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『東方でACVやってみたらこんなんできました』 作者: パワフル裸ロボ

東方でACVやってみたらこんなんできました

作品集: 31 投稿日時: 2013/03/18 06:22:48 更新日時: 2013/03/18 15:22:48
 鉄と少々の錆のにおいが鼻を付く。ジャンクから辛うじて稼働する部品を組み合わせてできた粗末な機体のコックピットで、少女はため息をつく。ヘリでの輸送のため、コックピット内は酷く揺れている。
 彼女は雇われのAC乗り。腕は良く、仕事も速い。ただ、機体は以前の仕事の際に致命的な損傷を受け、予算や時間などの都合上修理や新調が出来ず鉄屑に近い機体に搭乗している。
「各機へ通達。レジスタンスの主力部隊は、市街西部へと後退している。これを追撃し、殲滅すること。以上がお前達の任務だ」
 突然、無線が喋りだす。それと同時に、対空放火が掠める音や何かが撃墜される音が激しくなってきた。船を漕いでいた少女は、その現実に意識を引き戻される。
「改めて伝えておくが、我々は『守矢』だ。対価に見合うだけの戦火を上げること。これは当然の義務だと、我々は考えている。くれぐれも、そのつもりで」
 どうにも威圧的な言葉遣いの女性の声に、少女は再びため息を吐く。仕事はもっと選ぶべきだったか、と少しばかり悔やんでいた。
 機体の新調のために、高額報酬であった今回の依頼に一も二もなく飛び付いたはよかったが、依頼主である『守矢』の者は姿すら見せず、不特定多数の傭兵たちに無線のみでやり取りをしている。そこに多少の胡散臭さを感じてはいたが、背に腹はかえられぬというわけでここまできた。
 少女は今一度気を引き締め、一時的な相棒の操縦桿を握り締める。
「挨拶が遅れたな。本作戦遂行の補佐を担当する、八坂神奈子と言う」
 落ち着いた、威圧的な女性が自己紹介をする。だが、少女にとって、その女性の名前など比較的どうでもよかった。問題なのは、自分と敵と報酬だ。
「既に戦闘は始まっている。活躍を期待しているぞ」
 いよいよか、と、少女は小さく呟いた。降下体制に入ったのか、ヘリが低空で安定した飛行を展開する。モニターに降下指示の表示がなされ、機体固定ワイヤーの接続の切断メッセージが流れる。その数秒後、子気味のいい音を立て、機体が急速に落下し始める。しかし少女は慌てる事無く、着地体制に入る。
 ほんの数瞬のち、機体に大きな衝撃が走る。着地に成功したようだ。同時に、セーブモードに入っていたメインシステムが起動し、戦闘可能の状態となる。
 上を見上げると、ヘリが大きく旋回して行くのがみえた。
 突然、モニターに信号受信のメッセージが流れ、ルート情報が表示される。
「ルート情報を送信した。指定ルートに沿って敵部隊を追撃、これを撃破しろ」
「ご丁寧に、どうも」
 無線は一方通行で返信はできないのに、そう返す。自由もなしか、と少女は嘯き、指示されたルートに沿って機体を動かす。ジャンクから組んだせいか、以前の愛機とは比べ物にならないほど挙動が悪かった。思わず舌打ちし、下品な言葉と共に蹴りを加える。
 ルートに沿って進んでいると、廃ビルの陰から敵の防衛機が見えてきた。まるでダルマのような姿のそれは、見た目どおりなかなかに堅い。今までなら苦戦すらしないような相手だが、今の機体では少々骨が折れそうな相手だ。少女は本日三度目のため息を吐く。
 両手に構えたライフルを相手に向けて放つ。それは火花を散らして相手装甲を削って行く。相手が反撃のためにこちらに振り返るのを確認しながら、彼女は射撃をやめ、急加速して接近する。
「勝負はぁぁ……」
 防衛機が照準を合わせた時には、少女のACは既に目と鼻の先であった。
「パワーだぜっ!」
 メシャッと鈍い音と共に、ACの膝に備えられていた小型の盾が防衛機にめり込む。少女の機体が防衛機を蹴って離れた時、遂にダメージの限界により内部機構が発火、爆散した。
