123で、イチ・リン・サンか。……ちょっと苦しい。超弩級人型兵器『雲山』は、ついに総攻撃の前に撃破され、その雲を衝くような巨体は廃墟の摩天楼に斃れ伏した。
兵士達が叫んだ。
巨人の死体から飛び出した『輪』。
『雲山』の指揮ユニット『一輪』だ。
一輪は、所々倒壊したハイウェイを疾走した。
友人であり同志である母艦の艦長や、共に最前線で戦っている敬愛する司令官から発せられた、撤退の指示、命令、懇願は全て無視した。
(キャプテン、姐さん、軍紀違反をお許し下さい)
一輪の行く手を阻む敵軍。
そのはるか後方には、場違いなリムジン。
そこに、視察に来たとかいう敵国の国家元首がいるはずだ。
無謀な行動を取るピエロの一輪車を嗤う者は、敵にも味方にもいなかった。