■■■■

作品集: 32 投稿日時: 2014/05/05 04:26:57 更新日時: 2014/05/09 17:47:41
「んん……。あら、まだ朝になっていないみたいね。」

アリス・マーガトロイドはまだ部屋に陽の光が差し込んでないことからそう言った。

「せっかく早く目が覚めたのだし、起きてしまおうかしら。……っ!?」

アリスは大きく伸びをしようとしたのだが、ここで一点ある異変に気付く。

「あれ。体が動かない…」

アリスは、両手両足をぴったりと胴の側面につけた気を付けの姿勢のままであった。
アリスの表情からかなり力んでいることは伝わるのだが、首から下はまるで動くような気配を
見せず、まるでパントマイムの一種のようだった。

「首から上だけは動くようね。それにしても体が全く動かないなんて…。金縛りでも、
 実際に何かで縛られているわけでも無さそうだし…」

アリスが目を覚ましてから2,3分が経過し、彼女の頭も徐々に明瞭になっていく。

「そういえば…私、立っているじゃない。ちゃんとベッドの上で眠ったはずなのに…ますます
 訳が分からないわ。」

「だとすると、ここはどこなの。ほとんど真っ暗で見えないけれど…クローゼットの中かしら? いたずらにしてはたちが悪いわね。」

アリスは、目を凝らしながら首を上下左右に大きく動かす。彼女は、うっすらと見える輪郭線から人が1,2人入れる程度のとても狭い場所に
閉じ込められていると判断した。
そして、こんないたずらをする犯人はだれかしらね、と悪態をつきながら身の回りの人間、妖怪、その他もろもろを頭の中に思い浮かべた。

「全く見当が付かないわね。魔理沙だったら、こんなことしなくても勝手に盗っていくでしょうし。真面目キャラで通っている私なんて弄る物好きもいるわけないし。」

元々、彼女に知り合いがそう多くなかったため結論が出るのにそう時間はかからなかった。

「寝起きであんまり大きな声出したくないのだけどね。」

そう言って、大きく息を吸い込む。

「ちょっとー! ここから出しなさいよ! そこに誰かいるのでしょう!」

だが、相手からの返事が返ってくる様子はない。

「ふざけてないで! こんな下らないいたずらしても面白くないでしょう!」

狭い空間に閉じ込められているせいか、自分の声がやたらと反響して頭が不快に響いた。
そして、またしても相手からの返事はなかった。

「私の知り合いがこんなことするはずない。たまに参加する宴会でパチュリーや鬼の連中にちょっとした嫌味を言われることはあるけれど、
 彼女たちもここまで悪ふざけをするとは思えないわ。」

アリスは、この状況が誰かのいたずらでないことを理解したと同時に身体全体を得体のしれない不安が襲いかかった。
静寂が続くにつれ彼女の不安が次第に大きくなっていく。
彼女はその不安を払いのけるために、もう一度だけ息を大きく吸い込んだ。

「もう!!! いい加減にして!!!」

ガコン!と彼女の声に反応するかのように大きな音が響いた。

「何!?」

アリスは突然の出来事に困惑した。

「光が入らないから分からないけれど、もしかしてこの部屋、上昇しているのかしら。」

アリスは、普段飛行をする時に感じる重力のそれに似ていると思った。

ガコン!

「え、また!?」

数秒も経たないうちに、先ほど聞いた音が繰り返された。

「今度は……横に移動しているようね。本当にここはいったいどこなのかしら。」

何一つ解決されない疑問に、さらに追い打ちをかけるように新たな疑問が沸き上がり、
彼女の不安はさらに募っていった。

ガコン!