 サブモニターの撃破スコアが、0から1に変わる。
「八坂殿、私だ。主任はどこにいる? 支援部隊の指揮を執る手筈ではなかったか?」
 突如、無線に別人の声が入る。オープンかよ、と少女は苦笑いしつつ、先を急ぐ。火急に行動しなければ、他の傭兵に獲物を借りつくされてしまうからだ。事実、レジスタンスの勢力は脆弱で、少女もこの鉄屑でも張り合えると踏んで望んだほどだ。
「申し訳ない、警備部隊長。あの子は、少々気まぐれでな。腕は一流なのだが、困ったものだ」
「『代表』は、期待を裏切られることを、何よりもお嫌いになる。一分たりとも、そのご期待に背くことがあってはならない」
 謝っているようで、どこか見下した言い方の神奈子。しかし、警備部隊長と呼ばれた人物は気にした様子もなく、逆に威圧するように言い放った。
「我々は『守矢』だ。対価に見合うだけの仕事はするさ。立場の心配なら無用だな」
「ふむ、小賢しい女は好かぬな」
「恐れ入る」
 おー、こわ。少女は苦笑いしつつ、撃破スコアを5まで伸ばす。相手の主力は先ほどの防衛機のようで、主な戦力は戦車や戦闘ヘリなどの、ACから見ればオモチャのようなものばかりである。少女の駆る鉄屑同然の機体でも、ほとんど苦はない。
 そうして、指定ルートを進みつつ、固定砲台や戦車等を破壊しつつ進む。やがて、指定ルートの切れ目まで到達した。
「指定ルートはここで終わりか。なら、ここからは自由に」
 少女が喜びに舞い上がると、途端に無線が入る。
「敵部隊が逃走を図っている。着陸している大型ヘリを撃破せよ」
 その言葉と共に、新たにルートの指示と、今度は目標が送信されてくる。少女はガッカリと肩を落とし、指示された目標に向かう。
 最初の目標は、すぐ近くだった。大型ヘリが広場に着陸し、それに大急ぎで乗り込む人員たちが見えた。その人員たちが、こちらを見て何かを叫んでいる。
「こっちも商売なんでな。悪く思うなよ……」
 少女は、ヘリに急速接近し、最初の防衛機にしたように、膝をたたき込む。
「目標撃破。次の目標までのルートを表示する」
 ヘリを叩き潰したところで、新たなヘリへのルートの指示が出る。そちらに向かおうと機体を旋回させると、少々離れた位置に、ACの姿を見つける。
「な、ACだと!? こいつぁ、チャンスか、ピンチか……」
 情報によれば、レジスタンスの主力は防衛機と戦車とヘリ。そして、レジスタンスのリーダーが乗るAC。その実力も伊達ではないと聞く。
 このジャンクでやれるか。少女は汗が頬を伝うのを実感した。
「貴女の相手は私よ、雇われ」
「敵ACを確認。まだ我々に逆らうつもりか。すでに勝敗は明らかだというのに」
 神奈子の小馬鹿にしたような言葉と共に、真紅に染まったACが、こちらに向かってくる。瞬時に少女は機体を操り、相手の動きに合わせる。ある程度距離が縮むと、一斉に互いの火器が火を吹く。真紅の機体は滑らかに滑りながら、少女の機体は壁や障害物を蹴りながら、それぞれ削り合う。
「作戦目標を変更。敵ACを撃破しろ」
 神奈子のその指示も、少女の耳にはほとんど入って来なかった。目の前の敵との戦闘で手一杯であるためだ。
 だが、腕の差か運が良かったのか、勝利の女神は少女に微笑んだ。少女の放った銃弾がダメージを与えたようで、敵ACは火花を上げはじめる。
「くっ、強い……。貴女のようなやつがいてくれれば……全ては過ぎた事、か……」
 敵ACが、背を向けて逃走を図る。一瞬追撃も考えたが、こちらも相当な痛手を負っている。あちこちのダメージ表示が赤に近くなっているのだ。追加報酬は惜しいが、命あっての物種である。少女はその背を見送った。
「敵ACの撤退を確認。取り逃がしたか。まあいい。作戦を継続する。引き続き大型ヘリの撃破に向かえ」
 その言葉に、少女はため息を吐いてから従う。


「目標を撃破。これで作戦は終了だ。お疲れさま」
 五機目のヘリを潰したところで、無線が入った。
「終わり、か」
 少女は一息つくと、操縦桿から手を離し、座席に深く体をもたれる。敵ACとの戦闘で神経を磨り潰し、予想以上に疲労していたのだ。水分補給のため、ジェリ缶を開け中身を口内に注ぎ込む。
