女であることが伺える。紅白のほうは、少し伏し目がちの、気だるげな表情をしているが、少し長い睫毛が妖媚さを醸し出している。艶のある黒髪も神秘的な美しさであり、酒場の男たちも息を飲むほどだ。
「私は……ミルクでいいや。今鼻が使えないから酒を飲んでも半分も味わえない」
 金髪の女が帽子を取ったならば、そこに見えた顔はまさに活発な少女だった。クリンと開かれた金色の瞳に、少し高めの鼻、ややシャープな頬のライン。なにより、健康的な白い歯を見せて笑う口元が、少女の元気さを表しているだろう。紅白を陰とするなら、この黒白は陽である。
 カウンターに座って、それぞれの飲み物を味わう少女。そんな無防備な彼女らをならず者たちが放っておくわけがなかった。だが、動いたのはほんの一握りの者たちであった。残りの動かない者は知っていた。彼女らがタダ者ではないことを。
「よう、お嬢さん達。二人だけのしけた飲み会より、俺たちとヤらないか? 楽しませてやるぜぇ」
 下品な笑みを浮かべながら、男は黒白の肩に手を乗せた。すると、黒白の少女はその手に手を重ねてくる。脈ありか? と男が思った瞬間。
「悪い、趣味じゃない」
 勢いよく回転し、地べたに叩きつけられた。なにが起こったのか、男は理解出来なかった。ただ単に、黒白が足払いをかけただけだったが、あまりに鮮やかに決まったので、頭が追い付かなかったのだ。
 余裕を持って、黒白はパンパンと手を払う。
「こ、このアマ!」
 投げられた男の取り巻きが、ガンベルトに差した銃を引き抜き、一斉に少女達に向ける。だが、それよりも早く少女達は抜いていた。
 紅白の少女は、両手に小型のリボルバーを。ご丁寧に紅と白のおめでたいカラーリングを施したものだ。
 黒白の少女は、片手に二連装のソードオフショットガン、片手にはグレネードランチャーを握っている。どちらも少女が持つには重すぎると思うが、黒白の両手は震える事無く男たちを捉えている。
 うっと呻き、男たちはたじろいた。少女に銃を向けられた恐怖もあったが、なにより、その少女たちの眼に恐れを為したのだ。気だるげに開かれた眼も、意気揚々と開かれた眼も、どちらもが、猛禽類のように鋭く冷たい光を放っていた。
「どうした腰抜け野郎共。その抜いた銃で私たちを蜂の巣にするんじゃないのか。そんなにビビってちゃぁ当たる弾も当たんねぇぜ? それとも、やっぱり止めましたーとかとぼけるつもりか? おいおい冗談だろ。ガンマンが銃を一度抜いておいて、一発も撃たねぇうちに引っ込めるってのか?」
 黒白の少女が挑発するように言い放つ。挑発に乗せられた男たちが再び銃を構え直すが、黒白の少女の指に力がこもると、再び萎縮した。途端、黒白の少女は落胆したように眼を細めた。
「チッ! この腰抜け野郎共が。てめぇの股についた男はお飾りかよ。殺り合うのが怖くてブルってんなら、今すぐそいつ引き抜いてドレスで着飾って紅茶でも嗜んでやがれ!」
 ズドン、と、ショットガンを男たちの足下に向けて放つと、男たちは蜘蛛の子を散らすように酒場から逃げ出した。紅白がガンベルトに、黒白が手に持った得物をスカートの中に戻すと、酒場には一気に笑いが起こった。
「はっはっはっは! 本当に情けない奴らだ! 喧嘩を売る相手が誰なのか、もっとよく知っておくべきだったな、なぁ、黒白の魔法使い、マリサ!」
 男が、奢りだ、と酒ビンを投げ渡すと、だから味わえねぇって、とマリサはそのまま投げ返す。紅白の少女は何事もなかったかのように、再び席に着いた。
「よう、紅白のガンマン、レイム。調子はどうだい」
「ぼちぼちよ」
 隣に座った男が、空になりそうだったレイムのグラスにスコッチと水を注いでやると、ありがとう、と礼を言い、再び口に運ぶ。
 紅白のガンマン、レイム。黒白の魔法使い、マリサ。彼女ら二人は、その筋の人間にはちょいと名の知れた賞金稼ぎだ。
 百の銃弾を打ち込まれても、かすり傷一つ負わないと噂されるレイムと、まるで魔法のように次から次へと、スカートから帽子から胸元から銃火器を取り出し戦うマリサ。このコンビに狙われて無事だった賞金首はいないと言う。
「ところで、次に狙うのはどいつだ?」
 レイムの隣に座った男が、コルクボードに張り出された賞金首の張り紙を指差しながら尋ねた。
「そうね。銃弾を躱してみせるって噂の悪魔の僕サクヤか、銃弾を切り伏せるって噂の亡霊剣士ヨウキ、不死身だって噂のアンデッドプリンセスカグヤ、その部下の凄腕ガンマンレイセン。まあその辺りくらいは狙いたいわね」
 レイムが述べた人物たちは、そのコルクボードに張り出された中で賞金が高いほうから並べられた者たちだ。
「こりゃまた大きく出たもんだ。銃が効かない奴に死なない奴。いったいどうやって倒そうってんだ?」
 男は冗談半分に尋ねてみると、レイムはこう言い放った。
「もちろん、眉間に鉛弾をぶち込むのよ」
 その表情には、冗談などの軽さで言ったようなものは無く、真剣そのものだった。
 彼女らは凄腕の賞金稼ぎ。狙われて無事だった賞金首はいないと言う。今日もどこかで彼女らは、化け物じみた賞金首と渡り合っているに違いない。
訳あって本編と分離させてもらいました。ごめんちゃい。ちなみに世界観としては、西部劇風ですが、いろいろごっちゃになったカオス背景となっております。あと私は銃器に詳しくありません。彼女たちの装備は皆様のご想像にお任せします。 追記・ご指摘のあった下部の部分修正させていただきました。ありがとうございました。
パワフル裸ロボ
作品情報
作品集:
31
投稿日時:
2012/11/21 02:49:48
更新日時:
2012/12/16 22:14:02
分類
レイマリ
西部劇風幻想郷
わりとシリアス
序章
1. NutsIn先任曹長 ■2012/11/21 21:07:51
序章は、典型的な凸凹凄腕ガンマンのスチャラカ冒険譚のようですね。

下部サクヤ……『かぶ』、それとも『僕――しもべ』? 悪魔のおぜうさまのシモの世話でもするんですかい?
では、本編を読ませていただきます。
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