「また向きが変わるかしら、もしかしてこのままずっとループするんじゃないでしょうね。」

冗談めかしてそう言った瞬間、突如白い光に包まれた。

「うっ……!」

あまりの眩しさに彼女は目を眩ませた。
それと同時に、心臓がふわっと浮き上がるような感覚に襲われた。

「え……。嘘……。」

アリスは眩しさを我慢して、地面のほうに目を向け、片目をほんの少しだけ開いた。
そして、無機質で平面な地面が数メートル先に広がっていた。

「いやぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!」

今一度両手足に力を入れるも、やはり動かなかった。
浮遊を試みるも、いつもの感覚がまるで思い出せず、空気の抵抗は徐々に大きくなっていく。

「んんんーーーーー!!」

目と口をぎゅっと堅く閉じ、声にならない悲鳴を上げる。

………

……



「…あら?」

アリスにとって永遠にも感じられるほどの数秒が経過したが、いまだに地面とは衝突しなかった。
彼女はおそるおそる目を開き、地面の方を見据える。

「地面がまだあんなにも遠いわ。それに私がさっきまでいた部屋…のようなものが、まだこんなにも近くに
 あるなんて。」

自然と浮遊が出来るようになったのかとも思ったが、手足は頑なに動かなかった。
その代わりではあるが、体はゆっくりとではあるが等速度ですぅっと地面に向かっていた。

「さっきの部屋が移動していた時と同じような感覚ね。何故かは知らないけれど、ぺしゃんこになってしまうのだけは避けらるのかしら。」

つい先ほど死を覚悟して、極度に緊張したせいか、ふぅーと大きなため息をついた。
ある程度落ち着いたところで、周りを見渡した。

「首しか動かせないから、後ろの様子はさっぱり分からないけれど、さっきの空間とあまり変わらないじゃない。」

アリスの言う通り、その空間には何も存在しなかった。
床から天井までは、7,8メートル程度。前方の壁までは、5メートルほど。ただ、左右の幅は手を拡げることもできないほどに狭かった。
部屋は真っ白で覆われたアンバランスな比率をした長方形であった。

「この様子じゃあ後ろ側も同じような感じなんでしょうね。せめて幅をもう少し広げてほしいものだわ。無駄に高さがあるのに幅がこんなに狭いと、
 息が詰まっちゃうじゃないの。」

「夢。夢だわきっと。そうでなければこんなおかしな空間も説明がつかないわ。」

頭の片隅で現実ではないかという可能性が残りつつも、やはり夢であると思いこまずにはいられなかった。
それに、夢であるほうが納得ができた。

その時、地面と天井の中間地点に差し掛かっていた。

「なんだか、バカらしいわね。それにしても、いい加減体を動かしたいわね。ずっと同じ姿勢じゃあ体が鈍ってしまう…わあぁぁぁ!」

突如、体が勢いをつけて倒れこんだ。

「なんなのよ…ってまたっ!!!」

今度はさらに倒れこみ、アリスの体は足先を軸にしてぐるぐると回転した。

「目…が…回るぅ〜」

何回転かするうちにぴたっと回転が止まった。
回転前と同じ姿勢に戻っていた。

「今度は何っ!!」

息をつく暇もなく今度はものすごいスピードで前後した。

「うぅ……吐きそう…」

前後運動もまた何回か繰り返したところで静止した。
彼女は吐き気を必死に抑えるために口をぎゅっとつむんだ。
アリスは丁度壁にぴったりと背を付けていた。

予期しない激しい力に、アリスの体は大きな疲労を感じた。
そして、そこに追い打ちを掛けるように、アリスの体が真下へと激しい勢いで落下し、そして着地する。

「いぎゃぁあぁぁあああぁぁ!!!」

3,4メートルほどの高さから急降下したのだ。妖怪であるとはいえ、魔女である彼女の華奢な足はその衝撃に耐えきれずボキリと大きな音を立てた。

「うっ、うぅ。おえっ、おええぇぇぇぇぇぇ」

両足の痛みに意識がいってしまい、思わず吐しゃ物びちゃびちゃと地面にぶちまけた。

「うう、うぅ…痛い…」

両目に涙を溜めながら必死に痛みをこらえていると聞き覚えのある音がした。

ガコン。

すっと天井を見上げると、自分がさっき落下してきた場所から同じように何かが落とされ始めていた。

「あれは…何かしら。」

痛みで視界が霞んでいることもあって、天井から落下してきているものが人の形をしていることしか分からなかった。

「人…なのかしら。」

天井付近の人型の物体は少しずつ落下していき、徐々に明瞭になっていくその人の形をしたものが誰であるかを理解した。

「わた……し…?」

それは紛れもなくアリス・マーガトロイドだった。ただ一点違う箇所があるとすれば、そのアリスは体育座りをしていた。
そのアリスもまた、回転をしたり、向うの壁へ向かって移動したり、こちらの壁へ向かって移動したりしながら、徐々に地面に近づいていった。
そして、地面にだいぶ近づいたところで急速な落下を始めた。