 ぷは、と口を離し、一息ついたところで、突如無線から声が響く。
「神奈子さまぁ、聞こえてます?」
 軽いノリの声で、神奈子を呼び出しているようだ。初めて聞く声であったが、少女は半分ほども意識していない。既に頭では貰った報酬でなにを買うか思考していた。
「主任。今どこだ」
「敵のACが、地下道に逃げてしまいまして、地下のゴミ虫のリーダー。今のルーキー、そいつを向かわせて下さい。今すぐ」
「は?」
 無線のやり取りに、少女は我が耳を疑った。仕事は終わったはずだった。たしかにそう告げられた。だが、主任という人物が、おそらく自分だと思われるものを差し、向かわせろと言う。おいおい、マジかよ、と無線にかじりつくように注視する。
「現状のダメージでは、危険だと思うが?」
「あ、そうなんですか〜」
 普段は威圧的な神奈子が、少女を庇うような発言をする。少女は、なんだ、いいとこあるじゃねぇか、と胸を撫で下ろす。が、その安心が、次の瞬間に突き崩された。
「で? それが何か問題ですかぁ?」
 ピシ、と、少女の時間が止まった。
「わかった。聞いた通りだ、作戦を継続。地下道へのルートを表示する。敵リーダーを追撃しろ」
「な、ふざけろ!」
 ガツ、とモニターを殴りつけ憤りをぶつけるが、帰ってきたのはルート表示のみだった。少女は怒りに身を震わせるが、作戦継続を言い渡された以上、遂行しなければ報酬は出ない。ちくしょう、と叫びながら、再び操縦桿を握りしめ、機体を走らせる。


 しばらく走り続け、途中点在したレジスタンスの残党を潰していくと、ようやく地下道の入り口が見えた。
「よし! ……なっ!?」
 すぐにそこに飛び込むつもりで進むが、途端に頭上に見えた陰に慌てて廃ビルの陰に逃げ込む。その瞬間、少女のACがいた地点に、複数のミサイルが着弾し炸裂した。
 少女が観測モードで確認すると、地下道の入り口付近に大型の戦闘ヘリが陣取っていた。
「入り口を塞ぐつもりか。無視するのが賢明だが、あれだけ低空なら、絶好のチャンスだな。片付けろ」
「無茶いいやがる……」
 大型戦闘ヘリは、先ほどの大型ヘリと違い、装甲も武装も並ではない。今の機体状態ではかなり危険な相手になりえる。しかし、やれと言われればやらなければならない。
 少女は、うまくブーストをつかい、廃ビルの陰から陰へと移動しながら銃弾をヘリに叩き込む。ヘリもミサイルや機銃で応戦するが、少女の軌道について行けず、擦らせることも叶わずにいた。
「へ、こいつぁラッキーだぜ」
 少女はヘリの下を通過しながら、銃弾を腹下に打ち込む。それが致命傷となったらしく、ヘリは炎を上げて地面に沈んだ。少女はそのまま地下道へ下って行く。
 地下道には途中に大きな穴が開いており、そこから地下鉄のトンネルに、さらにそこから下水に下り、しばらく進んでいくと広い下水処理場に到達した。そして、そこには情報通り、先ほどやりあった真紅のACがいた。
「貴女か。よく追ってきてくれたわね。感謝するわ」
「……感謝?」
 向けられた言葉に、少女は疑問を抱いた。しかし、真紅のACはそれに答えることはしなかった。
「『代表』、見ているかしら! あなたの望みどおりよ! けれどそれでも……勝ったのは我々よ!」
 そう叫ぶと、真紅のACは自らの左腕を強制排除し、背面に背負った巨大な“なにか”が稼働する。
 “なにか”はまず、強制排除された左腕の接続部にエネルギー供給アームを接続。反対側では、同じく真紅に染まった槍が六本並んだアームが展開、それが右腕に装着される。
「おいおいおい、なんだそりゃぁ……」
 見たことのない兵器を目の当たりにし、少女はたじろぐ。無理もない。全くの未知数である上に、異様なその風体は見る者全てに畏怖の念を植え付けるだろう。
 右腕の槍が白熱し、さらに紅みを帯びていく。食らえばただでは済まないというのは容易に想像できた。
