フランは館を出た。
家族から必要とされていない自分。誰からも相手にされない自分。
それをどうすることも出来ない自分。
限界だった・・・。行き着いた場所は人間の里。
真夜中でも人間は活動していた。道端を歩く通行人に少女は希望の眼差しを向ける。
が・・・、
行き交う人々の自分への視線。それは紅魔館の住人よりも酷かった。
妖怪の類でも、人里を訪れることはある。それは珍しいことではない。
が、それは決して人々から望まれていることではないのだ。
その視線にフランは耐え切れなくなり、その場から逃げた。
フランは里から少し離れた所にある小屋の屋根の上で泣いていた。
本当は、人間の里など見えない場所まで逃げたかったのだが
涙で前がよく見えず、短い距離しか飛べなかった。
『私は、この世界ではいらないコなのかな・・・』
そう思えば思うほど、涙があふれ出てくる。
嗚咽も止まらなかった。
すると、カラカラカラ…と、戸が開く音がなり、人間の男の声が聞こえてきた。
「そんなとこで泣かれたら、寝れないよ」
屋根から声のしたほうを見下ろすと。この家の住人であろう男が苦笑いをしながら手を差し伸べていた。
「おりておいで」
その言葉で、自分の瞳から零れ落ちるものが止まったような気がした。