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ」

直立不動したアリスは絶叫しながら、首が千切れそうな勢いで顔を横に大きく反らした。

グチャ

体育座りをしていたアリスは、その姿勢を一切崩すことなく着地した。
地面に背を向けている状態だったため、後頭部を打ち付け、真っ赤な血をぶちまけた。

飛び散った血が幾ばくか直立したアリスにかかり、不意にその箇所を見てしまった。
その時丁度、自分の目の前にいるもう一人自分の姿も目に入った。

「いやあぁぁぁぁ、いやぁぁ、もういやよっっ!!! 醒めて!!! こんな夢から早く醒めて!!!!!」

頭が真っ白になった。訳が分からな過ぎて何も考えられなくなった。
そして、このまま夢から醒めることができそうな気がした。




ガコン。

だが、そんな彼女の遠のく意識を引きずり出すように金属音が発せられる。
天井を見上げるとまた新しいアリスが落下を始めていた。

「あっは!、あははは!!!! あははははははははは!!!!!!」

直立したアリスは狂ったように笑い始めた。


………

……



あれから、どれくらい経ったか。
地面はほとんど、アリスで埋め尽くされていた。
体育座りをしているアリス、膝を曲げているアリス、片足を前に突き出したアリス、膝を曲げながら両腕を前に突き出しているアリス。
そして、自分と同じく直立したアリスが天井から落下してきた。
一番最初に落下したアリスは笑い疲れたのか、目の前をぼぉっと眺めているだけだった。
いちいち天井を見上げることも、床を埋め尽くすアリスにも目を向けず、ただただ遠い場所を見つめていた。

グシャ

十何人目かのアリスが最後の白い床のスキマを埋めた。

ガシャコン

ぼんやりとした意識の中、聞いたことのない音が聞こえた気がした。
それと同時に、アリスの足に再び激痛が走った。

「ぎゃあああぁぁぁぁぁ!!! いたっ…!!! いたいぃぃぃぃぃっっ!!!」

アリスの足は膝から下がすっぱりと途切れて、膝で体を支えていた。
膝からはどくどくと血が吹き出し、次から次へと痛みが沸き上がった。
痛みから来るショックで、意識が戻り、アリスは目の前の惨状を目の当たりにした。
下半身だけになっているアリス。上半身だけになっているアリス。
それぞれ違いはあるものの、自分と同じように一部がすっぱりと切断されていた。

「ぐっ、おえええぇぇぇぇ、うぉえっ、っぇぇぇぇぇ」

着地した際に消化物はとっくに吐き出してしまい、胃液だけが何度も何度も逆流した。
口に広がる不快な酸味と膝にまとわりつくどろどろとした血の感触が、さらなる吐き気を催した。
ただ、痛みを感じれば感じるほど不思議と冷静になっていった。

「うぉえっ………、でも…、これで漸く夢から…醒める。」

正直なところ、アリスにはこれか夢かどうかなんてどうでもよかった。
死ぬよりも、こんな訳の分からない世界に閉じ込められている方がずっと辛かった。

「これだけ出血しているん…だもの、すぐに…意識が遠のいて楽になれるはずよ……」

しかし、待てども待てども意識ははっきりとしていたままだった。
その間にも、新しいアリスが地面に落下しジャブン、ジャブンと血の水しぶきを撥ねさせながら、その水かさを増していった。
そうして、再び地面がアリスで埋め尽くされた。

ガシャコン

アリスは腹から下がすっぱりと無くなっていた。

「ぐあぁ、うぅぅぅ、………ぅぅぅ」

もう叫ぶ体力も残っていないのか、弱弱しく呻くだけであった。

下半身を失ったのだから、すぐに死ねる。アリスは思った。
内臓がこんなにも勢いよくあふれているのだもの。すぐに死ねる。アリスは思った。
それなのに……………なぜ私は死なないの。アリスは思った。