 唾を飲み込み、少女は覚悟を決めた。殺るか殺られるか。いつだってそういう世界で生きてきたのだ。今日またそれに遭遇しただけだ。少女は自分に祈りをささげ、操縦桿を握り直した。
 その時だった。真紅のACの背後に突然ミサイルが飛来する。真紅のACは全く気付いていないようで、回避する仕草すら見せない。そうして、ミサイルは全弾吸い込まれるように真紅のACに直撃し、多大なダメージを与えた。炎を吹き出し、脱力する。
 さらに、ミサイルの発射主と思われる緑色のACが急接近し、少女がやったように、真紅のACに対し膝の盾をたたき込む。ただ、緑色のACは少女のものとは違い、非常に大きく重たい機体であり、その衝撃も途方も無いものだった。真紅のACが、まるで木の葉のように瓦礫へ吹き飛んでいく。
「な……」
 少女は、今しがた起きた出来事に呆然とした。同然だ。死の覚悟を決めて敵に挑もうとした瞬間、横槍を入れられたのだから。
「キャハハハ! 見てましたよルーキィ。なかなかやるじゃないですか。ちょーっと、時間かかりましたけどね」
 横槍を入れた張本人、主任が、少女に無線を入れる。
「見てたって、いつからだ……?」
「嫌ですねぇ最初からに決まってるじゃないですか。まあ、ちょうどいい腕なんじゃないですか? ゴミ虫の相手には」
 主任の、軽いノリでの発言に、少女はカチンとくる。同然だ。獲物の横取りに加え自分の腕もこきおろされて頭にこない人物がいるだろうか。
「チッ。不意討ちでしかやれねぇやつに言われたかねぇな」
「不意討ちでしか殺れない? 別になんといってもらっても構いませんけどぉ、まさか貴女、正々堂々戦うのがカッコいいとか思っちゃったりしてますぅ?」
 そんなんでよく生きてられましたね。まるで小馬鹿にするように主任は言う。いよいよ少女も我慢の限界で、今すぐにでも咬みつかんとした矢先、無線の横槍が入る。
「どうした、トラブルか、主任?」
 声の主は警備隊長のようだ。作戦終了にも関わらず帰還が遅れていることが気に掛かったらしい。
「下っぱがもたついてただけですよぉ、警備隊長殿」
 もう既に少女から興味が離れたらしく、主任は機体を旋回させる。
「撤収しろ。報告は後ほど確認する」
「ああ。ではそのように」
 返答をしたのは神奈子。主任は、少女の前から颯爽と去っていく。少女は怒りが不発のまま、酷く不機嫌になりながらも主任に続き撤収しようとした。
 が、その時、無線に不快音が響く。発信源はどうやら先ほどの真紅のACのようだ。無線を繋ぎっぱなしのままらしい。そこから、断片的ではあるが、人の声が聞こえてくる。
「リーダー、これから合流…点に向かい……リーダーの指…りね。別々に…逃げた……リーダー? 返事をし…姉さま……早く来……待って…………」
 少女は何も言うことなく、静かにその場を後にした。後に残ったのは、火を吹き哀愁を漂わせる、かつてのレジスタンスの長の、成れの果てのみ。
続かない。

どうもこんにちは、パワフル裸ロボです。なんだか今度ACVの続編出るみたいなんで、前からやってみたかったこれやってみました。オリジナル要素たっぷりです。
構想としては、雇われ=魔理沙、主任=早苗、キャロりん=神奈子、警備隊長=慧音、リーダー=レミリア、な感じです。
今回登場してない役にも実はキャラ割り振ってあって、フランはそのままフランドール、ロザリィは咲夜、RDは小悪魔、レオンは美鈴、です。途中出てくる傭兵たちや警備隊員は考えてませんが。
パワフル裸ロボ
作品情報
作品集:
31
投稿日時:
2013/03/18 06:22:48
更新日時:
2013/03/18 15:22:48
分類
ACV
主人公は機体とお揃い
作者は軽度のフロム脳
1. 名無し ■2013/03/19 21:03:39
VERDICT DAY楽しみだね。主任のアレが許されるなら、faのアンサラーみたいなの欲しいよな。
2. 名無し ■2013/04/29 19:48:07
霊夢はキラーだな
世に平穏のあらんことを
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