いくらアリスが妖怪であるからといって、所詮は魔法使いに過ぎない。吸血鬼などでもない限り体を大きく、
損傷すれば人間と同じように死ぬはずだった。

「ぅぁぁ……ぅぅぅ……」

アリスは手放すことのできない意識のまま、そっと目を瞑る。
どうして死ねないのか、それについて考えようともしたが、こんな
狂ったような世界で自分の知識が通用するわけがないとすぐに諦めた。

ガシャコン

胸から下が切断される。

「……」

もううめき声を上げることも出来ないが、意識だけははっきりとしていた。
そして、この訳の分からない世界で不思議と一つだけ確信できた。

(あともう一度で…私は消えることができる。)

ガシャコン

………

……




あ…れ…?
わたし…まだ…生きているの?…
どこからか…なつかしいこえが…きこえる。

「おー、なかなかうまいじゃないか。とても初めてだとは思えないぜ。」

「私を誰だと思っているのよ。あなたに出来て私に出来ないことなんてないわ。」

「ほう。言ってくれるじゃあないか。だが私はこーりんの家でこれを見つけてから、けっこうやりこんでるんだ。
 仮に弾幕勝負で負けたとしても、これで負ける気はしないぜ。」

「何を言ってるのよ。ルールも分かった。コツも今のでだいたい掴んだ。次であなたに勝つことができるわ。」

「全く…呆れるくらい大した自信だな。まあいい。でも、お前がそこまで言うんだ。ただ勝負するんじゃあつまらないだろ?
 賭けをしないか?」

「望むところよ。」

「君達。子供の頃から賭け事なんてして、いい大人にならないよ。」

「こーりん、勝負に子供も大人も関係ないんだぜ。」

「そうよ、霖之助さん。負けなければいいだけですもの。」

「それじゃあ、始めるぜ。」

「「ゲームスタート!!」」

また……いしきが……とおのく…







気が付くと私は暗く、狭い空間に閉じ込められていた。
初投稿です。
折角?の産廃ですので、アリスちゃんを理不尽な目にあわせてみました。
アリスちゃんがいた世界は誰もが知っているアレです。
ただ、ボキャ貧と変に回りくどい説明をしたせいで、伝わる自信はないです。

書いてみた感想としては、グロ、ゲロの表現を考えるのはとても大変だなと思いました(こなみかん)

【追記】

次回は、ほんのささいないざこざから、修復不可能なレベルのけんかに発展する。
そんな八雲家を書いていきたいです。

たくさんのコメントありがとうございます。

>> 1 & 2さん
その通りです。アリスはテトリスの世界の住人となりました。
理由はありません。

>> ギョウヘルインニさん
どちらにせよアリスはこの世界から出ることは出来ませんので、
全消し云々は些細なことかもしれませんね。

>> 4 さん
うーむ。やはりテトリス描写が足らなかったかもしれませんね。
テトリス描写をぼかしすぎたと反省してます。

>> パワフル裸ロボさん
おめでとうございます!
センス…というか偶然天使が通りかかってくれたおかげですね。
発想の勝利というやつでしょうか。
しばらくはまた天使待ちタイムに入るかもしれません(笑)
てまりけっとおーぶ
作品情報
作品集:
32
投稿日時:
2014/05/05 04:26:57
更新日時:
2014/05/09 17:47:41
分類
アリス
1. 名無し ■2014/05/05 23:29:30
テトリス?
2. 名無し ■2014/05/06 11:06:08
テトリスかな?
3. ギョウヘルインニ ■2014/05/06 23:36:19
全消し出来ない罪ですね。
4. 名無し ■2014/05/07 04:16:14
あーなるほどコメント見てわかったテトリスなのかこれ
初投稿でこれはすごいと思いますセンスいいですね
5. パワフル裸ロボ ■2014/05/08 02:16:58
いろんな姿勢のアリスちゃんが出てきたあたりでテトリスだと気づいた私を誰か誉めて(小並感)
すごいセンスを感じました。そのセンス、羨ましい…。
6. 名無し ■2014/05/09 18:08:40
凄く良かった
これからも期待してます
7. 名無し ■2014/05/10 23:09:39
タイトルからしてハイセンス
8. レベル0 ■2014/07/13 00:44:12
読んでるときやタイトルが意味不明で怖かったのですが、あとがきを読んでその恐怖も薄れました。
あぁ、なるほど。アレかwwwと
名前 メール
パスワード
投稿パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード